鴉を愛でる💙美術編

はじまりは20年以上前にマブダチからもらった1枚のポストカードだった―。2匹の鴉を前景にして、遠くにエッフェル塔が霞んで見えるモノクロ写真。なぜかこの写真を目にした瞬間、鴉の存在感に我が魂が持っていかれちゃったちんぴらです(汗)f:id:chinpira415:20200403212408j:plain翼を広げて飛び立つ鴉と、高みの見物の鴉…。この20年、2匹の鴉をながめては、その時々のじぶんの心境を推し量ってきましたね今のじぶんはどちらなのか―。そして一昨日、ひょんなことから額装して以来初めてカードの裏を見返してみたら…jean pascal imsandのクレジットが―。作者名なのか???ドキドキしながらすぐさまネット検索しましたよ~。するってーと👇

f:id:chinpira415:20200404135149j:plain f:id:chinpira415:20200404135240j:plain

昔のPARISの風景だと勝手に思い込んでいたら、なんとこの美男子が作家本人で、1960年生まれローザンヌ出身。あたしと1歳しか違わないの。しかもスイス写真界の新星の1人として注目されていたのに、 1994年に34歳の若さで他界したって…。これをくれたマブダチに知らせたかったけど、実は彼ももうこの世にいない…😢 それでも作品だけは残り続ける!ネット上で閲覧できた写真は、どれも詩的でブラボー!20年前なら追い駆けられなかったルーツ探しが今じゃ無料で可能に…。遅まきながら出会えてよかった★

f:id:chinpira415:20200404151601j:plainというわけで、1枚のポストカードからあたしの“鴉愛で”が始まりマシタ~♫ 一度スイッチが入ると、じぶんの目が勝手に対象にフォーカスするようになるから笑っちゃう。ヒマさえあれば憧れのキミを目で追う放課後…みたいなもんですわ😊 例えばわかりやすいところでは絵画を通じて“鴉愛で”。ゴージャスな乱舞をお披露目するのは―

f:id:chinpira415:20200404165556j:plain
長谷川等伯(1539-1610)の重文『烏鷺図屏風(うろずびょうぶ)(1605)の左隻でございます。もぉー、なによ~このじゃれっぷり~!文句なく血が沸騰しますね。何せ鴉は、古来から世界各地で「太陽の使い」や「神の使い」としてあがめられてきた生き物だから、絵画の中では隠れヒーローとしてけっこう君臨してんのよ。

f:id:chinpira415:20200405223405j:plain f:id:chinpira415:20200405223503j:plain

竹内栖鳳 (1864-1942)、左は『泊舟群烏図(はくしゅうぐんうず)(1905)、右は『白雨烏(はくうがらす)(1917)の左隻。ざっくりと即興で描かれているように見えても、構図にスキなし。何とも贅沢な余白にウットリ。空気の流れさえ感じられるよね~。与謝蕪村(1716-1784)『鳶鴉図(とびからすず)も外せません。切手にもなってます。雪の中、肩を丸めて寄り添う姿はまるでバディムービー(2人組を主人公にした映画)のワンシーンです♥

f:id:chinpira415:20200404175303j:plain f:id:chinpira415:20200404164742j:plain

なんだか久しぶりにストレンジャー・ザン・パラダイス('84)を見直したくなってきたぁ~。ほら、蕪村の鴉といっしょでしょ?3人ですが―(笑)。

f:id:chinpira415:20200404180333p:plain
もちろん洋画界でも鴉はひっぱりダコ🐙 まずは雪つながりでブリューゲル 1世 『雪中の狩人』(1565)。手前の狩人、その横の農民、真ん中は氷上遊びで、遥か遠くには切り立った山並みがそびえ、そして視線は曇り空にも伸びる―1枚の絵にどんだけ欲ばり構図なんだあ~。そう、ちっこいけど、ここは鴉じゃなきゃキマらないよね👍

f:id:chinpira415:20200407230513j:plainゴッホ(1853-1890)さまの『カラスのいる麦畑』(1890)では、群れ飛ぶ鴉が絵筆のうねりパワーを倍増させる効果を生み出し、穏な気配を際立たせております💀 カァーカァー、ガァーガァーと、鳴き声まで聴こえてくるようだ。

f:id:chinpira415:20200407225416j:plain旧約聖書では、洪水の後、ノアの箱舟から初めて外に出されたのが鴉と言われていて、その由来から西洋では吉凶を占う鳥とされているとか。ピカソ(1881-1973)が極貧時代に描いた『女とカラス』(1904)は、そんな占術的な香りをまとった1枚に見えますね。女のフォルムと鴉のフォルムが重なり、なんともエロティック

f:id:chinpira415:20200411184046j:plain

お次はルソー『戦争』(1894)オルセー美術館で見ましたあ~。タイトルとは裏腹に隅々までくっきり明快なタッチ。白、黒、ピンクにブルーと、まるで絵本のようだけど、松明と剣を持つ五月人形みたいな少女が飛び越えて行く先は、死体の山に群がる鴉(汗)。しかも時間が止まって見えたりなんかして…強い絵だなあ。

f:id:chinpira415:20200407225900j:plain

ピカソゴッホ➡ルソー➡そして我らが会田誠の登場です。2013年【天才でごめんなさい展】で目撃した『電信柱、カラス、その他』(未完)にはのけぞりました~。垂れ下がった電線と六曲一双の凹凸が見事に呼応し、この世の果ての、さらに奥の奥まで妄想を駆り立てられました。一方で鴉に目を凝らせば、ちぎれた指や目玉をこっそり咥えていて…そこだけは赤々と光る…。震災直後に書き下ろした正真正銘の傑作。マジに天才

f:id:chinpira415:20200407232328j:plain

浅井忠(1856-1907)みたいな写実画家って若い頃には全く気にも留めなかったけど、会田誠からの逆の流れで日本美術史を見返せば、「ほーっ、いいものだな」と。石川県立美術館所蔵の『農夫とカラス』(1891)、ドリフのコントシーンみたいでスキ♥ 種蒔きした端から鴉の思うツボになってて…(笑)。舞い降りる一匹と背後の農夫の動きもタマラン♪

f:id:chinpira415:20200411141413j:plain

鴉って人間との距離が近い生きものなんだよね。どちらかと言うと不吉なイメージや悪戯なイメージが強いのに、童画にも使われているし―。かこさとし(1926-2018)『からすのパンやさん』シリーズなんて、『からすのてんぷらやさん』まであんのよ、なんで天ぷらなんだよ~(笑)。右はスイス人絵本作家ハンス・フィッシャー(1909-1958)『7羽のからす』。その昔、フィスの線に憧れてよく真似して描いたものです💦

f:id:chinpira415:20200411151230j:plain f:id:chinpira415:20200411151651j:plain

最近じゃチコちゃんに叱られるで毒を吐くキヨエがお茶の間に襲撃。浮き沈みの激しい生きものギョーカイで、これだけ低飛行旋回を持続できるのは、霊鳥だからか(笑)。神武天皇の東征の際には、3本足の八咫烏(やたがらす)が松明を掲げて導いたという神話もあるしな。そしてまたもやここでも『古事記』に行き着いちゃったよ~

f:id:chinpira415:20200411160522j:plain f:id:chinpira415:20200411163637j:plain

そんなこんなで「鴉を愛でる💙美術編」、いかがでしたでしょうか。1度では書き切れないので、続きは次回「鴉を愛でる💙リアル編」にまとめますヨ。お楽しみに~♫

PS 次回は4/29に更新します