クリスチャン・ボルタンスキー🌑Lifetime

フランスを代表するアーティストの1人、クリスチャン・ボルタンスキー(1944~)。ご存知ない方は、取り急ぎこちらのお姿をご覧あれ~。金子信雄じゃないですよ(笑)。

f:id:chinpira415:20190420230132j:plain

いや、エロ名悪役&料理番長の金子信雄(1923-1995)は大好きな役者さんでしたが….。ボルタンスキー氏、なんだか雲水みたいな気を放っていませんか?只者ではない存在感です、超カッコい~い★ はいそこで、ボルタンスキー雲水が手掛けた日本初の大規模回顧展【Lifetime】を拝みに、大阪の国立国際美術館へ行って参りました!

f:id:chinpira415:20190423221741j:plain

【出会いは~♪スロ~モ~ショ~ン】

その前に、ボルタンスキー雲水との最初の遭遇を思い出してみたのですが…出会いは~♪スロ~モ~ショ~ンby中森明菜でした(笑)。日本の美術館はけっこう彼の作品をお持ちなのですが、所蔵品展などで1点づつ、寸止め気味に目にしてきただけなので、時期も場所もはっきりしないのです(汗)。例えば『聖遺物箱(プーリム祭)』('90)という作品は、豊田市美術館にこちらがあり~の、

f:id:chinpira415:20190422234858j:plain

原美術館にはこちらがあり~の…

f:id:chinpira415:20190423214524j:plain

横浜美術館にも、同じように個人を特定できないくらい荒く引き延ばされた顔面UP写真とスポットライトで構成された『シャス高校の祭壇』('87)があるのです。

f:id:chinpira415:20190423220601j:plain強烈なインパクト。1度目にしたら瞼に焼き付きます。こうして画像で眺めるだけでも、美しくもあり、空恐ろしくもありで、背中がぞわぞわしてきませんか? 写真➡遺影、シンメトリー➡葬列、箱➡祭壇、ライト➡魂、むき出しの電気コード➡悲劇性…、ハレとケをごっちゃにさせながらの連想が止まりません。しかも、かつてどこかで味わったような感覚が押し寄せてきて、じぶんの記憶を紐解く旅に誘われます―

 

【なぜか既視感が…】

豊田市美術館はこんな標本箱も所蔵しています。初期の作品『罠』('70-'71)。ボルタンスキー雲水の作品だと知らずに眺めた覚えがありますね。剃刀や針が使われているところと意味深なタイトルで、身体が強張りつつも、どうにも目が離せなかったな―

f:id:chinpira415:20190424090025j:plain一つ一つ表情の異なる手作業の痕跡が妄想を膨らませるのか、子どもの頃に砂場に埋めたものを掘り起こして眺めたような既視感がありました。箱に収められると、それだけで日常から切り離され、ツイ凝視したくなります―。

 

【闇がともだち】

愛知県美術館では、リニュアルする前の最後のコレクション展で『影』('86)を目撃。これまたあたしが作ったんじゃないか?と、勝手に既視感を感じた影絵装置で(笑)、出来損ない加減が絶妙のスカルたちが風に吹かれて闇夜のダンス♫  こうして所蔵品だけを振り返ってみても、表出されたモノの姿かたちは様々ながら、常にテクはシンプルで間口が広い…ここが重要ポイントになってる気がしました。

f:id:chinpira415:20190424212829j:plain

【Lifetime展】

そして今回、彼の50年にわたる創作活動をぞんぶんに一望できる回顧展で、ようやく寸止め鑑賞から脱却しましたあ~!驚いたのは、表現方法が想像以上に多様だったことと、作品全部がフルオーケストラのごとく共鳴しあって、会場全体が1つの荘厳なインスタレーション作品と化している点でした。

f:id:chinpira415:20190426211321j:plainなので、ここでは多くを語りません。実際に足を踏み入れ、じぶんと作品がどう化学反応するかがすべてです。できるだけ予備知識を入れず、夜空を眺めるように、スッと訪れてみてください。間口が広い割には、“単純に好き嫌いだけでふるいにかけておしまい”…とはなりませんよ。非常にスリリングな体験が待っています。

f:id:chinpira415:20190426214217j:plainちなみに、我々大人美術部の3人の感想も「今まで見たインスタレーションの中で一番魅かれた!」と、逆に「ちょっと怖くてダメだった…」の、真っ二つに分かれました

f:id:chinpira415:20190426215143j:plain冒頭で取り上げた美術館所蔵作品も登場しますが、いままでに単品で遭遇した時の印象と様変わりして映るのは発見でしたね。こんな風に繰り返しに耐えられるのは、きっとうーんと遠いところを起点にして創作しているからなのでしょう。

f:id:chinpira415:20190427095048j:plainだから、作品の前に立っても、モノと対峙してるかんじにならないのです。むしろ物理的な強度は後ろに下がり、何億光年も前の宇宙と、何億光年も先の宇宙のあわいの中を、ひとりぼっちで漂流しているような感覚に陥ります―。

 

【シンプルで大胆】

抽象的な言葉ばかりを書き連ねてしまいましたが(汗)、ボルタンスキー雲水の制作姿勢はとても具体的なんですよ!拍子抜けするくらい具体的でシンプルなの。こちらの右側『アニミタス(チリ)』('14)という13時間16秒のなっがーい映像作品は、チリのアタカマ砂漠にカメラを据え置き、数百もの風鈴が風になびく光景をエンエンと綴っただけ。スクリーンの前には干し草が敷かれ、乾燥した土地を想起させますが、とはいえあからさまにひとつの仕掛けとして展示してますよね?

f:id:chinpira415:20190427100046j:plainなのに、イマドキのデジタルアート体験とは真逆の着地に至るのです。おそらく鑑賞者のまなざしが、じぶんの内へ内へと向かうからだと思います。ボルタンスキーは、チリの巨匠パトリシオ・グスマン(1941-)の傑作ドキュメンタリー映画『光のノスタルジア('10)を見ているらしいのですが、いやー、確かに両作品は共振してる!その呼び水となっているのが日本の風鈴とは!…実に感慨深かったです。


南米ドキュメンタリーの巨匠パトリシオ・グスマン『光のノスタルジア』『真珠のボタン』DVD発売!

 そして、あたしがダントツにコワかったのが『黒いモニュメント、来世』('18)です。そもそも来世という文字を、こんなにマジマジと眺めることはないですよね(汗)。どちらかと言えば、来世=浮世離れしたのんきな未来図を思い描きません?ところが迷路のドン付きに赤く浮かび上がる電飾は、非常口の誘導灯みたいに即物的で…慄きました!

f:id:chinpira415:20190427131610j:plainそう、虚を突かれて思わずビビったんです。ただ、“まだあたしは向こう側から呼ばれていないなあ…”とも思いましたね。現世での修行が足りんと―(笑)。

 

【来世のイメージとは?】

 今まで考えたこともなかった来世。そこで周囲の人たちはどんなイメージを持っているのか尋ねてみたら―。例えば50代おっさんの場合…1人は「なんとなく,かぶと虫になるような気が…」とつぶやき(汗)、もう1人は「来世はないようにも思っています。もし戻ってきたとしても、もうその辺の雑草で良いや。風に吹かれてフワフワとしていれば…」とのこと(笑)。どちらも人間稼業は店じまいするってことね~♫

f:id:chinpira415:20190427215835j:plain f:id:chinpira415:20190427215858j:plain

マブダチFは「来世と聞いて、すぐにM田S子を思い出した」だって(爆)。あたしが加工した文字を使って、懐かしの名台詞が今蘇るぅ~!「今度生まれ変わったら、いっしょになろうねって言いました…(嘘泣き)」。この画像、女性自身に売り込みたいね。

f:id:chinpira415:20190427221153j:plain

30代美人ママMはさらにぶっ飛び!「はあ?なんで来世が炊飯器なんだよ~!」と、念のためにヒアリングしたら、「キッチン全体を撮ろうと思ったんだけど、なんか絵にならないなぁと思って。まぁ、炊飯器が絵になる訳でもないんだけどね」…もはや禅問答の域か…意味がわかりません(爆)。昔から白飯好きだとは知っていたけど…(汗)。

f:id:chinpira415:20190427222945j:plainそして最後は画家のマブダチAのご登場★ さーすがー、アーティストの表現はキレがいい!逆さ文字にも、うふっ♫ もうひとつ、別の世界の扉が開いていますね。ある意味、言葉の意味を一番まっとうに捉えているかも。

f:id:chinpira415:20190427223811j:plainこうして並べると素人衆の出たとこ勝負感も捨てがたいわけで(何より笑える!)、みなさま方の乱入あってのちんぴらブログでございます(ぺこり)。おっとー、いかんいかん、ボルタンスキー雲水のことを忘れそうになった(爆)。

f:id:chinpira415:20190427232239j:plain

図録を読んで初めて、彼のフツーではない幼少期体験などを知りましたが、「死者に捧げる儀式を行うことが、芸術家としての仕事だと思っている」の一言に、すべてが集約されています。大阪の後、国立新美術館長崎県美術館3館を、1年に渡り巡回するLifetime展。会場ごとに本人が構成を変えるらしいので、東京へも足を延ばしてみるつもりです。機会があればあなたもぜひ!

 

PS 次回は5/13に更新します