懐かしさと狂おしさと…企画展ハシゴ備忘録✒

5月大人美術部は、名古屋から北へ遠出し、企画展をふたつハシゴしてきました👣

 

【ハシゴ①段目】昭和日常博物館

いやー、久しぶりに出かけましたよ、昭和日常博物館!市内からだと微妙な位置にありますが💦、個人的には明治村&リトルワールドと並び、大好きな地元名所です。1度足を延ばせばリピーターになる確率はかなり高いと思うんだけど…意外と知らない人が多いのよね…。昭和の日常生活のさまざまな生活用具、玩具、風俗の収集、保存、常設展示の他、年3回の企画展を開催してて、しかも入場無料なんですよー!も~、行くしかないでしょう~🏁

お目当ての企画展は『紙モノづくし つたえる・つづる・つつむ・はる・ふく・あそぶ』。普段から紙モノに目がないちんぴら。感染症対策のため、滞在時間を2時間に限定されてかえってよかったですよー、いくら時間があっても見足りないくらいの内容だったから~😊

まず目に飛び込んできたのは「つつむ」のコーナー。平面的展示になりがちな紙の資料を、吊るしたり積み上げたりして立体的に見せる工夫が楽しい♬360度鑑賞で目の保養

いわゆる包装紙の類は、前後に重ね展示をしていて、華やかさ倍増🌼かつての服地屋さんのディスプレイを思い起こしました。包装紙って商品の“第二の顔”だったんだね~。

これだけの収蔵量を浴びると、懐かしむだけで終わらないわけよ。今見てもハッとするようなデザインに感心したり、かつて同じ包装紙を開けたときの記憶が鮮明に呼び覚まされたり…と、体内化学反応がハンパない!

本のカバー、箸の袋…今でもツイ持ち帰ってしまう。本来は、包みの「中」がいわゆるご本尊なわけで、「中」を守るための脇役。だから脇役の在り様をムダに思う人もいれば、ちんぴらみたいに用途を越えた価値を感じてしまう人もいるんですよね(笑)。

平面から立体へ。紙製パッケージという脇役も、こうして多種多様なものが、あるべきところではない場所に並ぶとまるで美しき遺跡のように見える。今も昔も製造側は、この脇役に最大限の購買効果を当て込み戦略を練るのだろけど、商品に紐づかない“第二の顔”としての側面もけっこう大事なポイント。パッケージの好感度、侮れませんね

そして「あそぶ」のコーナーには、大好きだった雑誌の紙製付録などが所狭しと並んでマシタ組み立てたらお店屋さんができちゃうなんて、もう~しんぼうたまらん!半立体ってところがミソでさー、こどものごっこ遊びの王道だよね。でも今、こんな店先の食材屋さんがリアルでできたら、マジに大繁盛すると思うんだけどな~。

でたーっ!ちんぴらもめちゃくちゃお世話になった紙製の着せ替え人形シリーズ💎オシャレ心に灯がつき、デザイナーになり切ってお洋服をじぶんで描いて遊び倒したなあ。

着せ替え人形のディティールは時代と共に変化。何せファッション=虚栄だから~🎀

ノート、日記、便箋、ハガキetc…が並ぶのは「つづるのコーナー。手で文字を書きつづる行為自体、どんどん先細りになるのは明らかだけど、今でもつづることができる形状のものを目にすると、異様にテンションがあがる。ここに何を書こうか…と想像する時間が、きっと至福なんだろうね。それに扱いやすさの点でも紙は文句なく優等生よ!

他にも、地図、チケット、コースター、電報、ポチ袋、紐…などなど、まさに紙モノづくしな企画展。おそらく二度と作られない用途のものもあれば、反対にこの先も変わらずに紙で運用されそうなものもあって、将来のくらしを空想しつつ楽しみました

とにかく企画意図が素晴らしい!昭和の時代に、紙を素材として作られたくらしの中のモノたちを、くらしの「道具」として紹介しているんだよね。さらに紙素材の「道具」を、つたえるつづるつつむはるふくあそぶという役割で分類展示していて、昭和を生きた人々が何を求めてくらしていたかが浮び上がり興味深かったの。道具をながめ人間の歩みを知る…ここには過去の時間と未来の時間が流れていましたー。

こちらは25年くらい綴り続けているあたしのスクラップBOOK。何がきっかけだったかは忘れちゃいましたが、単純に捨てるには惜しい紙モノをコラージュしながら貼り付けてます。紙=道具というより、つづりたい欲がうずまいているカオスBOOKです📚

 

【ハシゴ②段目】昼飯は豆腐づくし

ちょっと遠出するなら、やっぱ昼ごはんは新規開拓したいよね~♬ということで、今回は博物館近くのとうふの里 豆たへ行ってみマシタ。紙モノづくしのあとは、豆腐づくし。美食家の奥様たちが喜びそうなランチメニュー。しかもリーズナブルで丁寧な味付け。いいわー

 

【ハシゴ③段目】岐阜県美術館

53歳のある日、突然油絵を描き始め、91歳で亡くなるまで絵筆を握り続けた塔本シスコ(1913-2005)日曜美術館で初めて作品を目撃し、「これはナマで見なくちゃ!」と奮い立ってしまった作家です。今回、岐阜に巡回中の「シスコ・パラダイス かかずにはいられない!人生絵日記展でしかと見届けて参りました~👣

資料によると、画家志望の息子が実家に残した画材を使い、描き始めたのがシスコの画業のはじまりだとか。しかも、息子が描いた作品の絵の具をそぎ落とし、その上からちゃっかり自分の絵を描いたっていうから大いにウケた😊神の啓示ですかね?そうして描いたのがこちらの『秋の庭』('67)。ルソー並みの深く愉し気な密林ぶりがかっけー!

そして早くもちんぴらが最も好きな『夕食後』('67)の登場だ!けして壁に貼りつくスパイダーマンではなく(笑)、愛煙家の至福の一時が凝縮された夢のタペストリーです桐のタンスに埴輪にプロレス中継に土人灰皿に編み物にヒョウ柄(?)ベルトにおさげ髪…ちんぴらの愛するモノが網羅されててそのうえ全部がハモってる~♪構成力に脱帽だー

シスコが生まれたのは熊本県八代市。故郷を描いた『長尾の田植風景』(1970~72)は、巨大なひまわりがそそり立つエンジン全開の快作です。ひまわりの葉陰からは故郷の街並みをのぞかせ、根本には田植に勤しむ人々を配置。近くに見えるものは大きく、遠いものは小さく…それで何か問題が?彼女が描けばすべては楽園~♪

59歳で息子夫婦と同居するため、大阪府枚方市の団地に引っ越したシスコ。四畳半の自室をアトリエにし、創作三昧の日々を送ることになります。ずらりと横に並べてた田植作業が、枚方総合体育館前のコスモス畑』('96)では幼稚園児を縦列に。なんて大胆!

行きつけの山田池公園は、シスコの創作の源泉の地。『山田池の春 シスコとハト』('99)は、思わずキューピーのたらこマヨネーズのCMを思い出すが💦群舞を従えて舞台の中央にお出ましになるはシスコご本人。餌に群がる鳩がまるでシスコのスカートに見えるし、さらにアーチ状に並ぶ木立とも呼応し、LIVE感たっぷりな1枚に仕上がってるね

こちらは桜島(1970-88)の想い出を描いた風景画。木、花、山、空、ぜーんぶが一丸となって噴火してる。一つ一つのモチーフがめちゃくちゃ丁寧に描かれていて、一切手抜きナシ。なぜか3人娘が洗い張りをしてるが…これはシスコの実体験の一コマか?

シスコは、ふるさとの海もたくさん描いてる。『シャク取り』('89)は、熊本でしか取れないシャクというヤドカリの仲間を取りに行った体験記。横長の画面に沖の青海波と浜辺のデザインが洗練されてて、すごくシャレオツ。素材はなんと段ボール!

『オノダチの大運動会』('01)って…どこが運動会?(笑)盆踊りみたいな余興か?歌詞まで書き込まれてるよ~。今更ですが、シスコに絵画のお約束は必要なしだね😊

シスコの絵には、影がない、迷いがない、余白がない。代わりに、まっすぐな情熱と生きる歓びと奔放な創造性がみなぎっている。孫の披露宴を描いた『ミアのケッコンシキ』('97)では、主役も参列者も微妙にナナメっているが、おそらく本人に特別な意図はなく、天然のオフビート感覚をお持ちだったんじゃないかと想像してる。

長野五輪開催中にスピードスケートに夢中になったシスコは、『さよなら長野オリンピック('98)と題して清水選手と西谷選手の晴れ姿を書き込んだ。シスコにとってTVは世界に通じる窓のようなものだったのかな…絵日記風な画面構成が若々しい

ところが2001年、88歳になったシスコは認知症を発症。生活面では介護が必要になるが、絵を描く意欲は衰えなかったようだ。ただ、画風には変化が現れる。めくるめく空想ドラマの構成力が弱くなり、モチーフの数も減少傾向に。また、この時期、やたら丸山明宏(美輪明宏の本名)の肖像を描くようになる

丸山の造形を描くというより、丸山の魂を捉えようとしてるかんじ。抽象の力で―。

そして最後、亡くなる前年に描いた『月光(雲に入る)』('04)を目にしたとき、大人美術部一同、ツイ声を上げて魅入ってしまいマシタ!展示の順番で対象から受ける印象はいかようにも誘導されてしまうものだけど、この1枚は、まさに大家の晩年の傑作とでも呼びたいレイヤーに着地していて、たまらなくよかった~~。

かかずにはいられない本能を使い切り、すべてをそぎ落として月に帰ったシスコターコイズブルーの空が胸に染みる…。それにしても、孫の手を借り、自身の大規模回顧展が実現する光景を、彼女が生きていたらどう絵にしただろうね~😊

(6/26まで岐阜県美術館で開催中)

PS ブログを休んでいる間に無事に引っ越しを完了しました!せっかくなんで、引っ越しの経緯をまとめたブログを2回に渡って綴りましょう。前半は6/29に公開、お楽しみに