サクッとお江戸✑備忘録 2020秋②

前回に引き続き、お江戸美術館巡りの後半戦です。たまたまですが、紹介する残り3企画は、全て写真表現でした~。

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3本め👀『森山大道の東京 ongoing』東京都写真美術館

▶参上しました、言わずと知れた写真家・森山大道(1938~)の大規模個展です!冒頭のチラシ画像を見てよ👀これさー、どう考えてもパンクバンドのフライヤーでしょ?(笑)とても80越えの爺さま仕様のデザインとは思えず(汗)…発注ミス?いやいや、実際、蓋を開ければ、爺さまイメージを探すことの方が困難で…。そう、浦島太郎の逆バージョンです(爆)。思わず一句「玉手箱 開けたとたんに 酒池肉林」

f:id:chinpira415:20201010101801j:plain▶本企画は、森山さんが切り取り続けている“東京”を、最近作を中心に約170点で構成。館内のほとんどが撮影不可だったため、ネット上で見つけたものをお借りして紹介しましょう。森山ワールド、実は酒池肉林と感じるのは一瞬のことで、1枚1枚に目を向けると、熱からず冷たからず…。あたしにはどこか奥ゆかしさすら感じるの。例えば中央列の一番右、女性の脚元に落ちた光に見惚れてしばらく立ちすくんじゃったよ👀

f:id:chinpira415:20201010101837j:plain▶はたまた、日差しを受けてミニスカートで歩道に直座りしてる女性へのまなざしと、ゴミあさりしてる鴉へ向けたまなざしは等価で、慈愛に満ちた情景に見えたわ。「よっ、おつかれさま。楽しんでるか~、無事に帰れよ」ってなかんじで―。

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▶屋外の喫煙コーナーなのか、フェンスとひしめき合う愛煙家たちが一体化したこの1枚もすんごく好きだった。都会の中の緊張と緩和…まるで戦士の休息ショット📷

f:id:chinpira415:20201010102852j:plainカラーもいいわよ~ 「赤」の配置が誘惑の呼び水となるものの、総じて哀愁が充満。そういえば、モノクロ・カラー問わず、髪の長い女性がよく登場するんだよね。特に無防備な後ろ姿が小鹿のようにとらえられてて…森山さんの好みなのかな?(笑)

f:id:chinpira415:20201010102110j:plain▶うわっ、なんだか見てはいけないものを見てしまったような…(汗)。浴槽に欲情

f:id:chinpira415:20201010102134j:plain▶左は、てろ~んとタレたワンピースとバラック小屋感と広告性の三つ巴。カメラが現実のコピー機だとわかっていても、こんな絵柄はあたしには絶対に撮れない。もしかしたら右は奇跡的に撮れるかも…情報量が少ないし…。いやいや、皮膜に1枚隔てられての亡霊室内、やっぱムリムリ💦

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▶そういえばなぜか森山さんの写真集には手が伸びない…。じぶんの手に持って鑑賞するのは、どこか違う気がする…。散歩+撮影を新種の養生訓にして、ブラブラし続けながら産み落とす森山さんの作品は、こっちもブラつきながら眺める施設展示がベストじゃないかな。まっ、いずれにせよ絶えず次作が見たくなる写真家、ongoingですな👍

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 4本め👀『あしたのひかり~日本の新進作家vol.17東京都写真美術館

▶写美でもう1つ、5作家6名の新進作家を紹介する企画展もチェック。今までにも写美では、未知の作家と出会い➡その後個別に追い駆けるという流れになったりしてるので、はじめの一歩に前のめります!そして踏み入れた途端、目に飛び込んできたのは、緊急事態宣言下に桜前線を追い駆けるように東北へ向かった岩根愛(1975-)の作品群。

f:id:chinpira415:20201013111952j:plain宵闇に人知れず咲き誇る桜にストロボの光が流れ流れて…胸倉をつかまれましたね。透過性のシートにプリントがしてあるらしく、視線の先には絶えず桜桜桜…。さらに宙に浮かしての展示なので、暖簾をくぐるように桜の森を歩くことになるんだけど、やがてハレの感覚は遠ざかり、桜のケの時間の中にいる気がしてきた―

f:id:chinpira415:20201015133040j:plain▶また、ワイ島日系人の歩みを綴った記録映像や、80点のスライドフィルム『My Cherry』にも強く魅かれた。『あたらしい川』と題した彼女のコーナーには、一見バラバラな記録表現が並べられていたんだけど、ただどれも一本筋の通った母性的な視座(上等な演歌な匂いも♫)が宿っていて仕事がデカイ!さあ、急いで追い駆けま~す👣

f:id:chinpira415:20201015094726j:plain▶次の菱田雄介(1972-)は、国境や紛争地域で撮影を続けている写真家。とはいうものの、デンジャラスな報道写真をイメージすると肩透かしをくらう。『border』と題したこの展示は、相当訳アリの対象を狙っているらしいのだが、まったくの白紙状態で眺めるうち、政治より生活、生活より何気ない時間に意識が向き、さらには時間の束=歴史にまで思いを馳せるようになった。例えば朝鮮半島の北と南の素顔を並置した組写真のシリーズは、生き別れた双子が菱田氏の写真を通じて再会したような錯覚に―。

f:id:chinpira415:20201015144140j:plain▶世界各地の子どもたちが、30秒間カメラを前にする『30sec』も、わずか3分44秒の動画ながら、長編映画並みの濃密な生の時間を体感できて、思わずクラクラ。中でも、列車でうたた寝する少女の横顔に釘付けになり、思わずシャッターを切った…彼女はどんな夢を見ているのだろう…30秒後にフイに目を覚ます表情がまたタマランのよ😢

f:id:chinpira415:20201015143414j:plain▶…てなわけで、早々Webで調べたら、ご本人による丁寧な作品解説をまとめたnoteを発見!文章もすごくイイですよ~。写真とテキスト、どちらからでも菱田氏のまなざしに近づけます。そしてどちらも“可憐”さらにここから入ると、一番最後に『30sec』の動画も見られます、ぜひ(2分41秒にはうたた寝少女登場!)

note.com

▶そしてあたしの好みにストレートに響いたのが、原久路&林ナツミ『世界を見つめる』だ。お2人は14年に東京から九州へ移住し、別府を拠点に、そこで出会った無名の少女たちを被写体にして制作している写真家ユニット一瞬にして虜ですわ(笑)。こちらは少女と風景の組み写真シリーズ。どこか既視感ありーの、いやいや未知との遭遇じゃないか…と、じぶんの中でも両極端の感想がせめぎ合ってメチャ焦った💦

f:id:chinpira415:20201017105937j:plain▶最初はタイムラインに流れて行くSNS的なノリかな…と軽くながめていたんだけど、作品の前に立つと凝視せずにはいられなくなり、イチイチ足が止まっちゃいマシタ

f:id:chinpira415:20201017110034j:plain▶じぶんでも不思議だったのは、笑いのツボにハマるように写真のツボにハマったこと(笑)。ポートレイトと風景、どちらの写真もやけに緊張度が高く、さらにその2つが組み合わさることで、両者見合っての真剣白刃取り中継を見てる気分だったのよ~😊

f:id:chinpira415:20201017110144j:plain▶次の双子ごっこシリーズでは、1枚の写真の中に同じ少女が一人二役でポージング。ここでは組み写真が内在化されていて、真剣白刃取りのひとりバージョンを愛でる面白さがあるわけ。殉教者の目をした少女とどこまでも続く竹藪…ここに圧縮された時間も好きそう、原&林の写真には、少女たち自身の手で少女幻想をうっちゃり、新しい冒険譚を生み出しているようなLIVE感がある。あたしも大分少女の仲間になりたいよ~

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5本め👀『永遠のソール・ライター』Bunkamuraザ・ミュージアム

▶最後は恵比寿から渋谷へ移動し、“ニューヨークが生んだ伝説の写真家”ソール・ライター(1923-2013)へ。彼を知ったのは、4~5年前に見た『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』('12)というドキュメンタリー映画がきっかけ。チャーミングな映画でさー、作風も人柄も一目で気に入ったの


著名な写真家に迫る!映画『写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』予告編

▶そこで、満を持してナマの作品を見ることになったわけだけど…最初のコーナーに、つい数時間前に見た原&林写真を連想するジャンプ少女が登場するじゃないの~~『レミィ』(1950年頃)マジかー、偶然にしては出来過ぎじゃないか!

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▶しかもなんとこの数枚後の『水平たち』(1952年頃)では、あの双子ごっこの残像ともシンクロししちゃって、さあタイヘン(笑)。いやー、類推の楽しさで脳ミソ爆発よ!

f:id:chinpira415:20201021160300j:plain“カラー写真のパイオニアと呼ばれてもいるライター。80年代、突如売れっ子広告写真家の看板を下ろし、隠遁生活を送っていたらしいのだけど、住み続けたN.Yの日常を終生撮り続け、近年再評価だって。そりゃあそうでしょう、誰に見せるでもなく、こんな写真を膨大に撮り続けていたら、日の目を見ないわけにはいかないでしょう~

f:id:chinpira415:20201021213710j:plain▶基本、引きで街の営みを眺めているんだけど、まなざしが控えめでやっさしい~。物理的な距離はあっても、精神は被写体と一体化してる。いっしょに震えてるよね!

f:id:chinpira415:20201021213625j:plain被写体の前に、わざわざさえぎるものを撮り込んで、一層隔てて覗き見る都市の一喜一憂。どこか照れくさそうに、いつも愛おしそうに―。

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▶同じ日の午前中に森山さんの写真をしこたま見たでしょ。だからなのか、森山さんとライターの写真には同じ波動を感じたんだよね。アスファルトとの向き合い方が本能でわかっているというか…。街からじぶんを消したり出したりする間合いが、同じなのよ。そしてふたりとも含羞の人…そこが好き。

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妹のデボラ、恋人のソームズ。大切な理解者に寄せるライターの思いも目撃した企画展。すでに他界した3人が、写真という形で日本に舞い降り、生前なんの縁もない我々の心情を揺さぶるのはなぜなんだろう…。時間を止め、かつ、時間を蘇らせる写真という表現形式…わからないことだらけだから、魅かれるのかもしれないね。

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▶帰路はマブダチYちゃんからもらったおやつをつまみながら、ガラ空きの新幹線でのんびり。ところでサク山チョコ次郎って、いったい何者よ?(爆)

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PS 次回は11/13に更新します