勝手にシネマ評/『ROMA/ローマ』('18)

アルフォンソ・キュアロン監督が描く話題の新作『ROMA』は、タイル模様のクローズUPでゆるりと始まる。背後から控えめに鳴り響いてくるのは、鳥のさえずり…足音…デッキブラシがゴシゴシこすれる家事労働らしき音だ。

f:id:chinpira415:20190511215820j:plainやがて、水が撒かれて清められ、その水がタイルの上に徐々に流れ着くと、天窓から刺す光の反射で水鏡と化し、上空を横切る飛行機をアメンボみたいな姿で映し出す。まず音で誘い、次に光を降り注ぎ、最後に動く物体を、ごく小さくスクリーンに招き入れる仕立てが神々しい。そう、世界はこうして絶え間なく動いているのだ!

f:id:chinpira415:20190511220518j:plainここで映画はカメラを引き、一連の労働音が、小柄な若い女性による清掃スケッチだったことを明かす。傍らでうろつく一匹の犬も含め、平穏な日常の一コマなのか…。きわめてよい風景だ。

f:id:chinpira415:20190511220712j:plainその後もカメラは、彼女の手慣れた家事労働を遠目に追い駆けながら、家政婦仲間との関係性や、邸内の情報も一筆書きのリズムに乗せてさりげなく捉え、ドラマの舞台をものの見事に立ち上げる。滞空時間の長い滑らかな幕開け…我々の意識はすでに映画の中にある―

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マズイ!こんな調子で映像美にイチイチ感嘆していたら、ひとりウットリつぶやきで終わってしまう(汗)。先を急ごう。70年代メキシコシティのローマ地区先住民族の血を引くクリオは、白人中流家庭の邸で働く住み込みの家政婦だ。雇い主一家は、医者のアントニオに妻のソフィアとその母、やんちゃ盛りの4人の子供の7人家族。同僚と2人、朝から晩まで一家の生活周りのすべてを整えているが、主人と奉公人の線引きは、極端に緊張を強いるほどのものでもなさそうだ。逆を言えば、それだけ階級差が固定化されてしまっている証にも受け取れるが―。

f:id:chinpira415:20190511221741j:plainしかし無垢な子どもたちは、慈愛に満ちた方へと自然に吸い寄せられる。慎ましく穏やかなクリオの表情や振舞いに陽だまりを感じるのか、気づけば子どもたちは皆、彼女が側にいてくれるのを願っている。時代や国や肌の色が違えども、子どもは魂の感応アンテナを尖らせ、焦がれる対象を見つけ出す生き物なのかもしれない。

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映画はこうして早い段階から、クリオ自身がじぶんの介在価値を肌で感じながら奉公している断片を綴り、これが勝因の一つになっている。クリオの背景はわからなくても、彼女にはじぶんで築いた居場所がある。ヒロインと我々との親和性を絶えず意識しながら、『ROMA』は描かれて行くのだ。

f:id:chinpira415:20190511222058j:plainもちろん、家政婦にも女子の時間はやってくる!クリオは、同僚と勢いよく休日の街へ繰り出し、出会ったばかりの恋人候補と早々にベッドイン。慎ましく働く黒子の横顔から一転、好奇心に突き動かされて輝くハレな横顔へ鮮やかに転身だ。ここでもカメラは、若さ弾むクリオの姿を、ひとつの情景として遠目で見守り続けるため、時に我々の記憶を呼び覚ます装置にもなる。労働から解放され、細胞の隅々までじぶんだけの時間を生きる彼女ののびやかさは、懐かしく眩しいものとして、しかと脳裏に焼き付くのだった。

f:id:chinpira415:20190511222333j:plainある日、アントニオがケベックへ旅立つ。たかが出張で家を空けるだけなのに、悪い予感がしたのかヨメのソフィアは大揺れ。時を同じくしてクリオの妊娠が発覚するが、こちらも相手の男にあっさり逃げられ途方に暮れる…。社会的ポジションの異なる2人の女が、男に去られてピンチ襲来という1点を共通項に、物語の中心に迫り出して行く…ずいぶん意表を突く展開である。

f:id:chinpira415:20190511222612j:plainそもそもソフィアは、子どもたちに圧倒的に慕われるクリオに対して、面白く思っていなかっただろう。家政婦としては重宝しても、母親の面目は保たれないからだ。ただ2人の女は、異なる立場だからこそ無暗に接近せず、互いの状況変化を察知して、手を差し伸べ合うことはできる

f:id:chinpira415:20190511222754j:plainソフィアは、すぐさまクリオを病院へ連れて行き、このまま働きながら子供が産める環境を約束し、クリオもXmasが来ても一向に修復できない主人夫婦を黙って見守る…。同情でも、友情でもなく、今の生活を持続可能にするための合理的な選択で2人の女は結束する。美談を遠ざけたこのリアリティに、わたしは気持ちよくノレた!

f:id:chinpira415:20190511230750j:plainさらに映画は、女たちの内面の葛藤も微妙にズラして巧い。地震に雹、ド派手な年越しパーティーに山火事など、非日常なアクションを唐突に差し入れ、日常を相対化して進行するため、彼女たちの心配事は必要以上に悲劇化せず、我々は絶えずまっさら状態でドラマの行方を見届けられるというわけだ。

f:id:chinpira415:20190511223217j:plain例えばクリオが逃げた男を訪ねるシーン。彼女は、ぬかるんだ田舎道をたどり、男の居場所をようよう探し当てて声をかけるが、いきなり酷い仕打ちを受ける。フツーなら、不実な男と憐れな女という悲恋の絵にハメるところだが、ここではそんな等身大の後日談では終わらない。男は、都会で真面目に働き信頼を築いた女へ、嫉妬と憎悪をたぎらせ必要以上に逆ギレする。格差への不満が、まず近な相手を捌け口にしてエスカレートする様に、やり切れなさが募った。

f:id:chinpira415:20190511224208j:plainそして終盤、映画はさらに大きくうねる。出産を間近に控えたクリオが、突然、政権への抗議暴動に巻き込まれてしまう。激しく暴徒化する若者の中には、怒りに狂ったあの男の姿も見えるではないか!恐ろしい勢いで生と死がせめぎあい、もはやスクリーンの中は濁流状態。冒頭の平穏な日常がここでイッキに裏返り、クレオは死産を告げられた―。

f:id:chinpira415:20190511230536j:plainに出迎えられ無事に退院したクリオ。離婚を決意し、夫の愛車を小型車に買い替えたソフィア。2人は子どもたちを連れて、心機一転の小旅行へ出掛ける。目の前に広がる海辺の景色は、2人の再出発を祝福するにふさわしい自然美の結晶だ。が、驚くのはまだ早い。ここでは明かさないが、全てのパーツが出揃った最後の最後に、映画はなお、究極の“光と音”で神話を編み、我々に贈り届ける。そう、この瞬間を目撃させるために『ROMA』は作られたのだ。

f:id:chinpira415:20190511230603j:plain旅から戻り、家政婦の毎日がまた始まる。留守番の同僚に「話がたくさんあるの…」と声を掛けながら、慌ただしく家事に勤しむクリオの姿が小さく捉えられ、映画は閉幕。平穏な日常とうっすら漂う無常観…あー、このエンディングがわたしはたまらなく好きだ!ハンパない傑作…早くも今年のナンバー1候補に決定だ。


『ローマ』予告編|Roma - Trailer HD

監督の幼少期の記憶を下敷きした自伝的作品『ROMA』。見終わってずいぶん経つのに、様々なシーンが蘇ってきて未だに興奮冷めやりましぇーん。キュアロン作品は『リトル・プリンセス』(’95)以来、リアルタイムで追いかけていて、タメ年ということもあり(!思い入れが強い作家の一人。女の描き方と美術まわりの趣味がすごーくイイのよね~。DVDで過去作品をチェックするなら、『大いなる遺産』(’98)が断然オススメ!劇中で使われるフランチェスコ・クレメンテの絵の数々、奥にも左右にも深い画面作り、緑を基調にした色彩設計…すべてブラボー♪余談ですが、監督のお顔も好みです♥

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『ROMA/ローマ』

2018年/135分/メキシコ・アメリ

監督/脚本/撮影  アルフォンソ・キュアロン
美術      エウヘニオ・カバレロ
衣装        アンナ・テラサス

キャスト    ヤリッツァ・アパリシオ マリーナ・デ・タビラ

※名演小劇場、伏見ミリオン座で公開中

 

PS 次回は5/28に更新します

 

クリスチャン・ボルタンスキー🌑Lifetime

フランスを代表するアーティストの1人、クリスチャン・ボルタンスキー(1944~)。ご存知ない方は、取り急ぎこちらのお姿をご覧あれ~。金子信雄じゃないですよ(笑)。

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いや、エロ名悪役&料理番長の金子信雄(1923-1995)は大好きな役者さんでしたが….。ボルタンスキー氏、なんだか雲水みたいな気を放っていませんか?只者ではない存在感です、超カッコい~い★ はいそこで、ボルタンスキー雲水が手掛けた日本初の大規模回顧展【Lifetime】を拝みに、大阪の国立国際美術館へ行って参りました!

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【出会いは~♪スロ~モ~ショ~ン】

その前に、ボルタンスキー雲水との最初の遭遇を思い出してみたのですが…出会いは~♪スロ~モ~ショ~ンby中森明菜でした(笑)。日本の美術館はけっこう彼の作品をお持ちなのですが、所蔵品展などで1点づつ、寸止め気味に目にしてきただけなので、時期も場所もはっきりしないのです(汗)。例えば『聖遺物箱(プーリム祭)』('90)という作品は、豊田市美術館にこちらがあり~の、

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原美術館にはこちらがあり~の…

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横浜美術館にも、同じように個人を特定できないくらい荒く引き延ばされた顔面UP写真とスポットライトで構成された『シャス高校の祭壇』('87)があるのです。

f:id:chinpira415:20190423220601j:plain強烈なインパクト。1度目にしたら瞼に焼き付きます。こうして画像で眺めるだけでも、美しくもあり、空恐ろしくもありで、背中がぞわぞわしてきませんか? 写真➡遺影、シンメトリー➡葬列、箱➡祭壇、ライト➡魂、むき出しの電気コード➡悲劇性…、ハレとケをごっちゃにさせながらの連想が止まりません。しかも、かつてどこかで味わったような感覚が押し寄せてきて、じぶんの記憶を紐解く旅に誘われます―

 

【なぜか既視感が…】

豊田市美術館はこんな標本箱も所蔵しています。初期の作品『罠』('70-'71)。ボルタンスキー雲水の作品だと知らずに眺めた覚えがありますね。剃刀や針が使われているところと意味深なタイトルで、身体が強張りつつも、どうにも目が離せなかったな―

f:id:chinpira415:20190424090025j:plain一つ一つ表情の異なる手作業の痕跡が妄想を膨らませるのか、子どもの頃に砂場に埋めたものを掘り起こして眺めたような既視感がありました。箱に収められると、それだけで日常から切り離され、ツイ凝視したくなります―。

 

【闇がともだち】

愛知県美術館では、リニュアルする前の最後のコレクション展で『影』('86)を目撃。これまたあたしが作ったんじゃないか?と、勝手に既視感を感じた影絵装置で(笑)、出来損ない加減が絶妙のスカルたちが風に吹かれて闇夜のダンス♫  こうして所蔵品だけを振り返ってみても、表出されたモノの姿かたちは様々ながら、常にテクはシンプルで間口が広い…ここが重要ポイントになってる気がしました。

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【Lifetime展】

そして今回、彼の50年にわたる創作活動をぞんぶんに一望できる回顧展で、ようやく寸止め鑑賞から脱却しましたあ~!驚いたのは、表現方法が想像以上に多様だったことと、作品全部がフルオーケストラのごとく共鳴しあって、会場全体が1つの荘厳なインスタレーション作品と化している点でした。

f:id:chinpira415:20190426211321j:plainなので、ここでは多くを語りません。実際に足を踏み入れ、じぶんと作品がどう化学反応するかがすべてです。できるだけ予備知識を入れず、夜空を眺めるように、スッと訪れてみてください。間口が広い割には、“単純に好き嫌いだけでふるいにかけておしまい”…とはなりませんよ。非常にスリリングな体験が待っています。

f:id:chinpira415:20190426214217j:plainちなみに、我々大人美術部の3人の感想も「今まで見たインスタレーションの中で一番魅かれた!」と、逆に「ちょっと怖くてダメだった…」の、真っ二つに分かれました

f:id:chinpira415:20190426215143j:plain冒頭で取り上げた美術館所蔵作品も登場しますが、いままでに単品で遭遇した時の印象と様変わりして映るのは発見でしたね。こんな風に繰り返しに耐えられるのは、きっとうーんと遠いところを起点にして創作しているからなのでしょう。

f:id:chinpira415:20190427095048j:plainだから、作品の前に立っても、モノと対峙してるかんじにならないのです。むしろ物理的な強度は後ろに下がり、何億光年も前の宇宙と、何億光年も先の宇宙のあわいの中を、ひとりぼっちで漂流しているような感覚に陥ります―。

 

【シンプルで大胆】

抽象的な言葉ばかりを書き連ねてしまいましたが(汗)、ボルタンスキー雲水の制作姿勢はとても具体的なんですよ!拍子抜けするくらい具体的でシンプルなの。こちらの右側『アニミタス(チリ)』('14)という13時間16秒のなっがーい映像作品は、チリのアタカマ砂漠にカメラを据え置き、数百もの風鈴が風になびく光景をエンエンと綴っただけ。スクリーンの前には干し草が敷かれ、乾燥した土地を想起させますが、とはいえあからさまにひとつの仕掛けとして展示してますよね?

f:id:chinpira415:20190427100046j:plainなのに、イマドキのデジタルアート体験とは真逆の着地に至るのです。おそらく鑑賞者のまなざしが、じぶんの内へ内へと向かうからだと思います。ボルタンスキーは、チリの巨匠パトリシオ・グスマン(1941-)の傑作ドキュメンタリー映画『光のノスタルジア('10)を見ているらしいのですが、いやー、確かに両作品は共振してる!その呼び水となっているのが日本の風鈴とは!…実に感慨深かったです。


南米ドキュメンタリーの巨匠パトリシオ・グスマン『光のノスタルジア』『真珠のボタン』DVD発売!

 そして、あたしがダントツにコワかったのが『黒いモニュメント、来世』('18)です。そもそも来世という文字を、こんなにマジマジと眺めることはないですよね(汗)。どちらかと言えば、来世=浮世離れしたのんきな未来図を思い描きません?ところが迷路のドン付きに赤く浮かび上がる電飾は、非常口の誘導灯みたいに即物的で…慄きました!

f:id:chinpira415:20190427131610j:plainそう、虚を突かれて思わずビビったんです。ただ、“まだあたしは向こう側から呼ばれていないなあ…”とも思いましたね。現世での修行が足りんと―(笑)。

 

【来世のイメージとは?】

 今まで考えたこともなかった来世。そこで周囲の人たちはどんなイメージを持っているのか尋ねてみたら―。例えば50代おっさんの場合…1人は「なんとなく,かぶと虫になるような気が…」とつぶやき(汗)、もう1人は「来世はないようにも思っています。もし戻ってきたとしても、もうその辺の雑草で良いや。風に吹かれてフワフワとしていれば…」とのこと(笑)。どちらも人間稼業は店じまいするってことね~♫

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マブダチFは「来世と聞いて、すぐにM田S子を思い出した」だって(爆)。あたしが加工した文字を使って、懐かしの名台詞が今蘇るぅ~!「今度生まれ変わったら、いっしょになろうねって言いました…(嘘泣き)」。この画像、女性自身に売り込みたいね。

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30代美人ママMはさらにぶっ飛び!「はあ?なんで来世が炊飯器なんだよ~!」と、念のためにヒアリングしたら、「キッチン全体を撮ろうと思ったんだけど、なんか絵にならないなぁと思って。まぁ、炊飯器が絵になる訳でもないんだけどね」…もはや禅問答の域か…意味がわかりません(爆)。昔から白飯好きだとは知っていたけど…(汗)。

f:id:chinpira415:20190427222945j:plainそして最後は画家のマブダチAのご登場★ さーすがー、アーティストの表現はキレがいい!逆さ文字にも、うふっ♫ もうひとつ、別の世界の扉が開いていますね。ある意味、言葉の意味を一番まっとうに捉えているかも。

f:id:chinpira415:20190427223811j:plainこうして並べると素人衆の出たとこ勝負感も捨てがたいわけで(何より笑える!)、みなさま方の乱入あってのちんぴらブログでございます(ぺこり)。おっとー、いかんいかん、ボルタンスキー雲水のことを忘れそうになった(爆)。

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図録を読んで初めて、彼のフツーではない幼少期体験などを知りましたが、「死者に捧げる儀式を行うことが、芸術家としての仕事だと思っている」の一言に、すべてが集約されています。大阪の後、国立新美術館長崎県美術館3館を、1年に渡り巡回するLifetime展。会場ごとに本人が構成を変えるらしいので、東京へも足を延ばしてみるつもりです。機会があればあなたもぜひ!

 

PS 次回は5/13に更新します

 

鶴舞公園―御開帳 🏢 編

名古屋市公会堂の大規模改修工事がついに終了!

鶴舞公園内にある名古屋市公会堂が、先月2年ぶりに復活しましたあ~、パチパチパチ♫ ぱっと見、どこが改修されたかわからない?いえいえ、れこそが何より重要公会堂の開館は1930年10月10日。検索したら昭和初期の画像が出てきましたが、ほら、往時と比べてもほとんど変わらないでしょ。90年もの間、同じ場所で同じイメージを投げ掛け続けてきたことに大きな意味があるわけです。だって他に置き換えできない時間が内包されているんですからね。

f:id:chinpira415:20190407140906j:plainとはいえ、公会堂の前を毎日歩いて通勤する身にとって、平時イメージを放出していない状態のこの2年は、意外と長かったんですぅ…。傷口が治らなくてずっとバンドエイドを貼ってるかんじ(汗)。「あー、なんかモヤっとするなあ…」という気持ちで見てました。ここでちょっと時間を巻き戻し、工事の様子を振り返ってみましょう。

f:id:chinpira415:20190407212546p:plainまず、建物を取り囲むパネルが立てられた後、2017年6月頃から足場が組まれました。

f:id:chinpira415:20190407145611j:plainで、「モヤっとする」なんて文句言いながら、実は足場が伸び進むたびに、妙にテンションあがっちゃって(爆)。だってこんな光景を目にしたら、もうブリューゲルを連想するしかないでしょう~🔔

f:id:chinpira415:20190407150552j:plainほれ、これですよ、旧約聖書をモチーフにしたあのバベルの塔(小バベル)』👍

f:id:chinpira415:20190407151240j:plainもしかしてこのまま2年間、毎日こ~んな作業風景の数々が、お目にかかれるのかなあ~なんて、ツイ涎を垂らしそうになりましたが…んなわけねーだろ!ですね(笑)。そもそも雲にまで届かないし~。しかも、ちんぴらの妄想を打ち砕くように…

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呆気なく、バンドエイド幕がするすると下りはじめ―

f:id:chinpira415:20190407154007j:plain内と外が几帳面に仕切られて行きました。各階の出入り口まで…妙にカワイイ(笑)。

f:id:chinpira415:20190407154048j:plainあれよあれよという間に見事に梱包。全面的にバンドエイドが貼られ、いわば強制療養です(涙)。素朴な疑問=グレーと青の使い分けに理由はあるのか?…未だに謎です。

f:id:chinpira415:20190407153923j:plainでもこれまた不思議なもので、いっそ全部をしれーっと包み切り、そこにイデオロギーの塗装を施せば、一発逆転でARTにも成り得るわけで…。はい、今度はクリスト『梱包されたライヒスターク(帝国議会議事堂)』を連想しちゃいマシタ★ 

f:id:chinpira415:20190407160616j:plain公会堂だって、昭和天皇御成婚の記念事業から始まり、第二次世界大戦中には高射第二師団司令部として利用され、戦後はGHQに接収されて、連合軍兵士専用の劇場として使用されたこともある歴史的スポットですからねズバリ、あたしたち以上に、世の移り変わりを目撃してる証言建造物。まあでも、ARTだろうが長期工事だろうが人間のやることなんてどこ吹く風~、カラスさまの縄張りに変わりはないようです(笑)f:id:chinpira415:20190407162721j:plainこの2年、通り抜けする度に目にしたのは、一反木綿顔したシートだけ。そういえば台風の時はさすがにハラハラしちゃったなあ。ところどころでろ~んと外れて、乱れ髪に…(汗)。それでも強風に吹き飛ばされることは一度もなく、技術力に感心しちゃった!去年の11月には足場が外され、遂にキレイキレイになった素肌でご登場です

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年末には固く閉ざされたパネルが解体され、いよいよ仕上げ段階へ入りました!

f:id:chinpira415:20190409223744j:plainおー、3連アーチとの久々の対面に胸が高まりマシタ…ドキドキ😊

f:id:chinpira415:20190409224200j:plainちなみにブリューゲルは、一番下の階をこんな風に描いてて…くどいって(爆)。

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玄関横のお気に入りの松が、ボーボーになってたのは笑ったけど、各種サンダーバード重機が出動して(笑)、駐車場もリニューアルへダッシュ🏁

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年明けの2月には、玄関前のレンガの張り替えです。

f:id:chinpira415:20190409225337j:plainそして再会の2週間前には、植木がきりっと散髪!やっぱいいなー、この書割りのようなしつらえと、引き直された駐車ラインの白が“松の廊下”を連想させるぅ~

f:id:chinpira415:20190409231712j:plainはい、こちらが蘇った名古屋市公会堂正面です。これですよ、これ!グッジョブ👍

f:id:chinpira415:20190412234219j:plainいちおう改修前と後を比較。ほとんどお姿が変わらない分、1Fの外壁の汚れが磨き落されてピカピカになった効果がよくわかりますね。タイルの張り替えは部分的なのかな?

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工事中、立ち入り禁止用のバリケードが、“くまモン”だったのには納得いかなかったんだけど(なぜ他県のご当地キャラ?)、現場解体後はアヒルに代わってました(笑)。

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夜のライトアップもいいっすね~。まだ中には入っていないけど、大物女性アーティストのコンサートが似合いそうな…ダイアナ・クラールあたり、いかがでしょうか~♪

f:id:chinpira415:20190413003004j:plainでも、公会堂の正面玄関を見るたびにあたしが思い出すのは、外タレコンサートでも桜まつりでもなく、自衛隊市ヶ谷駐屯のバルコニーでゲリラ的に演説し、その後割腹自殺を遂げた三島由紀夫の事件なんです。建築様式が似ているせいもあるのかな…。1970年11月25日、当時9歳だったあたしにはすべてが衝撃的で脳裏に焼き付いてます(汗)。

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そうそう余談ですが、同じ年のマブダチたちが「なんで、鶴舞中央図書館も復元で残さなかったんだろう。大好きだったのにぃ~」と文句タラタラで、ひどく悔しがってました。場所の記憶は強い心の拠り所になるってことですね。年をとると余計に―(笑)。

 

 PS 次回は4/28に更新します

勝手にシネマ評/『運び屋』('18)

薬物使用で逮捕された人気ミュージシャンの映像が、派手に世間に流れていた3月某日。「 “伝説の運び屋”の正体は90歳の老人だった」―と、謳い文句が躍る映画を見に行った。

f:id:chinpira415:20190324225121p:plainクリント・イーストウッドが監督・主演する新作『運び屋』(’18)だ。大いに笑い、めいっぱい楽しませてもらった。―が、本作は、実際にあった麻薬密輸事件の映画化だという。考えてみたら日本の騒動と源泉はいっしょなのだ。いや、リアル犯罪として比較したら、そのウン百倍もタチが悪いのは明らか。まったくもって言い逃れできない真っ黒案件である。なのに、気持ちよく手を叩き、快哉まで叫んでしまうのだから、困ったものだ(汗)。

f:id:chinpira415:20190324225442j:plain改めて思った「映画」という装置が、アウトローを物語るとき、いかに最大級の効果を発揮するかを!劇場の暗闇に身を沈め、世の中からはぐれた輩どもの輝きをこっそり拝むと、しょぼい毎日がいきなり活気づく…あれですよ、あの愉悦!

f:id:chinpira415:20190325085618j:plainじぶんを大きく見せたい…それも反体制を気取って…という青臭く後ろめたい欲望に、映画はタイムリミット付きで個別に奉仕してくれる。それゆえ我々は、錯覚の時間内で、日々の規範からより遠いところまで運ばれたいと切に願うのだ。真っ黒だろうが真っ白だろうが、左だろうが右だろうが、なんだってかまわない…トンでもないジャンプを体感させてくれ!と(バンジーだから紐ついてるしね 笑)。

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そして文句なくトンでもないジャンプを味わいましたよ~。なにせ90歳のジジイのわんぱく体験にお付き合いするのだから、全てが未知との遭遇(笑)。映画はイリノイ州のへんてこな花畑のシーンから始まった。「なにこのヨレヨレの花?もしや薬物栽培でもしてんの?」などと、ぼーっと眺めていたら、名前も知らない花より、さらにヨレヨレシワシワ猫背の御大イーストウッドが、テンガロンハットではなく、麦わら帽子を被ってひょいっと登場★荒野をさすらい続けたカウボーイの終着点は、土と共に生きる園芸家なのか~と苦笑い。一瞬、デレク・ジャーマンみたいな求道者像を思い浮かべるものの、すぐさま撤回(笑)。

f:id:chinpira415:20190324230108j:plainヨレヨレの花は、1日だけ開花するデイリリーというユリ科の一種で、イーストウッド扮するアールは、移民たちを使ってこれを手広く栽培し、ひと財産を築いた成功者だった。しかも、枯れても山のにぎわいどころか、軽口をたたきながら正装して品評会に繰り出す様は、まるで花道をねり歩く歌舞伎役者のごとき艶姿。その有頂天ぶりが可笑しいったらありゃしないのだ。ところが洋の東西を問わず、ジジイのええかっこしいを「馬鹿だね~」と笑って許せるのは、他人様ゆえのことらしい。家族をないがしろにしてきたカッコつけ男は、ヨメと娘から見放されて久しい憐れな老人でもあるのだ。

f:id:chinpira415:20190324230320j:plainさて、外堀から伺っているだけでも、『運び屋』がどんな展開になるかは、概ね予測できるだろう。デイリリーの生態のようにアールは早々と萎れ、転落街道まっしぐら。艶姿から12年後の2017年、商売は傾き、自宅と農園を差し押さえられ、手元に残ったのは古ぼけたフォード1台だけ。無論、しょげて帰れる場所もない。人生の高低差を味わうのはヒーローの常だが、口の減らない90歳の老人に、一発逆転の打ち手など用意できるはずもなく、はてさてどうしたものか―。

f:id:chinpira415:20190324230551j:plain「町から町へと走るだけでカネになる」―。無違反運転で国中を旅してきたのが自慢のアールは、そう持ち掛けられてテキサス州エルパソへ。運転免許返納に怯える日本のシルバードライバーからすれば、ここぞとばかりに自尊心を取り戻せそうなキャリア・パス図だが(笑)、案の定とびっきりヤバイ奴らがお出迎えだ。ただし、アールが出没する先は、いつでもどこでも花道に早変わり♪じぶん十分の立ち回りを披露なんかして、退路を断たれたジジイに怖いものはない

f:id:chinpira415:20190324230859j:plainで、中身は見るなと言われた荷物を、鼻歌交じりに指定の場所へ運べば…アラ不思議。ダッシュボードから大金入りの封筒が、手品みたいにでてくるではないか!いやー、やっぱ現ナマのパワーはすさまじい。アールの皺くちゃの手で握りしめると、かえって札束にナマナマしさが割り増しされ、妙に興奮しちゃったわよ~。というわけで、取り急ぎこれで孫娘の結婚披露宴代はゲット。汚名返上&家族の信頼回復に一歩前進か。

f:id:chinpira415:20190324230755j:plainこうして超お手軽&高額バイトに身を乗り出したジジイは、運び屋稼業に精を出し、次から次へと失くしたものを買い戻す。そもそも根がええかっこしいだから、これを機に老後を手堅く内向きに生きようなどと改心するわけもなく、稼ぎは周囲に大盤振る舞いし、踊りまくりモテまくり。世間ではよく「金のない年寄りは誰にも見向きもされずに孤独」と、教訓めいたことを言うが、あぶく銭が人気者の座を保持するための運用費に充てられる絵は、大ウケしつつ、どこかウッスラと侘しさが漂うようにも映る。

f:id:chinpira415:20190324231631j:plainもちろんイーストウッド映画だから、老人に金をチラつかせ、家族との和解の果てに大団円…には至らない。アールに絡ませるのは、家族は家族でも麻薬密輸元締め一家のボスや、組織に忠誠を誓う手下の若造や、はたまた赴任したてのエリート麻薬捜査官という顔ぶれで、要は背景の白黒に関係なく、男同士のジャレあいこそがヒーローの現役感を司るパワー源だという仕立て。女どもにすまないと詫びるしぐささえ、様式美の内なのだ。

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「タタ(じいさん)」の愛称で呼ばれ、運び屋記録を更新するほど振り切った仕事ぶりを披露したアールは、映画ならではの血統書付きアウトロー。カーラジオをBGMに、自由気ままにオレサマの流儀で浮世を疾走する一方で、朝鮮戦争の退役軍人だという経歴が終始通低音として鳴り響く。具体的にはほとんど語られないが、だからこそ、見たくないものを嫌というほど目撃してしまったであろう老人の虚無感が際立って見えた。

f:id:chinpira415:20190325085022j:plainそうイーストウッドが作る映画は、ある意味、いつだって形を変えた戦争映画。そして彼が演じるヒーロー像には、常に鎮魂のしぐさが刻印されている。折れ曲がった背中で、ダーティーワードを連発する孤高の狂想老人に、男たちが惚れるのもわからなくもない(笑)。イーストウッドはしぶとい。まだまだ飛べるな。この先も治外法権でジャンプし続けていただきましょう!


映画『運び屋』特報【HD】2019年3月8日(金)公開

『運び屋』

2018年/116分/アメリ

監督/製作/主演   クリント・イーストウッド
撮影      イブ・ベランジェ
音楽        アルトゥロ・サンドバル
脚本      ニック・シェンク

キャスト    ブラッドリー・クーパー ローレンス・フィッシュバーン

 

PS 次回は4/13に更新します  

橋本治は永遠にえらい!

2019年1月29日 作家の橋本治さんが亡くなってしまいました😢。享年70歳。訃報をネットで目にしたとき、ザーッと血の気が引くのが、じぶんでもありありとわかりました。この30年、橋本さんの文章に、何度シビれ、大笑いし、自由を味わったことか―。

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橋本治という名の金脈は、「量」「幅」「質」そして「奥行き」までもスゴ過ぎて、一生賭けて探索する宝の山だと勝手に思っていた節があります。あたしが呑気に3合目あたりをうろついていても、橋本金脈は「減らない、錆びない、逃げ出さないから大丈夫。お愉しみはずーっと続くよどこまでも~♫」と、信じ切っていたんです。どうしてそう確信していたのか…。尋常じゃない仕事量をはじめ、病気のことも公言されていたのに、それでもなぜかフツーの人の身に起こるシンパイごとを、橋本さんには結びつけて考えようとしなかった…「いつまでもあると思うな親と金と橋本治だったなんて。

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橋本さんの文章に魅かれたきっかけは、1989年に文藝春秋から創刊された硬派女性向け雑誌「CREA」での連載『絶滅女類図鑑』だったと思います。女たちの頭上を、イヤミと皮肉タップリに、まわりクドく旋回し続けるようなめんどっこいエッセイで、当時の女性誌にはまずお目にかかれない代物でした。難解な言葉など1個も出てこないのに、問題定義の連続技に我が脳ミソはとっ散らかり、ぜんぜんスッキリしない…(汗)。ただ、見過ごせないものが蠢いていることだけは、しかと感じとってしまったのです。

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世の中が、女子のワガママぶりを無視できなくなり、女子の扱い方に幅をもたせるフリをし始めたとき、橋本さんは赤い絨毯でもてなすどころか、当の女子たちでさえ無自覚な本質をえぐり、白日の下にさらしてみせました。しかも、オヤジの本懐的な物言いではなく、とうの昔に終わった男社会の現状を読み解いた上での投げ掛けだったから、余計に驚きました。13歳年上のこの人はいったい何者?と、自然に興味がわいたのです。

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こうして橋本さんの教養の厚みに圧倒させられる日々がはじまりました。『絶滅~』などの論評がB面だとしたら、同じ時期のA面では、古典の現代語訳をガンガン披露する橋本金脈。橋本さんは、滔々と流れる日本の歴史の末端に、じぶんの日々の営みも地続きで流れていると、フツーに考えてしまえる人だったような気がします。あたしも意を決し、95年の年末から文庫化された『窯変 源氏物語を毎月購読。1年かけて全14巻と番外編『源氏供養 上・下』を読了し、忘れられない源氏イヤーとなりました。

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実は『窯変ー』の「薄雲(うすぐも)の章、光源氏最愛の女性・藤壺が亡くなるくだりに差し掛かった96年の春と、傍迷惑な軟弱BOYが自滅する「柏木(かしわぎ)の章を読んでいた同年の晩夏に、親しかった友人が立て続けに急逝…。我が人生で最も足元が揺れる日々の中にいて、支えとなっていたのが『窯変ー』でした。特に源氏の死後を描いた宇治十帖、「浮船(うきぶね)の章には鳥肌が立ちました。『アンナ・カレーニナ』は、アンナの死後にデカイ話へ変調して爽快でしたが、橋本源氏は終盤になるにつれ冷徹なリアリスト目線が冴えわたり、雪の女王みたいな振舞いで超カッコいいんです!

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僕には、有名な古典をわかりやすくポピュラーにしようという発想は、全然ない。原典が要求するものしか書かない。古典に対する変な扱いや、変な迷信を取り除きたい、ただそれだけのこと” 枕草子から始まった古典シリーズは、徒然草古事記平家物語etc…と続き、一人の作家の仕事とは信じがたい偉業を成し遂げます。そこにさらに輪をかけ、美術分野にまで分け入って『ひらがな日本美術史 1~7』を発表。「芸術新潮」での連載は立ち読みで済ませ➡本にまとまったら買うを繰り返しました(笑)。

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『窯変ー』さえ、気に入ったフレーズが出てくると傍線をグイグイ引いたあたしですから、教科書以上に読みふけった『ひらがな―』シリーズなんて、自慢じゃないけどカンペキにじぶん仕様に使い込んでます(笑)。実物と遭遇するチャンスがあれば、見る前に読み、さらに見た後でまた読みなおす…生涯テキストの決定版となりました。橋本さんの美術評は誰のものとも似ていません。いや、美術に限らずすべてにいえることですが、対象と対象の背後にたなびく周辺事情まで事細かに思考をめぐらせ、まるで自ら時空を超えてキャッチUPしてきたかのごとく、言葉を紡いで指し示すのです

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例えば橋本さんは、長谷川等伯の国宝『松林図屏風』(六曲一双)について、この右隻の左端にわだかまった冷たい空気の流れがあきらかにあると書いています。そしてここからの展開に頭クラクラ~(汗)。なんとこの屏風から、「ジャズのリズムが聞こえる」というオチへ淀みなく語り尽くすのです!単なる“言ったもんが勝ち”妄想じゃないんですよ。めちゃロジカルなの~。ウソだと思うなら、今すぐ『ひらがな日本美術史3』を求めて本屋へGOしてください。目からウロコが落ちまくりますよ★

f:id:chinpira415:20190310203751j:plainそして『ひらがな―』シリーズで最も影響を受けたのが桂離宮の章です!橋本さんが、桂離宮へはじめて足を踏み入れた体験記にいたく感動し、ずーっとずーっと行きたくてしょうがなくて、2009年秋、遂にお出かけ~♪なんと贅沢にも旅のお相手は中野翠さん(30年来の仲!)★ふたりとも橋本さんの解説文をコピーして持参してましたね~(笑)引き戸の向こうとこちらの浮世は全くの別世界…橋本さんに導かれて体感した桂離宮は、あたしにとって永遠にスペシャルな空間となりました(いつか書きます!)

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橋本さんの訃報を知り、すぐに本棚から取り出して再読したのが『ふたりの平成』('91)と橋本治内田樹('08)。橋本さんはもう同じ空の下にいないんだ…と思ったら、たまらなく寂しくなり、今にも生声が聴こえてきそうな2冊の傑作対談集に縋りました。じぶんの好きな書き手同士が「ほら、やっぱり水面下で繋がっていたのね!」と判明するときほど、至福の瞬間はありません。橋本さんは基本ひとり遊びの人でしたが、中野&内田ご両人に対しては「おまえら大好き!」と心から打ち解けていた気がするのです

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同学年の橋本さんと中野さんが語り始めると、そこは学生街の喫茶店に早変わり~♪“願わくば元号が変わる今、“スカートをはいた男の子とズボンをはいた女の子”に、もう一度誌面で再会してほしかったです(涙)。一方、橋本&内田談義は部室ノリ。誰もまともに論じてこなかった橋本先輩の天才ぶりを、内田後輩がそれはそれは丁寧にヒアリングして我々に補足解説…フト高畠華宵の絵なぞ思い浮かべてしまいマシタ(笑)。

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最後は小説家 橋本治について。最も衝撃を受けた1冊は…2009年の『巡礼』(新潮社)ですね。ゴミ屋敷にひとりで暮らす初老の男と、戦後日本の繁栄の道のりを交差させた橋本さん渾身の一作に、身も心も奮えました。ここで描かれる生真面目で孤独な男の生涯と、時代との乖離の手ざわりは、現代をも射程に収めていて恐ろしくリアルなんです。

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「なぜゴミ屋敷の主になったのかー」を読者に想像させること…。橋本さんは、誰も見向きもしないものから、微かに立ち上がる声なき声を感じとり、じっと聴き入ってしまう人でした。そんな純粋な振る舞いが『巡礼』には凝縮されていた気がします。翌年に刊行された『橋』『リア家の人々』と、ぜひ併せて読んで下さい。平成が終り新元号に変わる今、「昭和」と独りで対峙した橋本さんの小説を紐解くことには、大きな意味がありますf:id:chinpira415:20190308230606j:plain亡くなる直前までアクセルを踏み続けていた橋本さん。去年遅ればせながら古事記に耽り、橋本さんが『草薙の剣』(新潮社)を出したと知って、「なんてタイムリーなの!」と小躍りしたのに…ごめんなさい、未だに読み逃しています(汗)。その『草薙ー』は野間文芸賞を受賞。祝いの品に原稿用紙を希望し、「原稿用紙を前にすると幸福になる人間でした」とコメントを寄せたとか。あー、しみじみ泣けてしまいます。


[作家自作を語る]『草薙の剣』橋本治|新潮社

でも橋本さんはたくさんの作品を遺してくれました。なにせ橋本金脈は、ボケボケしていたら一生かかっても踏破できないくらいのスケール、ヤバイです(汗)。この借金を踏み倒すことなく、これからもコツコツ読み続けて行きたい…だってこんなにあたしを奮い立たせ、かつ自由にさせてくれた師は他にいませんから。そう、橋本治は永遠にえらい!―合掌

PS 次回は3/27に更新します

 

【ヘビーローテ調査】インスタント麺🍜

ちんぴらを虜にしているNHK朝の連ドラ『まんぷく🍜 福ちゃん&萬平夫婦は思考錯誤の結果、ついに世界で初めてインスタントラーメンを完成させましたあ~パチパチパチ~♫ この人類史に残る発明品が発売されたのは1958年。1961年生まれのあたしにとっては、まさに子ども時代のソウルフードで、当時は「何が食べたい?」と尋ねられたら、合言葉のごとく「ラーメン!」とリクエスしてマシタ😊

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お昼ごはんや、おやつとして作ってもらった記憶が濃いので、ウチではインスタントラーメン=子どもの食べ物として導入された気がします。あと、自営業だったから、子どもが喜び&時短も叶う魔法の一品は、猫の手も借りたい母にとっては救世主だったんじゃないでしょうか。―ってことで、インスタントラーメンにまつわる逸話は際限なくある気がして、いつものごとくマブダチたちにヒアリングしてみましたよん♫

 《貧乏下宿時代の友》

▶あたしのこんなムチャ振りを聞いて、何とMさんは、最近のインスタ麺事情を把握しようと、目についた袋麺を大量に買い込んで試食に明け暮れてくれました!福ちゃん&萬平夫婦並みに研究熱心ですわ~♥ その結果蘇ってきたのは…高校生から親元を離れて暮らした青春時代の欠かせない生活源=インスタントラーメンの記憶★

f:id:chinpira415:20190217124047j:plain▶仕送りが届いたら真っ先にラーメンを箱買いして、育ち盛りのお腹を満たす助けとしてたらしいです(涙)。ヘビーローテ銘柄はサッポロ一番 塩ラーメン』。具材は、これまた“貧乏の友”のもやしくんで、卵が入れば超贅沢だったとか。料理テクもない若かりし頃のサバイバル術…今も昔も変わらないやりくりかもしれませんね👍

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 《インスタラーメン変遷物語》

▶あたしのくだらない調査に、毎回脳ミソをフル稼働させてくれるKちゃんは、1個だけ選ぶとなると…「結論出して作って写真も撮りましたがイマイチなんで、もう少し考えます」とさらに1週間熟考(爆)。「色々食べてきましたが、袋麺なら結局、サッポロ一番塩らーめんチキンラーメンサッポロ一番みそラーメンサッポロ一番しょうゆ味日清焼そばの順でしょうか。サッポロ一番強し!!

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▶「作るのが面倒なので基本的に具材は卵のみ。その時の気分によって、そのままか溶き卵にするかの違いくらいです。ちなみにチキンラーメンも必ず鍋で煮ます。」「カップ麺なら、一時期カップヌードルシーフードヌードル(正式名称!)にどっぷり浮気してましたが、やはり本命、カップヌードルに戻りますね。ですが、ボクが今回一番にあげたのは、焼そばU.F.O値段の違いがあまりないので、大体大盛を購入。

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▶「そして、一平ちゃん夜店の焼イメージで普通のマヨネーズをマヨビームに。酸味が効きすぎておいしくないんですけどね…(汗)」。だって(爆)。イメージだけに使われた一平ちゃんには気の毒ですが、日本男子には「ラーメンの歴史あり」ですね👍

 《こだわりの日清焼きそば》

▶マブダチMのダンナKさんは、どんなに上等な晩餐で「美味しかった~おなかいっぱい!」と唸っていても、「あとで日清焼きそば食べるよね?」がキマリ文句(爆)。で、本当に嬉しそうに作ってくれて、しかもツラれてみんなで食べちゃうという…メタボ爆弾投下男です(爆)。安藤百福も草葉の陰から泣いて喜んでいることでしょう~♪

f:id:chinpira415:20190219221307j:plain▶Kさんこだわりの作り方は、具材なしのシンプルスタイル。そして、袋を開けた時に折れた細かい麺は入れないこと(セコさ禁止)。さらに、粉ソースを投入する前にごま油を数滴たらすことで、香り付けと麺が絡まない様にするんだって~。最後にマヨネーズとカラシを添えればサイコーのひとりメシ★ヨメが外出してる時の至福の一時とか😊

f:id:chinpira415:20190219222306j:plain▶インスタ麺に具材を入れる派のあたしとしては、スナック菓子みたいで納得できませんが、確かにこのごま油テクはなかなかオツ。ヨメのMが握る塩むすびと一緒に食べれば無限ループ!ちなみに付属の青のりは色褪せするから買いだめ要注意だって(爆)。

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 《ザ・家庭の味インスタ麺》

▶またまた登場サッポロ一番 塩ラーメン』料理上手なYちゃんも、子供の頃によく食べた味が今も変わらず定番なんだって。「子供が産まれてからも野菜がたくさん食べられるので、サッポロ一番の塩かみそを、たまにお昼に食べるよ~」「ウチでは野菜の他に、チャーシューではなくハムとかまぼこを使い、食べる時にラー油をかけまーす♫」

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▶う~ん、家庭ラーメンの見本のような出来上がり!心がほどけるぅ~。でも娘のSちゃんはチキンラーメンの何も入れずが一番お好きとか(爆)。どうやら男子と子どもの舌には具材のうま味は不要みたい。濃厚スープと麺をシンプルに味わいたいのかな~。

 《タイ発、インスタ麺事情》

▶なんとダンナの転勤でタイで暮らす幼なじみのRも、サッポロ一番 塩ラーメン』がヘビーローテ銘柄。「私は具なしの素ラーメンに溶き卵を入れてかき玉風にして食べるのが好き♡ 息子は茹でた麺を湯切りして、オリーブオイルとスープの素をまぶして食べるのにハマってました。でもバンコクでは買えたけど、田舎に引っ越したら1番大きなスーパーにも置いてなくて、その代わり出前一丁がデバってます」

f:id:chinpira415:20190222223336j:plain▶「屋台や麺のお店では、麺とスープの種類を自分で選ぶんだけど、麺の選択肢の中にはインスタ麺もあって、おばちゃんが袋から出した麺を茹でながら「具は何入れる?」と聞いてきてこんな感じのものが出来上がってきます(次の写真)1袋20円のインスタ麺が200円くらいのご馳走になるの。

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▶「タイで麺類は、音を立てて食べない事!というマナーがあります。必ずレンゲに一口分乗せてから口に運びます。タイで一番有名なインスタ麺・マーマートムヤムクン味を作って、『まんぷく』の福ちゃんが試食する時みたいにイッキにすすってみたら…むせました^^; 音を出してすすると行儀が悪い&すすると唐辛子でむせる という理由もあったりして…笑」

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 《休日にあったか麺》

▶寒空の日曜日。東京で暮らすYちゃんからラーメンレポートが届きました✍「わたしの好きなラーメンは、じゃ〜んサッポロ一番 みそラーメン』でーす」「愛知生まれとしては、やっぱ味噌☝️ 昔食べてた味が好き😍なんだか落ち着くのよねー」色とりどりのトッピングは、もやし、コーン、ゆで卵、ネギ…ワカメが入れば200点満点か(笑)

f:id:chinpira415:20190222230042j:plainカップのお気に入りも送ってくれたよ。カップヌードル チリトマトヌードル。「最初食べた時は…ん?どうなんだ、と思ったけど、あと引く美味さがあるんだなー。今日のお昼に食べました。大満足✋️ 寒い一日だったけど雪が降らなくてよかった~」

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 《夫婦と言えども自己主張》

▶ご近所マブダチK&F夫婦。ダンナKのヘビーロテは日清のどん兵衛 きつねうどん』カップヌードル。ほぼパチンコの景品でゲットしてるらしいです(爆)。ヨメのFはアルマイトの両手鍋で作る寿がきや みそ煮込みうどん』(卵投入は絶対!)とカップヌードル カレー』「なぜかカップ麺は、マイ箸ではなく、割り箸で食べようとしちゃうな〜」…ほほーっ、やけに説得力がある発言(笑)。

f:id:chinpira415:20190223000414j:plain▶Kは食うもんがない時のお供で、Fは誰もいない休日のひとりの時間に食べたくなるみたい。「子供の頃、TVで松竹新喜劇を見ながら、お昼ゴハン味噌煮込みうどんを食べた印象が強いわ。藤山寛美のアホぼんの笑いと人情物に泣いたりして(笑)。小学校高学年から中学生くらいかなぁ…なつかしー。」 そう、ラーメン談義に郷愁は欠かせないアイテムなんだよね~。

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 《保守と革新のインスタ麺抗争》

▶マブダチKんちのインスタ麺ストック事情は、絶えず激しく選別が繰り返され、まさに仁義なき戦い~下之一色死闘編です(汗)。2019年2月現在、ヘビーローテの御三家として、辛うじて生き残っているのはこちら。「昔から変わらないのが寿がきや みそ煮込みうどん』母親はいろいろ具材をいれるけど、私は何も入れないか入れても卵くらいかなぁ…。母親はそれが嫌いなようで、すすっていると小言を言われる」だって!

f:id:chinpira415:20190223113343j:plain▶男子でも子どもでもない、大人の女子でも具ナシ派はおられましたね…仮説失敗(汗)。「カップ麺の最近のお気に入りは日清のどん兵衛かき揚げ天ぷらうどん』。天ぷら、よくできてます。ひたひたにしていただきます。一味唐辛子も、たっぷりかけて。」と、力説していたその舌の根も乾かぬうちに「スーパーアオキでチキンラーメン アクマのキムラー』見つけた~。スピンオフ版だわ~」との報告が―(爆)。

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▶どうやらラーメン戦争・仁義なき戦いに終わりはないようです(汗)。食品メーカーのみなさま、さらなる企業努力をお願いいたします(ぺこり)。

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 《懐かしの味決定版》

▶さてオオトリはちんぴらの一品…ですが、ヘビーロテでいえば、やっぱ寿がきやみそ煮込みになっちゃうんで(汗)、ここはイッパツ初心にかえり、今までで一番好きだったインスタ麺を選んでみましたエースコックのワンタンメン』ですぅ~。斜め切りにしたネギは一緒に煮込み、半熟ゆで卵と海苔をのせて完成♫久しぶりに食べたけど、つるりんワンタンがうっまーい★ぶたぶた、子ぶた~♫

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 ▶ワンタンメンも発売から55年だって!目下『まんぷく』は、ライバル商品がガシガシ登場して大騒動ですが(笑)、このしのぎの削り合いが、結果的にラーメンのクオリティを飛躍的に高め、グローバル食品の代名詞になったってことなんだろうなあ。

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▶それと、結局みんなのお気に入り銘柄は、ロングセラー商品ばかりでしたね~。いかに子どもの頃の刷り込みが大きいかもわかったわ。そう、B級グルメは懐かしさを食べるもの。メーカー側も、きっとびみょ~うなモデルチェンジを水面下で繰返しながら、守るべきところを守り続けているってことでしょう。日本企業のお家芸っすか?(爆)

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《おまけ★ラーメン小話》

▶社会人になりたての頃、会社にキッチンがあったから(寿がきや みそ煮込み)と(ねぎ)と(油揚げ)を切ったのと(卵)を持って行って会社で作って食べてたら「変わったお弁当だねー」って驚かれたよ(マブダチM)

▶私の1番の思い出は…中学生の時、家の鍵を忘れてちんぴらさんちで時間を潰させてもらった時に、ちんぴらさんのお母さんが作ってくれたラーメンが『寿がきや 本店の味』だったってこと!メンマとコーンの食感が妙に印象に残ってて。それからしばらく、うちのラーメンも「本店の味」だった気がする(幼なじみR)

 

PS 次回は3/10に更新します

 

アルヴァ・アアルト 脱線日記 ✍

ちんぴらジャーナル、今回のお題は初のチャレンジ建築家名古屋市美術館で開催されたアルヴァ・アアルトもうひとつの自然展の感想をまとめようと意気込んでおります、はい。―が、なんたって自慢じゃないけど、建築の「け」の字もわかってないですからね。かなり無謀な試み…ヤバいよ、ヤバい~(汗)。

f:id:chinpira415:20190201223213j:plainいつだったか、図書館へ足繁く通い、世界の名建築家と称される人々の作品集を手あたり次第に見まくっていたことがあるの。お勉強目的とは違い、ドールハウスみたいに愛でて楽しむくらいの軽~い気持ちで♫ 20世紀を代表するフィンランドの建築家アルヴァ・アアルト(1898ー1976)も、そんな風にちょこっとだけカジっていたお方でした♥

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建築家の展覧会といっても、作品そのものを会場に持ち込めないんだから、書籍で味わうのとさして変わらないような気もするでしょ?でも全然違うんですね~。完成形は体感できなくても、様々なピースが並んだ展示を眺めながら、鑑賞者がじぶんなりに再構成する楽しさがある。今やミックスメディア展示がスマートにこなせる時代だし、じぶんの脳ミソの中でちょっとした建築家になりすませる…ってわけ(笑)。そして、やっぱ1人の創作者を追い駆けるには、回顧展形式で接近できるとありがたいですね!

f:id:chinpira415:20190202100928j:plain例えばこの【パイミオのサナトリウム(1928-33)。アアルトが撮影した写真をはじめ、病院設備の解説書や病室の備品の陳列があり、院内のEVから見える景色を綴った映像も流れていて、実際のサイズ感が疑似体感できる仕立てになってました。また、院内の家具や照明設備もすべてアアルトがデザインしてて、今見てもしっとり美しい―。なんて言ったらいいのかな…外観も内部もすごくモダンで機能的なのに自己主張の匂いはなく、肌にスッと馴染み、療養生活が自然に日常化できそうな空間にかんじたんだよね。

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図書館好きだから【ヴィープリの図書館】(1927-35)もたまんなかったですぅ~😊閲覧室の天井を見て!太陽光を拡散させて照明にする丸型スカイライトの大群に超ワクワク♪読書に最適な光を求めて手掛けたデザインがすんばらしい★ごめんなさい、あたしが行ったらテンションあがっちゃって、本そっちのけでずーっと天窓を眺めて過ごしそう…。プラネタリウムじゃないんだから~とひとり突っ込み(爆)。

f:id:chinpira415:20190205220134j:plain一方施設内にある講堂は、音響効果を取り入れての波打つ天井で有名だけど、これも機能性だけじゃないよね。こんなうねうねが頭上から迫る空間に身を置くこと自体、身体感覚に変化が起きそう…。しかも木製!人の体内にはうねうねがいっぱい詰まってんのに、意外にも日常で触れる機会は少なくない?我が家を見渡しても風呂の蓋しか探しきれず…プラスチック製ですが(汗)。

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で、このうねうねですが、さらにバージョンUPして壁にも展開♫1939年に開催された【ニューヨーク万国博覧会 フィンランド館】の設計に際して、アアルトはパヴィリオン内部に12mもの段飾りになった曲面壁を作ったの。壁をオーロラに見立てたんだって!うねうね=オーロラ…。いやー、もう我が家のスケールでは、なーんちゃっても調達できません(笑)。

f:id:chinpira415:20190202135436j:plain会場内では、フィンランドの様々な側面を紹介する巨大写真を掲げ、自国の製品を展示し、ドキュメンタリー映像まで流したとか。昨今のイベント構成と変わらなくねっ?はっやいわー👀 さらに脱線して、ニューヨーク万博ってなんじゃらほい?と調べてみたら…「明日の世界」をテーマにした伝説の万博だって~♪

f:id:chinpira415:20190205220258j:plain企業パヴィリオンが近未来イメージを掲げ、物欲をあおって消費社会へ誘導する…まるで1939年版「世界はほしいモノにあふれている」イベントなのよ、気になるでしょ★なーんちゃってAI登場のぶっ飛び映像まで見つかったわ…このアナログ感がタマラン😊

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話をうねうねのフォルムに戻すと…他にも見覚えがありません?インテリアSHOPなどでもよく目にするアアルトの【サヴォイ・ベース】は、1936年に発表して以来、世界で最も有名なガラス製花瓶。湖の曲線をイメージし、80年以上経た今も、バリバリの現行モデルです。お馴染みついでに、会場内には三本脚の【スツール60】もゴロゴロ並んでた(笑)。そう、アアルトは、早くから家具や照明器具などのデザインも手掛け➡会社を立ち上げ➡商品化し➡世界市場へ持ち込んだ超ツワモノなんです。

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芸術への感心が高く、絵も熱心に描いていたというアアルト。ジャン・アルプ(1886-1966)ェルナン・レジェ(1881-1955)と交流があったと知って、大いにガテンがいったよ。思わず、昔ゲットした2人の図録を見返して、そのつながりを再確認しちゃいマシタ📚

f:id:chinpira415:20190207214625j:plainさて、個人宅の設計で超有名なのが【マイレア邸】(1938-39)【ルイ・カレ邸】(1956-1959)。ところが正直言って2件とも「趣味のイイ金持ちのお邸ね~。でもどこがそんなにスゴイの?」と、ずっと思ってマシタ(汗)。挙句の果てには、マイレア邸の外観を、勝手に憧れのサンダーバードの基地に見立てて妄想したりして…。関係者のみなさま、申し訳ございません(ぺこり)。

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そう、なんだかんだ言っても、建築は実際のサイズを浴びて、体感してこそなんぼの世界。写真で眺めるだけでは、良くも悪くもインテリア紹介記事に矮小化させてしまうのよね。(いや、インテリアとして眺めるだけでもじゅうぶん目の保養です…👀)

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―が、今回の展示のために撮り下ろしたドイツ人写真家アルミン・リンケの写真(下図)を見て、ちんぴらは突如開眼建物としての情報量は少ない写真なのに、なんだかアアルト作品に宿る地縛霊も込みで写し撮ってるような気配がして、すんごく引き込まれたの~。リンケの写真が、建物と鑑賞者をつなぐ“窓”の役目になってたんじゃないかしら…。ヤバイなあ、現地へ行ってホンモノを味わいたくなってきた(汗)。

f:id:chinpira415:20190205215343j:plainそうそう、東京の国立近代美術館へ行くたびに、ルイ・カレ邸の庭と邸をつなぐ等高線状の階段を思い出すのはあたしだけ?(笑)頭の中で『ロッキー』のテーマソングが鳴り響き、意気揚々と駆け上がったりしてぇ~、ウソでーす(爆)。

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ちなみに国立近代美術館を設計したのは谷口吉郎(1904-1979)ですが、息子の谷口吉生(1937-)も現役の建築家で、ほら以前紹介した掛川資生堂アートハウス(1978)を手掛けた御大。あの円弧ガラスの展示室を、ぺこっと内側に引っ込める絵を想像してみると…

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じゃじゃーん!アアルトの仕事場【アアルトスタジオ】(1954-55)と呼応するじゃないのよ~♫ しかも、上部の明り取りの窓を始め、ペンダントライトのぼんぼり具合といい、等高線状の階段でリズムをつけたコーナー演出といい…何これ、シャレオツすぎるぅ!

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一方、同じアアルトスタジオをリンケが撮ると、太陽光による刹那が立ち上り、単なるキレイキレイな建築写真に収まらなくて…これまたしんぼうタマりません👍ふむふむ、光の質にこだわったというアアルトの本質を射貫くには、光を道具にする写真家が最もふさわしいってことかー📷

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アアルト作品の中で、あたしが一番胸騒ぎするのは【アアルトの夏の家】(1952-54)。この森の中の湖に面した自身の別邸は、建築の素材や技法を実験する場でもあったらしいです。一見無造作に映るレンガとタイルのパッチワーク壁は、実験と言いながらかなり高度な造形センスよ、けして真似できませんね~。ここでも脱線して、杢田たけを(1910-1987)アッサンブラージュ作品なんかを連想(笑)。中庭には焚火用の炉が切ってあり、束の間北欧の避暑地の時間に思いを馳せてしまいます。

f:id:chinpira415:20190207221020j:plainということで、脱線交じりに綴ったアアルト展備忘録、いかがでしたでしょうか。トーシローに建築のハードルは高かったけど、鑑賞後、もう少し突っ込んで探りたくなり、見つけた1冊が『アルヴァ・アールトの建築 エレメント&ディティー(小泉隆 著:学芸出版社)。ホンモノを見に行っても見逃しそうな細部まで丁寧に追いかけていて、すごく参考になりました。文章も的確、オススメです。

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そして最後は、なーんちゃってアアルトコーナーで締め括り!いっしょに行ったマブダチから、アアルトのゼブラの織物もどきで送られてきたのは愛猫の毛並み写真(笑)。

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あたしは100均で買った麻無地のクッションカバーに、油性マジックで直接描き!どうだ~、遠目で見たら遜色なし(爆)。それでは、おあとがよろしいようで―。

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 PS 次回は2/25に更新します