勝手に映画年間ベスト10! 2015年版

1年間映画館で映画を鑑賞し続け、それを勝手に総括&勝手に順位付けして、なんと早30年(汗)。「一体、何様のつもり?」行事ではあるが(苦笑)、こちとら金も時間も映画にぶちこんでるんだあ~、そのくらい好きにさせてもらうわよ!でもって、記念すべき30回目をWebでお披露目できるとは…いやはや感慨深い。1~3位まではちょっと厚めに本文で紹介し、ALLは最後の一覧表にて網羅。ではドラムロール夜露死苦

 

第1位 独裁者と小さな孫(’14)モフセン・マフマルバフ監督作品

めちゃくちゃわかりやすい。娯楽映画のフォーマットをきっちり踏まえて作られている。ただし予め言っておくと、重い課題を我が事として考えさせられる作品である。 私も長年映画を見てきたが、国民に圧政を強いる“独裁者目線”が体感できる映画はこれが初めてだった。さらに、大統領は反体制派勢力によって俺様天下から引きずり降ろされ、小さな孫と2人で命辛々逃亡。変装して国民に紛れ込み、脱出の機会を伺うという緊張度の高いロードムービーである。やがて圧政を強いた当人が、強いられた側の国民の生活に潜伏しながら目撃するのは、新たな暴力の連鎖が渦巻く地獄絵巻。誰が主役に立つゲームでも、暴力で溜飲を下げる限り、悲劇は繰り返されるというメッセージを、映画は幕切れまでノンストップで描き切る。憎悪の暴走に楔を打つには一体どうしたらいいのか…。我々は無慈悲で尊大な独裁者の目線を持たされたがゆえに、スクリーンを離れた後も映画が放つ問い掛けから逃れられない。世界のあるべき姿を諦めずに模索し続け、発信する覚悟に含羞がないマフマルバフ。兎にも角にもこの傑作を見るしかない!


映画『独裁者と小さな孫』予告篇

 

第2位 サンドラの週末(’14)ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督作品

こちらもシンプルかつ強烈な傑作。金曜日の昼下り、休職中のサンドラに突如解雇騒動が舞い込む。会社が彼女の同僚たちに、サンドラの解雇かボーナス支給かのどちらかを選べと迫ったため、みんなが解雇に同意してしまったという経緯を聞かされるのだ。サンドラは何とかこの結論を無効にしようと自ら職場の仲間を一軒一軒訪ね歩き、「1000ユーロのボーナスより私を選んで!」と説得交渉にあたるのだが…。経済という名の国際戦争の末端で起きているリアルなスケッチ。とても他人事で眺めていられない命題が描かれる。しかもヒロインは労働者を代表するような闘士ではなく、夫と2人の子を持つごく普通の女性に設定されているため、交渉に当たる際の動揺やぎこちなさが、そのままダイレクトに響く仕立てである。それと特に注目してほしいのは、サンドラの夫マニュの存在感だ。私はこれほど母性に満ち、伴走力の高いダンナを他に知らない!日本の少子化対策を考える上で、参考にするべき新種のヒーロー誕生と断言したいほどだ。また「音」の効果が素晴らしいのなんの…耳で見る映画と言ってもいいだろう。ラスト、サンドラの頭上に拡がった空にあなたは何を見るか―これぞ映画の醍醐味である。


映画『サンドラの週末』予告編

 

第3位 フォックスキャッチャー(’14)ベネット・ミラー監督作品

96年に実際に起きたデュポン財団御曹司によるレスリング五輪金メダリスト射殺事件を題材にした作品。とんでもなく金持ちのボンボンの狂人振りを、ねっとりと描くその筆さばきに舌を巻いた。薄気味悪いったりゃありゃしない!ただ、掘れども掘れどもたどり着けない特権階級の底無しの虚無感に身震いはするが、この感触は嫌いじゃない。人間の本質ににじり寄る作り手側の姿勢に、知性が感じられるからだ。さらに言えば、それは今も強者神話に憑りつかれた米国の病的な暗部を浮かび上がらせ、映画の守備範囲は想像以上に広い。最後までスクリーンに立ち込めたモヤを晴らすことなく着地する結末…一見の価値あり!


映画「フォックスキャッチャー」予告編 スティーヴ・カレルがダークなキャラに初挑戦!

 

ドキュメンタリー映画年間ベスト10も同時掲載!

DVDをレンタルする際のご参考にどうぞ。

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