あいちトリエンナーレ2016✑ 備忘録②

さて「あいトレ2016」備忘録の2回目は、遅~い夏休みを利用し、半日かけてぶらついた名古屋地区編です。金曜の午後は、メインの美術館が20:00までOPEN。時間を気にせず回れてオススメよ。それと、意外と空模様も重要!美術館以外の場所での展示は、雨天は避けたほうが無難だね。会場が細かく分かれているから、イチイチ傘をさしたり閉じたりは面倒だと思うので(汗)。荷物も最小限にして行きたいしね。―ということで、後半戦も個人的に気になった作家の紹介でLet's Go!

 

名古屋市美術館からスタート!

▶ここでは1Fに展示された2人の作家に注目した。1人は館内に入って右手に並ぶアブドラ・アル・サーディアラブ首長国連邦出身の作家と遭遇するのは初体験だ。『比較通―スイカシリーズ』('13)は、スイカのイメージを飛躍させ、架空の風景を捏造(笑)。鼻の先にスイカのあの甘青い匂いが漂ってきそうな山肌と、稜線に“建築的”な趣きがあって、困惑しながら新しい惑星に降り立つような気分を味わった。

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立体物がまたいいのよ~。動物の骨を使った彫刻作品シリーズ『腔間構成』('91)は、どれも挑発的なポーズをとる裸婦像に見えて色っぽい★ご本人もええ男♥

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▶もう1人は、サーディの対面に展示されているブラジル出身のマウロ・レスティフェによる写真作品。2週間にわたり愛知県内で撮影した19点を発表している。

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レスティフェは曇りや雨模様の日に好んで撮影するとか。だからなのか、プリントされた粒子の質感がめちゃくちゃ美しくて、吸い込まれそうになった。それとフレーミングが非常にユニーク。例えば上の写真の右から4つめ―建物とそこから抜けた空とどちらを狙っているのか判然としない…。いや、常に1枚の写真の中の構成を、全体最適で捉えていて、やたら密度が濃い。遠くから眺めてもクラクラするほどの存在感があった。

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時間に余裕を持って中央広小路ビル!

▶前回の備忘録①で「あいトレ」は映像作品が収穫だったと書いたが、沖縄出身のミヤギフトシも2本の短編『ロマン派の音楽』('15)『花の名前』('15)で強く記憶に残った。そのミヤギは中央広小路ビルの2Fで新作も発表。北海道を起点に侵略や弾圧で失われたいくつもの歴史と悲しみを、海の映像に込めたインスタレーションで展開している。

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異なる5本の映像がループで流れているので、まずはどれでもいいから試しに1本覗いてみて!風景にナレーションが被るだけの10分足らずのシンプルな作りなんだけど、これがじわじわと胸に染みてくるの。テキストと情景、どちらにも憂いがあって、知らないうちに現実の時間から浮遊してしまう…。1本見ると、必ずもう1本見たくなるから、時間にゆとりをもって出かけてみてね。

 

長者町会場 堀田商事ビル3F!

▶これまた全く知らないアルゼンチンの若手作家アドリアナ・ミノリーティ。一見既視感があるようなCGだが、よく見ると非常に作り込んであって見応えあり。ヘボくもエロくもない(苦笑)。むしろ揺るぎない世界観の構築に目を見張る。女性作家と知ってさらに驚いた。

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本丸、愛知芸術文化センター

▶最後は本丸となる芸文センターだ。2フロア(8Fと10F)に分かれているから注意してね。出入り自由の地下、屋上庭園、展望回廊にも展示があるのでお忘れなく♫

▶で、ここで魅かれたのは、まず10Fの三田村光土里。「わたしにわかることは、ヒモは必ずからまるということだけです」などの走り書きと、日用雑貨などで構成されたインスタレーションは、緊張と緩和のバランスが天才的で、あらゆるモノが息をしている。どこを切り取ってもスリリングな絵になって見えるのだ。

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実年齢はほぼ同世代なのに、手垢にまみれることなく恐れしらずな10代のハートを持つ人。非常に気になった。

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▶そのお隣の部屋は、オランダ出身でベルギーを拠点に活動しているマーク・マンダース。全美術プログラの中で、私が最も動揺した作家だ。ビニールクロスや建築素材、新聞紙などの即物的な質感で拵えた簡易ギャラリー風な空間に、朽ちかけて歪なポーズの彫刻(ブロンズだとか!)がそっけなく置かれている。これがカッコいいのなんの…心拍数が上がってヤバかった(汗)。

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あー、お泊りしたかったなあ~(笑)。私にはこの空間がとんでもなくエロティックな装置に見えて、一晩お付き合いしないと味わい尽くせやしない!と焦った。イメージに酔うのではなく、あくまでリアルな場としてフィットしたのだ。

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五平餅(!)状態の少女に、ネズミと抱き合わせの犬(狐?)、ヒビ割れた部分をそっと撫でたら、じわじわと泉が湧き出てきそう…。狂気スレスレのところを転じて、すべてが可憐で愛おしい―。

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 Webでインタビュー記事を見つけたから載せておくね。マーク・マンダース、しばらくマイ・ブームになりそうだ。

 

▶8F会場では田附勝の写真に釘付け!異様なまでの熱量!な、な、何なんだこのマグマの正体は…。私は基本、展示用キャプションをほとんど読まずに“バッターボックスに立つ”鑑賞スタイルだが、1作品目からビーンボールでのけぞらされた感あり(汗)。それも村田兆治のマサカリ投球で(例えが古くてスイマセン…)。

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振り返ったら、岡崎の石原邸でも新作を発表していたのだが、そちらはコンセプチュアルART風な一品で、記憶には残っていたが同じ作家とは到底思えず…。経歴も変わっているし、なんとあの『ほぼ日』に「田附勝の「めだま」の先」という不定期連載を掲載中。発言がこれまた楽しいのだ★ 私の村田兆治連想、まんざら遠くないかも…そう、全方位すべて先発完投の男気アニキみたいよ(笑)。

 

さて、2回にわたってお届けした「あいトレ2016」備忘録はいかがだったかな…。自分から近づき⇒実際に立ち合い⇒疑問・発見を体感し⇒Webや書籍で後追い検証⇒そして自分なりのアンソロジーに組みなおす…。このサイクルが私の生には欠かせない。

世界は広い。未知の作家とめぐり会う旅に終わりはない―。

 

PS 唐突ですが、目下全国一斉公開中のC・イ―ストウッド監督作品ハドソン川の奇跡は必見!御年86歳、実話の映画化&感動秘話を、思いっきり手離れよくサクサク作っていてびっくらよ。このジジイ、鼻くそほじりながら、軽ーくあと10本は作りそう(汗)。食事はガソリンだったりして(爆)。

次回は「あいトレ」で一足先にチェックした映画『彷徨える河』評をUPします。10/20にまたお会いしましょう~。