サクっとお江戸✑備忘録 2022秋

コロナ禍3年目ですが、今年は引っ越しをしたので遠出する余裕がなく💦、棚上げにしていたところに何と一発逆転!旅行支援を利用し、恒例のお江戸で2泊3日の美術展ハシゴ旅が格安で実現できマシタ~。晴れづくし、歩きづくし、鑑賞づくしのイイことづくしの小旅行。サクっと備忘録にまとめてみました、どぞー♫

練馬でマネ

▶まずは練馬区立美術館『日本の中のマネ』へ。マネって何者?モネとは違うのか?…はい、教科書に載っている画家なのに、モネと比べたら圧倒的に知名度の低いエドゥアール・マネ(1832-1883)💦日本に紹介されて120年。そもそもかつての日本の美術界はマネをどう受容してたんだっけ?と検証する展示なのですが、ぶっちゃけぜんぜん理解されてなかったのね…がわかり、めちゃ面白い企画になってました(笑)。

▶ところがラスト、【現代のマネの解釈】のコーナーに展示された福田美蘭(1959-)の最新作9点が、サロンの場で時代を照射し続けたマネとシンクロし、胸が高鳴りました★特に<ゼレンスキー大統領>(2022)は、今年の世界NO.1アイコンを、フラットでクールなマネの画風に寄せて仕上げてて素晴らしかった~。鑑賞者を冷ややかに真っ直ぐ見つめる視線が、逆に現実世界の惨劇を生々しく蘇らせていたのです。

▶ちなみに展示されていたマネ作品ではポーラ美術館所蔵サラマンカの学生たち>(1860)が一等好き。こんなすっとこどっこいなシチュエーションを絵画にするなんて、すんごく斬新。まるで映画のワンシーンですよね🎬

白金で旅気分

▶小春日和な2日目。東京都庭園美術館『旅と想像 創造』をチェック。何せ長い間、移動の自由に制限があったわけで、旅のアンソロジー企画は渇望の表れですね。一番インパクトがあった展示は、美術館本館のかつての主、朝香宮夫婦の百年前(!)の欧州旅行時の資料。ほら、この写真1枚ですでにお腹いっぱいでしょ?絵に描いたようなモボ&モガのツーショットにため息、ふーっ👀

▶そして40年後。朝香宮夫婦が旅した同じコースを20万円の片道切符を手に船に乗ったのが、若かりし頃の高田賢三(1939-2020)なんですよ。PARISに渡ったケンゾーが、その後世界的なファッションデザイナーになったのはご存知の通り。彼の代名詞のフォークロアを採り入れたデザインは、この渡仏時の船旅からインスパイアされたもの。10代にリアルタイムで見ていたコレクションが再び直に見られるとは!

恵比寿で“不思議な力”を浴びる

▶お次は東京都写真美術館で開催中の野口里佳 不思議な力』展。初めて見る野口(1971-)PHOTO、想像よりウンとよかったです。様々なシリーズが展示されていましたが、例えばこちらの<父のアルバム>(2014)は、写真好きだった亡き父が遺したネガを野口さんの手でプリントしたシリーズ。いわゆる家族のかつての姿が記録されたプライベートフィルム…なのになぜか1家族の想い出話に閉じてる印象がまるでないの。写真の中の時間が主役になって、鑑賞者に語り掛けてくるのです。

▶最新作の<ヤシの木>(2022)は3部作。フツーに考えればヤシの木が風にあおられている状態なのでしょうが、なぜかヤシの木がじぶんの意志でヘッドバンキングしてるように見えてしょうがなかった(笑)。激しいビートにノってるよね~♫ なんだか野口作品を眺めていると、人間であるはずの現実の自分から幽体離脱した気分になれる。束の間、重力を忘れちゃた気がします😊

原宿で鼓動を聴く

秋日和に誘われるまま渋谷から原宿まで散策。こんな風に歩くのなんていったい何年ぶりだろう…西日を受けながら線路沿いをテクテク。特別な思い出などないのに、なぜか懐かしさがこみあげてきてツイ感傷的になった。落書きされた標識に不揃いなカーテンまでも美しく輝いて見えたりして…

▶向かった先は原宿駅前のブラム&ポー。2021年10月に突如病に倒れ、その後奇跡的な速さで回復し、制作を再開した岡﨑乾二郎(1955-)の最新作が見られると知り、立ち寄ったのです。はい、扉を開けた瞬間、岡﨑ワールドは全開でしたよ~。西日に照らされた作品群からは、心臓の鼓動が聴こえてくるようでした!

六本木でLIVE体験

▶どんなに歩き疲れても、美術館の開館が延長される金曜日&単独行動なので、どうしても欲張ってしまうのがちんぴらです(笑)。続きまして国立新美術館開館15周年記念 李禹煥(リ ウ ファン)(1936-)の大規模回顧展へGO👣横浜美術館で初めて目撃したのはもう17年も前になるのね…。根気よく名前を覚えられる方ではないけど💦、李作品だけは画風と作家名が完全一致するんです。そのくらい一目見たら忘れられない!

▶最初期の活動から最新作まで、創造の軌跡をたどる今回の企画は、ドキュメンタリー映画を見ているようなLIVE感がありました。李のアクションはシンプルで誰の目にも一発で飛び込んできますが、同時に彼の精神性もダイレクトに伝わってくるので、創造の軌跡が人となりに直結して見えるからかもしれません

▶会場の途中の屋外ブースには、石とステンレスの板で構成された<関係項―アーチ>(2014-2022)が展示されていました。夕暮れの空にぽっかり浮かんだ雲、もうこれもバッチリ李作品でしょう~。ほら、室内と連動して響きあってますから~

竹橋で兄を慕う

▶最終日。今回のお江戸旅の第一目的である大竹伸朗へいざ出陣🏁国立近代美術館が大竹伸朗(1955-)のアトリエに大化けしてました。これまた16年前の回顧展以来の大規模展示で、半世紀近くにおよぶ創作活動を一挙公開。500点の構成が圧巻です。しかも李禹煥とは真逆の情報密度濃厚作風ですからね。体力のある昼間に行かないと…💦


www.youtube.com

▶入口には大竹の本拠地のサインが舞い降りてます🚉ホンキ度MAX🎆

▶とにかくボリュームがすごいので、今回は大竹さんのことがとても他人とは思えないほど魂レベルで共振した作品をピックアップします。まず入口すぐのガラスケースに収められた、若かりし頃に滞在した英国と北海道で撮った写真に注目しました。すでにここに、大竹さんの愛着モチーフと孤独感が全部切り取られているんですよ👀

▶お店の看板、扉、窓枠、ガラス越しの光景…惹かれるんだろうなあ。わかるわ~。

▶若干感傷が混じった、人けのない、静まり返った風景にも共感するする~。

そして冊子や印刷物への偏愛とコラージュ魂はいつも他人とは思えません!さすがに盛りの分量には負けるけど、日記並みの継続作業になっている点はまったく同士。クドさが一緒、兄弟かもしれません😊

▶意表を突くファイリングや編集をいつも考えてるところも同士

▶カラーコピーを利用したオリジナル小冊子作りのバリエーション、こんなにあるのか~。あー、手に取って愛でたい!お店の構え同様、冊子の表紙も扉にあたるわけで、大竹さんはとことん扉好きですね。がっつり共感してしまいます。

▶紙もの愛好家は間違いなくこのガラスケースの前で地団太踏むでしょう(笑)。特にちびっこいヤツ、気になってしょうがない👀

▶でもって<ダブ平&ニューシャネル>(コントロールブース)(1999)の錆びたトタンの登場です。やっぱ小屋はトタン、それも波板じゃないとね~。ちくわみたいな赤茶の質感の貼り合わせに同好の士を見た思い。これからも板金屋の娘(私)は、宇和島の兄を慕い続けます、はい

谷中で再会を果たす

▶ラストは谷中のSCAI THE BATHHOUSE三輪美津子(1958-)の個展Full Houseを鑑賞。今年のあいトリで最も魅かれたあの三輪さんの初の個展がちょうど始まっていたのですよ~、超ラッキーお江戸備忘録の最後を飾ってみました。

▶元は由緒ある銭湯だったギャラリーの扉を開ければ、正面の大きな壁に家の絵が描かれていて、速攻でここはどこ?わたしは誰?状態に!手前の柱が効果的に働き、書割りにも本物の建築空間にも感じられました。同時に様々な映画のシーンが脳ミソを駆け巡り…パトリシオ・グスマン『夢のアンデス(2020)のラストシーンやゲオルギー・シェンゲラーヤの『ピロスマニ』(1978)を連想…妄想の世界へ没入です。

格子状に敷き詰められた足元の石には、周囲のモチーフが映し込まれ、奥行があるのかフラットなのかよくわかんなくなる…。やっぱりここでも映画『ビッグ・リボウスキ(1998)が想起されて、思わずボウリングの玉を探しました~(ウソ)。

▶透明なガラス瓶の中にもう一つ瓶が描かれていたり、楕円形のフレームの中に同じフレームの写真が入っていたりと、すごくシンプルなアクションで作品が形作られているのですが、そのあまりのシンプルさがかえって鮮烈で、凝視しているうちに何を見ているのかわからなくなるのです。空っぽの2乗=不条理ドラマになるというか…。

▶左手の白黒の格子柄の絵<風景としての風景画>(1994)は、わたしが撮影に失敗したのではなく、ピントを無限大にぼかして撮った写真を元に描かれている作品で、これまた観る者を惑わします。さらに、壁の隅にアーチ型のちっこい出入り口?が描かれているからなのか、今度は映画『マウス・ハント』(1997)が蘇り、じぶんの身体サイズ感も狂い始めるではありませんか~💦

う~ん、さほど大きくはない空間なのに、めくるめく世界が展開されていて、なんてシャレてんだよー!ハッキリ言って、VRなんて足元にも及ばないインスタレーションです。新旧作品で構成された『Full House』展は12/10まで公開中です。必見👀

PS 次回は12/13に更新します