なぜか魅かれるもの―⑦

ねぇー、ねぇー、土人形って知ってる?

表面と裏面の型に粘土を押しつけて(写真参)⇒貼り合わせ⇒それを素焼きにして⇒彩色を施した、素朴な味わいが特徴の置物人形のこと。江戸の中期から昭和30年代頃まで日本各地で作られ、とってもポピュラーなものだったんだよね。

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今から20年以上前に、名古屋市博物館が企画した『愛知の土人形』という展示で偶然見かけたのが興味のはじまり。そもそも愛知県は、良質の粘土に恵まれた焼き物の生産地だから、全国でも土人形が盛んな県として評判だったらしいのよ。市街地の再開発時に発掘された近世の遺跡からは、様々なタイプの土人形が出土される機会も多いと聞くから、きっと庶民の暮らしにかなり密接した大ヒット玩具だったんだろうね。

―というわけで、今回は愛知県陶磁美術館で見たくらしをうつす~郷土の土人形展~』レポートをお贈りしま~す♪

 

雛人形シリーズ

・まず、なぜ土を使って人形なのか…ここが肝心なところ!要は、雛祭り行事が特権階級から市井の人々へと広まり、それとともに高価な雛人形の代用品として、土と型によって安価かつ大量生産できる置物タイプのやきもの人形が普及したってわけ。

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・想像するに、“なーんちゃって”でもいいから、我々庶民だって子供の成長を祝ってささやかに盛り上がりたい!という欲望の現れなんじゃないかな。そして、“なーんちゃって”で始めたことも、けしてそれだけに終わらず、工夫を重ねて差別化を図るところが我が国らしさ(笑)。ほら見て!焼き物とはいえ、ある意味ホンモノを凌駕するポップカルチャーセンスでしょ。色数の多さだけでも圧倒されるよね。

 

▶鯉抱き金時シリーズ

・もちろん男の子向け玩具だって負けちゃいない!いやむしろ、男の子向けの人形の方がバリエーションも多くて、優遇されている気がした(苦笑)。やっぱ長男待望神話が漂って見えたなあ~。こちらは「鯉抱き金時」と題した初節句もの。プクプクした二の腕と、活きのいいポージングがめちゃカワイイ★

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・「俵童子」の奥で、力士になり切ってる童子人形は、荒川良々にそっくり(笑)。

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▶ヒーロー・ヒロインシリーズ

 ・子供向け玩具からスタートした土人形の世界観が、イッキに大きく開花したのが、物語の主人公をモチーフにしたバージョンだ。そう、今で言う戦隊ヒーローですよ。それこそ陶製の人形は世界中で作られただろうし、今も作られているだろうけど、こんな風にアクションシーンを再現した人形が他にあるかしら…。こちらのモデルは加藤清正浮世絵でも頻繁に取り上げられた人気キャラを、動きと共に形にしてるところがとてもユニー

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 ・特に愛知県三河は、歌舞伎狂言モチーフの人形が好まれ、たくさん作られたとか。人気芝居の一場面が劇画チックに再現されている様子は、現代のアニメとフィギュアの関係性とまったく一緒。時代は移り変わっても、人々が求めるテーマ性自体は案外変わらないものなんだよね。

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 ・それにしても、女子の華やかさの代表格が、花魁とお姫様の両極端な2パターンしかないってどうなの?(爆)。それ以外では、子守り姿や御高祖頭巾姿なんかがあったけど、めちゃ地味。一体これを家のどこに飾って喜んでいたんだろう???不思議(笑)

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・こちらはマツコDX花魁人形とでも呼びたい一品。こんな風に人形になって大衆の生活に入り込んでいたのだから、わたしが想像する以上に魁はトップアイドルだったんだろうなあ。

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▶これまたシンボル

・今回一番驚いたのが明治天皇をモデルにした土人形だ。いっしょに行った友人と、「庶民の玩具にしちゃっていいの?」と、思わず立ち止まった(笑)。帰宅後ネットで調べてみたら、日本が日清戦争に勝っていた頃に作られ、一時は庶民も広く親しんだものだったらしい。ただし天皇軍国主義が強まると、天皇は神聖なものとして作られなくなったというから、これは貴重なお姿だ。人形としてもちょっと素敵だったわよ。

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▶塗り込み少なめ赤坂人形

・今回の展示では、日本各地の土人形もたっぷり紹介されていて、地域によって人気モチーフや製造方法が異なる様子も一望できた。わたしが目を付けたのは福岡県の赤坂人形。フォルムも色付けもざっくりしていてその粗さが魅力的に映ったなあ。

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▶表情がいのち

・土人形の基本用途は招福厄除け。今もその残り香は十二支の置物として親しまれてはいるが、かつてのような生活に密着した形で買い求められることはなくなり、人形師たちは廃絶していった。

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 ・個人の趣向が先に立つ今のキャラクターグッズとは異なり、土人形は一家を護るための「祈り」の要素が強い。つまり、それだけ我々の家に対する考え方が、急速に変わったってことなんだろうな。

 

▶最後は爆笑で幕を閉じ…

・さてそんなこんなで、友人ともども大いに楽しんだ企画展。写真撮り放題&人影まばらな会場は、温泉街の射的場のようで、心ゆくまで浸ったわあ~。

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・そういえば、各地の人形展示コーナーには、明らかに土人形でないものも混じっていて(汗)、思わず「おいおい、これは入れちゃマズイだろう~」などと突っ込みまくりましたね(笑)。こちらの福助が二段重ねになってる一品は、扇子に“ロート”と書いてあり、「ロート製薬がオマケに作った企業ものだよー!」なーんて茶化していた私。ところが同級生のMが一言クールに、「それ、ロートではなくでしょ」と諫めてくれて…。はー、あまりのバカバカしさに大笑いした次第です。

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・「ロート」と見えなくもない…でしょ?(爆)

 

PS 次回は12/23にUPします

鶴舞公園―紅葉編

1月から通勤で鶴舞公園を通り抜けるようになり、我がブログでは、冬⇒春⇒夏と園内の季節の移り変わりを4回に渡ってレポート。せっかくなんで、紅葉編で締め括ろう♫と気負っていたら…秋の野郎、ちっとも来やしない(汗)。今年は10月に入ってもいつまでもダラダラ暑く、このまま秋をスッとばしていきなり冬に突入か?と諦めかけていたところ…なーんと2週間ほど前から、ついに紅葉シーズン到来!ひと雨降るたびにメラメラと木々が色づいちゃって、連日テンション上がりっぱなしですわ(笑)。週末に郊外でまとめて眺める“非日常”の紅葉とは違い、毎日“定点観測”して親しむ紅葉は、自然の摂理をよりダイレクトに浴びる気がして、何だか恐れさえ覚えるよ。本当は園内にお抱えペインターがいて、夜中にせっせと仕込んでんじゃないの~?(笑)

 

地下鉄通路のなが~い階段をあがったら目の前がこれですから♪

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 あたりをゆっくり見回すと、さらにこんなかんじ―。

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胡蝶ヶ池の蓮はすっかり刈り取られ、いまは紅葉を映す鏡に―。木々の根元は七味唐辛子をぶっちゃけた状態の点描画だ。激辛好きのKが喜びそう(笑)。

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やっぱ鴨からすると、障害物が取り除かれた池は泳ぎやすいものなのか?…

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中の島周辺をひとり散歩するオジサマ。気持ち良さそう~。都会のど真ん中に位置する公園だからか、ここは単独散歩派がほとんど。でも体感としては独り気分じゃないんだよね。多種多様な鳥のさえずりが四方八方から耳に飛び込んできて、むしろ大きな群れの中に放り出され、気ままに漂っている感触なのよ。

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そして緑葉と紅葉のバランスが美しさを決める!赤が近くに見え、緑は奥に引っ込んで見えるという「色彩の遠近法」の規則性が、生の教材で学習できるわけ★色のグラデーションが景色にリズムを与え、受け手の高揚を誘う一助になってんだろうね。

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しかーし、落葉もこれまた滋味深し。こちら、掃きためられた枯葉の小山が点在する様子にドキッとしたなあ~。公園作業員の方々による清掃の断片なんだろうが、見てよ、無意識にリチャード・ロングになっているよ~!わぉ~!

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しばし枯葉の行く末を見守っていたら⇒ブルーシートを塵取り代わりに使い⇒横付けした清掃車に放り込んでいました。なるほどね~。伐採した枝はリヤカーで運搬。トヨタ自動車並みの仕組み化ですか?(笑)毎日ご苦労様です(ぺこり)。

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さて個人的には、落葉が敷き詰められた公園北東の薄暗いこの一角に最も引き寄せられてます★ ツイツイ菱田春草の屏風絵を思い浮かべずにはいられない…。

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私のイメージする秋の気配を、最も繊細に表出している絵がある。菱田春草の『落葉』(1909 紙本着色 曲一双)だ。2003年に愛知県美術館で現物を目撃して以来、現実の秋以上に「ここに秋がある!」と思い込んでしまっている私(笑)。陰影も薄く、ザ・平面みたいな描き方なのに、木立の奥の奥までひんやりした秋の空気が立ち込めてて、思わず襟元を閉じたくなるほど。うーん、この静寂がタマラン。

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なんとタイムリーなことに、永青文庫所有のこの重要文化財が、年明けに名古屋市美術館で公開だって。春草の『黒き猫』(こちらも重文)も見られるこの機会を、ぜひ逃さないで!2017年1月14日[土]-2月26日[日]

そしてラストは恒例のカラスショットでキマリ。キミたちは鶴舞の王様です★

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 いやあ~、忘れていたわ。普選記念壇に集まるこの方たちが鶴舞の王様でしたあ~。この日はいつもの将棋・囲碁軍団は到着されておらず、朝っぱらからお集まりは麻雀軍団。野外雀鬼と紅葉の取り合わせが何とも乙ではないか!それにしてもこの雀卓、どこから持ち込んだの?(爆)オヤジたち、やるなあ~♪

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 さて番外編。東京に住む友人Yから、日本三景の一つ、松島を旅した写真が送られてきたよ。紅葉は盛りを越えたところだったらしいが、ほんの一瞬の青空から覗く松島が美しい~。こちらは“非日常”のゴージャス紅葉だ。でも旅の一番の目的は…石巻でのレアPokémonゲットだって(笑)。

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一方、ゴージャス旅行のできない私は、拾った落葉をせっせと押し花にしてジーザスの後光に★クリスマス用にデコってみた。今年も残り1ヵ月、ヤバイ

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PS  次回のブログは12/10にUPします

 

勝手にシネマ評/『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』('16)

作は、ビルボード5週連続1位を記録し、1979年を駆け抜けたあの大ヒット曲、ザ・ナックの『マイ・シャローナ』で幕を開けるが、お笑い番組「アメトーーク!」とは何の関係もない。しかしこの映画を「アメトーーク!」以上に笑えるとしたら、あなたは間違いなく50歳以上の男子だろう(笑)。いや、もしかしたら、笑いながら鼻の奥をツーンとさせてしまうかもしれない…。いずれにせよ、“定年からの逆算”なーんていうチマチマしたことを考えているヒマがあったら、今すぐ劇場へ。さあ、愛すべきバカ野郎どもがとぐろを巻く世界へLet’s GO!だ。

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『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(なっが!)は、1960年生まれの監督、リチャード・リンクレイターの自伝めいたドラマになっているという。いちおうそういう触れ込みだが、そんな背景などどうだっていい。極めて単純なお話だ(苦笑)。冒頭、カー・ステレオから流れるマイ・シャローナをBGMに、錦織 圭似(!)の主人公ジェイクが愛車に乗って登場する。もちろん彼の視線は車窓越しに花開く女子たちのBODYに一直線だ。我らがジェイクは天国へ降り立った!地元を離れ、今から大人のとば口=大学生活が始まろうとしているのだ。

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こで監督は、さらに映画を一筆で単純に記そうと、テロップを出して時間軸を見える化する―1980年8月28日 新学期まで3日と15時間―とカウントダウン表示。これは、時間の流れの中に「生の感触」を散りばめて差し出す、リンクレイターの十八番と呼びたいダンドリだ。さて、この勢いで期間限定のショータイムが始まるのか、それともその先の新学期に焦点を当てるのか…。判然としないまま、我々も太陽がやけに眩しく輝く南東テキサス州立大学に釘付けとなる―。

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球推薦で入学したジェイク。まずはお気に入りのレコードを抱えて野球部の寮に意気揚々と到着だ★ ところが名門野球部の先輩たちはクセ者揃い。シャレにならないようなイジワル歓待を浴びせるが(汗)、受けるジェイクもキョトンとするだけの鈍感ぶりで、ノープロブレム。そうだった、舞台は1980年のアメリカだった。何せ、映画俳優が第40代大統領になってしまう鷹揚(?)な時代のお話なのだ。よく見れば、新人を茶化す絵には身に覚えがある親和性を湛え、逆に「なぜあの頃はあんなじゃれ合いが成立してたのかなあ…」と、ツイ釣られて我が身を振り返ってしまった。茶化す方も茶化される方も役割をわきまえ、「ごっこ」で場を温め合うコミュニケーションがまだ通じていたのだ。

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もって、野郎どもは早々に新人を引き連れ、女子寮を冷やかしに車を走らせる。シュガーヒル・ギャングの「ラッパーズ・ディライト」を大合唱しながら、車窓から女子のケツ…いや、お尻等を品定めするシーンの感動的なバカっぷりに、私は早くも涙が出そうになった。いやー、映画でさえ、もはやこんな見事なナンパ絵、拝見できるものじゃございません。一体あの手の男たちはどこへ行ったのか?対する女の子側も手慣れたもので、ヒマなら相手してあげてもいいわよ風にあしらいスイッチのON&OFFが明快。やるなあ~。男女ともに、後腐れないナンパの極意(?)が初期設定されていた時代だったということか。そして、ここからどんな展開が待ち受けるのかというと…実はこれだけなのである(汗)。昼間は野郎同士でグダグダに戯れ、夜はナンパに全力投球するだけ。見事に何もない。ではいったい勝因はどこにあるのか―。

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と言でいうと、これといった目的が何もないままの状態で、映画をずっと動かし続けたということ―これに尽きると私は思う。例えば野球部の主なバカ野郎メンツは12人。ギャンブル狂、口説き屋、精神世界好き、田舎者、妄想癖、ピッチャー嫌いetc…と、どいつもこいつも与太話とそれに付随するアクションによって濃厚な痕跡を残すキャラなのだが、それだけで収まってもいない。顔と名前を覚えようにも全然追いつかないほど、奴らを画面に出たり入ったりさせるところがミソなのだ。

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にかくジェイクの入寮日から、たかだか3日半のスケッチなのに、一体どんだけ盛ったら気が済むんだあ~と、半ば呆れるくらい取り留めのないエピソードを小刻みにつなぎ、ある種のグルーブ感をもたらしている。しかも悪乗りには節度があり、むしろカラっとした無常観をもったいぶることなくスクリーンに立ち上らせ、ちょっと意外なほど奥行きがあるではないか!そう映画は、体育会系の瞬発力と文学的な趣きの両刀使いによって、すべての生の瞬間を、観客と分かちがたく結びつけるのである。一見ラフに映るが、なかなか緻密な演出なのだ。

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して新学期を明日に控えた3日目。待ちに待った本作の“結びの一番”が顔を出す。野球部の自主トレである。すっかり忘れかけていたが、奴らは選ばれし野球エリートだった(笑)。オシャレしてディスコへ繰り出し、カントリー・バーではラインダンスに興じてみせ、場違いのパンクLIVEへももぐりこんだりしていたが、最後にようようじぶん十分になれる場所=グランドへたどり着いたというわけだ。まあ、このくだりのカッコいいこと!自主トレとはいえ、互いの手の内を初めてオープンにするお手並み拝見の場で、先輩どもが風格の違いをまざまざと見せつけて、新人たちをノックダウン。実力がモノを言う世界の洗礼を浴びせつつ、また同時に、チームのことを考えないプレイヤーはさらに最低との烙印も押す。散々奴らを分け隔てなく笑ってきたからこそ、プライドのぶつかり合いを目撃したときの感慨はひとしおだったなあ~。改めて、野球の輝きが何によってもたらされるのかを垣間見るようで、私には忘れられないシーンとなった。

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かして最後はまたまたドンチャン騒ぎ♫ スポーツ雑誌『Number』みたいな美談余韻でシミジミさせるのではなく(笑)、野球部みんなで水遊びに呆けて夏休みが終わる。ただし、先に与太話とナンパ以外は何もないと書いたが、大切なものがありましたよ!バカ野郎どもの頭の上には、いつも極上の“青空”があったのだ。どこまでも広がる青空の下での記憶…。なるほど、これが過ぎ去った後でしかわからない、青春っていうやつの正体かもしれない―。

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11/25(金)まで 伏見ミリオン座で上映中


『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』予告

 

『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

2016年/米国/カラー/117分

監督/脚本   リチャード・リンクレイター
撮影   シェーン・F・ケリー
音楽監修 ランドール・ポスター
     メーガン・カリアー

キャスト ブレイク・ジェナー
     ゾーイ・ドゥイッチ 

 

PS 次回は11/30にUP予定。紅葉真っ盛りの鶴舞公園を案内するよ♪

ラジオな時間 📻

で寛いでいるときの基本音源は、ラジオだ。休日は朝から、平日は仕事から帰ってすぐにスイッチON。TVとラジオの大きな違いは、局を変えないことですね。他のリスナーはどうなんだろう…。ラジオもザッピングするのかな…?私の場合、ここ14~15年はNHK-FMオンリーだ。民放は馴れ馴れしすぎてお腹いっぱいになってしまうし、DJが早口にまくしたてるFMも邪魔くさい。その点NHK-FMは、音楽ジャンルの幅が広く、サラっと後腐れなくお付き合いでき、付かず離れずいい距離感で視聴できる。それも、ちょっと離れたところに置いたラジカセ(!)から、聴くとはなしに聴くかんじがお気に入りのスタイル。遠距離恋愛型ね(したことないけど…笑)。

所仕事をしながら、アイロンがけをしながら、掃除に手芸に手紙書き、もちろんこのブログをしたためている今もラジオから流れる音とともに活動している。つまりラジオは私のルーティンワークの相棒なのだ。正直言って、内容の8割は頭に入っていないが(汗)、いいのよ、欲しいのは世界とじぶんを耳でつなぐ“窓”なのだから。

 

NHK-FM 聴きどころ番組 ①

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の夕飯作りタイムの相棒が『夜のプレイリスト』。ゲストが一人でアルバムを5枚紹介できるというなんとも贅沢な番組だ。愛聴版にまつわるゲストのエピソード語りも、長すぎず、短すぎず…ちょうどイイ。5日間聞き通すと、ゲストの人となりが、すーっと浮び上がるダンドリだ。例えば10月に登場したコラムニストの泉麻人が選んだ5枚はこちら―

加山雄三加山雄三のすべて〜ザ・ランチャーズとともに」 (1966)
荒井由美「MISSLIM」 (1974)
SUGAR BABE 「SONGS」 (1975)
・Sons Of Sun「海賊キッドの冒険」 (1972) ※マニアックなのも入れてます!
Neil Young 「Harvest」 (1972)

 最初の3枚と後の2枚が共存するところがいかにも泉。昔話をしても個人の話に閉じないのよね。声質もラジオ向き。いい語りだったあ~♫

 

NHK-FM 聴きどころ番組 ②

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ういう位置づけなのかよくわからないお笑いタレントふかわりょう(汗)。ただこの番組では、やることなすことピターっとハマってる!目玉の企画コーナーは、一言でいうと、視聴者参加型のクラシック音楽大喜利だ。オペラやミュージカルの曲の中から日本語に聞こえる部分を紹介する「空耳クラシック」、文学作品の一節にクラシックのBGMをつけて妄想する「BGM選手権」クラシック音楽にサブタイトルを付ける「勝手に名付け親」、そしてクラシックのイントロクイズ「きらクラDON!」など、バラエティ番組の基本企画をクラシックに持ち込んだことで、妙に新鮮に感じられるの。

それにラジオってさー、偏差値高めの文系男子がサラっと御託を並べる場にもってこいなんだよねー(爆)。BSプレミアムより、ビジュアルが必要ない分、100%オタク度発揮できるし(笑)。

 

NHK-FM 聴きどころ番組 ③

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タクと言えば『ラジオマンジャック』!私の週末の作り置き惣菜仕込みタイムの相棒がこれ。DJ赤坂泰彦がハイテンションの突っ込み役となり、毎回1テーマを決めてショートコントを連発する内容だが、声で芸する出演者たちが粒ぞろいだからLIVE感がハンパなく、豪華なエンターテイメント劇場と化している。毎回どうまとめるのか、内心ヒヤヒヤしながら聴いているのだが、ギャグも皮肉もタガが外れ切らない一歩手前で上質に着地。赤坂が理想とするラジオ天国な世界はクセになる!

 

NHK-FM 聴きどころ番組 ④

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さに“5分間のサウンドトリップ”―『音の風景』は私が最も心躍る番組だ。例えば好きな音楽は?と聞かれたら、私の場合、ジャンルやミュージシャンは思い浮かばず、日常のノイズに音楽を感じている節がある。自慢じゃないけど、楽曲の聞き分けとか、ぜんぜんできないのよね…音楽のセンス、ゼロかも(汗)。その代り、開け放った窓から聴こえる様々な音に勝手に思いを馳せたりする。他の階の住人の生活音が騒音にならないの(笑)。だから『音の風景』と出会ったときは鳥肌が立った…じぶんが求めていたものはこれなのよ!と。番組の一部がここから視聴できます。土地と音の結びつきをぜひ堪能してみて。

 

NHK-FM 聴きどころ番組 ⑤

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NHK-FMといえば『世界の快適音楽セレクション』でしょう~♪ 土曜の朝の2時間、ちょっとユルめのスタートにもってこいの、好感度たか~い番組だ。朝食の片づけ⇒掃除&洗濯タイムの相棒にしてすでに10年以上になる。選曲の幅の広さと趣味の良さに毎回たまげるが、やっぱゴンチチありきで成立しているね。どちらかと言えばふたりともボケの役回りなのだが、単なるおっとりしたいい人キャラだけで終わらず、個々の個性がキラリ輝く。そういえば、この番組でたまたま耳にして、その後速攻でCDをゲットした経験も2度ある(苦笑)。ANTONY AND THE JOHNSONS『THE CRYING LIGHT』森進一のカバーアルバム『Love Music』どちらもヘビーローテのアルバムとなってるよ。トレンドなんていう野暮な括りとは無縁の、いろんな意味で信頼を寄せるお気に入り番組だ。

 

NHK-FM 聴きどころ番組 ⑥

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紅茶と、猫足の家具と、レースのカーテンが揺れる洋館をイメージするエレガントなコーナー。タイトルも『弾き語りフォーユー』だって(汗)。あまりの浮世離れ感に「なめんとんのか~!」っと突っ込みたいところだが…なぜだか悪くないんだよな~これが(笑)。進行役の小原孝のなりきり度の高さに、恐れ入りましたと感服するばかり。昨今、どんなに気どったタレントだろうが、笑いで自らを茶化さないと許されない空気があるが、 時代におもねることなくサラリと貴公子振る舞いを貫くのは、あの羽生結弦と、ニットデザイナーの広瀬 光治と、この小原氏の3人くらいではないか(笑)。一昔前の少女漫画に出てきそうなキャラ作りにプロ道を感じてしまう。いやいや、もちろん聴きどころはテクです!なにもそこまでやらなくても…とシンパイになるくらい、演奏しながらガンガン即興でアレンジ(汗)。ご本人、意外と貧乏性だったりして?…と密かに想像しております、はい。

 

の他にも、洋楽2大ご意見番渋谷陽一ピーター・バラカンがそれぞれナビゲーターを務める名物番組や、今日は一日○○三昧(ざんまい)』と題し、さまざまな音楽ジャンルから一種類のジャンルだけにスポットを当てて、丸一日ドップリハマらせる特集番組があったりと、コンテンツは絶えず充実★しかも、その合間に、浪曲はあるわ、邦楽コーナーも多種あるわ、基本のクラシックがてんこ盛りだわのワンダーランド。FMでもラジオ深夜便が聞けるしね~。NHKアナウンサーの低く落ち着いたトーンを深夜に耳にすると、ガサツな私の胸の内にも懺悔の気持ちがフツフツと湧いてきてしまう(涙)。

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理想とする人生最期の設定は、「病院のベッドで大相撲中継(できれば中入り前)をぼんやり眺めながら」と「ラジオ深夜便を耳にしながら」の2パターンだ(笑)。願わくば、そんな日常の延長で夢見るように眠りたい―。

 

PS めっきり寒くなってきました…。次回は11/20にお会いしましょう。

 

 

 

 

同志発見!にホクソ笑む😊

がうれしいって、おっ、こんなところに我が同志、見つけたり!と、胸のうちで快哉を叫び、小さくガッツポーズするときくらい、うれしい瞬間はない♪ 物体からなのか、匂いからなのか、情景からなのか、言葉からなのか…その時点では何が引き金になったのかはよくわからないのだが、じぶんと共通のパッションを感じた最初の出会いがしら体験は相当甘美なものなのだ。でも私は、甘いがゆえに、その幻惑に塩をすり込むことも忘れない。面倒くさくてイヤな奴です、はい(苦笑)。

つまり、じぶんの直観をすぐさま信じられないタチなので、しばらく寝かせ、“メガネ”を様々に変えて定点観測に挑む。「何に魅かれたんだっけ?」「それは本当か?」と。定点観測時の試験薬はズバリ「時間」。時間を介在させることによって、対象とじぶんが予期せぬ化学反応を起こす関係になったとき、ガッツポーズは確信になるのだ!

 

例えばSAKUちゃんの絵

こどもの絵はヤバイ。劇薬である。Yちゃんの一人娘SAKUちゃんは、お絵描き&工作が大好きな4歳。Yちゃんからの便りに同封されてくるSAKUちゃんの絵が、毎回ガツンとパワフルなので、その勢いにつられ、なーんちゃって表装をして自宅に飾っている。

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左から右へ時間経過。どちらも私の肖像画らしい(笑)。こどもにとってメガネのインパクトは大きいんだね。髪の毛とメガネはこう描くのだ!をじぶんの中で形式化してて面白いなあ~。

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やがてディズニーのキャラクターがモデルに登場。左は『塔の上のラプンツェル』、右は『リトル・マーメイド』のヒロインとか。顔のアップだけだった絵が、ここで身体を取り込む絵に変化したんだね。アニメで全身の動きを追い駆けるようになったからなのかな?でも、いまのディズニー・ヒロインたちの媚びたビジュアルより、SAKUちゃんの絵の方がミステリアスでダンゼン好き!

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ジャーン!そして前出の1か月後の作品がこちら。なんと画風がパピエ・コレにまで及び、マジにたまげた。モチーフは白鵬だって…。ピロピロっと貼り付けられた紫と緑の部分はもしかして廻し下がりか?早くもついて行くだけで精一杯だ(汗)。

そして最近、SAKU画伯のアトリエ訪問に行って来た!

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SAKU画伯のママは、とーってもセンスがよいので、いい塩梅に娘の力作を貼りだしているのだが、実は飾りつけには画伯もけっこう注文を出しているらしい。このコーナー、好きだったなあ。一番右の作品に注目。一度書いた絵を解体し、向きを変えてコラージュしてるのよ。はい、まるでパウル・クレーのテクです★自然にやってしまっているところがなんともスゴ過ぎ(汗)。

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キッチンの一番目立つところには、私が画伯に送った手作り人形たちと、画伯の絵のコラボコーナーが展開されててワクワクしたなあ~。そう、互いの家で、飾りっこしてる関係性はまさに同志。これぞちんぴらトリエンナーレですな(爆)。

 

例えばSOMAの絵

10年以上前のこと。Nちゃんちに遊びに行ったときに遭遇した、息子SOMAのいたずら書きにも衝撃を受けた。こどもの絵はほんとヤバイ。当時3~4歳だった彼は、恐竜がマイブームで、全身恐竜ワールドの住人と化し、寝ても覚めても恐竜の絵を描き綴っていた。ママのNちゃんはそれに無頓着というか、ガンガン書きまくるSOMAの絵を、溜まるとそーっと処分していたみたいだが(お母さんはその現実感が大切だものね!)、私は密かに共通のパッションを感じてしまったのよね~。

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その後ちょっとしてから、今度はNちゃんがSOMAを連れて遊びにやって来た。SOMA画伯とはこの時が初対面。この機会を逃すまいと、紙と筆記用具を渡したら、まあ描くわ描くわ…恐竜LOVEの暴走をLIVEで目撃して、たまんなかったなあ~。中でも入魂の1枚がこちら!

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ハァ、かっこいーい!この勢いMAXの見事な線!2度と再現できない無我夢中の瞬間がここにはある(涙)。友人から誕生日にもらった額で額装し、あれ以来ずーっと部屋に飾っている。訪問者たちの目にも飛び込んでくるのか、「これは誰が描いたの?」と問われることもしばしばだった。

そして去年、10年ぶりにYちゃんが再びやって来た。あのSOMA画伯は中学2年生になり、恐竜LOVEの生活も様変わりしているらしかった。まあ普通そうですよね(笑)。

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ところが、YちゃんがSOMA画伯に私のウチへ遊びに行くことを話したら、「これ持って行ったら…。」とこっそり恐竜画を描いて渡してくれたのよ~(涙)。さーすが同志♥つまり、あれから10年後の恐竜LOVEがこの絵。いま、2枚の絵を並べて飾っているんだけど、ほとばしるパッションが変容し、繊細で内省的な絵になっているのよね。人はこうやって大人になってゆくんだなあ…、その変遷が何より感慨深い。それに、見知らぬちんぴらの家に自分のこどもの時の絵があるって、タイムカプセルみたいで面白いでしょ(苦笑)。すかさず、さらに10年後、「24歳になったらまた描いて!」と発注しておいた―。

 

例えばSAYUちゃんの絵

東京で暮らすSAYUちゃんは前職の同僚。今度はこどもじゃないよ~、でもヤバイよ~(笑)。彼女は、目下、育休中の美人ママ。初めての子育てを大いに楽しみながら、その合間に、ユニークな絵ハガキ便りを送ってくれるのだが、これが毎回大ウケ!

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既成の絵ハガキに、私と思しきキャラのイラスト(!)を丁寧に描き込んで送ってくれるのよ。そう、SAYU画伯最大の特徴は、地の絵ハガキの持ち味を活かし、絵の世界観に私を溶け込ませてしまうところですね。まるで『ウォーリーを探せ』状態だ(笑)。

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この夏、SAYU画伯はデトロイト美術館展に行き、私を描きたい絵を見つけてしまったらしい…。それはマチスの『Coffee』(1916)。私もこの絵はナマで見て、お気に入りの1枚!「光栄だわ~。」…とウットリしてたら、ウチでお好み焼き会を開いてもてなしたときの想い出が描き込まれているではないか(左手のヘラに注目)。タッチがちゃんとマチスの画風に呼応してるところがタマラン。この際タイトルも『ホットプレート』(2016)に改変だ(笑)。

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そして、これが届いたときは腰が抜けそうになった。香港のデザイナー、アラン・チャンのポストカードに私が登場している!と…じぶんでも錯覚(爆)。どうやら42体、全部の顔を私仕様に書き込んだらしい。ところどころ水着の柄を変えたり、3列✖3行目の左手にはまたもや“お好み焼きのヘラ”が描かれているのよ!ブラボー、クレイジーSAYUバンド★

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最新作は、恐れ多くも、103歳の現役美術家・篠田桃紅の『初心』に登場させていただき、恐縮です(汗)。いやはや、初心も初心、わたくし桃紅女子の半分しか生きていないひよっこですが、ありがたき幸せ也。子育て画伯は、劇画タッチまでこなし始め、こども画伯たち同様、侮れません。このパッションがあれば鬼に金棒ヘラ。次回はフェルメールあたり、いかがでしょうか?(笑)

 

ということで、我が同志たちは、これからも間違いなくひとり遊びに磨きをかけることでしょう。今後もしかと定点観測させてもらます!

 

PS 次回は11/10にUPで~す

 

勝手にシネマ評/『彷徨える河』('16)

マゾンの密林が舞台のモノクロ映画『彷徨える河』。

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りあえずアマゾンと聞いて、私のお粗末な想像力ですぐに浮かぶ設定は、<先住民族VS侵略者の攻防史パターン>と、<科学で解明できない自然神への崇拝パターン>の2つだけ。だから「結局はそのどちらかに収まるだけで、さして目新しくもないんじゃねーの?」と期待は薄かった。ところがフタを開けたら、想定内に関わらずベラ棒に面白い!2つのパターンを両方盛り込んでなおかつ、娯楽映画の胸騒ぎをキープ。ずーっとワクワクし通しだった!

 

はその勝因は何か―。まずは肉体の説得力だ。先住民族唯一の生き残りとして、開口一番に登場する青年カラマカテ。カメラは彼を足元から舐め、ふてぶてしくて剛毅な面構えを捉え、ほぼ全裸に近しい後ろ姿までイッキに撮り切る。たかだか数分のファーストショット、だが速攻、我々の意識はアマゾンへ持っていかれる!ツイさっき食べたランチのことも、急ぎで返信しなきゃならないメールのことも、すべて抹消。呆けたようにスクリーンに注視するだけの状態になるのだ。カラマカテ、お前は一体何者だ?

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ぶりな首飾りと腕に巻き付けた羽、股間のみ覆う紐パンに、手には長~い棒を持つ男。自前の筋肉そのものが衣服のように映え、それも“隆とした身なり”ってヤツにまで昇華しているではないか。素人目ながら、ゴールドジム+プロテインの筋肉とは違うのよ…もっと粋筋なのよ!と思わず口走りそうになった。そう、すっかり映画のマジックにノせられ、梯子を外されたわけだ。

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て、ビジュアルの次に吸い寄せられたのが対話である。これまた勝手な思い込みなのだが、未開の地への探検ドラマとなれば、コミュニケーションが図れないのが前提となるはずだが、ここでは冒頭から対話が花盛り。意表を突かれた。

ある日、不治の病に侵されたドイツ人の民族学者テオドールと、先住民族出身の案内人マンドゥカが、カラマカテの呪術を頼りに来訪。白人侵略者たちへの恨みが根深いカラマカテは、一度は拒絶するが、唯一の治療薬となる植物“ヤクルナ”探しの旅へ同行することになる―。

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い、そうです、奇妙な組合わせの3人がカヌーに同乗し、大アマゾンを移動するロード・ムービーの体裁となるのだ。民俗学者だから言葉の壁がないのだろうけど…話が早いね(笑)。しかも先住民族の言語(一体何語?)が、コロコロと鳴り響く魅力的なイントネーションで、イチイチ耳に心地よい。音声素材を表現に取り込めるのも映画のマジックを強める一手だと痛感した。

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ちろん旅の途中の会話の中身がこれまた上等!モノに執着するテオドールを「正気じゃない」と諫めたり、「雨の前に魚を食べてはダメだ」など禁忌を連発してハッとさせたリ、妻への愛を手紙に綴るテオドールを可笑しがったりと、映画はカラマカテを通じてカルチャーギャップを提示し、科学的進歩に疑問を投じるくだりとするわけだが、カラマカテの知恵者ぶりが心技体を熟成した果ての簡素な美しさで迫ってくるため、くすぐりにもったいぶった匂いが感じられない。やがて警戒心をほどき合い、会話を重ね、互いの意見と人格を整理しながら静かに信頼関係を育んで行くプロセスに、私はメロメロになった。

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して映画には、もう一つ大きな仕掛けが用意されている。20世紀初頭の3人の旅と並行して、それから数十年後の老いたカラマカテの現在が挿入される。そのお姿は、枯れてなお鳶の頭のような風貌で、藍染の半纏でも羽織らせたらとびっきり似合いそうだが、時を経て記憶を失くし、孤独の淵にいるらしい。そこへ欲深く不眠症のアメリカ人植物学者が現れ、全てを忘れて無(チュジャチャキ)になったカラマカテを誘い出し、再びヤクルナ探しの旅に出掛けるシークエンスが描かれるのだ。

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タバレになるのでここには記さないが、過去の3人旅がこの先どういう末路を辿るのか?…河べりに舟を乗り着ける度に遭遇する悪夢の連続に終わりは来るのか?…ヤクルナは見つかるのか?…テオドールたちとの交流は?…等々、その後の2人旅からも同時に過去の出来事の行方を推察することになり、我々は聖なる植物を巡って突き進む2つの時間に絡めとられる。そこには、河の流れと呼応した出口が見えない欲望深き横の展開と、ジャングルから天空に向かって縦へ縦へと伸びるシャーマンの精神世界が出現し、やがて驚くべき結末へとジャンプする。ケレン味たっぷりに描かれる、聖と俗がせめぎ合うスケッチの数々…そのどれもが夢見るようであり、繰り返される弱者の悲劇を予感させるようにも映る。

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錯する2つの旅は、共に病に苦しむ知識人が一方的にカラマカテに接近して始まるものだった。なんやかんやと理屈を並べても、行き詰まった合理主義の果てに尚、科学的裏付けがなされなくとも、使えるものは出涸らしになるまで使い切ろうとの魂胆が透けて見える残酷な設定である。しかし、映画はラストで安直な二項対立劇をうっちゃり、命さえない世界を覗かせた。何と、カラマカテから刃を向けた相手へバトンをつなぎ、スクリーンをカラーに一変させ、我々をコイワノ族の末裔に化けさせる幕切れの鮮やかなこと!お~っ、こんな大風呂敷ならどこまでも広げていただきましょう。やっぱ映画はこうじゃなくっちゃ★ しかも私は未だに梯子を外されたまま、宙吊り状態に浸っている―。

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まったくの余談だが―監督のシーロ・ゲーラは「多くのコロンビア人はアマゾンについて何も知らない。だから調べて、映画にした」という記事を目にした。なぜかそのとき、桂離宮のことが頭をよぎったんだよね。初めて桂離宮を訪れたのは7年前。身をやつすようにひっそりと佇む敷地内に、無限の宇宙が広がっていようとはツユ知らず、かなりの衝撃を受けたのだが、その興奮を伝えようにも、「聞いたことがあるけどそれ何だっけ」?と返されるばかりで意気消沈…。監督みたいに作品にしてフィードバックはできないし…(苦笑)。八条宮家三代に渡る美意識の結集はアマゾンの密林とは対極の徹底した人工物なのだが、引き戸の向こうとこちらは別世界で、我々とは異なる時空が宿っていることだけは全身で受け止めてしまった私(汗)。以降、ずーずしくも、「日本人のやることもまんざら捨てたものじゃない!」と、桂離宮は私の心の拠り所になっている。それにしても、アマゾンの密林映画を見ながら、桂まで想像が広がるとは…。優れた映画と接触すると予想だにしない化学反応が起こるもの。だから未だ劇場通いが止められないのよね(苦笑)。

 

11月19日(土)~12月2日(金) 

名古屋シネマテークにて(上映スケジュールはこちらから) 

 


映画『彷徨える河』予告編

 

彷徨える河
2015年/コロンビア・ベネズエラ・アルゼンチン合作/モノクロ/124分

監督   シーラ・ゲーロ
撮影   ダビ・ガジェゴ
脚本   シーロ・ゲーラ
     ジャック・トゥールモンド
キャスト ヤン・ベイブート 
     ブリオン・デイビス

 

PS 次回は10/31にUP予定。またお会いしましょう♪

あいちトリエンナーレ2016✑ 備忘録②

さて「あいトレ2016」備忘録の2回目は、遅~い夏休みを利用し、半日かけてぶらついた名古屋地区編です。金曜の午後は、メインの美術館が20:00までOPEN。時間を気にせず回れてオススメよ。それと、意外と空模様も重要!美術館以外の場所での展示は、雨天は避けたほうが無難だね。会場が細かく分かれているから、イチイチ傘をさしたり閉じたりは面倒だと思うので(汗)。荷物も最小限にして行きたいしね。―ということで、後半戦も個人的に気になった作家の紹介でLet's Go!

 

名古屋市美術館からスタート!

▶ここでは1Fに展示された2人の作家に注目した。1人は館内に入って右手に並ぶアブドラ・アル・サーディアラブ首長国連邦出身の作家と遭遇するのは初体験だ。『比較通―スイカシリーズ』('13)は、スイカのイメージを飛躍させ、架空の風景を捏造(笑)。鼻の先にスイカのあの甘青い匂いが漂ってきそうな山肌と、稜線に“建築的”な趣きがあって、困惑しながら新しい惑星に降り立つような気分を味わった。

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立体物がまたいいのよ~。動物の骨を使った彫刻作品シリーズ『腔間構成』('91)は、どれも挑発的なポーズをとる裸婦像に見えて色っぽい★ご本人もええ男♥

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▶もう1人は、サーディの対面に展示されているブラジル出身のマウロ・レスティフェによる写真作品。2週間にわたり愛知県内で撮影した19点を発表している。

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レスティフェは曇りや雨模様の日に好んで撮影するとか。だからなのか、プリントされた粒子の質感がめちゃくちゃ美しくて、吸い込まれそうになった。それとフレーミングが非常にユニーク。例えば上の写真の右から4つめ―建物とそこから抜けた空とどちらを狙っているのか判然としない…。いや、常に1枚の写真の中の構成を、全体最適で捉えていて、やたら密度が濃い。遠くから眺めてもクラクラするほどの存在感があった。

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時間に余裕を持って中央広小路ビル!

▶前回の備忘録①で「あいトレ」は映像作品が収穫だったと書いたが、沖縄出身のミヤギフトシも2本の短編『ロマン派の音楽』('15)『花の名前』('15)で強く記憶に残った。そのミヤギは中央広小路ビルの2Fで新作も発表。北海道を起点に侵略や弾圧で失われたいくつもの歴史と悲しみを、海の映像に込めたインスタレーションで展開している。

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異なる5本の映像がループで流れているので、まずはどれでもいいから試しに1本覗いてみて!風景にナレーションが被るだけの10分足らずのシンプルな作りなんだけど、これがじわじわと胸に染みてくるの。テキストと情景、どちらにも憂いがあって、知らないうちに現実の時間から浮遊してしまう…。1本見ると、必ずもう1本見たくなるから、時間にゆとりをもって出かけてみてね。

 

長者町会場 堀田商事ビル3F!

▶これまた全く知らないアルゼンチンの若手作家アドリアナ・ミノリーティ。一見既視感があるようなCGだが、よく見ると非常に作り込んであって見応えあり。ヘボくもエロくもない(苦笑)。むしろ揺るぎない世界観の構築に目を見張る。女性作家と知ってさらに驚いた。

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本丸、愛知芸術文化センター

▶最後は本丸となる芸文センターだ。2フロア(8Fと10F)に分かれているから注意してね。出入り自由の地下、屋上庭園、展望回廊にも展示があるのでお忘れなく♫

▶で、ここで魅かれたのは、まず10Fの三田村光土里。「わたしにわかることは、ヒモは必ずからまるということだけです」などの走り書きと、日用雑貨などで構成されたインスタレーションは、緊張と緩和のバランスが天才的で、あらゆるモノが息をしている。どこを切り取ってもスリリングな絵になって見えるのだ。

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実年齢はほぼ同世代なのに、手垢にまみれることなく恐れしらずな10代のハートを持つ人。非常に気になった。

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▶そのお隣の部屋は、オランダ出身でベルギーを拠点に活動しているマーク・マンダース。全美術プログラの中で、私が最も動揺した作家だ。ビニールクロスや建築素材、新聞紙などの即物的な質感で拵えた簡易ギャラリー風な空間に、朽ちかけて歪なポーズの彫刻(ブロンズだとか!)がそっけなく置かれている。これがカッコいいのなんの…心拍数が上がってヤバかった(汗)。

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あー、お泊りしたかったなあ~(笑)。私にはこの空間がとんでもなくエロティックな装置に見えて、一晩お付き合いしないと味わい尽くせやしない!と焦った。イメージに酔うのではなく、あくまでリアルな場としてフィットしたのだ。

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五平餅(!)状態の少女に、ネズミと抱き合わせの犬(狐?)、ヒビ割れた部分をそっと撫でたら、じわじわと泉が湧き出てきそう…。狂気スレスレのところを転じて、すべてが可憐で愛おしい―。

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 Webでインタビュー記事を見つけたから載せておくね。マーク・マンダース、しばらくマイ・ブームになりそうだ。

 

▶8F会場では田附勝の写真に釘付け!異様なまでの熱量!な、な、何なんだこのマグマの正体は…。私は基本、展示用キャプションをほとんど読まずに“バッターボックスに立つ”鑑賞スタイルだが、1作品目からビーンボールでのけぞらされた感あり(汗)。それも村田兆治のマサカリ投球で(例えが古くてスイマセン…)。

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振り返ったら、岡崎の石原邸でも新作を発表していたのだが、そちらはコンセプチュアルART風な一品で、記憶には残っていたが同じ作家とは到底思えず…。経歴も変わっているし、なんとあの『ほぼ日』に「田附勝の「めだま」の先」という不定期連載を掲載中。発言がこれまた楽しいのだ★ 私の村田兆治連想、まんざら遠くないかも…そう、全方位すべて先発完投の男気アニキみたいよ(笑)。

 

さて、2回にわたってお届けした「あいトレ2016」備忘録はいかがだったかな…。自分から近づき⇒実際に立ち合い⇒疑問・発見を体感し⇒Webや書籍で後追い検証⇒そして自分なりのアンソロジーに組みなおす…。このサイクルが私の生には欠かせない。

世界は広い。未知の作家とめぐり会う旅に終わりはない―。

 

PS 唐突ですが、目下全国一斉公開中のC・イ―ストウッド監督作品ハドソン川の奇跡は必見!御年86歳、実話の映画化&感動秘話を、思いっきり手離れよくサクサク作っていてびっくらよ。このジジイ、鼻くそほじりながら、軽ーくあと10本は作りそう(汗)。食事はガソリンだったりして(爆)。

次回は「あいトレ」で一足先にチェックした映画『彷徨える河』評をUPします。10/20にまたお会いしましょう~。