なぜか魅かれるもの―①

花瓶、壺、水差し、壜などの器物が並ぶ景色になぜか魅かれる。物心がついて以来ずっとだ。一体これはどういう感覚なのか…何に反応して胸がザワザワするのか…じぶんでもよくわからない。ただ、わからないものと出くわしたらちょっと整理しておきたいという分類好きの血が騒ぐので(苦笑)、とりあえず思考の痕跡を書き留めておく。

 

 まず、器物そのものに関して

▶私にとって器そのものの価値は大した問題じゃない。その器が、いわゆる名品と呼ばれるものや、“用の美”などと称せられるワンランク上の日常器でなくてもかまわない。いや、むしろ「これぞ!」と気合いを入れて扱うことのない類のものが並んでいる様子に、より魅かれる。野暮っちい佇まいであればあるほど◎

▶機能観点、まったくゼロ。どうだっていい(笑)

次に分量&配置

▶単体でもいいができれば複数。同一の器物×複数、異なる器物×複数、どちらもOK。要は「並んでいる」様子や気配に関心があるようだ

▶また、整然より雑然の方が相性良し。配置=リズムと考えているのだろう

置かれた背景

▶これは大切なポイント。つまり器物が並ぶコーナーの構図やトーンをトータルで捉えて愛でている。映画の1シーンのごとくだ

 

このポイントを絵画を例に紹介してみると

ジョルジュ・ブラック『水差し、レモン、コンポート』(1928)

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やけにデカイナイフは怖いし、実際にこんな配置はありえないが(笑)、いいっすね。

 

次は、ふくよかな鈴木信太郎の作品『絵箱のある静物』(1974)

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鮮やかな花器の数々と布地、窓枠のコンビネーションにウットリ。絵の中に溶け込む。

 

室内&余白なしの書き込みとなれば、忘れちゃならないのがこの人 アンリ・マチス。傑作『画家の家族』(1911)。マントルピースの上を見よ!

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続いて韓国。室内調度品を刺繍した李王朝時代の屏風『冊架図刺繍屏風』(19世紀)

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微妙に歪んだ壺のフォルムと配色の美に泣けた(涙)。宮廷職人たちの技の結晶。20年以上前に名古屋市美で鑑賞して以来、忘れられない。

 

立体を例にすると…

トニー・クラッグ『無題』(1982)

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 プラごみから企業の“顔”が剥がされ、白い壁を背景に白い棚に一列に並び置かれただけなのに、清々しいったらありゃしない。思わずアドレナリンが出るのは私だけではないだろう。一見ありきたりな器物、でも再現しようとしたが不可能だった(汗)。こんなに即物的な展示だが、始めて買ってもらった6色クレヨンセットを思い出し、ノスタルジックな気持ちになったのも不思議。

 

そして同一器物×複数×整列例 ジョセフ・コーネル『Celestial Navigation of Birds』

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 ただし、コーネル作品は箱として捉えるべきだろうから、別の機会に再考。箱には時間が宿るのだ!

 

番外編

こちらミヒャエル・ボレマンスの作品は人を描いていても器物が並んでいるかのよう。それも極めて魅力的な静物画に見える。 『Four Fairies』(2003)

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もし神さまにおねだりするなら「ボレマンスの絵画を1枚!」と私は叫ぶ!毎日彼の絵が眺められるなら、明日食べる米がなくてもへっちゃらだ(笑)。

美術作品を例に、私が魅かれる器物が並ぶ景色を紹介してみた。ここで取り上げたのはほんの一例だが、脈絡があるようなないような…(汗)。

 

さらに突っ込むと

並んだ器物が、すりガラス越しに見えたりすると、ザワつきレベルがもう一段上がることがわかってきた。私がカメラを向けたくなるのはこんな一角だ。

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窓枠といういちおうのフレーミングと、すりガラスでにじんだ器物の曖昧な輪郭と、外から見られていないだろうという無防備な配置の組合せに胸騒ぎがする。でも結局、要因は整理できても胸騒ぎの正体はわからない。マジに誰かに言語化してほしい(笑)。

 

ところで、そのオチとなるかどうかわからないが、目下兵庫県立美術館で開催中のジョルジョ・モランディ展にそのヒントがあるかもしれないと密かに考えている(友人のIくんは陶酔したまま帰宅したとか!)。ほら、このキャッチ!専門家でもこう呼びかけるくらいだから、「美」というものはどこまでもつかみ取れないものなのだ。

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これはもう東京での巡回時に行くしかないでしょう!O家のみなさま、またまた御厄介になりますが、その節はどうかよろしくお願いします(ぺこり)。