勝手に年間cinema🎬 2018年版

遅まきながら、あけましておめでとうございます(ぺこり)。どうぞ今年も『ちんぴら★ジャーナル』をご贔屓に♫ さて2019年の幕開けは、ちんぴらジャーナル恒例の年間映画特集です。去年1年に劇場で見た71本の中から、印象に残った数々の作品をガッツリMEMOっておきますね。レンタルする際の参考にでもしてくださいませ~★

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母と娘と貧困の米国映画2本

▶きらきらファンタジーを創造するフィギュアスケート界の頂点に立ちながら、ライバル選手襲撃疑惑でヒール役に転落したトーニャ・ハーディング、憶えてますか?アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル('17)は、そんな彼女の昭和少女マンガも真っ青な半生をクローズUPした傑作なの~★性悪スパルタ母をはじめ、彼女を取り囲むハイエナ輩たちとの共依存関係の背後には、米国の成功至上主義が横たわっていて、なかなか複雑な欲望のパッチワークに仕上がってます。何より鼻息までトーニャになり切ったマーゴット・ロビーの演技に、興奮冷めやりませ~ん👍


『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』本予告

▶『アイ、トーニャ』と抱き合わせで見て欲しいのがフロリダ・プロジェクト 真夏の魔法('17)。安モーテルで暮らす、失業中のシングルマザーと6歳の娘ムーニーのひと夏のスケッチです。青い空、光る太陽、パステルカラーの雑貨たち…すぐ側にはディズニーランドがあり、まるで“夢の国”の玄関前で暮している生活に映るけど、実際のモーテルは低所得層のカオスと化す難破船(汗)。米国の現実をまざまざと照射しつつ、ママゴトみたいな親子を見守る眼差しには母性が宿る…。ムーニーの友情譚に泣けた~。

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 純愛ドラマならこの2本

▶さてラブストーリーと言っても、あたしがオススメするんだから、ありきたりな設定じゃないのは想像がつくでしょ(笑)。数々の賞に輝いたシェイプ・オブ・ウォーター('17)と、ハンガリー発の小品『心と体と』('17)の2本です。どちらもファンタジー色が強いんだけど、なぜか作り物めいて見えなかったの。かなりショッキングなシーンが出てきたり、周囲に溶け込めないハグレ者同士が接近するところも共通点だったな。

f:id:chinpira415:20190106163452j:plain▶世界中がすれっからしになっている今、もはや現実設定で純愛へ着地させるのは到底無理なわけで、“運命の出会い”を描く場合は、「力技の捏造」と、逆に「眼を疑うような野暮ったさ」がキモになる気がするわね。欠けているもの、諦めてきたものを補いあうかのように、主人公たちが覚束ない手つきで内なるピースを1つずつ積重ねて行く…。待って近づいて&待って近づいてを繰返しながら、やがてスクリーンには永遠が立ち上る…そんな仕掛け。ヤダ、書いてるうちに見直したくなってきちゃった(笑)。

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 ホン・サンスのマジックに浸る3本

▶“運命の出会い”を、実生活でしれーっとやってのけ、世界一センセーショナルな映画監督と呼ばれているのが韓国のホン・サンス58歳。奥田瑛二似のこのおっさんは、自作『正しい日、間違えた日』('15)に出演した22歳年下のキム・ミニと不倫の仲になり、以降『夜の浜辺でひとり』('17)『それから』('17)と立て続けにタッグを組んで、ガンガン傑作を生みだしているの。どうも創作のミューズが初老の男の前に降臨したみたいね。

f:id:chinpira415:20190106214058j:plain▶互いの思いを公言してはばからないお2人ですが、映画の中の恋愛事情が実生活をダブらせるような展開にもなってて、やたら手練れ。観客は、フィクションの中にゴシップ性を覗き見するつもりが、キムの纏う透明度の高い空気と、時間軸をズラす緻密な設計に酔いしれるうち、虚構と現実の迷路に迷い込む…。不格好な悲喜劇を、滑らかな手つきで綴り、辛抱たまりましぇーん♫ 3本まとめてチェックしてみて。

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 上等ドキュメンタリー映画どっさり

▶ドキュメンタリー部門は秀作揃いで選びきれない(汗)。インターネットによって世界との距離が縮まったせいか、どんなテーマだろうがツイ我が事として魅入ってしまう。作り手の知性によって世界の迫り方が様変わりするのも面白くて、劇映画より作家の想像力を吟味してる気がするわ。まず巨匠フレデリック・ワイズマンによる長編記録作品『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』('15)。167もの言語(!)が飛び交うN・Yの下町ジャクソンハイツに生きる多種多様な人びとの悲喜こもごもを切り取り、面白いのなんの~、世界の交差点に居合わせた気分♫ 3時間なんてあっという間! 

f:id:chinpira415:20190110222525j:plain▶去年一番興奮したのが、老舗カメラメーカー・オリンパスによる損失隠蔽事件の真相に迫った『サムライと愚か者』('15)。英国人社長の不当解雇をきっかけに明るみに出たこの事件は、震災の年に発覚し、世界中のメディアで報道されたらしいが、当の日本人の記憶にはほとんど残っていない(汗)。ここで暴露される日本企業の隠蔽体質は、業界特有の話ではなく、もはや染み付いた日本人の性。今も昔も変わらない。あのゴーン氏逮捕騒動時にすぐさま脳裏をよぎった1本なのよ。テロップでつなぐ構成も秀逸。


【映画 予告編】 サムライと愚か者 -オリンパス事件の全貌-

想田和弘港町』('18)は、古い町並みが残る岡山県の小さな港町が舞台。面白いのは、監督が完全オフモードで町をぶらつき、住民に話しかけたりして偶然集めた素材が、作品になっているところ。目的を持たないままお客さん状態でいるのに、カメラを回しているうち、被写体が勝手に映画の中に降りてくる!引きの強さも才能のうち~。

f:id:chinpira415:20190110224006j:plain▶縫製工場で働く出稼ぎ女性労働者たちの姿を通し、現在の中国を描き出すワン・ビンの『苦い銭』('16)。過酷な仕事現場、貪欲な労働者たち…でもワン・ビンが撮ると全然ニガくなくて…むしろあったかな話に見えちゃう(笑)。人間を愛おしむ気持ちが強い作家なのよね…。人の営みの滋味深い部分をしっとり見守り、何度も胸を打たれたわ

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腹の座った傑作3本

▶結局、極めつけの1本を選びきれなかった2018年の映画事情(汗)。最後に、腹の座った傑作3本を駆け足でご紹介しておきましょう。1本目は、娘を殺されて泣き寝入りなんかしてたまるか!と、怒りを暴走させる田舎町の主婦と、アメリカ南部の閉鎖的な風土をクロスさせ、のっぴきならない空気を醸成させた『スリー・ビルボード』('17)。死者を真ん中に配し、2つの魂が救済される展開にシビれたあ~。役者もブラボー🚩

f:id:chinpira415:20190112115721j:plainベイルートの市民生活を舞台にした『判決、ふたつの希望』('17)も、2人の男のちょっとした諍いが、引くに引けない状況を生み出し、「じぶんならどうする?」と考えずにはいられない傑作です。両者の間を調整するはずの法廷が、むしろ闘いのリングと化す演出にメチャ興奮したわ。そして映画は、2人の心の奥底に横たわる怒りの正体ににじり寄ると同時に、じぶんにとって不都合な他者を想像させ続け、抜群のストーリー展開。熱い男たちと対照的に、終始冷静な2人の妻たちの存在感も印象的よ。

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▶元気溌剌すぎて、若干恐ろしい87歳の御大クリント・イーストウッド。もはやガソリンを飲んでるとしか思えない(汗)。2015年に高速列車内で起こった無差別テロ事件を、実際に犯人を取り押さえた3人の若者を起用して撮った新作『15時17分、パリ行き』('18)は、運動神経抜群の傑作。特に一見全く場違いに映る観光シーンにノックダウン。あの陽光と俗な時間をチャージして新ヒーローたちは誕生したのね、神は光なり!

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 おまけ:小品でピリリ

▶ご贔屓役者ハリー・ディーン・スタントンの遺作となった『ラッキー』('17)は、老いと死を扱いながら、孤独との対峙に甘さが一切なく、カッコいいったらな~い!山椒がたっぷりかかったかけそば映画、サクッと一杯いかが?一方、31歳のテンションMAXヒロインが体当たりで動き回る『若い女』('17)は、カラフルな刺激のあるキムチ冷麺映画ね(笑)。若さにまつわる愚かさもウブさもまとめて放出してて、眩しいぞ~★

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▶“若さ”つながりで…二ノ宮隆太郎監督・主演作品枝葉のこと』('17)にも触れておきたい♪ 気の利いた言葉1つ言えない危なっかしい若い男が、何かに決着を付けたいと、ひたすら1本道を歩いているようなお話。父親に「殺すぞ!」と吐き捨ててそのまま閉幕する映画なんて前代未聞ですわ(汗)。でも驚くなかれ、「殺す」が「愛してる」に聴こえてしまう映画なの。黒コショウのきいたカレーうどんの趣き、いい汗かくわよ~。


映画『枝葉のこと』予告編

というわけで、今年も映画館へ通いまっせ!

2018年に『ちんぴら★ジャーナル』でガッツリ紹介した作品も振り返ってね💛

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 PS 次回は2/8に更新します