モランディ展✑ 備忘録

念すべきブログ連載第1回目の最後に書き記した通り(なぜか魅かれるもの―①)、待望のジョルジョ・モランディ展を見にサクっと東京へ―。鑑賞後、すでに1ヵ月ほど経つのだが、正直言って未だ消化し切れていない。うーん、困った(汗)。神々しさに打ち震えたわけでも、色香に翻弄されたわけでも、圧倒的な新しさを前に言葉を失ったわけでもない…。そういうわかりやすい衝撃とは一線を画し、ただただじぶんの内側がザワついているのである。でもってそれを上手く言語化できない(涙)。確かなのは、モランディの作品群を見る前と見た後では、例えば空のペットボトルから受ける印象すら変わってしまう。あー、ヤバイものを見てしまった…(汗)。

 

20 世紀最高の静物画家と称されるジョルジョ・モランディ(1890~1964)の存在を、私は全く知らなかった。友人からのお薦めコメントと、ネットでの画像検索による“お見合い”を経て、取り急ぎ駆けつけたというわけだ。まっ、グダグダ言う前に、まずは画像を見てもらいましょう!

f:id:chinpira415:20160416132432j:plain

f:id:chinpira415:20160416132545j:plain

f:id:chinpira415:20160416132626j:plainf:id:chinpira415:20160416132658j:plain

f:id:chinpira415:20160416132842j:plain

f:id:chinpira415:20160416133233j:plain

f:id:chinpira415:20160416133322j:plain

f:id:chinpira415:20160416133647j:plain

f:id:chinpira415:20160416140941j:plain

ろそろ「まだ続くのか?寂れた商店街の金物屋に来たわけじゃねえんだから、いい加減にしろ―!」とドヤされそう…。はたまた「えー、なんかカワイイ!雑貨屋さんみたい~」という声も上がりそう(苦笑)。どちらもありかと思います(汗)。生涯にわたり、卓上静物とアトリエの窓から見た風景という限られたテーマを探求し、ずーっとこんな風に淡々とした調子の絵をお書きになった方らしい。“終わりなき変奏”と付けられた美術展のサブタイトル通り、テーブルの上に置かれた質素な雑器類が、微妙に配置を変えて繰り返し描かれ、深掘りの極みをエンエンと見続ける体験となったのよ。じゃあ、一体彼は生涯かけて何を深掘りしているのかと問われたら、それがよくわからない(汗)。そこで、まず手掛かりを探るために二者択一のテスト方式で自問自答してみた。派手なのか地味なのか、にぎやかなのか静かなのか、溌剌としているのかぼんやりしているのか、HOTなのかCOOLなのか、野性的なのか知性的なのか、写実なのか抽象なのか、喜劇なのか悲劇なのか…と(苦笑)。パッと見では、全て後者に軍配が上がるんだけど、ナマで作品と対峙すると、全然静謐じゃなかったし、意外な図太さも感じたんだよね。そもそもそんな風に短絡的にカテゴライズすること自体が、モランディ作品を最も遠ざける行為だってわけ…反省。だってこのビジュアルだもん…いかにも複雑そうでしょ。

      f:id:chinpira415:20160416151126j:plain

術界のメイン・ストリートから身を隠すかのように、故郷イタリアのボローニャを終生離れず、教職に就きながら独り黙々と薄暗い自宅のアトリエに引きこもって描き続けたモランディ。いつも黒いスーツを着用し、生涯独身。身の回りの世話をしていた妹たちに向かって「ツボの埃をはらうな!」と叱責したというエピソードにバカウケしたわ。あのぼんやりした淡い色調は、慎ましく神秘的な表現というより、実は埃がイメージの源泉なのか?ざっくり言えばかなりの変わり者?(爆)いやいや、何だっていいのよ。人目も気にせず、描きたい絵をテメエの好きなように描く…画家にとってこれ以上の満足はないでしょう。しかも、こんなにオレ様王様ぶりで絵筆を取っているのに、作家の息遣いがまるで掴めないから後ろ髪が引かれるのだ。

 風景画も微妙にヘンでしょ。扱いは雑器といっしょ。この人、きっと自然に興味ないね。一般的な命の捉え方と、違うような気がする。

f:id:chinpira415:20160417223021j:plain

f:id:chinpira415:20160417224813j:plain

してとりわけ私を魅了したのが花の絵だ。こんなに可憐な花の絵、見たことない!!!何なんだこれは!胸がザワザワする💛と腰を抜かしたら…笑ったわ~、何と造花を描いているんだって(笑)。これにも当然埃がかぶっているのでしょう、たんまりと。モランディにとって、きっと埃は蜜の味だったのよ(サッサもウエットティッシュもノーサンキューですな)

f:id:chinpira415:20160417224942j:plainf:id:chinpira415:20160417223545j:plain

で、花シリーズを眺めたとき、瞬間的に私は思いましたね。彼にとってモチーフは、瓶も水差しも花も容器もすべて、マネキン人形に見えていたんじゃないかと―。それもウインドウ越しに見る煤けたマネキン。埃は格好のレフ版効果。だからありふれた雑器がどこか怪しくて、江戸川乱歩と共通の匂いを微かに感じたみたい。絵は劇的に訴えかけてこなくても、鑑賞者の妄想を肥大化させる装置…それがモランディ作品。こりゃあ相当ヤバイ代物だわ。

 

こで、ボローニャにあるモランディ美術館 へ行きたくなってしまった私は、月1000円の旅行積み立て貯金をしているマブダチたちに相談。「イコイコ。80歳までには行けるでしょう~」という気の長ーいご返事が届いたので、構想3日制作4時間でモランディ・ミニミニコーナーを部屋の一角に拵えた!へへへ、この仮設美術館でしばらくは楽しめそうだ♪

f:id:chinpira415:20160417235123j:plainf:id:chinpira415:20160417235020j:plain

f:id:chinpira415:20160417234919j:plain

 

んなオマケも発見。画像検索してたら、フェリーニの『甘い生活』('59)の中でモランディの絵が登場するではないか!全く覚えておりませーん。こりゃあ見直すしかないな。あー、なんだか今週も数珠つなぎだ(汗)。

f:id:chinpira415:20160418001611j:plain