男子推薦本と勝負!📚

「今晩は~。渋谷陽一です!」…じゃなくて、「今晩は~、ちんぴらジャーナルです♪」。しょっぱなからくだらなくてすいません(ぺこり)。NHKFM愛好家限定の小ネタで幕開けしてみました。何せ渋谷陽一の洗礼を浴びて洋楽に目覚めた世代ですから(笑)。さて、ROCKは渋谷社長にまかせるとして、今回わたしは書評に初トライです!

本はわたしにとって欠かせないお楽しみ世界ですが、じぶんの食指に引っかかったものをお披露目するだけじゃ芸がないと思いません?(笑)そこで、他人に薦められた本、それも知り合いの男子たちにススメられた本の感想をまとめてみることにしました。案の定、男子推薦本のラインナップは、じぶんではまず手に取らない本ばかりで、テンションあがったなあ~♬ そのうえ「どうして彼にこの本が刺さったのか…?」まで紐解きながらの読書三昧だから、深読みする面白さもタップリ味わえましたね。―というわけで、バラエティに富んだ4冊を一挙にご紹介しましょう!

 

文系男子Kちゃんオススメ★歴史娯楽小説

『光秀の定理』垣根涼介(角川文庫)

 ▶前々回のブログ『サクッと京都』を書き終わった直後に、マブダチKちゃんから「すごく面白かったから読んで~」と届けられた本が垣根涼介『光秀の定理』。とりあえず、作家名もタイトルもまったく初見の1冊をぼんやり読み始めたら…な、な、なーんと、書き出しからあまりの偶然に、頭がクラクラしちゃったのよー。京都が舞台、しかも足を向けたばかりの相国寺周辺からドラマが始まるとは!…タイムリーすぎるぅ~★

f:id:chinpira415:20170701234525j:plain

▶光秀というのはあの逆臣、明智光秀のこと。1560年。牢人中の光秀、若き兵法者の新九郎、辻博打で人々を煙に巻く坊主の愚息の3人が、夜更けの一条大路で運命的に出会う―。ドラマは史実を緻密に配しながら、因縁の3人が戦乱の世をそれぞれの流儀で渡り歩いて行く様子を、キャラを立たせてのびやかに描き、いかにも男子にウケる内容です。なんたって男子たちは、歴史小説をじぶんの属する組織に当てはめて感情移入するのがお好きでしょ?(笑)おそらくここで男子読者たちは、常に自らを奮い立たせ愚直に責務を果たそうと努める光秀、空回りするほどイキのいい若造の新九郎、剛柔併せ持つ大人物で多様なアフォリズムが魅力の愚息の3者3様を、じぶんの中で勝手に合体させ、憧れのヒーロー像を作り上げて楽しんでいたりするのでしょうね ♪ そしてこの本がKちゃんにウケた理由もそのあたりにあると推察しながら読んでたわ。だってKちゃんは何かと「筋を通す」男子だからさ、この手の精神的ホモ物語(!)に目がないもんね~(爆)。本人曰く―「男3人の損得ナシの関係に憧れる」だって、ひゅー★

f:id:chinpira415:20170701155017j:plain f:id:chinpira415:20170701191129j:plain

▶一方、わたしにとっては、京都博物館で堪能した絵師・海上友松の時代背景を想像するのにスッゲー役立っちゃったわ。いや、もっと驚いたことに、読後ネット検索したら、光秀の重臣・斎藤利三と友松はマブダチだったとわかり、斬首された利三を葬ったのは友松だという言い伝えもあるらしいのよ~。真如堂には2人のお墓が並んでいるんだって!ひぇー、思わぬところでサブテキストと遭遇し、心底たまげましたね(汗)。ここまでシンクロするとは…さーすがKちゃん、また意表を突く本を送ってね~♪

 

理系男子M氏オススメ★科学啓蒙新書

相対性理論の世界~はじめて学ぶ人のために』ジェームズ・A・コールマン講談社ブルーバックス

▶去年、それまでまったく手に取る機会がなかった理系の書物に突如目覚めはじめ、ついには物理の世界にまで食指が伸び始めてしまっているわたし…。ヤバイ、すでに人生の2/3を消費し、残された時間は限られているというのにね(汗)。でも、物はついで(笑)。物理の世界をもう少し楽しめるといいなあと思い、骨の髄まで理系男子のM氏に「物理」に興味をもつきっかけになった本を薦めてもらいました。それが相対性理論の世界~はじめて学ぶ人のために』です。はい、言わずと知れたアインシュタイン相対性理論を一般読者向けに解説した本なの。

f:id:chinpira415:20170701234452j:plain

▶まず見てほしいのは奥付!最初の発行が1966年8月25日で、私の手元にある最新本は2015年7月3日発行の第100刷版。どうやら超ベストセラーの1冊らしいのよ~。ところがどっこい!M氏は中学生のときに「お~~,オレの知らないこんな世界があるんだ!」と興味深く読んだらしいけど…あのですね、それはむしろ清廉な中学生だからノレたわけで、手垢にまみれたババアのわたしじゃ「お~~♪」なんてスンナリ読み流せませ~ん。専門用語や数式はもちろん、難解な言い回しなんてほとんど出てこないのに、そぎ落としたシンプルな構えだからこそ、俗にまみれた脳ミソをいちいち雑巾がけしながら読み進めないと、雰囲気すら味わえなくて、しょっぱなからモヤモヤの連続(汗)。そもそも科学的なものの考え方に慣れていないわけで、思わず学生みたいにノートを取りながら読みましたよ(爆)逆にいえば、大人のフリをするってことは、いかに自然のしくみを割愛し、合理主義に流されるかなんだなあ…と、気づかされちゃいましたね。

f:id:chinpira415:20170701191751j:plain

▶じゃあこの本が退屈で放り出したくなったかというと、正反対!そのポイントは2点。 1つは、科学的なものの捉え方を促されるうちに、 じぶんの中に使っていない筋肉があることに気づき、その筋肉がちょろっと稼働する快感があったこともう1つは、本の構成が相対性理論以前の研究の歴史から始まっているので、研究者たちのバトンタッチの連続の果てに登場した相対性理論(特殊と一般)の起伏にとんだプロセスが、血沸き肉躍るドラマになっているところ。思わず伊藤整の傑作『日本文壇史』を思い出しちゃった!ここに名前が挙がるのはごくごく一握りなわけで、それこそ裾野には数えきれないほどたっくさんの研究者がいたんだと思うと、胸が熱くなっちゃうんだよね。しかも、人類の歩みが続く限り、この先も更新し続けるだろうという未来の博打ドラマが立ち上るからさぁ~、色っぽい話じゃないの(笑)。ただ、電子の世界が解明されはじめ、アインシュタインの発見を証明する手立てが一気に開花するところが、素人にはやっぱ早すぎて…(汗)。まっ、そこから先はさらなる自主トレですかね♬

 

文系男子T氏オススメ★純文学

『忌中』車谷長吉(文春文庫)

▶さて3冊目は、ガラリと趣向を変え、ねっとりと鈍い光を放つ車谷長吉『忌中』です。車谷作品は、直木賞受賞作の『赤目四十八瀧心中未遂』を読んだ切り、縁がない(汗)。『赤目』は映画化もされ、寺島しのぶの脱ぎっぷりが話題になったよね。車谷を評価していたのはあの白洲正子だけれど、その手放しの賞賛の様子は、深沢七郎(天才!)の才能を恐れた三島由紀夫とダブり、高貴なインテリは土俗な輩にめっぽう弱いんだなあなんて思ったものです(苦笑)。おぼっちゃま&おじょうちゃまの目には、地獄に片足突っ込んでいるような男たちが、ひたすら眩しかったのかもしれないね。

f:id:chinpira415:20170701234411j:plain

▶ところで『忌中』を薦めてくれたのは、ドキュメンタリー映画を撮っているT氏。「もし自分が劇映画を撮るならこれ!」と、かなり惚れ込んでいらっしゃるご様子。あらすじはこうだ―67歳になる主人公の菅井という男が、寝たきりになった女房に自殺幇助を懇願されて実行する。じぶんも後を追うつもりが死に損ない、茶箱に入れた女房の腐敗した死体を愛おしがりながら、人生最期の大博打に身を任せるという墜落劇。40ページほどの短編だが、さすが最後の私小説作家と呼ばれるだけあって、異様に濃厚かつ緻密な設計。無駄な場面が一切ない。主人公は、死の淵にたたずみながら、どこまでも他人事のように世間さまと最後のダンスに興じる…。確かに映像化したくなる気持ちもわかりましたね。

f:id:chinpira415:20170701154822j:plain f:id:chinpira415:20170701235444j:plain

▶ただ、やっぱ男が好きそうな話だなあとは思った。キーワードは「女」と「借金」と「将棋」。渇き切った風に描いているけど、底の方がウェットなんだよね(笑)。わたしの苦手な“無様なオレに酔ってる匂い”が、時折り鼻をかすめたし…。で、そこを突破するにはキャスティングですよ~。わたしなら菅井役をぜひ左とん平(大好き♥)でお願いしたい!だってとん平には死のイメージがないから、かえって恐ろしい絵になると思うのよ。Tさん、このプランでカメラを回すのはどう?Tさんのノンシャランとした作風で、業の深い男の挽歌を撮る―面白くなりそうじゃない?(笑)

 

理系男子H氏オススメ★ノーベル賞物理学者自伝

『ご冗談でしょう、ファインマンさん』上・下 R.P.ファインマン岩波書店

▶いつも朗らかで上機嫌なH氏に薦められた『ご冗談でしょう、ファインマンさん』は、理系の研究者なら誰もが知る名著らしい。聞いたことも見たこともない人の自伝、しかも上下2冊…(汗)。一瞬腰が引けたけど、H氏は落語がお好きな方だから、きっとありきたりの偉人伝ではないだろうと踏んで、さっそくトライ。…するってーと、もー、タイヘン!ノックダウン!すっかり脂っ気の抜けたこのちんぴらババアが、寝ても覚めてもファインマンLOVE♥いやー、こんなにチャーミングが男がいたなんて、思わず地球を抱きしめたくなったわよ~、恋ですよ恋(爆)。運命のメンズをみつけた~♫ 

f:id:chinpira415:20170701233512j:plain

▶鬼籍に入ってすでに久しいリチャード・P・ファインマン( 1918年5月11日 - 1988年2月15日)は、アメリカ合衆国出身の物理学者。その肩書たるや、わたしと0.1ミリの接点もない歴史に名を遺すエリートざんすが、ハッキリ言って“ちんぴら魂”はいっしょ!紛れもなくソウルメイトよ(笑)いま、彼の魅力を語れと問われたら、まるでお付き合いしていたかのごとく、優に3日はしゃべり続けられる自信があるわ(爆)。そのくらい本人からの聞き語りでまとめられた幼少期からノーベル賞受賞後の後日談までの回想録は、活字を拾いながら同時に目の前で実際のエピソードに立ち合っているかのごとく、精彩を放っているの。日本語訳がこれまた素晴らしい!ファインマンの娘さんと同級生の子を持つ、言わば保護者友だちの女性に氏が任せたそうだから、より人柄が加味された仕上がりになったんだろうね。

f:id:chinpira415:20170701184807j:plain

▶世の中を絶えず旺盛な好奇心で観察していて、誰に対しても対等に心を開き、何でも面白がり知らないことを恥じず、いかなる定説だろうがじぶんで確かめいたずら好きで、安楽な地位を拒否し、生徒に教える時間を尊び、自分は自分以外の何物でもないとの信念を崩さず、いつもやりたいと思ったことをやり、可愛い女の子に目がなくて、ストリップ小屋で勉強をし、考えることが大好きで、これと決めたらモーレツな集中力で習得し、音楽も絵もじぶんの表現に結実させ、天下国家におもねることなく偽善を蹴散らし、絶えず直球勝負で、自分を欺くな&何ものをもいとわず「誠意を尽くしてやり通せ」と科学的良心を説くファインマン―こんなに上等な男と遭遇できなかったとは一生の不覚!初の奥さんが亡くなった後のエピソードを読んで、彼に惚れない女子はいないでしょう~。ビジュアルもとびっきりイイ男なのよ★

f:id:chinpira415:20170701185124j:plain f:id:chinpira415:20170701185912j:plain

▶どう?ちょっとテニスのフェデラー、入っているよね?(笑)映画化するなら、監督はロバート・アルトマン、青年期役をアンドリュー・ガーフィールドでひとつ夜露死苦!なにせわたし、生まれ変わったらMIT(マサチューセッツ工科大学)に入っていっしょにお勉強するって決めましたから(爆)。でもどうする英語?…とりあえず「Take Me!」で乗り切るわ♪

 

PS 次号は7/20にUPします