はじまりは20年以上前にマブダチからもらった1枚のポストカードだった―。2匹の鴉を前景にして、遠くにエッフェル塔が霞んで見えるモノクロ写真。なぜかこの写真を目にした瞬間、鴉の存在感に我が魂が持っていかれちゃったちんぴらです(汗)。翼を広げて飛び立つ鴉と、高みの見物の鴉…。この20年、2匹の鴉をながめては、その時々のじぶんの心境を推し量ってきましたね…今のじぶんはどちらなのかと―。そして一昨日、ひょんなことから額装して以来初めてカードの裏を見返してみたら…jean pascal imsandのクレジットが―。作者名なのか???ドキドキしながらすぐさまネット検索しましたよ~。するってーと👇
昔のPARISの風景だと勝手に思い込んでいたら、なんとこの美男子が作家本人で、1960年生まれローザンヌ出身。あたしと1歳しか違わないの。しかもスイス写真界の新星の1人として注目されていたのに、 1994年に34歳の若さで他界したって…。これをくれたマブダチに知らせたかったけど、実は彼ももうこの世にいない…😢 それでも作品だけは残り続ける!ネット上で閲覧できた写真は、どれも詩的でブラボー!20年前なら追い駆けられなかったルーツ探しが今じゃ無料で可能に…。遅まきながら出会えてよかった★
というわけで、1枚のポストカードからあたしの“鴉愛で”が始まりマシタ~♫ 一度スイッチが入ると、じぶんの目が勝手に対象にフォーカスするようになるから笑っちゃう。ヒマさえあれば憧れのキミを目で追う放課後…みたいなもんですわ😊 例えばわかりやすいところでは絵画を通じて“鴉愛で”。ゴージャスな乱舞をお披露目するのは―
長谷川等伯(1539-1610)の重文『烏鷺図屏風(うろずびょうぶ)』(1605)の左隻でございます。もぉー、なによ~このじゃれっぷり~!文句なく血が沸騰しますね。何せ鴉は、古来から世界各地で「太陽の使い」や「神の使い」としてあがめられてきた生き物だから、絵画の中では隠れヒーローとしてけっこう君臨してんのよ。
竹内栖鳳 (1864-1942)、左は『泊舟群烏図(はくしゅうぐんうず)』(1905)、右は『白雨烏(はくうがらす)』(1917)の左隻。ざっくりと即興で描かれているように見えても、構図にスキなし。何とも贅沢な余白にウットリ。空気の流れさえ感じられるよね~。与謝蕪村(1716-1784)『鳶鴉図(とびからすず)』も外せません。切手にもなってます。雪の中、肩を丸めて寄り添う姿はまるでバディムービー(2人組を主人公にした映画)のワンシーンです♥
なんだか久しぶりに『ストレンジャー・ザン・パラダイス』('84)を見直したくなってきたぁ~。ほら、蕪村の鴉といっしょでしょ?3人ですが―(笑)。
もちろん洋画界でも鴉はひっぱりダコ🐙 まずは雪つながりでブリューゲル 1世 『雪中の狩人』(1565)。手前の狩人、その横の農民、真ん中は氷上遊びで、遥か遠くには切り立った山並みがそびえ、そして視線は曇り空にも伸びる―1枚の絵にどんだけ欲ばり構図なんだあ~。そう、ちっこいけど、ここは鴉じゃなきゃキマらないよね👍
ゴッホ(1853-1890)さまの『カラスのいる麦畑』(1890)では、群れ飛ぶ鴉が絵筆のうねりパワーを倍増させる効果を生み出し、不穏な気配を際立たせております💀 カァーカァー、ガァーガァーと、鳴き声まで聴こえてくるようだ。
旧約聖書では、洪水の後、ノアの箱舟から初めて外に出されたのが鴉と言われていて、その由来から西洋では吉凶を占う鳥とされているとか。ピカソ(1881-1973)が極貧時代に描いた『女とカラス』(1904)は、そんな占術的な香りをまとった1枚に見えますね。女のフォルムと鴉のフォルムが重なり、なんともエロティック。
お次はルソーの『戦争』(1894)。オルセー美術館で見ましたあ~。タイトルとは裏腹に隅々までくっきり明快なタッチ。白、黒、ピンクにブルーと、まるで絵本のようだけど、松明と剣を持つ五月人形みたいな少女が飛び越えて行く先は、死体の山に群がる鴉(汗)。しかも時間が止まって見えたりなんかして…強い絵だなあ。
ピカソ➡ゴッホ➡ルソー➡そして我らが会田誠の登場です。2013年【天才でごめんなさい展】で目撃した『電信柱、カラス、その他』(未完)にはのけぞりました~。垂れ下がった電線と六曲一双の凹凸が見事に呼応し、この世の果ての、さらに奥の奥まで妄想を駆り立てられました。一方で鴉に目を凝らせば、ちぎれた指や目玉をこっそり咥えていて…そこだけは赤々と光る…。震災直後に書き下ろした正真正銘の傑作。マジに天才★
浅井忠(1856-1907)みたいな写実画家って若い頃には全く気にも留めなかったけど、会田誠からの逆の流れで日本美術史を見返せば、「ほーっ、いいものだな」と。石川県立美術館所蔵の『農夫とカラス』(1891)、ドリフのコントシーンみたいでスキ♥ 種蒔きした端から鴉の思うツボになってて…(笑)。舞い降りる一匹と背後の農夫の動きもタマラン♪
鴉って人間との距離が近い生きものなんだよね。どちらかと言うと不吉なイメージや悪戯なイメージが強いのに、童画にも使われているし―。かこさとし(1926-2018)の『からすのパンやさん』シリーズなんて、『からすのてんぷらやさん』まであんのよ、なんで天ぷらなんだよ~(笑)。右はスイス人絵本作家ハンス・フィッシャー(1909-1958)の『7羽のからす』。その昔、フィスの線に憧れてよく真似して描いたものです💦
最近じゃ『チコちゃんに叱られる』で毒を吐くキヨエがお茶の間に襲撃。浮き沈みの激しい生きものギョーカイで、これだけ低飛行旋回を持続できるのは、霊鳥だからか(笑)。神武天皇の東征の際には、3本足の「八咫烏(やたがらす)」が松明を掲げて導いたという神話もあるしな。そしてまたもやここでも『古事記』に行き着いちゃったよ~。
そんなこんなで「鴉を愛でる💙美術編」、いかがでしたでしょうか。1度では書き切れないので、続きは次回「鴉を愛でる💙リアル編」にまとめますヨ。お楽しみに~♫
PS 次回は4/29に更新します