あいちトリエンナーレ2016✑ 備忘録①

3回目の開催となった『あいちトリエンナーレ』(10/23まで)。若干涼しくなった9月後半から足を向け、全会場を一通り眺めてきたのでご報告。まあ、私の感想なぞはナナメに流し読みしていただき、お時間があれば、やはり実際に足を向けるのがベストかと。なんたって遠足気分で体験するにはもってこいの季節だものね~♪

テーマは“虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅”。キャラヴァンサライとは、ペルシア語で隊商宿を意味する言葉なんだって。つまりこのイベントは、旅の疲れを癒す場所であり、次なる未知への旅の英気を養う家(サライ)となるよう企画されたらしい。―で結論から言うと、そんな狙いを踏まえられるシーンと、何度も遭遇したような気がするわ。

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まずは極上の映像プログラム★

▶ごめんなさい(ぺこり)。映像プログラムはほぼ全部終了してるのよ(汗)。芸文センター12FのアートスペースAで、1ヵ月に渡り粛々と上映されていたのだが…きっと知らなかった人も多かったんじゃないかな。国際展チケットがあれば何度でも無料で見られるお楽しみ企画なんだけど、そもそも何を見たらいいのかあたりもつけられないくらい作品ごとの情報が少ないからね。でも私だって同じ条件。そういうときは、とにかく期待せずに行くことです(笑)。ブラっと行って2プログラム見て、「ヤッバ~い、レベル高いかも!」と慌ててそこから連日仕事帰りに通い詰めましたよ~。そして毎晩、未知との遭遇中国、セネガル、エジプト、台湾、タイ、アマゾン、そして日本の軍艦島まで、映像探訪させていただきました。しんぼうタマランかったあ~。詳細を書き出したら夜通しかかりそうなので割愛するけど、私の『あいトレ』一番の収穫はコレ★ 簡易椅子に腰痛を感じつつも(汗)、たっぷり英気は養われたわ。

 ▶そして見逃した人には朗報!これから劇場公開される目玉作品もあるの♫ メモの用意はいいですかー、取り急ぎこの2本のタイトルを覚えておいて。1本目、ニコラウス・ゲイハルター監督作品『HOMO SAPIENS』('16)。人間が姿を消した廃墟(日本も登場)を、セリフも音楽も使わずにずーっと追い駆け続けるという実験的な内容ながら、退屈する暇が1秒もないドキュメンタリー。私はテンションが上がりすぎて過呼吸になりそうだった(汗)。大袈裟でなく、美の定義や、人間が築き上げてきた営みの意味が変わるくらいの衝撃作だと断言したい。特に日本にとっては、人口減少社会のリアル予測図とも捉えられる。予告にゾクっとしたあなた、来年の一般公開に乞うご期待!


HOMO SAPIENS: Berlinale TRAILER

そしてもう1本はシーロ・ゲーラ監督作品『彷徨える河』('15)。これまた魂が持っていかれちゃうよ~。めちゃくちゃ面白い!そして11/19~12/2 名古屋シネマテークで上映決定。近いうちに映画評で詳しく書くから取り急ぎ予告編を覗いてみて。聖なるものと俗なるもののせめぎ合いがタマラン。モノクロの映像美も深みたっぷりだ。


映画『彷徨える河』予告編

 

小旅行は豊橋からスタート★

▶そして本丸の美術プログラムへGO!今回は豊橋が会場に加わったので、岡崎会場と抱き合わせにして、1日小旅行気分で足を延ばしてみた。それにしても豊橋を訪れるのは一体何年ぶりだろう…。市電がフツーに走ってて驚いた。いいじゃな~い!

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▶開場は駅前に点在する古いビルを利用していて、非常に動きやすい。普段の街中の表情と、作品が地続きになるのは都市型芸術祭の特徴でしょう。私はこの距離感、好きだなあ。気負わず、ノンシャランとしてて、「ヒマならのぞいてく?」くらいの導線が心地良いのだ。

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▶ 黄色の壁と赤い非常階段が忘れ難い「開発ビル」会場。ここで光っていたのが、偏差値の高いおとぼけを大掛かりに展開している小林耕平東海道中膝栗毛インスタレーション。でも、おとぼけより、私は彼の造形美が好き。よく見るといちいち美しいんだなー。出色は富士山型(!)ハードル。近所の公園に設置してほしいよ(笑)。

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グリナラ・カスマリエワ&ムラトベック・ジュマリエフによる≪ニュー・シルクロード:生存と希望のアルゴリズム≫も思わず魅入った。バカでかいトラックが行き交うシルクロードの現在を、5面スクリーンと写真で展開。登場する人々は、けして裕福な境遇とは思えないが、彼らの日々の営みには朗々としたリズムが立ち上り、すーっと巻き込まれてしまった。AIでは補完できないであろう“生活の雑味”を味わった気がする。

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▶古いコンサートホールの楽屋裏(素敵!)まで贅沢に使い、プロジェクションを披露したのが石田尚志。うーん、増殖する絵巻物が花道に見えるのはそれなりに楽しいのだが、奥行に欠けるような…。石田作品の階層の深さと翳りが好きな私はもうひとつ物足りず(汗)。

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「水上ビル」会場では、リオデジャネイロ出身のラウラ・リマによる≪Flight≫という作品に注目した。住居全体を鳥の解放区に仕立てており、さながら我々が鳥にお招きされ、鳥たちから鑑賞されるような奇妙な感覚を味わう。これがねー、あそこにもここにも鳥がいてカワイイ♥なーんてはしゃいでばかりもいられません。急な階段を上るほどにツライ状況になるのよ(汗)。私の場合、屋上に張り巡らされたネットが自由を阻む世界中の壁のイメージとリンクしたのよね。もはや我々は、ささやかに咲く花にさえ手が届かない世界に生きているのかもしれない―。

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途中に飾られたブリューゲル風な絵も忘れ難い。鳥にとっての楽園のイメージなのか?人の姿はなく、既視感があるようなないような不思議な風景。そう、ここで私は『HOMO SAPIENS』の記憶が呼び覚まされちゃったんだよなあ…ふーっ。

 

公式ガイドブックを参考に★

▶さてどんなにとんでもないものを見せていただいても、人間やっぱりハラは減る!公式ガイドを参考に、ボン千賀で菓子パン「くろんぼ」(中身は白あん!)を買い付け、お昼ご飯は「焼肉処 若葉亭」で網焼きランチ¥950也をほおばり、大満足★

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いつもきれいな岡崎の街並み★

▶十分にお腹を満たした後は岡崎へ。メイン会場となる岡崎シビコは、今回も魅力的なハコになっていた。いきなりこんな山が現れても、なぜかしっとり眺められるんだよね。天井の低さが、かえって作品に集中させやすくなるのかな…。

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▶でもって、うって変わって奥の部屋から流れるオリエンタルな楽曲に誘われ…

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カイロで人気の「シャビ」という音楽ジャンルを再解釈した光と音のインスタレーションを体感。ハッサーン・ハーンという人の作品。これがねー、シンプルなんだけど、想像以上に握力が強くて、酔えるんだよね。見た目只の空きスペースなのに(笑)。楽曲が持つ熱を寸止めにし、ぬる燗にして差し出しているというか…。ずっと浸かっていたかったなあ。

▶シビコで唸ったのは野村在の部屋。壁には何かが破裂した後のような痕跡を写した写真が掛かり、中央にはひびの入ったガラス製の大きな箱がそっけなく置かれているー。どうやらこの箱の中で打ち上げ花火の実験が行われたみたい(汗)。

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ガラーんとしたスペースで、唯一動いている作品≪それでも世界は周り続ける≫に吸い寄せられ、縦に積まれた小型モニターをずーっと見続けていると、点在している作品のイメージが緩やかにつながり始め…。「始まり」と「終わり」の追い駆けっこに胸が締め付けられた。ここには思わせぶりなそぶりはない。事実のみの構成で、一瞬の出来事が永遠につながる嬉しいオマケも発見!しかも、ラウラ・リマの小屋から小鳥はジャンプし、ツバメと化してここに帰着したのね―などと妄想まで広がった。でもモニターをチラ見しただけで素通りする人が多い。もうちょっとだけ待って作品と対峙しようよ…世の中は宝の山だ―。

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▶毎回毎回感心するのが岡崎の道。ゴミ一つ落ちていないのよ、マジにきれい。地元の友人に言わせると、大型商業施設が市内の南側にできて以降、トリエンナーレの会場にもなる北側は閑散として行く一方だとの話だが、いやいや、寂れた感はないよね。むしろ閑静な文京地区の趣きだ。散歩の途中に見つけた住宅街に立つ婦人服のお店では、先週のブログで紹介した「それいゆ創刊70周年コーナー」ができていたよ~。

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そして夕暮れの空を見上げたら、鳥が並んでお待ちかね♫ まるで楽譜のようではないか!最後まで鳥のイメージが数珠つなぎした「あいトレ」郊外編だったわ★

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▶翌日は和菓子店「和泉屋」オカザえもん岡崎市の非公式ゆるキャラ)どら焼きでコーヒー・ブレイク。白小豆と黒豆の両方入った欲張りな逸品よ。焼き色が濃い目で若干松崎しげる状態だが(笑)、これもまた一興。髪型は私とカブる(汗)。

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さて「あいトレ」備忘録は、②の名古屋市内編に続きまーす。次回は10/10のUPです。