国際芸術祭 あいち2022✑ 備忘録

『国際芸術祭 あいち2022』の広告はしょっちゅう目にしても、どんな催しなのかピンとこなかった人も多かったのでは…? “表現の自由展”騒動から早や3年。あいちトリエンナーレとして定着していた現代美術の祭典を、今夏から名称変更をして再スタートさせたのが『国際芸術祭 あいち2022』。

でも、新名称は略しづらく、誰かと話題にするときには従来通り「あいトレ」を使用してました。夫婦別姓が難航してる中、イベントの名称くらいは勝手にさせろよ!ですね(笑)。ちなみにこっそり置かれた英語版のガイドマップにはTriennaleの表記が…👀

そんなわけで、いつものようにフリーパス券を買い求め、いつものように全会場を歩き、いつものようにじぶんから近づくを繰り返し、いつものように未知の星と遭遇して、いつもように心地よい胸騒ぎを覚えた作品の備忘録です。なにせ現代ARTは未来への博打~♬破産しても賭け続けまーす(爆)

 

横野明日香(1987-) 

まずは芸文センター10F会場に入って、どしょっぱつに登場する横野明日香『採土場』('22)になぎ倒されました~。瀬戸の採土場を描いた大作です。てっぺんに見える鎌首をもたげて作業中の赤いシャベルカ―、まるで月面のクレーターみたいな山肌の表現、均質に塗りこめられてて人影のない空漠感…なんともSF的でそそられました。もう一枚、対面に飾られた横位置の『瀬戸の風景』('20)もデカさが魅力★遠景の山並みと、真ん中のむき出しの山肌と、前景の居住空間の3つのレイヤーの描き分けと構成が絶妙で、かつて瀬戸を訪問したときの記憶が呼び起こされ、虚実入り混じった世界へ没入してしまった。横野さんは県美出身で地元の瀬戸市で活動している作家とか。耳も眼も澄ましたくなる作風、注目してゆきたいです。

モハンマド・サーミ(1984-) 

バグダッドで生まれたモハンマド・サーミのコーナーは、照明が落とされていて、暗がりの中で彼の描く絵画作品とミステリアスに出会う仕立て。スポットライトは点いているものの、近づいて眼を凝らさないと捉え切れない。森の中へ分け入って鑑賞するような気分になりましたね。こちらは『プア・フォーク』(2019)

しかも目撃する景色に人物は不在でやけに心許なく、近づくほどに不穏な空気に包まれます。次の『難民キャンプ』(2021)なんて、ホラー映画の舞台に見えなくもない…💦が、一方で1枚の絵の中で繰り広げられる光と影の移ろいが、妙に心に染み入るんです

作家はサダム・フセイン政権下のイラクに生まれ、その後故郷を離れて移民として暮しながら絵を学んだというハードな経歴の持主。ただそうした背景を知らなくても、1つの絵画、1つの物質として『テープが貼られた窓』(2018)は魅力的でした。行き止まりの割にはやけに眩しくて…。孤独にもグラデーションがあるのかもしれないな

百瀬 文(1988-) 

続いては映像作品、百瀬文Jokanaan』(2019)。オペラ『サロメ』の一節が熱く歌い上げられる中、その音源に合わせるように、口パクユダヤの王女サロメ役を演じるのが左側の男性で、右側の女性は男性の動きをモーション・キャプチャーでデータ化して作られたCG映像。つまりサロメとヨカナーンの役回りを、ヒロシ&キーボー(!)的に男女の恋愛駆け引きと見せかけ、実際は性別役割も実体もズラした仕掛けで物語ってるわけそもそも「サロメ」は上映禁止になったこともある古典問題作だから、ヒロインが狂い咲きする下りをどう踏み込んでも、鑑賞者のマインドは割と柔軟に対応できるんだよね。百瀬作品の現在性を凝縮した方法論でも、無関係に進行する2つのサイトがズレながら共鳴する様には、生身とはまた別の情感が立ち上りまくり、ドキドキしたよ~。ちなみに、消音にしたらどんな印象になるんだろう…これまた興味津々。

ローリー・アンダーソン(1947-)&黄心健(1966-)

様々なパフォーマンス・アートを繰り広げてきた米国のローリー・アンダーソと、台湾のニューメディア・クリエイター、黄心健(ホアン・シンチエン)の共作『トゥー・ザ・ムーン』(2019)は、観客自身が宇宙飛行士となり、15分間の月面旅行が体感できる予約制のVR作品。人生初のVRでしたが、これが意外にもおっとり&のんびりムードの詩的演出で、それゆえ逆に“いざなわれた感”が身体に残り、なかなか愉快な体験となりました~♬やっぱVRと月面旅行という組合せが勝因なんだろうな。誰も日常的に知ってる場所なのに、一番遠いところにあるから大部分の人が訪問できない「月」…そりゃあ自ずとロマンティックになるわな😊そして文学的な6つのシナリオ(星座/DNAの博物館/テクノロジーの荒地/石の薔薇/雪の山/ドンキー・ライド)に導かれてのお散歩遊泳。そう、VRは孤独との相性もイイのよねそれが快楽でもあり、空恐ろしくもありー

アスターゲイツ(1973-)

常滑会場で目を引いたのはアスターゲイツ。かつて土管を大量生産していた工場主の使われなくなった住居を、音楽、ウェルネス、陶芸研究のためのプラットフォーム「ザ・リスニング・ハウス」(2022)として再生させてます。古民家を開かれたスペースに改装する取組みは目新しいものじゃないけど、ここは想定外の空間に化けてて超クール💎ネオン管を和室、それもコテコテの古民家に持ち込むとは!日本人では思いつきにくい視点。ネオンの光って悪目立ちしそうだからね。ところがどっこい、ご覧の通り全く違和感がなく、むしろシック。陰翳礼讃を心得てるというか…参りました(ぺこり)。そしてプラットフォームとしたからには、おそらく今後この場がどう活用されていくかが作家の一番の関心事だよね?わたしもまた足を運んでみたい。

AKI INOMATA(1983-)

歴史的な町並み保存地区有松で、この地でなければ置き換え不可能な展示と遭遇。AKI INOMATAは、なんとあのミノムシに有松絞り生地を与え、蓑(巣筒)を作らせたというから仰天です👀『彼女に布をわたしてみる』(2022)では、蓑を纏い(!)葉を食べるミノムシの姿を映像でお披露目してくれました。江戸時代末期の絞問屋の元作業場空間が、さながら絞りドレスショーのランウェイに様変わりしてあでやかだったわ~、ブラボー♬さらに絞り職人の技術とミノムシの生態を融合させ、新しい絞り染めの技法まで考案したというから面白すぎる。染め上がった生地は、ミノガの翅の形の団扇に仕立てられ、ディスプレイも含めとってもシャレオツ。生き物の生存戦略と職人の伝統技術…背後には共に費やされた時間が流れていて、鑑賞者をがっつり魅了していたわ

ガブリエル・オロスコ(1962-)

2015年の大規模個展で惚れ込んだガブリエル・オロスコ。まさか有松の竹田家茶室で見られるとは思ってもみなかった😊でもって文化の異なる歴史ある建物が舞台だろうと、素知らぬ顔してスルスルッと忍び込み、俺様テイストをキラッと炸裂昔から日常的にここにあったような顔つきで展示されてて思わずニンマリ!日本の古布を使ったなーんちゃって掛け軸『オビ・スクロール』シリーズ、単位の「尺」にインスパイヤされたという『ロト・シャク』シリーズ、めちゃグッときた。何て軽やかなのよ~嫉妬するほど好き『ロト・シャク』は、長い方が六尺で短い方は三尺で作成され、彼の哲学が反映されているみたいだけど、何せどっちも垂木に養生テープとか工業用テープで幾何学模様を貼り付けてあるだけの野暮っちさでさー、このギャップがタマランのです。それでいてもちろん建物にしっくり馴染む優雅な美しさ…。とりあえず今すぐ養生テープを買いに行こ(笑)

三輪 美津子(1959-)

さて最後を飾るのは今回の展示で最もハッとさせられた作家、三輪美津子。名古屋出身らしいけどまったく知らなくて…慌ててネットで検索してみたもののさほど情報も得られず…💦芸術祭のHPには「初期の頃から同一人物とは思えないほどスタイルの異なる作品を制作してきました。その制作態度からは、ひとりの画家としての確立した存在となることを避けようとする彼女の意思が感じられます」とある。じぶんで粘土をこねて造った立体物を油彩で描いた『彫像』(2010)シリーズ絵の前に3度立ったがまったく見飽きず―はたまた『山頂にて』というタイトルのフォトペイント(1990)に圧倒されていたら、同じタイトルで高山植物絵葉書のコラージュ(1989)が登場したり、天上近くには横一列で同じ配色に塗られた20枚の作品『青空』(1987)が掲げられ、さらに10Fフロアにも長編小説10冊の冒頭と文末のテキストを画面の上下に配した『READ・MADE』(1996)が―。何より全部平面作品なのになぜか平面の手触りがなく、じぶんの頭の中で勝手にVR化してた!どこまでもそっけない振る舞いの三輪さん、いったい何者?HPで公開されている画像バイオグラフィを眺めるだけで血が沸騰する。三輪さんの体温が低くなればなるほど、わたしの体温は上昇するんですよ~、ヤバいよヤバイ!最近の作品がないけど、今はどんな絵を描いているのだろう…。あー、もっと見たい!ナマで見たい!他にも、台風をうっちゃりながら一宮会場でハジけたり、有松で絞りをあしらったトレーナーを衝動買いしちゃったり、常滑で錆トタン好き魂が全開になったりとエエ時間が過ごせました。このあと最終日の10/10にアピチャッポンのVR作品『太陽との対話』が待ち受けます(追加販売でなんとかチケットゲット!)。続きはあいトリ2025で(笑)

PS 次回

みんなの「ちょっと贅沢、やや我慢」アンケート【後編】

じぶんのいつものスケールよりちょっぴり欲張ったこと、逆に冷静になって諦めたりしたことを回答してもらったみんなの「ちょっと贅沢、やや我慢」アンケート。いよいよ【後編】のお届けです。引き続きどぞー♪

【レポート⑧M・Oさん 】

贅沢:帰省時の宿/最近ちょっとだけじゃなくてかなり贅沢する予定が、ダンナの実家の高知へ帰省するときに利用する宿1泊目は高知城を眺めながら入浴できる露天風呂付きのお部屋です。孫と一緒にお風呂に入りたいという希望を叶える為、今までで1番高い宿泊料金の部屋を予約しました~。2泊目は実家近くの足摺温泉郷のホテル。地元の憧れのホテルだったようで、「天皇陛下が泊まったホテル!一度泊まってみたかった!」とダンナは大喜び。予算がなぁ…とは思ったけど、今回は2泊とも贅沢しますよ~。どうか、高いだけでイマイチのお宿じゃありませんように😊

我慢:デパ地下サラダ/我慢は日常的に積み重なってますが、「デパ地下のサラダが食べたいな〜」って思ったときに、安い方を100グラムだけ買ってレタスの上に盛り付けて、カサ増しして食べたりすることかな(笑)。

▶コロナ禍は田舎への帰省ハードルを上げたよね。でも、生まれたてのひ孫を見せたい一心で、親子3代の連携プレーができたなんて…ちょっと感動的!特に遠方だと、じぶんたちも旅行気分を楽しまないとモチベーションが維持できないしね💦そして、それもこれも日常的な我慢を積み重ねているからだとわかるデパ地下ネタ(笑)。ハレとケ、ええ着地じゃないの~、ところで宿はどうだった?(爆)

--------------------------------------------------

【レポート⑨K・Nさん 】

贅沢:サプリ/紫外線カモ~ンな状態で散々浴びっぱなしのまま早や還暦💦日焼け止めもベタベタするからあまり使用してこなかったし、美白とは程遠い生活を送ってきたけど、ここにきて皮膚科でお肌ケア中。最近インナーケア・サプリメント【Sunsorit U・Vlock】30粒 ¥7,020を購入して使い始めました。私にはかなりの贅沢品ですわ~。今更ですが、これで少しは日差しのダメージから守られる?!

我慢:ネット通販/そこそこのネット通販歴を持つ身ですが、今までは「有ってもいいかなぁ…。なんとなく使えそうかな…」程度でもポチポチしてきたけど、36年振りにプー太郎になったので最近は「無くてもいっか。他で代用できそう」とポチポチをちょぴり我慢!?中。そうは言っても昨日も2ポチしちゃったけどね~へへへ

▶K・Nは3月に大手化粧品メーカーを定年退職。就業時は、業界にいながらおっそろしく美容にズボラだったのに、退職して美肌に目覚めるって、大笑いよ。いったい何を目指してるのか?…50年以上の付き合いだが、今んところ謎(爆)。もしかしてネット通販は縮小して、ネット婚活を始めているのか?捜査しておきます!

--------------------------------------------------

【レポート⑩Y・Hさん 】

贅沢:手作り野菜/実家の瀬戸から私が暮らす新宿まで、定期的に送られてくる父が作るさまざまな野菜たち(🍅、🍆、🥒、🌽)です。贅沢、贅沢~♬どの野菜もみずみずしくて味が濃いから、調理などいらない。素材そのものの美味しさでじゅうぶん満足しちゃいます(とはよく言った…単に私が料理下手なだけです🙊)。

我慢:デザート/職場の健康診断を控え、ほんのちょっと🤏我慢したのがデザートです。無事に健診を終えて食べたあとの『ふ饅頭』はサイコーでした~😋あれ?いずれも食だね。色気より食い気ですから仕方ないか…💦

▶食料品の値上げが続いている中、わざわざ実家から新鮮野菜が届けられるなんて…これ以上贅沢な贈りものはないよね~。父上の体調の確認もできて、離れて暮らす親子の交流にぴったり!我慢明けの「ふ饅頭」も、ぴったり過ぎてヤバイな~。あの優しい甘さと食感が蘇ってきちゃったよー(笑)。

--------------------------------------------------

【レポート⑪K・Kさん 】

贅沢:講座と飲み会/目下、月一で名古屋から東京の講座に通っているのですが、講座終了後に毎回、コロナ禍でこの2年会えなかった東京フレンズと遊んでおります😊講座日程が分かった時点で、全日程の夜の予定も入れる充実ぶり。深夜までの四方山話。夫の単身先マンションで寝泊まりし、翌朝には濃密な講座へ歩いて行けるというベスト環境。贅沢三昧で~す。

我慢:読書/我慢したことは、結構悩みますねー。でも、読みたくて積んである本を横目で見ながら仕事してるのが一番の我慢かも💦…と、今日も積んでしまった本をながめながら思っております。

▶コロナ禍以降、フルリモートになったダンナは名古屋に戻り、じぶんは空いてる東京都心のマンションを宿代わりにできるなんて、サイコーじゃん★しかもお勉強と飲み会の抱き合わせで、学生気分漫喫だって?も~、羨ましすぎる。きっと、靴フェチのK・Kのことだから、東京で物欲も刺激されてるだろうなあ…(笑)。

--------------------------------------------------

【レポート⑫A・Hさん 】

贅沢:浅草 駒形どぜう/最近ではないのですが、贅沢で思い浮かんだのは「駒形どぜう」ですね。それも浅草本店の1階の雰囲気が大好きなんです。天井が高く、広い桟敷席に七輪と鉄鍋を置いて、ネギを山のように入れて食べるどぜうは、落語の世界に出てきそうな江戸の町に迷い込んだ風景のように感じられて心地よいんですよ。…あの空間で食するどぜうは贅沢だなぁと。ぜひまた再訪したいものです。

我慢:散策/実は5月に上京した際に東京都美術館を訪問したのですが、1時間半ほどの鑑賞で今までになく足が辛くなりました。これまでこのような経験はなく、思い当たるフシとしてはメタボ検診等で指摘される体重オーバー💦いよいよ膝が悲鳴を上げているのかなぁと(自己診断)。今までは自由気ままに移動し、観たいものをみてきたのですが、ここ最近は「当日の歩く距離・時間」を我慢し事前に計画するようになりました。やっぱり年齢から来るものなのでしょうかね…トホホ。

▶200年続くどじょう料理店「駒形どぜう」。聞いたことはあったけど、かなりオツなお店ですね★1Fの入れ込み席に並んだ絣の座布団がソソられるぅ~。でもA・Hさん、ここで胡坐をかいて食べるためにも、脚の筋トレ必須ですよ。はい、ちんぴらもすでに美術館のサイズによっては常設展をパスしたくなってます(爆)。

--------------------------------------------------

【レポート⑬Y・Kさん 】

贅沢:イッキ見/ダンナに「脚本が小林靖子だからきっと気に入るよ~」と薦められたアニメ版『進撃の巨人。小林さんの仮面ライダーシリーズが大好きだから確かに気になったけど、全87話って…いったいどうやって見る?💦そこでダンナと娘に協力してもらい、「ママがタブレットにかぶりついている時は、絶対に話しかけないで!」と毎日贅沢時間をキープしたの。高性能イヤホンも使い、芝刈り中でも目は画面👀。そうして2週間でイッキ見達成。いやー、サイコーに面白かったあ~大満足!

我慢:シミとりコスト/とにかく顔のシミが気になってしょうがないの💦で、近所の美容クリニックの「シミ取り放題、55500円!」という広告に注目し、誕生日月の9月にトライしようと決意しました~♬だから、“取り放題”でイッキにキレイになるとふんで、この夏はシミ取り化粧品の購入をぐっと我慢してるところです(笑)。

▶あついぜ~、Y・K。アニメやシミを話題にしてるけど、おそらくY・Kが求めているのは「イッキに!」の方なんじゃね?(笑)仕事に子育てに家事にフル稼働の40代女子の毎日を想像するとさー、時間がいくらあっても足りない感がMAXだもん、気になったものはイッキにさばきたいんだろうなあ、わかるよー。まずは取り放題レポートをお待ちしますね~(笑)。

--------------------------------------------------

【おまけレポート:ちんぴら版 】

贅沢:青畳で昼寝/リフォームの際に、なんとなく障子と畳を残してみたけど…これがマジに大正解!新居に越してきて初めて過ごしたこの夏、青畳に寝転がって昼寝するひとときほど贅沢をかんじたことはありませんい草の香り=最強のアロマです★(※画像はダミーです😊)

我慢:映画パンフ/先日ちんぴら★ジャーナルで紹介した映画あなたの顔の前に』のパンフレットが、なんと1000円もしたのよー!同じホン・サンス監督の『イントロダクション』との共通パンフになってて、読み応えがありそうだったけど…グッと我慢💦だってシニアの鑑賞料金は1100円だからさー、結局パンフを我慢して、公開中にもう一回劇場で再見しました(笑)。もちろん見直してもブラボーだった~

さて、みんなの「ちょっと贅沢、やや我慢」アンケート、いかがでしたでしょうか。贅沢と我慢がいろいろ並びましたが、優先順位は常に変動しますからね。今日の我慢が来年には贅沢に化けるかもしれません(笑)

PS 1回お休みをいただき、次回更新は9/29。国際芸術祭あいち2022の感想をお届けいたします。

みんなの「ちょっと贅沢、やや我慢」アンケート【前編】

ネタに困ったときの“マブダチたち頼み”―恒例のアンケート特集です。みなさんへの質問は、「最近ちょっとだけ贅沢したこと、やや我慢したこと」をおせーて!

じぶんのいつものスケールよりちょっぴり欲張ったこと、逆に冷静になって諦めたりしたことをこっそり開示してもらいマシタ~。今回はうまくジャンル分けができなかったので💦、シンプルに届出順で2回に分けてお届けします。どぞー♪

【レポート①S・Iさん 】

贅沢:冷蔵庫/結婚した当時、住んでいた部屋のキッチンに合わせて買った私と同じ背丈の冷蔵庫。その後、娘が生まれ小学生となり、成人並みの食欲に。まだ壊れてはいなかったけど、3人分の食料が入りきらなくなったので思い切って大きいサイズに買い替えました。旧冷蔵庫は、13年間わが家の歴史を共に歩んできた相棒のような気がして、引き取られていくときは切なかった…😢けれど新冷蔵庫は、冷凍庫が6部屋に分かれていて使いやすく、結果、良い買い物でした~♬

我慢:サンダル/一方、我慢したのはヌーディーなサンダル。靴だけ見たら可愛いんです。でも、幅広・甲高の私の足を入れると…なんということでしょう!近所のおじさんがつっかけ履いてる?っていうくらい、オシャレ感ゼロ(世のおじさん達に失礼)ちなみに試しに娘に履かせてみたら、スッとした足で綺麗に履けて、自分とのあまりの違いに凹んだ…。私のようなおっさん足は、甲をしっかりカバーしてくれるサンダルでないとダメなんだな…と改めて気付かされました(笑)。

▶冷凍庫が6部屋って…どんだけ食うんだよー(笑)そして足の甲に栄養が集中してるのか?あっ、思い出した!元同僚のS・Iは社内の大食い大会イベントに出場したこともある大食いのつわものだったわ~(爆)。

--------------------------------------------------

【レポート②K・Oさん 】

贅沢:白Tシャツ/8年ぶりに私服で出社するようになり、白Tに目覚めました。『でも、白って透けるから…。』と躊躇していたのですが、見つけましたよ理想的な白Tを!3ヵ月くらい悩みに悩んで楽天でポチっとな。とうとう買っちゃいました、B.V.D.のヘビーウエイトTシャツ税抜き価格1万円也人生史上最高値です👀

我慢:自家用車/息子が野球を始め、土日にどこへも行けなくなったので、5年間保有し、ほぼほぼ新古車並みの総走行距離5,000キロ弱の自家用車を手放しました。駐車場代はかからないので持っていてもよかったのですが、保有しているだけでなにかとコストがかかりますし、もったいないので、車関係で僕が18歳の時からお世話になっている方へ売却💦めちゃめちゃ安かったんですけど損して得取れです!

▶おい、こらっ!そもそも1万円白Tまでの道のりにいくらかかってんだよー(爆)。男性用ニップレスまで買ってやんのー。金だけじゃなく時間もぶっこんでるなあ~。K・Oの検索履歴、一度のぞいてみたいわ。エッチ系ワードはゼロで、意味が分かんない商品名連発でめちゃ笑えそう(爆)。

--------------------------------------------------

【レポート③Y・Tさん 】

贅沢:借景/公園の木々を取り込んだ借景にホボ一目惚れし、内覧せずに決めちゃいました我が賃貸マンション。去年の秋に引っ越して以降、毎日目の前に広がる木々の揺れを眺め、「贅沢だわ~」って呟きながら過ごす朝食タイム、サイコーです♬

我慢:横断歩道/むっちゃくちゃ急いで、自転車をこいでいたんです。で、車も人も居ない”寂れた横断歩道”で、ちょうど赤に差し掛かり「よっしゃイケル〜!」とペダルを踏みこんだのですが…脇に小学校帰りの子供が、ジっと見てるんですよ、こちらを。その子と目が合った瞬間、はい、急ブレーキで止まりました(笑)。子供の前で信号無視はあかんな、と。そして信号1つでそんな変わらんだろ、と我慢(笑)。

▶10年ぶりに地元に戻ってきたY・T。窓の外のグリーンも◎だけど、室内のグリーンディスプレイもナカナカの見物ですわ。遊びに行くたびに鉢が増え…全部借景?いや、グリーンが主で、Y・Tが借景か?(笑)

--------------------------------------------------

【レポート④T・Hさん 】

贅沢:夜食/お腹が空いて起きたのが深夜1時すぎ。フツーなら水分補給のみですが、まぁ 明日休みだし たまには良いかなぁと缶ビールとツマミを頂いたら、眠気が無くなり、お気に入りのDVDを観ながら更にスナック菓子まで手を延ばし(笑) 朝方になって再度眠りにつきました。滅多にないんだけど、食べたいと思ったタイミングで食べられるって本当に至福♥…ちょっとした贅沢です

我慢:木製ラジオ/木製ラジオがオークションに出ていて、気に入ったので参加。しばらく値段を上げてのやりとりをしていたのですが、なぜか6回目で気持ちがスーッと引いてしまい、それだけ欲しい人が居るのなら.... まぁ、いつかまたの機会で良いかなぁと辞退しました。でも木製ラジオを部屋に置きたい気持ちは変わらないので、次にめぐり会うまで、ちょっとだけ我慢です。

▶モノとの出会いは念じていたらまたの機会があるけど、確かに食欲は「タイミング」こそが勝負だよね!あと、ちょっとした罪悪感も美味しさを倍増させる媚薬。ちなみに小腹が空いたときにいつもあたしの脳裏に浮かぶ食べ物は…ズバリたこ焼きです(キッパリ)。

--------------------------------------------------

【レポート⑤K・Kさん 】

贅沢:iPad miniiPad miniの購入ですね。キッカケはちんぴらさんの引越しですわ。そろそろ新しいのが欲しいなあとは思っていたけど、ちんぴらさんの新居に遊びに行ったとき「ここんちにiPadがあると便利だろうなあ…」と思い立ち、これをちんぴらさんにあげて、ウチ用に新調しようと速攻で購入。すでにデータ移行は完了です♫

我慢:高速料金代/ちょっと我慢してるのは実家へ移動するときの高速料金かな…。往復で3,000円ちょっとかかるので、今はお金を取ってます。混む時もあるけど、急いで行く必要も無いし、早めに出ればいいだけ。昔は時間を金で買うような意識があったけど、移動の時間に聞くラジオや、気に入った音楽をタバコ吸いながらユルく楽しむひとときが悪くないんだよね。あれっ?我慢ではなくこれまた贅沢の話か(笑)

▶は~い、ちゃっかりもらっちゃいましたー、おさがりのiPad mini★台所仕事時のお供に大活躍してます。動画レシピも見られるしサイコ~、あざーす!あたしもK・Kも長年のラジオ派。特に台所や車の窓から、暮れなずむ空のトーンを感じて耳を澄ますひとときは、想像力が掻き立てられて、たまんないよね~♬

--------------------------------------------------

【レポート⑥A・Mさん 】

贅沢:仲間との慰労会/犬の散歩中に転倒して骨折したのが5年前💦高齢になってからの骨折は術後も想像以上にタイヘンで、入院時に同室だった人工関節仲間の3人で三婆骨友の会を結成し、励ましあいながらリハビリしてきました。出合った時は満足に歩けなかった三婆ですが、今回久しぶりに医療センターでリアル再会を果たし、笑顔でランチをしながら近況共有が出来ました。歩行器も使わず、じぶんの脚で歩いて再会を喜び合えるなんて、これ以上の贅沢はありませんね

我慢:過信禁物/本当だったら、当日はレストランまで3人でゆっくり散歩でもしながら向かいたかったのですが、気力は十分あっても、再び転倒したりしたらシャレにならないので、ここは断念💦慎重になって交通機関を利用しました~(笑)。

▶こういう関係性ってある種の戦友にあてはまるんだろうね。たまたま非日常な空間で出会い、縁もゆかりもない間柄だからこそ、背負った同じハンディを励まし合える…。当事者じゃないと打ち明けられない悲喜こもごもの共有ってヤツよね。来年は3人でお寿司を食べに行く約束をしたとか―。その日はきっとすぐだよ!

--------------------------------------------------

【レポート⑦F・Kさん 】

贅沢:ウズラの卵フライ2本/常に単価とコスパを考えるのは好物を物色するときの習慣(笑)。例えば夕方スーパーに行ってウズラの卵のフライを見かけるとするじゃない?とりあえず、好物を1個物色すると、密かによしよしって笑顔になるわけよ。それがさー、1個食べても残りもう1個あると思うと、それだけでめちゃ満足なんだよね😊さらに4個もあったりしたら、超贅沢!

我慢:トイレ/えっ、我慢?基本、オレは我慢しないもん。うーん、唯一あるとしたらトイレかな…。朝、もよおすタイミングがヨメといっしょでさー、しょうがないからこれだけはガマンして、トイレに入る順番を譲ってやってるよ~。(談)

▶ウズラの卵って、も~ニッチなところをぐいぐい突いてくるなー!でも、もし自宅で作るとなると、マジ面倒だもんな。茹でて➡剥いて➡串さして➡フライ工程って…1本100円もらってもやりたくなーい。世界で一番ちっこい贅沢だけど、ツボを押さえたF・Kよ、ブラボー。トイレ我慢も◎(これが本当の我慢か~(笑))

 

PS みんなの「ちょっと贅沢、やや我慢」アンケート 【後篇】は、8/29にお届けします。お楽しみに―!

 

 

勝手にシネマ評/『あなたの顔の前に』('21)

すれ違いざまに胸騒ぎするものが視界に入り、「えっ?今のなに?」と、振り返ってもう一度見直すことってあるよね?しかも、確実に目の端で気になるものを捉えたのに、すでに辺りに姿形はなく、何やらキツネにつままれた心持になった経験も一度ならずあるだろう。

わかりにくい例えで恐縮だが、ホン・サンス監督の新作『あなたの顔の前に』は、そんな感覚を思い起こさせる映画である。上映中にマンマと梯子を外され、未だに映画の時間の中に宙吊りにされている気がしてしょうがない。細い輪郭線で描かれたその幻影と戯れるのは、艶めかしくてなかなかオツな体験となった。

―と、神妙に書き始めたが、実際はしっとり気分で鑑賞しながら、一方でその同じ熱量を使い、銀幕に向かってひとりツッコミを繰り返していたのである。面白いでしょ(笑)。だって、タイトルからしてジャンル分けもドラマの展開もさっぱりヨメず、意味不明だしね。

ただ、幕開け早々にヒロインのモノローグで「私の顔の前にある全ては神の恵みです」「過去もなく、明日もなく、今この瞬間だけが天国なのです」と聴こえてくると、そのあまりの目線の高さに意表を突かれ、神の恵みかどうかはともかく(笑)、「この瞬間=天国」イメージに一発でノセられてしまったのだ。

教会でなく高層マンションの一室の寛いだ空間でこのつぶやきである。さらにヒロイン・サンオクが、江波杏子(1942-2018)を思わせる苦み走ったイイ女で、真っ赤なノースリーブ姿には年増女の色香が漂い、訳ありの過去を踏まえた言葉のように聴こえてくるからたまらない。もしかして職業は女賭博師か?(笑)

いやいや、賭場でもN・Yでもなく、ここはソウル市内にある羽振りのイイ妹の家らしい。とはいえ、サンオクが妹の寝顔をじっと見つめるのはなぜ?起床した妹との会話がぎごちないのは気のせいか?…と、一般的な姉妹ドラマの素振りには程遠いため、またもや奇妙な感触がついて回る

その後も、サンオクがトランクから着替えを出すシーンや、二人で朝食を食べに外出しつつ金や不動産の話になるところとか、ここで盛り込むネタかよ?やけに感謝のつぶやきも多いし…とツッコミ続けていたが、長年交流のなかった姉が突然アメリカから帰国したら、とりとめのない会話で距離を測り合うのが自然な姿にも見えてくるのだ

さらに姉妹の間に他者も絡ませる。公園を散歩中の二人が、通りすがりの女性に写真撮影をお願いしたら、かつて俳優をしていたサンオクの顔に見覚えがあり、もう一度出演作を見たいと声を掛けてくるではないか。偶然✕偶然みたいな、ありえない情景。TVに出たのは1回だけなのに…と、サンオク自身もその奇遇に驚くが、すでに監督のズラしのリズムにノッてしまっているわたしは気負わない。映画が個々のエピソードをどう回収するのか?と、先読みすること自体がもはやケチくさい気がして―

例えば橋の下でサンオクが喫煙するシーン。なぜこんな所で?と疑問に思っても、せせらぎの音とかがめた身体のラインと天上界へのつぶやきが混然一体となり、瞼に焼き付いて離れない。あたりなどつけずともへっちゃら。謎は多いが、なぜかハシゴを外されても向かう先には恵みが待っている予感がしてならないのが本作なのだ

散歩の後にふたりは、妹の息子が経営する飲食店へ立ち寄る。お目当ての甥は不在。その代りここでも、スープトッポギを食べたら、ブラウスに汁を飛ばして慌てるといったどーでもいい(?)エピソードをクローズUPし、あえて意味を遠ざけ、のらりくらりとやり過ごすホン・サンス

しかし、なんやかんやと絶えずアクションでつなぎ、映画内運動は決して止めずに回し続けるわけで、ユルそうでいて緊張感は途切れない。遂にはフレーム外からプレゼントを持った甥っ子が追いかけてきて、大好きな叔母さんと再会&抱擁である。なによ、このスペシャル感!もはやブラウスのシミさえ、かけがえのない人生の瞬間に変換しているわ!

さてここからが本番映画はサンオクを独り、久しぶりの故郷に放牧してみせた。すると彼女は意表を突き、幼い頃に住んでいた懐かしき場所を訪れ、かつて遊んだ庭の茂みにうずくまる。しかも今は店舗になっている空間で、サンオクの記憶が身体の隅々まで緩やかに蘇るとき、スクリーンを前にした我々の個人的記憶をも呼び起こす…。そう、縁もゆかりもないソウル市内の空間が、鑑賞者ひとりひとりの記憶の空間と響きあうのである。映画がもたらしてくれたギフトに、束の間酔いしれた。

さらに放牧の最終コーナーには密会が待っていた。女優時代のサンオクの熱烈なファンを自認する映画監督との対面である。貸し切りの居酒屋で、昼間っから中華をつまみつつホロ酔い気分の中年男女。永遠のマドンナを前に涙ぐんで喜ぶ監督と、手放しの礼賛に悪い気はしない元女優の、愚かしも憎めないやりとりが、可笑しくもありまばゆくもあり

サンオクが、昔習ったギターをたどたどしく爪弾けば、突如居酒屋店内が風流なお座敷に化けたりして、まるで都々逸的世界(笑)。ベテラン芸妓のサンオク姐さん、時折りのぞくブラの肩ひもさえも艶っぽい。青春スイッチの入った監督が、彼女主役の映画を作りたいとラブコールするのも当然だろう。

ところがサンオク姐は頬を紅潮させ、時折笑みさえ浮かべながら―私には時間がない、病気で長く生きられない―と、丁寧に詫びるではないか!衝撃的な余命告白。「まいったな…」とつぶやく監督と我々の戸惑いは見事に一致。様々な謎や、彼女が絶えず神に向かって語り掛けていた理由がここでイッキに判明する。と同時に、今となっては物語の中心線をズラされ続けたあの歯がゆい時間に戻りたいとも思うのだ。

降り出した雨の中、店をあとにするふたり。1本の傘に身を寄せタバコに火をつける後ろ姿…。音をBGMに繰り広げられるドラマチックなシークエンスはここだけ別撮りされた短編映画のように映るが、ホン・サンスは並みの作り手ではない。このまま映画を終わらせない。幕切れ前になお、ここぞとばかりに見事にうっちゃる。

翌朝、なんと冒頭の設定を再び繰り返す。高層マンションの一室に舞い戻り、眠っているサンオクの夢を解くかのように、監督のヘタレ録音メッセージを高らかに響かせるではないか。おいおい、いざとなったら腰が引けたのかよぉー!真摯に詫びる男の声を聴きながら、声を上げて笑うサンオク姐。彼女は“観客の顔の前” で、本作中最も生命力にあふれた姿を披露する。世界中の誰よりも今この瞬間を濃密に生きて笑う、身体をのけぞらして大笑いするのだ。死を前にしてもままならない人生の皮肉を!

『あなたの顔の前に』は、どこへたどり着くともわからない不意打ちの連続だ。赤いタンクトップで始まり赤いタンクトップで終わって一巡する1日だけの物語だが、常にフレームの外へ外へと拡張しながら綴られているため、印象が固定化されない。それでも、映画内時間をヒロインと共に慈しんで生きたという残り香だけは間違いなく身体に刻印される。はぐらかされているうちに、いつしか生の一回性を痛感してしまう傑作、必見です。


www.youtube.com

『あなたの顔の前に』

2021年/85分/韓国

監督/製作/脚本/撮影/編集/音楽   ホン・サンス                      
出演  イ・ヘヨン チョ・ユニ クォン・ヘヒョ

PS 次回は8/13に更新します


 

ちんぴら、家をもつ🏠【転居完了編】

前回 ちんぴら、家をもつ🏠【相続編】で記したように、叔母が50年前に購入したマンションを相続し➡家財道具の処分完了➡リフォーム開始が3月末。とりあえず新居の方は、施工管理を依頼したマブダチO夫婦にバトンタッチし、今度は最も悩ましい、“じぶんちの家財道具の整理”に手を付け始めマシタ~(STEP④)💦

《第5章 断捨離してみた》

結局、新居が25%くらい狭くなるという喫緊の課題があるため、否が応でも持ち物の見直しを迫られたってわけです、はい。断捨離なんて言葉を、どこか他人事のように考えていたけど、ある日突然実行する日が来るみたい(笑)。こちらはガラクタてんこ盛りな旧ちんぴら邸の室内(2015年撮影)。まあ、確かに見直すべき時期にきてるよね…💦

照明器具、ちゃぶ台、椅子、ベッド、本棚、姿見、敷物、食器、雑貨、衣類そして本&雑誌…。押入れの中に突っ込んでたものもぜーんぶ引っ張り出して総点検しましたよ。現実的になるためのガイドラインとして、あと20年余命があると仮定し、残り時間内にじぶんが使い切るイメージがわくものだけを選びました(笑)。

それ以外で廃棄するに惜しいものは、マブダチたちに進呈したり、ネットで見つけたリサイクル業者に引き取ってもらったり…愛蔵してきたものを同好の士たちにゆだねる作業は、手間ヒマはかかっても気分的にスッキリできてよかった。さらに譲渡したモノたちがこんな風に嫁ぎ先で素敵に輝いている報告を受けると、「ブラボー、リサイクル!」と拍手喝采したくなったよ~♬

その一方でO夫婦からは、新居の進捗報告や問い合わせが届き、施主として毎日のようにジャッジしなきゃならなくて、GW明けまでが、あっという間だった。でも壁紙が貼られ、床板が変わり、畳を表替えして…と、リフォームの全容が現われるにつれ、ようやく転居の愉しみがじんわり募り始めたんだよね

《第6章 荷造りと引越し》

さてようやくSTEP⑤の荷造りへ。ところがこれが一番厄介だった💦引越し業者から無料で支給される段ボールの数が、以前に比べて圧倒的に少ない。しかも最近では、使い終わった段ボールの回収サービスもなくなってて、車を持たない単身のババアにとってはめまいが~。地域指定の廃品回収場所まで、どうやって運べばいいのよー!引越し代金が20年前より安くなってて驚いていたけど、その分サービスが薄くなってるのね。時短労働と価格競争…業界のみなさんもタイヘンそうですわ💦

そして当日。前夜の大雨もすっかりあがり、引越し日和に 住み慣れた部屋のベランダから見渡す景色が次の画像です。ここからの眺めも20年の間にずいぶん様変わり。何せ入居時は、向かいにラブホが2件並ぶスリリングな場所だったのだ(爆)。

―ってなことで、引越し屋さんがテキパキ作業している間に、ちんぴらはそれなりに感慨にふけってました。ぶっちゃけ地下鉄の4駅先に移動するだけなんだけどね(笑)。さーて午後からは新居で荷ほどき作業、いざ出陣♬

《第7章 転居完了》

有難いことに新居にはマブダチKが差し入れのランチを持って助っ人に!腹ごしらえして、日が暮れるまで荷ほどきに集中できた。一番厄介な本棚コーナーを、流れ作業的に手伝ってもらえて、ホント助かったわ~。でもって、後日、段ボールを全部解体したアカツキにはマブダチTがヘルプに来訪。紐括りの手際の良さに感嘆😢長い付き合いだけどこんな才能があったとはしらんかったわ~、ガールスカウトのリーダーかよー!

《第8章 リニューアルオープン》

それでは施主となりリニューアルオープンしたちんぴらハウスの全貌をどぞー。もうちょっと工夫したいところはあるものの、引越し1ヵ月でほぼ通常運転状態です。まずは玄関入ってすぐの台所。遅ればせながらシステムキッチンの使い勝手の良さに、感服しましたね。マブダチRにもらった飾り棚を吊るして調味料入れにしたらイイかんじに。

玄関前の小スペースがこちら。絵を飾るため、一面だけ、赤いクロスを貼ってもらったら、かえってシックな印象になった。まずは、染谷亜里可さまの赤いベルベットの作品を掛けてみたら、赤✕赤でメチャかっけー!お気に入りのコーナーになる予感だわ~

赤い壁の裏側がランドリーコーナー。50年前のユニットバスを分離させ➡風呂、トイレ、洗面所をレイアウトし直すというリフォームが、今回一番の大仕事だったわけ。でもマブダチKのお知恵を借りて、想像以上に気持ちよく仕上がった。造作洗面台にしたことで小部屋のイメージになり、叔母さんの本棚と鏡の再利用も活きた気がする!

今回、蔵書の1/5くらいを整理したけど、それでもまだまだ手元に置いておきたいものばかり…本に関しては未練がましいちんぴらです💦25年くらい前にオーダーし、ずっと寝室にあった本棚を、新居では最も目が届くリビングに設置。何せ残り20年使い切りPLANですから、大切なものこそ見える化しておかないと…(笑)。

本棚の隣には同じ木工所でオーダーした勉強机。上にはちっこい雑貨を飾ったガラスケースとTVと固定電話。何せ携帯持ってないので…💦ほかのウチにないものがウチにはごちゃごちゃひしめき、ほかのウチにあるものがウチにはない菱餅、フツーないわな。

リビングの隣が6畳間の和室。萌黄色の壁紙を貼ったこの2室が南向きで、昼間はかなり明るい。障子はそのまま残してみたけど正解だね、陰翳礼讃ですわ。中央には染谷画伯のブルーのベルベット作品をドーンと!カーテンとの連続技で、きわめてよい風景に

せっかくの青畳が惜しい気もしたけど、和室にはベッドを置いた。茶系の古い家具を並べ、和洋折衷にレイアウト。ここに低めの衝立が欲しいなあ、骨董市でものぞくか~♬

最後は振出しに戻って玄関へ。実は、気に入った下駄箱が見つからず考えあぐねていたときに、マブダチから家具職人Iくんを紹介してもらい、収納ロッカーとセットで作りつけ家具を発注!これで玄関横の隙間スペースがイッキに改善できた。壁紙のペパーミントブルーと同じ色目にしてスッキリ♪ロッカーの扉に付けてもらった姿見も大活躍だ。思い切って奮発してよかった~

そんなわけで、動き始めてから半年で転居が完了。渦中にいるときは、早く終わんないかな…としか思わなかったけど、終わってみたら、拍子抜けするくらい瞬く間だった。今や以前の環境を忘れているしね(笑)。そうそう、叔母は生前贈与できたことを喜んでくれてはいるけど、彼女の記憶の中の家の姿はもはやこのマンションではなく、どうもじぶんが生まれ育った実家のようなのだ。彼女の心のリアルは今は亡き両親&兄妹の元へ向かっているのかもしれない―

PS 次回は7/29に更新します



 

 

 

ちんぴら、家をもつ🏠【相続編】

5月末に、20年ぶり、人生5度目の引越しを完了。ぶっちゃけ、引越し作業ってめんどっこいわ~💦そのうえ今回は、はじめてトライすることばかりで、還暦過ぎた身にはお尻が重かった。その反面、ブログのネタにはもってこいだったりもするからね…(笑)。まずは引越し前の経緯をまとめた、ちんぴら、家をもつ🏠【相続編】をご覧ください★

《第1章 背景》

わたし(☝おかっぱ)は、生まれてから小学6年生まで(1961-1973)、祖母(父の母)、叔母(父の妹)、両親、兄の6人家族で育った。高度成長期の真っ只中、自営業をしていた両親は忙しく、祖母と叔母に何かとかまってもらっていた記憶がある。そして1930年生まれの叔母は父の兄妹で唯一存命中。御年91歳だ

叔母はモダンな人で、女性ドライバーがまだ珍しい時代にすかさず免許を取り、即金で新車を購入していた。ピンクと白のツートンカラーの日産ブルーバード🚗…ミニカーみたいでインパクト大だった。そういえば前回紹介した昭和日常博物館で、同じ機種の展示を目撃👀叔母の運転でいろんなところへ連れて行ってもらった思い出が蘇った。

そもそも、読書、手芸、美術そして映画と、じぶんの趣味の源泉をたどれば、すべて叔母の影響から始まっている。引越し前に本棚の整理をしたら、叔母から贈られたり本が出てきた。チャペックの『長い長いお医者さんの話』、立原えりか『天のひつじかい』、そしてウェブスターのあしながおじさん偶然だが、3冊ともシャレた挿絵付きのジュニア向け作品今もこの手の装丁本に目がない。

叔母は手先も器用で、洋裁や編み物が得意だった。デザインから考え、大塚屋で服地を調達し、家族みんなの衣類を手作りしてくれた。子どもにもその丁寧な仕事ぶりは伝わり…。はい、50年以上経てなお、未だに叔母のおさがりを着続けていて立証済みです😊

布あしらいをそのままデザインにしたシンプルなコットンのワンピース。叔母は、色を変え柄を変え分量を変え、毎夏ごとに大量に作っていたっけ…。今でも新鮮♬~

昭和48年、叔母は都心のマンションを購入し、家を離れ独り暮らしを始めた。車といいマンションといい、たえず即金&即決で男前な人柄。その後も、独身で、自立し、颯爽と生きてる叔母んちへ立ち寄るのは楽しみの一つとなった。こちらは40代の叔母と中学生のわたし。頭の回転が速く、ユーモアのセンスもある叔母はけっこうモテてた(笑)

実は、女学校時代はリケジョ体質だったらしく、電気技術者になりたいと思っていたとか。しかし当時の女性に理想の選択肢はなく、数年事務員をした後、年金受給者になるまで、何と30年以上も株で資産形成をしていたのだ!即金&即決の胆力は株にあり…獅子文六の小説になりそうな話だ。そんな叔母も高齢で独り暮らしが困難になり1年半前に施設に入所。そう、今回わたしが移り住んだ新居は、馴染み深い叔母んちなのだ。

《第2章 相続》

「もうこの施設で最期まで厄介になるから、私のマンションに住みなさい」と叔母に言われ、動き始めたのは去年の暮。ありがたい申し出とはいえ、生前贈与とか…めんどっこーい💦いつも身軽でいたいちんぴらとしては不動産を持つとか重いし…💦でも、還暦を迎えたことが区切りとなり、ここはじっくり対峙してみた。まずはマブダチたちの手を借りながら、生れて初めて法的手続きを突破。その後のフローも一人で計画した。

《第3章 片付け》

年が明け、STEP①を進めながら、毎週末叔母んちへ通いSTEP②をこなす日々。叔母には部屋のものは全部処分するように言われたが、何せ認知が進む叔母よりわたしの方が彼女の歩んだ軌跡を熟知しているので、エピソードを思い出してはイチイチ整理する手が止まった(笑)

例えばノリタケの皿や、ドイツ製のティーポットは、50年前にわたしが買物に同行してたからね…。玄関横の壁掛けミラーも、訪問する度に目に入るから忘れ難いし…。

次の本棚は特に古い。いっしょに暮らしていたときから叔母の部屋にあったもので、ここに村山リウの源氏物語『ファニー・ヒルが並んでいたのだ。もちろん後者がエロティック小説とは当時は知らなかったが―(笑)。隣のブルーの織り布は、叔母が50年間使い続けた居間のカーテン地。色と柄に惚れ込み、奮発してオーダーしていた経緯を知っているので捨てるのが忍びなく、椅子の張替えに使おうと思わずKEEPした

さらに整理していたら、夏用のストライプのカーテンも出てきた。こっちはあまり使った形跡がなく当時のままの美しさ~。そこで、ブルーのグラデのカーテンの色目を活かしてクロスを張り替えよう!と決意。色違いのピンクの方は和室に使えばよくないか?

家具、家電など、ひとりで運び出せない粗大ごみの数々は、マブダチから紹介してもらった業者に頼み、まとめて処分。リフォーム前の撤収作業はこれでいったん終了だ

こちらは和室側から見た間取。家具がなくなればそれなりに広く感じるが、それまでの住居に比べて25%くらいは狭くなるので、じぶんの荷物も断捨離しないと…悩ましい💦

次は玄関と台所。天井は低く手狭でいかにも50年前の昭和なマンション。住めなくはないが、床も壁もかなりの使用感がある。ってことで、叔母の思い入れのあるマンションをわたしの貯金でもう一度終の棲家として再生させ、使い切ろうというシナリオだ。

《第4章 リフォームGO!》

幸い、大人美術部のメンバーで長い付き合いのマブダチMダンナのKさんは夫婦で施工管理業を営んでいる。年明け早々からふたりに相談し、リフォームに向けて具体的に動き始めた(STEP③)。工事は3月末からスタート。ざっくり見取り図はこんなかんじ。ここにじぶんの持ち物をどうレイアウトするか―。

さて次回ブログでは、ちんぴら、家をもつ🏠【転居完了編】と題し、引越し準備~新生活開始の経緯をまとめます。7/13に更新予定。乞うご期待~♬

 





懐かしさと狂おしさと…企画展ハシゴ備忘録✒

5月大人美術部は、名古屋から北へ遠出し、企画展をふたつハシゴしてきました👣

 

【ハシゴ①段目】昭和日常博物館

いやー、久しぶりに出かけましたよ、昭和日常博物館!市内からだと微妙な位置にありますが💦、個人的には明治村&リトルワールドと並び、大好きな地元名所です。1度足を延ばせばリピーターになる確率はかなり高いと思うんだけど…意外と知らない人が多いのよね…。昭和の日常生活のさまざまな生活用具、玩具、風俗の収集、保存、常設展示の他、年3回の企画展を開催してて、しかも入場無料なんですよー!も~、行くしかないでしょう~🏁

お目当ての企画展は『紙モノづくし つたえる・つづる・つつむ・はる・ふく・あそぶ』。普段から紙モノに目がないちんぴら。感染症対策のため、滞在時間を2時間に限定されてかえってよかったですよー、いくら時間があっても見足りないくらいの内容だったから~😊

まず目に飛び込んできたのは「つつむ」のコーナー。平面的展示になりがちな紙の資料を、吊るしたり積み上げたりして立体的に見せる工夫が楽しい♬360度鑑賞で目の保養

いわゆる包装紙の類は、前後に重ね展示をしていて、華やかさ倍増🌼かつての服地屋さんのディスプレイを思い起こしました。包装紙って商品の“第二の顔”だったんだね~。

これだけの収蔵量を浴びると、懐かしむだけで終わらないわけよ。今見てもハッとするようなデザインに感心したり、かつて同じ包装紙を開けたときの記憶が鮮明に呼び覚まされたり…と、体内化学反応がハンパない!

本のカバー、箸の袋…今でもツイ持ち帰ってしまう。本来は、包みの「中」がいわゆるご本尊なわけで、「中」を守るための脇役。だから脇役の在り様をムダに思う人もいれば、ちんぴらみたいに用途を越えた価値を感じてしまう人もいるんですよね(笑)。

平面から立体へ。紙製パッケージという脇役も、こうして多種多様なものが、あるべきところではない場所に並ぶとまるで美しき遺跡のように見える。今も昔も製造側は、この脇役に最大限の購買効果を当て込み戦略を練るのだろけど、商品に紐づかない“第二の顔”としての側面もけっこう大事なポイント。パッケージの好感度、侮れませんね

そして「あそぶ」のコーナーには、大好きだった雑誌の紙製付録などが所狭しと並んでマシタ組み立てたらお店屋さんができちゃうなんて、もう~しんぼうたまらん!半立体ってところがミソでさー、こどものごっこ遊びの王道だよね。でも今、こんな店先の食材屋さんがリアルでできたら、マジに大繁盛すると思うんだけどな~。

でたーっ!ちんぴらもめちゃくちゃお世話になった紙製の着せ替え人形シリーズ💎オシャレ心に灯がつき、デザイナーになり切ってお洋服をじぶんで描いて遊び倒したなあ。

着せ替え人形のディティールは時代と共に変化。何せファッション=虚栄だから~🎀

ノート、日記、便箋、ハガキetc…が並ぶのは「つづるのコーナー。手で文字を書きつづる行為自体、どんどん先細りになるのは明らかだけど、今でもつづることができる形状のものを目にすると、異様にテンションがあがる。ここに何を書こうか…と想像する時間が、きっと至福なんだろうね。それに扱いやすさの点でも紙は文句なく優等生よ!

他にも、地図、チケット、コースター、電報、ポチ袋、紐…などなど、まさに紙モノづくしな企画展。おそらく二度と作られない用途のものもあれば、反対にこの先も変わらずに紙で運用されそうなものもあって、将来のくらしを空想しつつ楽しみました

とにかく企画意図が素晴らしい!昭和の時代に、紙を素材として作られたくらしの中のモノたちを、くらしの「道具」として紹介しているんだよね。さらに紙素材の「道具」を、つたえるつづるつつむはるふくあそぶという役割で分類展示していて、昭和を生きた人々が何を求めてくらしていたかが浮び上がり興味深かったの。道具をながめ人間の歩みを知る…ここには過去の時間と未来の時間が流れていましたー。

こちらは25年くらい綴り続けているあたしのスクラップBOOK。何がきっかけだったかは忘れちゃいましたが、単純に捨てるには惜しい紙モノをコラージュしながら貼り付けてます。紙=道具というより、つづりたい欲がうずまいているカオスBOOKです📚

 

【ハシゴ②段目】昼飯は豆腐づくし

ちょっと遠出するなら、やっぱ昼ごはんは新規開拓したいよね~♬ということで、今回は博物館近くのとうふの里 豆たへ行ってみマシタ。紙モノづくしのあとは、豆腐づくし。美食家の奥様たちが喜びそうなランチメニュー。しかもリーズナブルで丁寧な味付け。いいわー

 

【ハシゴ③段目】岐阜県美術館

53歳のある日、突然油絵を描き始め、91歳で亡くなるまで絵筆を握り続けた塔本シスコ(1913-2005)日曜美術館で初めて作品を目撃し、「これはナマで見なくちゃ!」と奮い立ってしまった作家です。今回、岐阜に巡回中の「シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記展でしかと見届けて参りました~👣

資料によると、画家志望の息子が実家に残した画材を使い、描き始めたのがシスコの画業のはじまりだとか。しかも、息子が描いた作品の絵の具をそぎ落とし、その上からちゃっかり自分の絵を描いたっていうから大いにウケた😊神の啓示ですかね?そうして描いたのがこちらの『秋の庭』('67)。ルソー並みの深く愉し気な密林ぶりがかっけー!

そして早くもちんぴらが最も好きな『夕食後』('67)の登場だ!けして壁に貼りつくスパイダーマンではなく(笑)、愛煙家の至福の一時が凝縮された夢のタペストリーです桐のタンスに埴輪にプロレス中継に土人灰皿に編み物にヒョウ柄(?)ベルトにおさげ髪…ちんぴらの愛するモノが網羅されててそのうえ全部がハモってる~♪構成力に脱帽だー

シスコが生まれたのは熊本県八代市。故郷を描いた『長尾の田植風景』(1970~72)は、巨大なひまわりがそそり立つエンジン全開の快作です。ひまわりの葉陰からは故郷の街並みをのぞかせ、根本には田植に勤しむ人々を配置。近くに見えるものは大きく、遠いものは小さく…それで何か問題が?彼女が描けばすべては楽園~♪

59歳で息子夫婦と同居するため、大阪府枚方市の団地に引っ越したシスコ。四畳半の自室をアトリエにし、創作三昧の日々を送ることになります。ずらりと横に並べてた田植作業が、枚方総合体育館前のコスモス畑』('96)では幼稚園児を縦列に。なんて大胆!

行きつけの山田池公園は、シスコの創作の源泉の地。『山田池の春 シスコとハト』('99)は、思わずキューピーのたらこマヨネーズのCMを思い出すが💦群舞を従えて舞台の中央にお出ましになるはシスコご本人。餌に群がる鳩がまるでシスコのスカートに見えるし、さらにアーチ状に並ぶ木立とも呼応し、LIVE感たっぷりな1枚に仕上がってるね

こちらは桜島(1970-88)の想い出を描いた風景画。木、花、山、空、ぜーんぶが一丸となって噴火してる。一つ一つのモチーフがめちゃくちゃ丁寧に描かれていて、一切手抜きナシ。なぜか3人娘が洗い張りをしてるが…これはシスコの実体験の一コマか?

シスコは、ふるさとの海もたくさん描いてる。『シャク取り』('89)は、熊本でしか取れないシャクというヤドカリの仲間を取りに行った体験記。横長の画面に沖の青海波と浜辺のデザインが洗練されてて、すごくシャレオツ。素材はなんと段ボール!

『オノダチの大運動会』('01)って…どこが運動会?(笑)盆踊りみたいな余興か?歌詞まで書き込まれてるよ~。今更ですが、シスコに絵画のお約束は必要なしだね😊

シスコの絵には、影がない、迷いがない、余白がない。代わりに、まっすぐな情熱と生きる歓びと奔放な創造性がみなぎっている。孫の披露宴を描いた『ミアのケッコンシキ』('97)では、主役も参列者も微妙にナナメっているが、おそらく本人に特別な意図はなく、天然のオフビート感覚をお持ちだったんじゃないかと想像してる。

長野五輪開催中にスピードスケートに夢中になったシスコは、『さよなら長野オリンピック('98)と題して清水選手と西谷選手の晴れ姿を書き込んだ。シスコにとってTVは世界に通じる窓のようなものだったのかな…絵日記風な画面構成が若々しい

ところが2001年、88歳になったシスコは認知症を発症。生活面では介護が必要になるが、絵を描く意欲は衰えなかったようだ。ただ、画風には変化が現れる。めくるめく空想ドラマの構成力が弱くなり、モチーフの数も減少傾向に。また、この時期、やたら丸山明宏(美輪明宏の本名)の肖像を描くようになる

丸山の造形を描くというより、丸山の魂を捉えようとしてるかんじ。抽象の力で―。

そして最後、亡くなる前年に描いた『月光(雲に入る)』('04)を目にしたとき、大人美術部一同、ツイ声を上げて魅入ってしまいマシタ!展示の順番で対象から受ける印象はいかようにも誘導されてしまうものだけど、この1枚は、まさに大家の晩年の傑作とでも呼びたいレイヤーに着地していて、たまらなくよかった~~。

かかずにはいられない本能を使い切り、すべてをそぎ落として月に帰ったシスコターコイズブルーの空が胸に染みる…。それにしても、孫の手を借り、自身の大規模回顧展が実現する光景を、彼女が生きていたらどう絵にしただろうね~😊

(6/26まで岐阜県美術館で開催中)

PS ブログを休んでいる間に無事に引っ越しを完了しました!せっかくなんで、引っ越しの経緯をまとめたブログを2回に渡って綴りましょう。前半は6/29に公開、お楽しみに