サクっと京都✑備忘録

5月某日、日帰りでサクっと京都へ。今回のサクっとシリーズは、高校時代からの同級生と結成している「大人美術部」の遠征バージョンです。ちなみに同級生KとMの合言葉は、「だって、わたしたち強欲だからぁ~」(爆)。欲望を絶えず経常利益の2割増しで盛り続ける2人は、もちろん朝からのぞみ車中でビールっす★ 一方わたしは、後部座席から聞こえてきた話(同僚の男4人で京都観光へ繰り出す模様)が可笑しくて、40分間聞き耳を立ててましたあ(笑)。さーて、これ以上ないくらいの“ザ・五月晴れ”の中、美術展3本をハシゴしてきたレポートをお届けいたします

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1本め👀相国寺で『伊藤若冲展』

▶昨年、生誕300年を迎え、特別展示が長蛇の列だった伊藤若冲(1716年3月1日 - 1800年10月27日)同志社大学のすぐ北にある相国寺承天閣美術館で、まだこっそり特別展示が公開されていると知り、いそいそとのぞいて参りました。予想通り混雑もなく、大穴鑑賞。大昔、マブダチM氏はここを立ちションエリアにしていたらしいけど(笑)、禅寺らしい重心の低い趣きと、掃き清められた敷地内が、キリっと美し~い。

▶そういえば、お寺でガッツリ絵を見る機会は今迄になかったな…。なんと、玄関で靴を脱ぎ~の(!)⇒下駄箱に入れて番号札(!)を持ち~の⇒カーペット張りの床を歩きながらの鑑賞です。これがねー、意外と悪くないのよ★若干、旅館に来たみたいな気分になるけど(京都だし…)、物理的にも精神的にも絵との距離が近くなって、ゴキゲンでした。特に目玉の鹿苑寺金閣寺)大書院の障壁画群が、こんな風にガラス1枚隔てたすぐ側で見られるのは、サイズ感をダイレクトに味わえてなんとも贅沢。

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松鶴図襖絵』(八面)。鶴のお腹まわりが、いともあっさり描かれていてすばらしく粋!あー、この鶴、ウチの襖にも飛んできてほしいよ~(爆)。

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 ▶こちらは『竹図襖絵』(四面)。「これが竹かいっ!」って、ひとり突っ込みを入れつつも(笑)、未知の惑星を連想させる斬新な世界にホレボレ。

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▶そして芭蕉叭々鳥図襖絵』(八面)。この空間処理センスを見て!最後に取り上げる海北友松展でも叭々鳥(ハハチョウ)をモチーフにした絵があったけど、若冲のスピード感&おっちょこちょいぶりにわたしは一票。南国ムード漂う芭蕉との組み合わせにも唸ったなあ~。オマケに叭々鳥の写真を付けておくね。小ぶりの烏みたいでスキ♥

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▶それにしても、若冲金閣寺の襖絵をこんなにたくさん手掛けていたとは…圧巻でしたね。どうやら靴を脱ぐと、自然と頭も口も柔らかになるようで、3人でひとしきり感想を挟みつつ眺めていたけど、美術館と違ってお咎めを受けることもなく…(笑)。重文のオンパレードをラフに見られて至福のひとときでした。墨絵と禅寺と若冲の関係性も、もうちょっと真剣にお勉強したくなっちゃった。

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 ▶そういえば、1F奥に展示されている金閣寺茶室『夕佳亭』内部の再現にもハマった。わてら3人は茶の湯の心など微塵も理解していない凡人だが(汗)、夕佳亭の不思議な間取りには目が釘付け。こんな数寄屋造りもあるんだねぇ。3畳の茶室に、斜めに竹の床張がついてて、そこから一段上がったところに、南と北に窓を設けた2畳の上段の間が張り出してるの。3部屋の流れが得も言われぬリズムを生み出していて、思わず「ここに住みた~い!」と大騒ぎ(爆)。茶道のことはわかんないけど、理想の小宇宙を見つけたわ。

 

2本め👀シャレオツな『杉浦非水展』

▶さて、同志社大の学食で学生たちに交じって昼食を取った後、今度はガラッと趣向を変え、岡崎公園すぐ横の細見美術館杉浦非水展をチェック。

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杉浦非水(1876年5月15日 - 1965年8月18日)の名前は知らなくても、このポスターに見覚えがある人はけっこういらっしゃるでしょう~。

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▶日本モダンデザインの先駆者と呼ばれ、多摩帝国美術学校(現・多摩美術大学)の初代学長という肩書をもつ非水は、新しい時代の精神と美術をシンクロさせたまさに時代の申し子。黒田清輝に西洋絵画を学び、黒田が持ち帰ったアールヌーヴォー様式のポスターに魅せられ、「そうだ、図案家になろう~♪」と我が道を決めたとか。そう、いまで言うグラフィックデザイナーのはしりです。当時の印刷技術の飛躍的な進歩の波にのり、思いついたことをどんどん形に変えてゆく彼の才能は、様々な媒体を横断して発揮されました。これがいま見返しても洗練の極みで、ブラボー!と叫ばずにはいられない~。

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三越の広報物をアートディレクターとしてトータルプロデュース。

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 ▶その他、雑誌の表紙、本の装幀、絵葉書、ポスター、タバコや商品パッケージまで、多種多様な表現方法を駆使して大活躍。企業イメージを打ち出す企画力も込みで、当時の最先端のお仕事ぶりが一望できる内容でしたね。特に見事な色彩設計に酔いしれ、展示ケースの前に陣取ったわたしたち3人は、どれだけウットリしたことか~。

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▶余談ですが、非水と歌人で妻の翠子は、当時のモガ・モボと呼ばれるオシャレ番長の代表で、人々の憧れの的だったらしいの。この浮世離れした暮しぶりを御覧あそばせ。なんだかジャズ・エイジを象徴するスター作家、スコット&ゼルダフィッツジェラルド夫婦みたいじゃない?あー、カラーで見たかったなあ~。

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3本め👀桃山の絵師「海北友松展」

▶みなさま、桃山時代に名を馳せた海北友松(1533年 - 1615年6月27日)という絵師をご存知?海北友松は「かいほうゆうしょう」と読むの。日曜美術館で紹介されるまで、わたしはまったく知らなくて、目撃した時は慌てましたね。でもほら最近、美術展も情報番組も、あの手この手を使って煽ってくるからさー、疑い深いわたしは「実際に体感するしかない!」⇒「そうだ、京都へ行こう!」と、今回の小旅行を計画。つまりはチラシの惹句―「京都国立博物館開館120周年記念開催 会期は36日間、京都でしかご覧いただけません」に、マンマとノセられたってことです、はい(汗)。

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▶新館ができて初訪問の京都国立博物館。まず目に留まったのは『柏に猿図』

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▶2幅の猿図。強欲Mがお気に召し、お持ち帰りしそうになったのをやんわり止めました(爆)。猿というより毬栗にながーい手が生えてる風よね。そして顔は笑っていないのに円形の効果なのか、とーってもご陽気。ぶら~ん、ぶら~んとマッドマックス 怒りのデス・ロード並のアクションをお披露目してました。それにしても白猿の足技、シルク・ドゥ・ソレイユにスカウトされそうだ。

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 ▶猿の次は馬(笑)。6曲一隻の『野馬図屏風』。馬は馬でもメタボ。これじゃあ牛だろ?でもなんかまばゆくて、艶っぽい♥ 恥じらいってやつですかね(わたしと最も縁遠い…)。こういう女の人、いるよなぁ~なんて、オッサン目線で見てました。

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▶でもって、出るわ出るわ怒涛の雲龍図群!まあ、すごいことになってましたよ。展示の後半では、インスタレーションとして味わってもらおうという狙いなのか、照度を落とした演出まで(汗)。うーん、どうなんだろう…。わたしは通常照明で見た一等最初の建仁寺の8幅で十分満足しましたけどね。特に左4幅の一番はじの3本指!ピッチャー死神が振りかぶって第一球を投げましたポーズでサイコー(笑)。絵の強度がここに集結してるかんじ、しんぼうタマラ~ン。

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建仁寺に元あった姿で眺めるとこんな風。現在は超精密コピーで対応とか。いやー、かなり派手だよね(爆)。相国寺で見た鹿苑寺の障壁画群もそうだったけど、描かせる禅寺側がこれを良しとする美意識って、一体何が元になってるんだろう…。すごく知りたい。何せ時は戦国、桃山時代。武士たちがしのぎを削る背景からすると、なんでもありなのかもしれないなあ。

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▶そしてオオトリは、友松最晩年の最高傑作にして本企画の目玉『月下渓流図屏風』。ネルソン・アトキンズ美術館(米国)から60年ぶりに里帰りしたという6曲1双。もう一人の強欲Kが「これで決まりだな…」と、ひとりごちておられました(爆)。おっしゃる通り、右隻中央に置かれたつくしの可憐さには、めまいがしましたね。今にも宵闇から渓流の音色が聴こえてきそう…。

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 ▶―が、しばし呆然とするも、すぐに冷めて工芸品に見えちゃったわたし…。当時のトレンド狙ってないか?(笑)それに、ここも部屋暗くしてんだもん、もったいぶりすぎじゃない?(爆)わたしは断然こちらを押したい、『楼閣山水図屏風』6曲1双。

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▶なにぶん画像が小さくてわかんないでしょうが(汗)、たおやかな峰、屋根と壁と舟の横線の響きあい、穏やかな入り江の表情に泣いた…。ここには武士の気概も消え失せ、まさにわたしのイメージする桃源郷そのもの(涙)。横長の引きの絵は、ついスクリーンに見立ててしまい、映画好きの血が騒いで身体が持っていかれちゃうのよねぇ。タイトルをつけるなら、左隻が“永遠のあの世”で、右隻が現世の1日”か―。それにしても重文ゴロゴロの恐るべき企画展。京都、さまさまですな。恐れ入りました(ぺこり)。

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そんなこんなで、「サクっと京都」と言いながら、ダラダラ盛ってしまってスイマセン。いやいや、ここに書ききれないことばかりで、削る作業のほうがタイヘンでした(汗)。帰りの車中では、「生まれ変わったら、京都で学生した~い♪」「障壁画は絶対ナマ見物♩」「やっぱ行きたいと思ったら迷わずGO♫」の3指標を胸に刻んだわたしたち(笑)。それではおあとがよろしいようで―。

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 PS 次回は6/18にUPします