アルヴァ・アアルト 脱線日記 ✍

ちんぴらジャーナル、今回のお題は初のチャレンジ建築家名古屋市美術館で開催されたアルヴァ・アアルトもうひとつの自然展の感想をまとめようと意気込んでおります、はい。―が、なんたって自慢じゃないけど、建築の「け」の字もわかってないですからね。かなり無謀な試み…ヤバいよ、ヤバい~(汗)。

f:id:chinpira415:20190201223213j:plainいつだったか、図書館へ足繁く通い、世界の名建築家と称される人々の作品集を手あたり次第に見まくっていたことがあるの。お勉強目的とは違い、ドールハウスみたいに愛でて楽しむくらいの軽~い気持ちで♫ 20世紀を代表するフィンランドの建築家アルヴァ・アアルト(1898ー1976)も、そんな風にちょこっとだけカジっていたお方でした♥

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建築家の展覧会といっても、作品そのものを会場に持ち込めないんだから、書籍で味わうのとさして変わらないような気もするでしょ?でも全然違うんですね~。完成形は体感できなくても、様々なピースが並んだ展示を眺めながら、鑑賞者がじぶんなりに再構成する楽しさがある。今やミックスメディア展示がスマートにこなせる時代だし、じぶんの脳ミソの中でちょっとした建築家になりすませる…ってわけ(笑)。そして、やっぱ1人の創作者を追い駆けるには、回顧展形式で接近できるとありがたいですね!

f:id:chinpira415:20190202100928j:plain例えばこの【パイミオのサナトリウム(1928-33)。アアルトが撮影した写真をはじめ、病院設備の解説書や病室の備品の陳列があり、院内のEVから見える景色を綴った映像も流れていて、実際のサイズ感が疑似体感できる仕立てになってました。また、院内の家具や照明設備もすべてアアルトがデザインしてて、今見てもしっとり美しい―。なんて言ったらいいのかな…外観も内部もすごくモダンで機能的なのに自己主張の匂いはなく、肌にスッと馴染み、療養生活が自然に日常化できそうな空間にかんじたんだよね。

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図書館好きだから【ヴィープリの図書館】(1927-35)もたまんなかったですぅ~😊閲覧室の天井を見て!太陽光を拡散させて照明にする丸型スカイライトの大群に超ワクワク♪読書に最適な光を求めて手掛けたデザインがすんばらしい★ごめんなさい、あたしが行ったらテンションあがっちゃって、本そっちのけでずーっと天窓を眺めて過ごしそう…。プラネタリウムじゃないんだから~とひとり突っ込み(爆)。

f:id:chinpira415:20190205220134j:plain一方施設内にある講堂は、音響効果を取り入れての波打つ天井で有名だけど、これも機能性だけじゃないよね。こんなうねうねが頭上から迫る空間に身を置くこと自体、身体感覚に変化が起きそう…。しかも木製!人の体内にはうねうねがいっぱい詰まってんのに、意外にも日常で触れる機会は少なくない?我が家を見渡しても風呂の蓋しか探しきれず…プラスチック製ですが(汗)。

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で、このうねうねですが、さらにバージョンUPして壁にも展開♫1939年に開催された【ニューヨーク万国博覧会 フィンランド館】の設計に際して、アアルトはパヴィリオン内部に12mもの段飾りになった曲面壁を作ったの。壁をオーロラに見立てたんだって!うねうね=オーロラ…。いやー、もう我が家のスケールでは、なーんちゃっても調達できません(笑)。

f:id:chinpira415:20190202135436j:plain会場内では、フィンランドの様々な側面を紹介する巨大写真を掲げ、自国の製品を展示し、ドキュメンタリー映像まで流したとか。昨今のイベント構成と変わらなくねっ?はっやいわー👀 さらに脱線して、ニューヨーク万博ってなんじゃらほい?と調べてみたら…「明日の世界」をテーマにした伝説の万博だって~♪

f:id:chinpira415:20190205220258j:plain企業パヴィリオンが近未来イメージを掲げ、物欲をあおって消費社会へ誘導する…まるで1939年版「世界はほしいモノにあふれている」イベントなのよ、気になるでしょ★なーんちゃってAI登場のぶっ飛び映像まで見つかったわ…このアナログ感がタマラン😊

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話をうねうねのフォルムに戻すと…他にも見覚えがありません?インテリアSHOPなどでもよく目にするアアルトの【サヴォイ・ベース】は、1936年に発表して以来、世界で最も有名なガラス製花瓶。湖の曲線をイメージし、80年以上経た今も、バリバリの現行モデルです。お馴染みついでに、会場内には三本脚の【スツール60】もゴロゴロ並んでた(笑)。そう、アアルトは、早くから家具や照明器具などのデザインも手掛け➡会社を立ち上げ➡商品化し➡世界市場へ持ち込んだ超ツワモノなんです。

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芸術への感心が高く、絵も熱心に描いていたというアアルト。ジャン・アルプ(1886-1966)ェルナン・レジェ(1881-1955)と交流があったと知って、大いにガテンがいったよ。思わず、昔ゲットした2人の図録を見返して、そのつながりを再確認しちゃいマシタ📚

f:id:chinpira415:20190207214625j:plainさて、個人宅の設計で超有名なのが【マイレア邸】(1938-39)【ルイ・カレ邸】(1956-1959)。ところが正直言って2件とも「趣味のイイ金持ちのお邸ね~。でもどこがそんなにスゴイの?」と、ずっと思ってマシタ(汗)。挙句の果てには、マイレア邸の外観を、勝手に憧れのサンダーバードの基地に見立てて妄想したりして…。関係者のみなさま、申し訳ございません(ぺこり)。

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そう、なんだかんだ言っても、建築は実際のサイズを浴びて、体感してこそなんぼの世界。写真で眺めるだけでは、良くも悪くもインテリア紹介記事に矮小化させてしまうのよね。(いや、インテリアとして眺めるだけでもじゅうぶん目の保養です…👀)

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―が、今回の展示のために撮り下ろしたドイツ人写真家アルミン・リンケの写真(下図)を見て、ちんぴらは突如開眼建物としての情報量は少ない写真なのに、なんだかアアルト作品に宿る地縛霊も込みで写し撮ってるような気配がして、すんごく引き込まれたの~。リンケの写真が、建物と鑑賞者をつなぐ“窓”の役目になってたんじゃないかしら…。ヤバイなあ、現地へ行ってホンモノを味わいたくなってきた(汗)。

f:id:chinpira415:20190205215343j:plainそうそう、東京の国立近代美術館へ行くたびに、ルイ・カレ邸の庭と邸をつなぐ等高線状の階段を思い出すのはあたしだけ?(笑)頭の中で『ロッキー』のテーマソングが鳴り響き、意気揚々と駆け上がったりしてぇ~、ウソでーす(爆)。

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ちなみに国立近代美術館を設計したのは谷口吉郎(1904-1979)ですが、息子の谷口吉生(1937-)も現役の建築家で、ほら以前紹介した掛川資生堂アートハウス(1978)を手掛けた御大。あの円弧ガラスの展示室を、ぺこっと内側に引っ込める絵を想像してみると…

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じゃじゃーん!アアルトの仕事場【アアルトスタジオ】(1954-55)と呼応するじゃないのよ~♫ しかも、上部の明り取りの窓を始め、ペンダントライトのぼんぼり具合といい、等高線状の階段でリズムをつけたコーナー演出といい…何これ、シャレオツすぎるぅ!

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一方、同じアアルトスタジオをリンケが撮ると、太陽光による刹那が立ち上り、単なるキレイキレイな建築写真に収まらなくて…これまたしんぼうタマりません👍ふむふむ、光の質にこだわったというアアルトの本質を射貫くには、光を道具にする写真家が最もふさわしいってことかー📷

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アアルト作品の中で、あたしが一番胸騒ぎするのは【アアルトの夏の家】(1952-54)。この森の中の湖に面した自身の別邸は、建築の素材や技法を実験する場でもあったらしいです。一見無造作に映るレンガとタイルのパッチワーク壁は、実験と言いながらかなり高度な造形センスよ、けして真似できませんね~。ここでも脱線して、杢田たけを(1910-1987)アッサンブラージュ作品なんかを連想(笑)。中庭には焚火用の炉が切ってあり、束の間北欧の避暑地の時間に思いを馳せてしまいます。

f:id:chinpira415:20190207221020j:plainということで、脱線交じりに綴ったアアルト展備忘録、いかがでしたでしょうか。トーシローに建築のハードルは高かったけど、鑑賞後、もう少し突っ込んで探りたくなり、見つけた1冊が『アルヴァ・アールトの建築 エレメント&ディティー(小泉隆 著:学芸出版社)。ホンモノを見に行っても見逃しそうな細部まで丁寧に追いかけていて、すごく参考になりました。文章も的確、オススメです。

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そして最後は、なーんちゃってアアルトコーナーで締め括り!いっしょに行ったマブダチから、アアルトのゼブラの織物もどきで送られてきたのは愛猫の毛並み写真(笑)。

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あたしは100均で買った麻無地のクッションカバーに、油性マジックで直接描き!どうだ~、遠目で見たら遜色なし(爆)。それでは、おあとがよろしいようで―。

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 PS 次回は2/25に更新します