束の間のダーリン♥年下編

前回に引き続き、スクリーン内で束の間恋に落ちた洋画男優遍歴を紹介する『 束の間のダーリン』の第2弾。今回は年下編でございます。幼い頃から枯れ線だったあたしも、気づけば50代後半となり、知らない間に「ナイス!」と思うお相手が年下になっていたんですよね…恥ずかしながら、ここに書くまで気づかなかった(汗)。

7人目ダーリン♥  

f:id:chinpira415:20190908125010j:plain▶こいつもろくでなし野郎だったなあ…7人目のダーリンはデヴィッド・シューリス(1966-) ここからあたしの男優遍歴には年下男が登場しまーす。マイク・リー監督の『ネイキッド』('93)で強烈な印象を残したドブネズミ王子ですわ(笑)。シューリスが演じたジョニーは、乱暴なSEXに興じるわ、誰かれ構わず突っかかるわ、盗みはするわのクソ野郎!しかも、自堕落な生き方の言い訳は呆れるくらい饒舌だし、他人の誠意にちゃっかり甘んじるような姑息な面もあって、とにかくダッせぇ~の。

f:id:chinpira415:20190908140138j:plain▶かつてのアウトローには多少の美学があったが…ジョニーはゼロ…いやマイナスです。ところが人一倍世界に懐疑的な彼が、誰よりも“いま”を猛烈に生きてるように見えてしまう…これが映画のマジックなんですよ~😊 次の動画は、ちゃぶ台ひっくり返してトンズラする長廻しのラストシーン。ちゃちな絶望ごっこで終わらせないシューリスの存在感、まさに役者の身体性がスクリーンに生命を吹き込む瞬間が捉えられてます★


naked.1993. David Thewlis

▶そしてシューリスといえば、忘れちゃならないのが持てあますほど長く細い指と、しなやかな手の表情!骨フェチ長沢節先生もお墨付きの指の美しさに、クラクラしちゃいますよ~ ドブネズミからハリーポッターシリーズへの大転身も、あの優雅な指でかるーくクリア(笑)。そうそうこの映画、主人公を取り囲む女たちもすっごくイイの。ジョニーが無軌道に浸っている間に、女たちは着実に現実を受け入れて進み、実は映画のど真ん中にドーンと腰を据えて光り輝くのは彼女たちなんだよねー、傑作です👍

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8人目ダーリン♥

まさかこのあたしが007にハマるとは!007/カジノ・ロワイヤル('06)で6代目ジェームズ・ボンドに抜擢されたダニエル・クレイグ(1968-)が8人目のダーリンです 2007年、正月早々、“新生ボンド第1作”とご対面したときは興奮したな~。

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▶まず、意表を突かれた…だってそれまでの007と違ってダニエルは冷気が強すぎでしょ?どっちか言ったら悪役顔(汗)。先代のピアース・ブロスナンの洒落っ気やユルさを贔屓にしていたあたしとしては、冗談が通じなさそうなボンドじゃ野暮で嫌だなあ…なんてシンパイしてたわけ。ところがドッコイ、幕開けからダニエルの身体性に目が釘付け!動いている時と静止している時ではガラッと肉体が変貌するのよ、ひぇー

f:id:chinpira415:20190910090814j:plain▶しかもこのアクションが、速くて正確で、ずしりと重く響いてくれちゃうの~。そしてどんなに激しいアクションをこなそうが、スーツ姿はカンペキ。スーツの上からでもダニエルの筋肉が想像できてしまうのよ。あっ、そうそうこの肉体派6代目ボンドは、その分いたぶられかたもハンパなくて、全裸拷問シーンまで登場(爆)。笑いより、悲哀の体現できる新ヒーローにリニュアルしたんだよね。だから毎回スクリーンから“挽歌”が立ち上るのぉ~、東映やくざ映画みたいに~(笑)。

f:id:chinpira415:20190912220524j:plain▶ザンネンながらダニエルのボンドは来年4月公開の『007 NO TIME TO DIE』が見納め(涙)。撮影現場にチャールズ皇太子が表敬訪問したって!すごいツーショット

 

9人目ダーリン♥  

▶9人目のダーリンは台湾出身のチャン・チェ(1976-)。なにせ、15歳で主演した衝撃のデビュー作が、エドワード・ヤン監督の傑作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件('91)ですからね!以来、大物監督から引っ張りダコで、正統派美形スターの地位を不動のものに―。ただ、大作アクション&コスプレ出演が多くて色物扱いされがち…もったいないのよぉ~。前髪の後退も若干シンパイ…いっそ今から坊主に…いらん世話か?

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▶ところで、正統派にはめったに食指が動かぬちんぴらが、なぜチャンを束の間のダーリンに選んだのか…。はい、それは呉清源(ゴセイゲン)〜極みの棋譜('06)と出会ったからなんですよ囲碁の神様”と称され、日本の囲碁界に多大な影響をもたらした中国出身の天才棋士呉清源の波乱の半生を描いたもの。おそらくチャンの出演作品で一番ミニマルな内容で、一番お地味なキャラなのではないかしら…。

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▶なにせイガグリ頭で碁盤の前でじっと座っている姿がメインですから~(笑)。それにフツーの伝記映画と違い、偉人の人生を説き明かして謳い上げたり、内面を吐露させるシーンが1つもないの。むしろ近づき難い存在として描き、勝負師としての資質以前に呉清源に備わる清らかな精神の音色みたいなものに耳を澄ます映画になってたよ。

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チャンの美しすぎる横顔が、ミステリアスな演出でさらに際立ち、思わず息を潜めて魅入ってしまいマシタ。ツルツルおでこをなでたいな~♪見落とされそうな小粒な映画だけどマジに必見★呉清源ご本人も草葉の陰から目を細めていることでしょう(笑)。

 

10人目ダーリン♥  

▶ついにダーリンも80年代生まれに…(汗)。ベン・ウィショー(1980-)くんです。『パヒューム  ある人殺しの物語('07)のキワモノ調香師役で鮮烈に登場し、アイム・ノット・ゼア(’07)であのボブ・ディランに扮し、甘い顔だけどなんだかいつもヒト癖ある役ばかりだな…なーんてチェックしてたら、次の『ブライト・スター いちばん美しい恋の詩('09)では19世紀ロマン派の詩人ジョン・キーツを青白く演じ、イッキにときめき全開よ~

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▶実は、映画はキーツの婚約者ファニーに焦点を当てているので、ベンくんの出番は意外と少なめ(汗)。新進気鋭の詩人ながら、一文無しの居候の身で、拍子抜けするほど押し出しが弱く、震えて生きているような繊細な男キーツ…しかも25歳で夭逝。まるで一昔前の少女漫画みたいな役どころをベンくんがウルウル演じ、えー仕事してまっせ~。そうそう、前出の6代目ボンドの相棒役天才メガネ男子Qも大好き~♥♥ 殺人鬼からミュージシャン、詩人に研究者まで…派手過ぎず地味過ぎず…なんでもイケますわ

f:id:chinpira415:20190912222206j:plainプラダファッションアイコンにだって、さらりとなっちゃったりして…。わかった!どうもベンくんのこの首のラインが小鹿を連想させ、辛うじて残っているわが母性本能がこちょこちょくすぐられるみたいよー。あー小鹿、ウチで飼いたいな…(笑)

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11人目ダーリン♥  

▶鹿といえば…ジャック・オディアール監督の傑作預言者('09)には、不意に鹿が登場して宙に舞う強烈なシーンが出てきます。そしてこの映画の舞台となる、危険度200%な刑務所内にあたしの11人目のダーリン、タハール・ラヒム(1981-)くんを発見♥ 猛獣たちがのさばる檻の中へ、ひとり放り込まれたアラブ青年役…24時間絶体絶命だあ!


映画『預言者』予告編

▶とはいえ映画の醍醐味は非日常空間ののぞき見ですから、塀の向こうでしのぎを削る男たちの具体的なスケッチが痛快で退屈しらず~。当初は黒目の分量が大きい子犬顔のラヒムくんにハラハラしつつも、意外にも学習能力が高くてさー(笑)、サバイバルの知恵を身につけて顔つきや振る舞いが徐々に変化して行く様子に魅了されたなあ~♫ 所内を仕切る牢名主との疑似親子関係や、じぶんが殺した亡霊との対話シーンなど、閉じた舞台に奥行をもたせる演出も効果的。ラヒムくんの出世作となった1本ですわ👍

f:id:chinpira415:20190916095121j:plain▶その後も、鬼才監督たちから引っ張りダコだわ、作品選びも抜かりないわで、目下フランス映画界で最もいいポジションにいる若手役者の一人じゃないかな…。彼の魅力はどこかぼーっとしてると言うか(笑)、トンデモ状況に置かれても身に染みないかんじがあって、その無頓着さが緻密かつスピーディに進行する現代社会の時間軸と逆行し、謎めいて映るところなの。ぼーっとしてても一生懸命…これ最強のコンテンツです★

f:id:chinpira415:20190916103045j:plain▶そしたらなんとあの黒沢清(1955-)がラヒムくんに目を付けたのよ!パリ郊外を舞台にした黒沢監督初の海外資本作品ダゲレオタイプの女』('16)で、亡霊を愛してしまう主演の青年役に抜擢。あの世とこの世の境目を超えて、愛の深みにハマってゆく主人公を、気負うことなく、ごくごく自然な顔つきで演じるラヒムくんに、新たな柔軟さを発見しちゃいましたね~おフランスで怪談を絵にしてしまえる黒沢、さすがです👍


黒沢清監督作品/映画『ダゲレオタイプの女』予告編

そんなこんなで、しょーもないババアの戯言をダラダラ書いてしまいましたが、いかがでしたでしょうか…(汗)。人工何とかが進んだとしても、そもそも映画自体が幻影なんだから、むしろ生身の人間が演じる物語を見たいと願う気持ちはより強まるんじゃないかな…。まっ、あたしの目👀の黒いうちは、束の間のダーリン探しは続きますよ~。

PS 次回は10/12に更新します