7月某日。オトナ美術部メンバーと、岐阜県・多治見市で遊んで参りました!名古屋から車🚘で40分、梅雨の晴れ間に半日キョロキョロ。あー、楽しすぎるぅ~😊
『RUT BRYK 蝶の軌跡』展
まずは、何度も訪問している馴染みの場所―岐阜県現代陶芸美術館で、フィンランドを代表する女性芸術家ルート・ブリュック(1916-1999)展をチェック👀 北欧のデザインや工芸を世界に知らしめた作家の一人らしいですが…恥ずかしながらツユしらず(汗)。いや、トーシローだからこそ、初期から晩年へ、時系列に沿った大規模回顧展はありがたい贈り物ですわ!しかも、常に自らを大胆に刷新し続けた作家だから余計に―★
『ボトル』(1957)、何とこれ陶磁器なのよ!石膏の土台にモチーフを彫り出し、そこに粘土を埋め、釉薬を流して色付けしているとか―。子どもの頃の襖柄に、瓶や壺を抽象的にデザインしたものがあって大好きだったんだけど…もしかしてルーツは北欧?(笑)
こちらはイタリア旅行をテーマに制作した作品群♫ 教会、礼拝堂、橋etc…陶板で建物のフォルムを切り取るセンスに瞠目したわ!自由で実験的な試みに溢れているよね~。それでいて彼女の作品には、野心より、得も言われぬ奥ゆかしさが漂って見えたな。
次は、ブリュックの最大の理解者であり、世界的なデザイナーの夫・タピオをモデルにした『ライオンに化けたロバ』(1957)。あたしは釉薬を使っていない右図が好み。王冠、タテガミ、手足にしっぽ…と、パーツごとに小さな企みが施されていて見飽きることがない。でもこれも、どこか控えめな印象で、愁いがあるような気がするのよね…。
そしてブリュックにとって重要なモチーフとなったのが“蝶”。両親の離婚で、幼い頃に別れて暮らすことになった父が蝶類の研究者だったというから、きっと様々な思いがあったんだろうね。こちらはズバリ松花堂弁当な『蝶たち』(1957)。ブリュックは来日したことあったのかしら…日本の文化や美意識、きっとお気に召しただろうな~。
あと、愛煙家のあたしとしては、灰皿のシリーズもかなりヨダレものだったけど(笑)、展覧会の中で最も気に入ったのは、次の1960年代に作られた『レリーフ(イコン)』のシリーズ。松花堂弁当の次は缶入りクッキーの詰め合わせだ!―というのは冗談で(汗)、シンプルな凹凸陶器の組合せと、燻したゴールド1色だけで祭壇に見立てて、思わず生唾を飲み込むほど美しかった…鄙びた風合いがタマランかったですぅ。
小さなレリーフなのに、凹凸に当たる光の加減なのか、まるで本物の礼拝堂の中にいるような気分に―。そう、これは建築だね!建築家になる道をあきらめた彼女の夢の王国だと思う。さしずめ、建物の施主はイエスさまか(笑)✟
昼ごはん🍴、迷う…(汗)
そして遠出したときの愉しみは、さらなる寄り道と、地元の人気店での食事でしょう~★いつも立ち寄るのはそば処『井ざわ』。美味しくて、お値打ちで、居心地よくての3拍子揃った最強店です。かき揚げ丼とざる蕎麦のセットがお気に入り👍
でも今回は、たまには違うお店にも行ってみよう~という話になり、土岐川沿いに見つけたビストロ『レヴェリエ/Reverie』 でランチコースを。いや~、ランチだからと言って侮れません。自宅では真似ができない丁寧な仕事に感服(ぺこり)。特にメインのお肉のローストが絶品だった!この界隈には、他にも気になるお店がドッサリ並んでて…ヤバイです。あとね、食器&生活雑貨好きにはオリベストリート沿いの『三角屋』も必見よ。焼き物の街ならではです。背中丸めて掘り出し物を探してね~♪
いざ、虎渓山 永保寺へ⛰
さて、“キョロキョロ多治見”と題しましたが、オトナ美術部の今回一番の目的は、室町時代に作られた禅寺『 永保寺』の見学でした👀この寺のことを知ったのは今から8年も前のこと(汗)。絵画の文法を紐解いた興味深い本―『構図がわかれば 絵画がわかる』(光文社新書)の中で、著者の布施英利氏がいちばん好きな庭園として紹介していたからです。わずか2~3ページの書き込みながら脳裏に焼き付いていて…ようよう念願叶った!
坂道を下った先には、いかにも修業の場=禅寺らしい、小ざっぱりと閑静な空間が現れます。一風変わった陶器製の燈篭も多治見だからでしょう。そして右に目を向けると…
おぉー!早くも、臨済宗の僧侶で作庭家の夢窓疎石(1275-1351)が作った庭がお出ましに―
メンバー4人、いきなりテンションMAXです!まずは、全身で庭のサイズ感に反応しましたね。池の縁に沿ってそろりそろりと歩みを進めるたび、目前に広がる景色が刻々と変化し、何ともドラマチック。歩きながら絵画の中に入って行く気分でしたよ。
回り込むと、正面には真ん中に屋形がのっかった反り橋が架かり、橋の先に見えるのが国宝の『観音堂』で、四隅が反りあがった屋根の緊張感がカッケ~のなんの~。写真の手前側が“この世”で、橋を渡ってお堂のある向こう側が“あの世”という見立て
観音堂の横には切り立った岩肌がデバってて、そこから滝が流れ落ちています。てっぺんには六角形の小さなお堂。中にはたくさんのお地蔵さまが祀られているらしいけど、目を凝らすと、ゴツゴツした岩肌にもお地蔵さまがびっしり。ちょっとシュールな絵…
引きの絵も見て!そもそも俗世を断って修業の場に選んだ土地だから、人間にとってはすべてがアウェイな環境だったわけでしょう。そこで疎石は、自然の形状をそのまま活かしつつ、水を引き入れて大胆なインスタレーションを試みたんだろうね。ただ仏教と寺と庭の関係って、合致するような矛盾するような…考え出すとモヤモヤが止まらない。だって造園って執着の証ではない?禅の教えに反するような気がしなくもないが…まっ、いいか。教えより、美術の力に降参です(笑)。
さて、反対側までぐるっと歩き切った景観が次の画像。池には亀島、鶴島も配されており、池泉回遊式庭園の決定版です。あ~、目に見えるすべてが心地良かったです★煩悩の塊のあたしには、スペースXが打ち上げた「クルードラゴン」で行く宇宙旅行より、永保寺内小宇宙の方がダンゼン魅力的。目に見えない気配にも秘密があるのかなー。
そう、カンディンスキー(1866-1944)『コンポジション VIII』(1923)を連想しちゃいました。
池を回ったさらにその奥には、もう一つの国宝『開山堂』がひっそりとたたずんでます。やっぱ反り返った屋根に圧倒されますね!人目を避けるように建てられている礼堂、なのにはしたないほど自然じゃない(笑)。庇の裏側とか、驚異の複雑構造です
ほか、開山堂の近くで目に止まったもの―「天皇家と何つながりなの?」「立膝ついた3つの頭の石像…ちょっと毛色が異なるような…コレ何?」など、調査用に撮影(笑)。
次回は境内の大イチョウが色づく頃に訪問してみたい…ここから眺める庭もまたよし!
手作り蝶のおまけ
―てなわけで、“キョロキョロ多治見”を楽しんだあと、お盆休みには、ひとり「なーんちゃってブリュックごっこ」をして過ごしてマシタ🦋夏休みの宿題、いっちょ上がり~
PS 次回は1回お休みにして、9/29に更新します。