? 衣装デザイナーに注目!

画は総合芸術。だから当然、様々な楽しみ方があるはずのに、話題性オンリーで作品を選び、主人公に感情移入できるかどうかだけが価値基準だとしたら、ずいぶんもったいない話だ。例えば女性客の多くは、ヒロインの生き方、容姿、ファッションセンスや舞台となる場所や時代背景など、美的好奇心とドラマチック要素への関心は高いが、誰がどんなふうに細部の仕事を担っているかまで追い駆ける人はほとんどいない。ファッションブランドのデザイナー名はチェックしているのに、なぜ映画の衣装デザイナーの存在を想像しないのか?…私は不思議でならないわ。ザックリ言えば、みなさまが映画に求めているのは、自分をノセてくれる“体感装置”としての機能なのかも…。おそらく映画制作に関わっている多くの人たちも、それで◎だと考えているような気がする。梯子をせっせと作って観客を“体感装置”に登らせ、観客が気持ちよくなった頃合いで作った梯子をフイに外し、浮世からうーんと遠く離れさせられたら黒子の手柄というわけだ。ただ、どうしてこの梯子にノセられたのか?誰がこの梯子を作っているのか?を考えることは、1本の映画の楽しみ方に終わらない!そこからあなたを取り囲む世界が確実に変わるから―。というわけで、今回は私が独断と偏見で押す「衣装デザイナー5人衆」を紹介しますんで、ぜひ頭の片隅に入れてみて。いつか、スターでも監督でもなく、衣装デザイナーの名前で映画を選ぶ日がくるかもよ~♪

 

この人を差し置いて語るわけにはいかない!ミレーナ・カノネロ

▶アカデミー衣裳デザイン賞に8回ノミネート⇒4回受賞というすんげー肩書をお持ちのミレーナ女史は、1947年1月1日生まれイタリア・トリノ出身。賢明なみなさまならすぐわかると思うが、アカデミー賞に関与するということは、アカデミー賞にノミネートされるレベルの作品のスタッフとしてお仕事発注されるということで、しかも受賞までするということは、ズバリ名だたる監督たちの“あげまん”だってこと!そして一流の“あげまん”を究めることで、今度はその時代その時代の寵児となる若旦那衆からもお声が掛かるようになり、不滅の芸道サイクルが築ける…とまあ、そんな塩梅だす(笑)。

ミレーナ・カノネロ - Wikipedia

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▶ご本人も女優並みの美しさよね~。18世紀の欧州をテーマにしたコスプレ作『バリー・リンドン』が最初のオスカー(なんと28歳での快挙!)なので、時代劇が特異な人だと思われがちだが、個人的にはメンズラインのセンスが抜群だと思う。最近、超ド級のオシャレ野郎ウェス・アンダーソン監督作品に携わっていて、その才能をフルに発揮中。カノネロ女史仕事のイチ押しはダージリン急行』('07)


ダージリン急行

 

いま、一番脂がのってる!サンディ・パウエル

▶ちらしのにサンディ姉ちゃんの名前を見つけたら「見るべきリスト」に即入れるほど注目している衣装デザイナー。サンディもアカデミー賞は3回受賞してんだからね~。1960年4月7日生まれイギリス・ロンドン出身。ほぼ同世代&同じ牡羊座生まれってことで勝手にマブダチ扱い(笑)。彼女の美的センスは、パンクからニューウェーヴに至るUKの音楽シーンを、ティーンエイジャ―時に体感してるところから始まってる気がしてならないんだよね。既存のカルチャーを横にズラしたり切り張りしたりして、今に蘇らせる感覚がサエていて、ブランド品より古着屋で審美眼を磨いたのではないかと推察してるわ。アバンギャルドな試みと、古き良き時代の品格のKEEPが最大の魅力でしょう♪サンディ・パウエル - Wikipedia

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▶ハッキリ言って衣装デザイナーさんは、自分の洒落っ気は二の次の方たちが多いけど、サンディ姉ちゃんは本人がカッコイイ!!!きっと軽やかでイキな女の人だと思うなあ。なんてったってマーティン・スコセッシ監督のお抱えだから、ユーモアのセンスも抜群に違いないよ。先週のブログで紹介した『キャロル』('15)をはじめ、50年代モードのエッセンスを作品に散りばめているところも持ち味。さてサンディ姉ちゃん仕事のイチ押しは、(写真左より)ギャング・オブ・ニューヨーク』('02)『エデンより彼方へ』('02)です。19世紀初頭のNYで暴れるギャングたちに、タータンチェックを着せるセンスが、パンクしててサイコー!

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創造性の幅は業界一!コリーン・アトウッド

▶コリーン女史の作品履歴を眺めているとシビレる~。近未来モノ、刑事モノ、ファンタジーに、ゴシックホラーもあれば、西部劇まで何でもござれだ。手掛けた作品数の多さもさることながら、そのほとんどを見てる自分にさらに驚いたけどね(笑)。長いキャリアと、絶えず上出来映画に名前を連ねている安定感は、ホンモノの実力派ってかんじだなあ。1950年9月25日生まれアメリカ・ワシントン州出身。彼女もアカデミー賞は3度受賞ですわ。コリーン・アトウッド - Wikipedia

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▶ちょっとIKKO入ってるコリーン女史(笑)。ドスコイ感たっぷりだが、彼女は『シザ―ハンズ』('90)でタッグを組んで以来のティム・バートン監督の右腕。あの屈折したナイーヴ野郎ティムの創造世界を再現するんだから、きっと繊細な職人気質タイプなのだろう。コリーン女史仕事のイチ押しは、(写真左より)ガタカ』('97)『マーズ・アタック!』('96)。マーズ・アタックに登場するこのジャージ姿の婆さんは、私の理想の老後のスタイル★

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英国映画を支える!ジャクリーン・デュラン

▶上記3人はアメリカを本拠地に活躍する衣装デザイナーだが、ジャクリーン女史は主に出身国イギリスの監督との仕事で注目されているため、知名度はイマイチかも。それでもアカデミー衣裳デザイン賞に4回ノミネート⇒1回受賞とは恐るべし!

ジャクリーヌ・デュラン - Wikipedia

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▶デニム地のドレス姿で受賞式に参列、趣味がいいねー!彼女は大らかな美人顔だからフォーマルなドレスではまともに似合い過ぎちゃう。デニムにドレスダウンさせて正解ね。ジャクリーン女史は、辛辣で生々しい会話が炸裂するマイク・リー監督作品や、古典劇を今という時代に瑞々しく蘇らせる若手の注目株ジョー・ライト監督作品で活躍中。知性派監督からご指名を受ける衣装デザイナーです。特に私が個人的に前のめっている理由は、わが生涯映画の1本裏切りのサーカス』('11)の衣装担当だったからなのよー!東西冷戦下のイギリス諜報機関MI6を舞台にした極上スパイ映画で、衣装を使って男同士の愛?と矜持を織り上げているの。涙なしには見られない傑作です。


映画『裏切りのサーカス』予告編

 

色モノキャラ衣装ピカイチ!エレン・マイロニック(ミロジック)

▶最後を飾るエレン女史は1949年7月7日生まれアメリカ・NY出身。彼女のキャリアも相当なものだが、色と欲に溺れたセクシー路線や、ワイルドなアクション路線に腕を振るってきたキャリアなので、いわゆる衣装デザイナーの王道とは一線を画す。王道が、より芸術性の高い作品を手掛けるのを上がり絵とするなら、エレン女史は大衆の心理をがっつり掴むTVマーケット向きな才能だ。でもこの猥雑でちょっとチープな風合いが、映画に独特のコクをもたらすこともあるわけよ。なんたってあの『氷の微笑』('89)の衣装担当だよ(笑)。いい仕事してるじゃないの~。

エレン・マイロニック (Ellen Mirojnick) | Movie Walker

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▶ご本人もTVドラマの脇役にいそうな陽気なギョーカイ顔でいいなあ~。彼女のセンスにプロだなあと感服したのが、鬼才スティーブン・ソダーバーグ監督作品『恋するリベラーチェ』('13)を見たときだ。1950年代~1980年代にかけてアメリカのショービズ界で君臨した伝説のピアニスト・リベラーチェの最晩年を暴露本をもとに描いた異色作。大物芸能人の俗悪な“ひとり宝塚”私生活を、思う存分衣装で盛ってくれてます。かなりきわどい内容だけど、最後はホロリとさせられちゃって…いやー、映画ってホントいいっすね。

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 それにしても、5人に絞り込むのが至難の業だったよぉ~(汗)。マジに夢でうなされそうになった(苦笑)。そもそも私が衣装デザイナーの存在を意識するようになったのは30年以上も前のこと。アカデミー衣裳デザイン賞に35回ノミネート(!)⇒8回受賞(!!)、生涯に1000本もの映画に関わった伝説のドレス・ドクター、イーディス・ヘッドイーディス・ヘッド - Wikipediaの存在を知ってからだ。そして多くの日本人は、この人の名前を知らなくても彼女の仕事はきっと眼にしているはず!『ローマの休日』『麗しのサブリナ』のオードリーの着こなしを覚えているよね?あれぞイーディス女史の仕事なの。―というわけで、けして表舞台には出てこないが、衣装デザイナーは映画モードを通して時代を動かす仕掛け人と言っても過言ではない―。

しあたって、あなたのお気に入りの映画を今すぐ検索してみよう!衣装デザイナーが誰だったかを調べてみると、新しい金脈がみつかるかもよ★