marimekko、再発見★

欧デザインがもてはやされて久しい。自然界のシルエットがデザインに溶け込んでいて、何か人間にとっての心地良さを瞬時に感じ取れるテイストだからだろうなあ。無難過ぎず、はじけ過ぎず、手仕事の風合いで生活にしっくり馴染むところなど、あの『民藝』と重なる面もあり、日本人にはより親密度が高い気がするわ。とはいうものの、どんなに機能的で美しい生活デザインスタイルだろうが、それ一色に染まり切ることほど野暮なものはない―これが私のモットーなんだよね(苦笑)。

 

してつい先日、3年半ぶりに全面開業した大名古屋ビルヂングへようやく足を向けてみたら、北欧・フィンランドを代表するファブリック・ブランド、marimekko<マリメッコ>発見!着道楽友人のKが「ラシックとは微妙に商品展開が違っていて嬉しい!」と話していた通り、なるほど相変わらずテンションがあがる店舗設計。何せホワイトキューブですからね~。marimekkoマリメッコ最大の魅力でもあるプリントの悦楽をお披露目するには、やっぱあのディスプレイでしょう。でも値段はぜんぜん可愛くないけどね(爆)。コットンワールドとはいえ、正真正銘のハイ・ブランドだもん…つまり私には無縁ってことよ(笑)。

f:id:chinpira415:20160607232201j:plain f:id:chinpira415:20160607232248j:plain

 

で、その翌週。タイムリーなことに、戦後まもない1951年にmarimekkoマリメッコ>を創業したアルミ・ラティア(1912-79)の生涯を描いた映画『ファブリックの女王』http://q-fabric.com/が公開されたの。会社設立時の様子や、ショーの舞台裏、クリエイターのアイデアの源泉なんかが明かされる王道伝記映画かと思って足を向けたら…これが想定と全然違うのよ! 正直言って、熱烈なmarimekkoマリメッコ>ファンの方なら、その屈折ぶりにガッカリするかもね(苦笑)。

f:id:chinpira415:20160607235404j:plain

いうのは、舞台でアルミ役に抜擢された女優マリアの役作りを通して、アルミ・ラティアの生涯に迫るという劇中劇仕立てだから、何かと手探りでまどろっこしいの。つまり当時の再現ではなく、今の時代に引き寄せて彼女の人生を振り返って見せてるわけ。しかもこのアルミがかなり強烈なキャラで、あの明朗快活でシンプルなブランドイメージとは異なり、思い込みが激しくて猪突猛進型のかなり人騒がせな経営者だったらしい(汗)。華やかなサクセス・ストーリーというより、どう困難に立ち向かい信念を貫いたかに比重が置かれているから、映画全体のトーンも混沌としてるんだよね。監督は、生前の彼女をよく知るmarimekkoマリメッコ>の元役員ヨールン・ドンネル。

f:id:chinpira415:20160608185643j:plain f:id:chinpira415:20160608185747j:plain

画はイマイチ消化不足で物足りなさが残るものの、ひねくれ者の私は、アルミの素顔をのぞいたことで、むしろmarimekkoマリメッコ>自体に興味を抱くようになったよ。戦争で3人の弟を亡くし、裕福な家柄のダンナとは仕事上のパートナーにもかかわらず息が合わず、保守的なビジネス社会の経営陣とは絶えず争い、孤軍奮闘の連続。男の人との縁が薄い人だったんだろうなあ…。まだ珍しかった女性企業家として、自分の感覚だけを武器に走り抜いたみたい。ただ、彼女の新しさはそんな男勝りな気質より、才能ある女性クリエイターを次々と発掘し、メンバーに自由な創作活動の場を与える手離れの良さにあったような気がするんだよね。自己実現に執着せず、もっと大きな視野で、人々の生活スタイル全般を刷新しようとの夢があったんじゃないかな。戦争なんて始めちゃう男たちだけに社会や暮らしを任せちゃダメだと…ね。そういう意味では母性の人。女性活用の第一人者として眺めてみるのも興味深いと思うわ。

f:id:chinpira415:20160608223157j:plain f:id:chinpira415:20160608225843j:plain

marimekko<マリメッコ>が、何度も経営危機に直面しながら、今も世界に名を馳せるブランドであり続けるのは、そんなアルミ・ラティアの創業精神が継承されているからなんだろうね。今年は全国を巡回する『マリメッコ展』が企画されているらしいし、色々な場面で話題に上りそうですな~。

 

れと、フト自分の日常を見渡したら…意外と使っているのよ、marimekkoマリメッコ>グッズ!そのほとんどがありがたいことにもらいもの(涙)。確かにアルミが言う通り「使い続けられる商品」であるのは間違いない。 まずは一番人気の「UNIKKO(けしの花)」柄グッズだよホイホイ。「MUIJA(女性)」柄のTシャツも着倒して色褪せしてるぜ(汗)。

f:id:chinpira415:20160608232104j:plain f:id:chinpira415:20160608232227j:plain

続きまして、誕生日にもらった折りたたみ傘でしょう、それと定番デザインのショルダー・バックは自分で買ったよ~。超使い勝手イイんだよね。サイズの出し方、カンペキ!でもって着道楽友人のKにもらった子供用のワンピースはチュニックとして愛用。強引すぎます?(笑)

f:id:chinpira415:20160608232546j:plain f:id:chinpira415:20160608232654j:plain f:id:chinpira415:20160608233929j:plain

中でも一番使い倒してビックリなのがMにもらったこちらのがま口。タバコ入れにしてるからさー、Sに作ってもらったマスコット人形を付けて肌身離さず持ち歩いてるの(笑)。何度も手洗いしててクタクタだけど大好き💛

f:id:chinpira415:20160608235207j:plain

最後は、去年フィンランド航空を利用したRが土産に持ち帰ってくれた機内グッズ。「KIVET(石)」柄の紙コップと「ISOT KIVET(大きな石)」柄の紙ナプキンのキュートなセット。しかも無料!でかしたぞ、R!

f:id:chinpira415:20160609000150j:plain

 もはやmarimekkoマリメッコ>は特別な海外ブランドではない。日本の日常にもスーッと溶け込んでいる。アルミが生きていたらこの光景をどう思うのか…。ちょっと聞いてみたいところだわ。

 

 

鶴舞公園―初夏🌹編

舞公園レポート第3弾では、バラを中心にした初夏の装いをご紹介★

ところで、前回桜編では、鶴舞公園の王道の横顔にあえて迫ってみたが、実は最も面白かったのは、桜まつりが終わった翌日(4/11)にあったのよ!月曜朝、いつものように地下鉄の出口を上がったら…ここは新宿か?と見間違わんばかりの、ゴミの山とアルコール臭でさー、その夢から覚めた光景に何とも言えないけだるさが漂い、シビレたあ~。屋台は見る見る間に撤収され、公園作業員の方たちも手慣れた様子で清掃マシーンに徹し、「はいはい、目を覚まして~。宴はおしまいだよ」と背中で物語っていたの(苦笑)。その後1週間くらい、ビール臭が土の表面から立ち上っていたけど(汗)、あっという間に日常化した園内のいたるところで、鳥たちだけが食べ物の残りかすを探し求めて元気いっぱいだったな…。自然の摂理をしみじみと噛み締めさせていただきましたよ、はい。そして鶴舞公園=“我が茶室”(!)のしつらえも、桜→ツツジ→バラと日々変化を続け、連日絶好調。短くも美しい初夏の時間を堪能するのは、今しかない!

 

▶ベルばらまつりにホホ緩む

やっぱ5月はバラですな!とはいえ、一体何種類あるんだ?と品種の多さにたじろぐちんぴら55歳。ゴージャスなものにイマイチのりきれない性分ゆえ、若干引くわ~。悲しいかな、もうちょっとこじんまりお披露目だとウレシイのですが…(貧乏症)。

f:id:chinpira415:20160527225108j:plain f:id:chinpira415:20160527225157j:plain

このひと盛り、花束で買ったらいくらになるだろう…と、思わず電卓たたきそうになったわよ。噴水塔の近くにポツンと一本咲き誇っていたこちらがわたし好み★

f:id:chinpira415:20160527230139j:plain f:id:chinpira415:20160527230228j:plain

 

▶思い思いにくつろぐ姿にホホ緩む

遠足の幼稚園児、ラジオ持参の人、囲碁で盛り上がるオヤジたち、朝からバード・ウオッチャー、写生する人、読書に耽る人、新聞読みながらうたた寝する人、犬の散歩、釣りするあんちゃんたち、外国人旅行客…。思い思いに初夏のひとときを野外で過ごすみなさま方。そのお姿を眺めているだけで爽快。名古屋は本日も平穏なり。気分よし。

f:id:chinpira415:20160527233011j:plain f:id:chinpira415:20160527233133j:plain

 

▶せっせとメンテ姿にホホ緩む

 毎日園内を歩いていて最も感心するのは、公園作業員の方たちによるきめ細やかなメンテ風景!特に梅雨前のこの時期は、刈り込み作業に追われてお忙しそう。年間、週間、毎日…と、おそらく作業スケジュールがきっちり敷かれているんだろうけど、浮っついたかんじが1ミリもなく、それでいて義務感だけで動いている風でもなく、誠実な仕事ぶりにいつも見惚れてしまうのは私だけ?

f:id:chinpira415:20160527233806j:plain f:id:chinpira415:20160527234654j:plain

作業のお供はリヤカー!今もお仕事道具として現役なのが嬉しい。リヤカーを見ただけで、子供の頃に戯れた身体の記憶が蘇るから不思議だわ。かさばる荷物も、静かにスーッと運べるんだよね~。気まぐれに検索してみたら、木枠付きでお値段1台8万~9万だって。http://a2k.jp/daisha/20riya/index.htm

 

菖蒲まつりを前にホホ緩む

鶴舞公園を歩くと、大小合わせて4つの池が趣きを変えて登場する。菖蒲で有名なその名もズバリ「菖蒲池」はこれからが本番だね~。本日は「胡蝶ヶ池」の北側、蓮の間にカモ発見!モネのジベルニーの家を見にフランスまで行かなくても、鶴舞公園でC'est si bon~♪

f:id:chinpira415:20160527234929j:plain f:id:chinpira415:20160527235054j:plain

 

▶ヒマラヤ杉にホホ緩む

さて本日のオオトリは、公園正門から噴水塔→奏楽堂へ続く両側のヒマラヤスギ並木でキマリ★明治初めに日本に移入された老大木。直径15m余りの木陰を広げる姿が、剛毅かつ優雅で、美しいったりゃありゃしない!

f:id:chinpira415:20160527235316j:plain

 それにしても、こんなに仮分数(頭でっかち)でなぜ倒れないのか???どうやってバランスを取っているのか???…マジで台風の日に観察してみたいわあ。

f:id:chinpira415:20160527235415j:plain

そして鶴舞公園は野鳥の宝庫でもある!近年は、飛来する鳥の種類も数も減りつつあるらしいが、それでも都心のド真ん中で、こんなに野鳥の声に浸れる空間があるとは…驚きだわあ。朝晩、野鳥のさえずりをBGMにするうち、自分の耳センサーもずいぶん敏感になってる気がするんだよね♪

f:id:chinpira415:20160527235502j:plain 

ゴミ一つ落ちていない園内で、のんびり遊んでるカラス。私もそのうち憧れの熊谷守一のように、カラスとこんな仲になりたいな~(笑)。

f:id:chinpira415:20160530224036j:plain

 

勝手にシネマ評/『オマールの壁』('13)

く耳にはするが、実際は何もわかっていないパレスチナ問題。宗教と人種が絡み、なんだか複雑そうだよなぁ…で終わりにしている。でもパレスチナ人監督、ハニ・アブ・アサドの映画を見ると、無関心だったパレスチナのことを我が事のように考えるきっかけになる。劇映画(フィクション)の力を使い切って描き、しかもパレスチナの現在が我が家の隣に越して来るほどリアルな『オマールの壁』('13)。『イケメン映画天国』で大笑いした後は、これをみて泣け!

f:id:chinpira415:20160522223139j:plain

ょっと言葉にならないくらい切ない映画である。フィクションと頭でわかっていても、どうにもやり切れない。映画の背景となる現在進行形の政治情勢に、これほど反応してしまった理由は、若者にとっての黄金の切り札―「愛」と「友情」と「青春」―が、ことごとく踏みにじられてしまうからに他ならない。パレスチナ自治区は天空までも壁に阻まれていた―。

f:id:chinpira415:20160522223332j:plain

 パレスチナ自治区に高々と聳える分離壁を背にし、ひとり立ち尽くす美青年の名はオマール。次の瞬間、イスラエル兵士の監視を潜り抜け、垂れ下がる綱を掴んでイッキによじ登り、壁の向こうへスルリと潜入する。威嚇の銃声が響き渡り、手のひらには鮮血の花が咲くが、これがルーティンワークと言わんばかりの慣れた振る舞いで、映画は幕を開ける。その深く静かに輝く瞳と、しなやかな身体性に早くもテンションMAXだ。ただし、オマールは今から007やマッド・マックスになるわけではない。切れ味抜群のオープニングを演じた青年は、コツコツと愚直に働くパン職人なのだ。彼が向かったのは幼なじみタレクの家。身の危険を冒してまで訪問する先が、友人宅だという日常に、まずは驚かされる。そう、あのヨルダン川西岸地区を囲む分離壁は、イスラエルパレスチナの線引きだけにとどまらず、自治区内を分断する形で建てられており、パレスチナ人同士を引き離す意図もあるらしいのだ。申し訳ない、まったく知らなかった(汗)。千種区に住む私が中川区の実家へ壁を乗り越えて行く図を想像したら、思わずめまいが…。話を映画に戻そう。ではそんなタレクの家で一体何がおっぱじまるのかというと、幼なじみで集う茶話会(!)である。

f:id:chinpira415:20160522223520j:plain

るで放課後の高校生男子のように、リーダー役で堅物のタレクとお調子者のアムジャドと3人で和むユルいひととき。冒頭の分離壁とのギャップが激しくて妙に可笑しい。いや、正確に言えば、我々を拍子抜けさせるこのトボけたリズムこそリアリティの要。むしろ緊張感を途切れさせないポイントなのだ。そして「友情」の次は「愛」の目撃である。オマールはタレクの妹ナディアと密かに愛を育んでいる。壁ドンよりはるかに難易度が高い“壁越え”に励むのは、愛のなせる技らしい。2人は誰にも気づかれぬよう、お茶と一緒に小さくたたんだ恋文をそっと手渡す仲だ。だが燃え上がる思いは、本人たちの気づかぬところで、閉ざされた世界の均衡を次第に崩し始める―。ここで目にする「友情」と「愛」は、一見、懐かしく控えめで純朴な青春の一コマに映るが、我々は冒頭の壁を目撃している。無邪気に酔えるはずはない。いつ終るとも知れぬ占領下の日常は、未来を宙づりにしたまま、息苦しく過ぎてゆく―。

f:id:chinpira415:20160522223739j:plain f:id:chinpira415:20160522223817j:plain

る日、オマールはいつものように壁を越え、恋人との束の間の逢瀬に胸を高鳴らせた帰り道で、イスラエル兵たちの嫌がらせにあう。その執拗なからかいと、息を殺して耐えるオマールの背中を一つ画面に収めるシーンの暴力的なこと!武力で制圧される側の屈辱感がスクリーンからにじみ出て、客席に座っている自分を後ろめたく感じてしまうほどだった。そしてこの事件を機に、若者たちの抑圧された感情が暴走を始める。積もり積もった苛立ちを晴らすべく、「待ってても切りがない!」と3人はイスラエルの検問所を襲撃。すでにオマールの愛と友情に親しみ、彼の心情と堅く結びついている我々は、このGOサインに躊躇なく飛びつくが、それはオマールと共にさらなる非情な世界へ足を踏み入れることを意味する。イスラエル秘密警察の報復である―。

f:id:chinpira415:20160522224001j:plain f:id:chinpira415:20160522224707j:plain

の映画で唯一プロの役者が演じる秘密警察の捜査官ラミ。この男の登場とともに、映画はまたも顔つきを変える。まるで金貸しシャイロックのごとく老獪なラミは、オマールを容疑者として逮捕し、協力者になって仲間を売るか、一生収容所で暮らすかの二者択一を迫る。いやー、ねっとりと赤子の手をひねる取引演出に興奮させられた!映画は、一本気な若者VS狡猾な大人というわかりやすい絵に作り込み、イッキに青春ジレンマ物語へとお色直しを図ってみせるのだ。そのうえ、レミの謀略に乗る振りをして、再び恋人と同胞たちの元に戻ったオマールが直面する様々な断片、その葛藤のバリエーションと緻密な構成があまりに見事で、私の意識は自治区内から外へ一歩も出ることなく集中し切った。特に、問題の多いこの地を宗教や民族間の確執からアプローチするのではなく、恋人同士がフツーに夢見る未来や仲間との変わらぬ友情というささやかな心の拠り所に、大きく揺さぶりをかけてくるスケッチの連続だからいたたまれないのだ。嫉妬があり、裏切りがあり、訣別がある…。オマールは何度も壁を越えて、自分の未来を掴みに行くが、その積み重ねがむしろ彼を孤独に追い込むという皮肉。世界はなぜこれほどまでにオマールをいじめるのか―。と同時に、なぜオマールはここまで自己犠牲を貫くのか―。古典的な悲劇の形式を借りることで、かえって占領下パレスチナ自治区の今を強く想像せずにはいられなかった。

f:id:chinpira415:20160522225247j:plain

象的なシーンを2つだけ書いておきたい。ラスト近く、恋人も幼なじみもなくし孤高な日々を過ごすオマールが、もう一度分離壁をよじ登ろうとする。しかし壁を越えることができずに途方に暮れていると、通りがかりの老人が「大丈夫、すべてうまくゆく」と手を貸すシーンが描かれる。衰弱して縮こまった心に染み入る一言と一陣の風…オマールの代わりに声をあげて泣き出したくなるほど、胸に突き刺さった。そして、アムジャドの妻になったナディアとの2年ぶりの再会場面。オマールは穏やかな笑みを浮かべて尋ねる「勉強は続けてる?」と―。家父長制が強く、男女間の壁も高く聳え立つ慣習の中で、教養は女の人たちの力になる!と励ますような一言に聞こえて、これも私には忘れ難いシーンとなった。…それにしてもせつない(涙)。

若者たちの黄金の切り札は、みんなが嘘を信じたことで崩壊した。云わば壁に取り囲まれた中での自壊によって消失したのだ。その重苦しさは他国の政治情勢だけにとどまるものではない。今見るべき映画、必見である。


第86回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品!映画『オマールの壁』予告編

 

オマールの壁
2013年/パレスチナ/カラー/97分
監督・脚本・製作 ハニ・アブ・アサド
撮影      エハブ・アッサル 
キャスト アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ

 

イケメン映画天国★最新ルポ PART 2

い、はい、お待たせいたしました!先週に引き続き『イケメン映画天国』のPART2をお贈りいたします♪ なんとPART1のアクセス数は通常連載の2.3倍!マジにびーっくり。やっぱイケメンというワードは強力な掴みになるのね~、勉強になりましたよ(笑)。そして指南役となってくれた映画愛好家マブダチRのこだわり解説が、細かいんだけど、読者にウケるツボを外さないからさー、きっと面白がって読んで頂けたのではないかしら。何せRは元・雑誌編集者。今も絶えず編集者目線で世の中を見渡していて、情報の伝え方にも敏感なの。イケメン画像を選んでいたときも感心したなあ…。自分の好みだけで押し切らず、基本は万人向けのビジュアルの中からピックアップ。「まずは、誰にでもちゃんとわかりやすく伝わるイケメンのイメージをお見せしないと意味がないですから!」だって。いやー、えらい!カスタマー設定まで自然にできちゃうあなたは生涯編集者よ~。というわけで、後半戦スタート🏁 

※前回同様画像が2カットある場合は、左側に顔・右側に身体のRがセレクトしたベストショットを配置しています

 

ザック・エフロン(Rポイント💛💛💛💛点)

f:id:chinpira415:20160515215330p:plain  f:id:chinpira415:20160515215406j:plain

 ▶誰、コイツ?ザック?ごめん、ホント知らないわあ~。顔と名前が一致したとしても、追いかける要素が一個も思いつかないんだけどね(苦笑)。視界に入っただけでお腹いっぱい(汗)。左は少年隊の克ちゃん?右のバーベキュー野郎、ジョージ・クルーニーじゃないの?ジョージなら好きな方だけど…。「どうしてこの魅力がわかんないんですか!アイドル顔で、この肉体!ギャップがたまんないんですよ~」…だーかーら、私にはそのギャップが気持ち悪いんだってば(笑)。「ザックは子役からずーっとアイドルの最前線にいるんですよ。日本でいえばジャニーズです。キラキラ輝いていてめちゃくちゃキュートじゃないですか!」。なるほど合点がいった。アイドルと言うけれど、透明感ゼロで、やけにスレっからしな感じがしたのは業界歴が長いからなのか!つまり坂上しのぶ?ヤッスイわ~(笑)。実際は1987年10月18日 生まれの28歳らしいのだが…。

▶Rがザックに最初に目を付けた『ニューイヤーズ・イブ』('11)から、またもや細かすぎて伝わりにくい萌えシーンを紹介してもらいました。「ミッシェル・ファイファーとのダンスシーンが必見です。ミッシェルと一緒に踊る前に、ソロで、嬉しさを表現するようなダンスをするんだけど、これがなんともカワイイ❤︎出演シーンは超少ないけど、キュートな魅力が凝縮されてます!」―そもそも、この映画が細かすぎるわ…タイトルさえ今初めて聞いた(汗)。そして一番のオススメ作品は『ペーパーボーイ 真夏の引力』('12)だって。こっちも私は見てませ~ん。

 

ジョエル・キナマン(Rポイント💛💛点)

f:id:chinpira415:20160515224048j:plain

▶おっと、ようやく共感できるイケメンじゃな~い?私も好きよ❤︎(ようやく❤︎出せた…)おでこが好み。でも1本も見ていない(汗)。「『デンジャラス・ラン』('11)で見初めたんです。北欧男子★めちゃくちゃ背が高くて、顔小っちゃくて、最高のバランスです!」。そこで早々にウィキで出演作を調べたら…『デンジャラス・ラン』でジョエルが演じているのは、“マットがトビンを連れて来た隠れ家の客室係”。端役も端役、客室係だって!いやー、Rのすごさを思い知らされましたね…一体どこまで目配せしてんだあ?超たまげたよ。すでにこの時上腕二頭筋、いいジャン!」と思ったらしい…天才(脱帽)。

▶Rオススメのジョエル出演作は『ラン・オールナイト』('15)。パリコレのモデルが演技しているような美しさ」だというから気になる。取り急ぎ名前だけはインプット。1979年11月25日生まれの36歳。そうそう、何とジョエルの身長は189cm。対してザックは173cmだって。くどいようだがザック、チビの筋肉バカじゃ、アマレスやるしかないね(笑)。

 

カルロト・コッタ(Rポイント💛💛点)

f:id:chinpira415:20160515232236j:plain

▶「カルロス、退廃的でいいよね~!」と、私が初めて身を乗り出したら、「もー、違いますって!カ・ル・ロ・トですよ~、しっかりしてください!」と間髪入れずに赤入れされました…だって言いにくいんだもん。「知る人ぞ知るポルトガルジョニー・デップ!ビンテージ感のある帽子がこんなにも似合う男は、ジョニデとカルロトしかいない。『熱波』('12)1本でメロメロ。パーフェクトにカッコ良かった。ドラムたたいても良し、バイクに乗っても良し、逢いびき中も当然良し!、もっと彼の作品はを見たいので、海外進出を早くしてほしい俳優さんの一人です❤︎」

▶ちょっと、誰が『熱波』を薦めたと思ってんのよー。アタシよ、アタシ!ミゲル・ゴメス監督作『熱波』は、2013年の私のベスト1映画。カルロス…じゃなくカルロトの出演作は、『ミステリーズ 運命のリスボン』('12)も忘れ難いわ。目下彼に関しちゃ、私の方が接近中★

 

トム・ハーディ(Rポイント💛💛💛💛💛満点)

f:id:chinpira415:20160504141117j:plain  f:id:chinpira415:20160504141204j:plain

 ▶とにかくRが顔の中でしょっぱな目をつけるのが鼻のライン!鼻ボレが顔ランキング入りの必須条件なんだって。で、身体の要はやっぱり上腕二頭筋(爆)。いいなー、採用基準が明確で。2010年、たまたまチェックしたSFアクション映画『インセプション』('10)の脇役で見かけたのがトムハ狂いに走るきっかけ。鼻のラインとシブイ声でまずは合格。1977年9月15日生まれ、38歳のトムハも、今や押しも押されぬトップ・スターの仲間入りを果たしているが、Rは早い時期から目をつけ、“自分で探し当てた!”感に自負がおありのご様子(この思い込みこそファンの証!)。

「2012年はトムハyear。ノックオンされました!『ダークナイト ライジング』、ブラック&ホワイト』、裏切りのサーカス』。その後も、アート系、エンタメ系、硬派な監督達とタッグを組んで主演として映画に出ずっぱりでした!」 私は忘れないわ~この年、Rの口から「ジョニデを越える男が見つかりました…」と遠い目をして語られた日のことを(爆)。イケメン・チェックのキャリアは相当長いRだが、顔に関しちゃずーっとジョニデが不動の第1位。情も込みで、これはもうスペシャルな存在なんだなあと思っていたのだが、勢いは感じたけどまだまだ知名度の低いトムハを抜擢するとは…私でさえ耳を疑ったわ。でも1度ロックオンしたらRの握力は強い!連日DVDで出演作を繰り返し見直し、携帯に画像を盛り込んでホホを緩ませていたよね~(笑)。

f:id:chinpira415:20160516233114j:plain

▶そんなトムハ出演作でRのオススメは『ブラック&ホワイト』('12)↑。「『マッドマックス』もトムハの魅力全開だけど、ロマンティックなラブシーン&アクション&コメディとてんこ盛りにトムハの魅力が楽しめるのはこれ。映画の質はさておき、トムハの幅広い才能を堪能するなら、これしかない!」らしいよ~。「意中の女性(リース・ウィザースプーン)との長いキスシーン。車中キス、からの、リースの部屋へ突入しながらのキス、からの、壁ドンキスの嵐、からのベッド押し倒しキス…、たまらん。キスシーンって横顔しか映らないから、横顔が美しいと惚れ惚れするわけ。横顔が美しい=お鼻が高い、おまけにトムハは唇がポッテリしてるから、キスしてる時の下唇がセクシィなのです!」ゲロゲロ…熱すぎてここは多治見か?愛は盲目。「でもトムハ、気をつけないと太るタイプです(汗)。歯並びも悪いし、ファッションもメチャダサイけど…こんなに色男なのにキメキメじゃないところがまた可愛い❤︎」はー、しばらく愛の煉獄は続きそうですな。そうそう、Rが力説する『7代目ジェームスボンドはトムハで決まり!』には私も同意。これ本当に実現するかもね~。

 

て、2週にわたってお贈りしましたイケメン映画天国、いかがでしたでしょうか…。改めて映画は総合芸術だなあと思いましたね!同じ映画を見てるつもりでいても、注力ポイントが異なれば、捉え方も印象も全然変わっちゃうわけだから(笑)。そして自分が如何に役者の身体はおろか、顔さえまともに見ていないとわかり、まだまだ精進が足りんと反省(汗)。サンキューR!これからも、HOTなネタを夜露死苦~。

PS・みなさま、来週からはまたお地味&ニッチなネタに逆戻りで~す(期待値調整)。

イケメン映画天国★最新ルポ PART 1

なさま、GWはいかがお過ごしでしたでしょうか…。もしかしたら、腑抜けのまま現実生活に舞い戻り、重い足を引きずるように通勤してたりして…(苦笑)。はい、そんなあなたに朗報です。いつもはニッチなネタしか提供できない我がコーナー(汗)に、華やぎの王道をぶっこんでみました!題して『イケメン映画天国』★ 映画愛好家マブダチRに取材し、彼女が惚れこんでいるムービー・スターたちの魅力をタップリ聞いてきましたよ~。どの話も面白すぎてカットできないので(笑)、2週にわたってお届けしましょう♪R妄想のすさまじさにつられて顔がほころんだら、あなたもすでに天国の住人です!

うそう大切な前置きを一言。Rのイケメン分類は「顔編」と「身体編」の2本柱で精査していて(汗)、今回ご紹介する基準は「顔も身体も両方好み!」という最もグレードの高いイケメンたちだそうです(笑)。また画像が2カットある場合は、左側に顔・右側に身体のRがセレクトしたベストショットを配置しています。ちなみに彼女のデータベースには「顔だけが好み」「身体だけが好み」もきっちりストック。絶えずランキングを見直して変動させているようです(脱帽)。

 

チャニング・テイタム(Rポイント💛💛💛💛点)

f:id:chinpira415:20160505231330j:plain f:id:chinpira415:20160505231728j:plain

▶冒頭からすでにわかんないわ~。Rからチャニング・テイタム(チャイ)がモデル上がりだって聞いて、信じられなかったわよ。どこがモデル適正要素なんだっけ?(笑)年齢も1980年4月26日生まれの36歳と知って驚いた。けっこう年とってるのね。私の中では、ガテン系のバイトをしながら奨学金で大学に通う万年苦学生イメージがあるからさー、傑作『フォックスキャッチャー』('14)にはドンピシャだったけど、ウットリ対象とはどうにも思えず…。Rは『第九軍団のワシ』('11)でチャイの男くささに目が止まり、『エージェント・マロリー』('11)でのラブシーンで一気に❤︎『ホワイトハウス・ダウン』では、危険な闘いシーンなのに不必要にタンクトップで演じきり、筋肉全開でまたもや❤︎Rいわく「つまり長い下積み経験が活きてるんですよ~。そういう苦労が武器になって、映画関係者から可愛がられ、出演作が増えていったんですよ。きっと性格もいい奴なんですってば~。」と、会って聞いたようなことまで妄想してます(笑)。

▶Rオススメのチャイ出演作品は『マジック・マイク』('12)。「男性ストリッパーのチャイによる小ワザの効いたダンスが続いた後に、上半身ハダカにネクタイ姿で、先頭のチャイが右手を右耳にあてるプチパフォーマンスしてからの、激しい腰振り!!ドヤ顏もたまりません!」…確かにこの映画は私もウケた。ただし私が笑ったのは、チャイが運動神経のいいジミー大西にしか見えないところなんですが…(トホホ)。

 

ウォンビン(Rポイント💛💛点)

f:id:chinpira415:20160507131659j:plain

▶韓流ドラマブームの発端となった"冬のソナタ"の秋ヴァージョン『秋の童話』('00)が、ウォンビン萌えの始まりだとか。いやー、冬のソナタに秋バージョン(!)があったことさえ初めて知ったわよ(苦笑)。韓流四天王の一人として、国民的アイドル俳優時代もありながら、慎重な作品選びをしている姿勢を感じるところが好感が持てます。アジアの役者で唯一顔も身体も◎なのは彼だけ!」。だけどさー、私も映画で何回か見てるけど、1977年11月10日生まれの38歳。すでに終わった感があるんじゃないの?あの童顔が逆に足かせになり、今後の展開はかなりキツくない?私の中では若い頃の安藤政信とビジュアルがカブるなあ。

▶Rオススメのウォンビン出演作品は『アジョシ』('10)。「鏡の前で上半身裸で髪の毛を五分刈りに剃るシーンに萌え~❤︎ナイフ使いもカッコ良いっす!」

 

ロドリゴ・サントロ(Rポイント💛💛💛点)

f:id:chinpira415:20160507135830j:plain f:id:chinpira415:20160507135909j:plain

▶身体チェックは『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』('03)のサーファー役から。ほんのチョイ役だったけど、そこはすかさずチェックしたらしい(笑)。その後すぐに、サーファー=裸=頭弱そう、っていう図式(スゴイ図式ですね!)を覆す威力を、メガネ男子に転じて成功したのが『ラブ・アクチュアリー』('03)なんですよ!」知的なロドリゴが、壁ドンするシーン、萌えぇでした❤︎」

▶つまりRにとって、映画はある種の絵巻物なのではないかと私は考える(笑)。ここでは全く関係のない『チャーリーズ・エンジェル ~』と『ラブ~』が、ロドリゴを中心に勝手に一続きにまとめられ、絵巻物として眺められて行くわけよね。国宝ではなくR宝絵巻物…。一度気になったターゲットに対して、意外と息の長い見守りを続ける秘策はここにありか。1975年8月22日生まれの40歳。「顔よし身体よしなのに、イマイチ作品に恵まれなくて気の毒イケメンなんです(涙)。事務所の力が弱いのかな…」と繊細な心配りも見せてくれましたあ~。

 

ギャスパー・ウリエル(Rポイント💛💛💛点)

f:id:chinpira415:20160507145613j:plain

▶ひんやり美男子ギャスパーは、日本でもヒットした『ロング・エンゲージメント』('04)で一躍時の人に。フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞の新人賞を受賞しているが、日本未公開作品が多い分、消費され過ぎず、ひんやり感がキープできていてラッキーだよね(笑)。Rは、彼の憂い顔お洋服の着こなしにぞっこんだとか。1984年11月25日生まれの31歳。顎がとんがりすぎだろう?と突っ込みたいところだが、Rはあの顎のラインが美しい!とベタ褒めですわ。

▶Rオススメのギャスパー出演作品は『サンローラン』('14)。あのファッションデザイナー、イヴ・サン=ローラン の生涯をスキャンダラスに描いていて、見ごたえあり。イヴと全然似ていないギャスパーが次第に本人にしか見えなくなる…怖いよ~。「ルイ・ガレルとの男同志のキスシーンはフェロモンたっぷりでした❤︎一糸まとわね全裸シーンもビューティフル!海外では一切モザイク入らないらしいんですけど、そうとう立派なモノをお持ちらしいです^^」 むしろノーカット版じゃなくてよかったね。ノーカットだったら、即パリまで追っ駆けて行ったかも(笑)。

 

ダニエル・クレイグ(Rポイント💛💛💛💛点)

f:id:chinpira415:20160507145022j:plain f:id:chinpira415:20160507145101j:plain

▶ダニエルとの最初の出会いはサム・メンデス監督の秀作『ロード・トゥ・パーディション』('02)だが、トム・ハンクスジュード・ロウの陰に隠れていたから、気にもしてなかったそうな…。正直言って「好きな顔」とスンナリ言いたくはないらしい(苦笑)。「だけどやっぱり007シリーズが決定的!あの年齢であの肉体を維持する努力がスゴいと思うし、ジェームズ・ボンドの人気を復活させた映画貢献度も◎」だって。1968年3月2日生まれの48歳…Rのお目にかなってよかったね、ダニエル。

▶そして『007スペクター』('15)から、細かすぎて伝わりにくい萌えシーン❤︎も紹介していただきました。さー、笑っていただきましょう~「スペクター本拠地へ行くため、駅で迎えを待つボンドとマドレーヌ(レア・セドゥ)。ロールスロイスが視界に入ると、視線はあくまで前方ロールスロイスに向けたまま、両手をさりげなく後ろに回し、銃の発射準備をするボンドの流れるような動作のスマートなこと!マドレーヌにも分からないよう、愛する女性を守るためのジェントルマンな所作に感動です❤︎」よかったね、ダニエル。これで任期満了までシークレット・ブーツを履いて6代目ボンドを演じきった甲斐があったね。

 

さて前半パート、いかがでしたでしょうか―。次週PART 2では、Rがここ5年夢中の本命イケメンの登場です!乞うご期待★

  

 

写真家・楢橋朝子をご存知か?

画を見続けて早何十年と経つが、正直言って女性で一目置いている映画監督は,ほんの一握りだ。そもそも国内外を見渡しても、監督業に就いている女性は男性に比べて極端に少ない。なぜだろう…。才能の問題?体力の問題?統率力の問題?それとも女じゃ金が集まらないという投資の問題なのか?…よくわからない。だが、女性の写真家となると、もはや「女性」冠など必要としないくらい自分勝負に出ていて静かに百花繚乱。あの90年代のガーリー・フォトブームなんかも、ちゃんと消化されて今に至っているような気がする。

の場合、写真を作品として認識するようになったのは、美術館で写真展と対面する機会が増えてからだ。ハコのマジックって大きいですね!白いハコを額縁に見立て、何枚も続けてヨコ移動しながら写真をながめると、自ずとそこから作風というヤツが立ち上ってきて、自分と共鳴するもの&しないものが明確になってくる。そこまでは絵画といっしょ。ただ絵画と大きく異なるのは、写真は100%シャッターを切ったその瞬間の現実が素材となっているわけじゃない?だから、「どうしてこの人には世界がこんな風に見えたのかな…。こんな風に見たいと思ったのかな…。」と、自分と同じ地平に立っている前提で思い巡らしてしまうことだ。構造的には同じ👀を持っているはずなのに、その作家の👀と私の👀の違いが露わになるから、私との落差が大きいほど“面白い!”となるみたい。なぜだか技術的なことはまったく無視しているのよね(苦笑)。私が魅かれる写真家は、人知れずトンデモないものを見ていて、それをこっそり炙り出すように提示することで世界を再定義している人―。想像するに、リアリスト&単独行動派が写真家に向いているのではないか?…女性写真家に優れた人が多い理由はそこじゃない?…と、勝手に踏んでいるがどうだろう。具体的に日本人で好きな女性写真家を挙げると…石内郁オノデラユキ米田知子川内倫子志賀理江子…たくさんいるよ~。あなたたちの👀で1日過ごしてみたいです、はい(笑)。そして今回ここで紹介するのが楢橋朝子(ならはし あさこ)

 

f:id:chinpira415:20160430214713j:plain

橋さんの写真と出会ったのは2001年秋。東京都写真美術館『手探りのキッス~日本の現代写真』にて、≪half awake and half asleep in the water≫と題したシリーズを見たのが始まりだ。すでに15年も経つが、このとき味わった感覚は今も忘れられない。12枚並んだ写真のすべてが水際から撮影されたもので、ながめていると下半身の力が抜けてきて、危なっかしくも愉快な冒険に繰り出したかのような気分になったのだ。タイトルの半睡半醒は言い得て妙だが、私は泳げないので(汗)、優雅な夢うつつ気分というより、一寸法師になってちっこいお椀の船に乗ってプカプカ漂ってるかんじ。家出した心細さはあるが、お椀の中で一寸法師がエラソーに「俗世とは懐かしきものなりー」とかなんとかつぶやきながら、ひとり胡坐をかいて水際からながめてる情景がこのシリーズなんじゃないかと勝手に想像した(笑)。そしてこれを機に、楢橋朝子=プカプカの写真撮ってる人!として、しかと刻印されたのである。

 

f:id:chinpira415:20160430231856j:plain

の後、出張で上京したときに、タイミングよく京橋のギャラリーでプカプカの“今”を見る機会に恵まれた。6年ぶりの再会。あの一寸法師の家出は、のんきムードにとどまることなく、ワイルド方面に跳躍していて「カーッコイイ!」と興奮★参考資料として置いてあった写真集が気に入り⇒タイトルをメモり⇒アマゾンで検索したら⇒引っかからずに⇒ガックリきのこ(涙)。ホームページらしきサイトも見つけたが、あまり更新されていないようだったので、長期伴走計画に気持ちを切り替えた(笑)。

 

f:id:chinpira415:20160502001916j:plain  f:id:chinpira415:20160502001947j:plain

 度気になったものに関して私はかなりしつこい。「いずれまた」出会えると確信していて、いつまでも気長に待てる。で、ちゃんと新作と遭遇できちゃたんですよね~、しかも地元名古屋で!2013年、八事のC・スクエアにて、堀川を撮影した作品展が開催されると知って快哉を叫んだ。堀川ですよ、あの堀川!カヌーを借りて、延べ8日間、長期スパンで撮影されたシリーズを前にしたときは、やっぱあまりにも身近な川だけに複雑な感情が押し寄せてきたなあ…。もはや覗き込むことさえない川から、逆に我々の日々の営みを見返されているような気がして、足元が揺らいだんだと思う。それこそ汚れまくりの負のイメージが鼻の先に刷り込まれている世代だから(とにかく街中にありながら悪臭が強烈だった!)、川の存在をあえて無視し続けてきたんだよね…。そんな後ろめたい記憶が蘇り、動揺したのかもしれない。

 

f:id:chinpira415:20160502091045j:plain

してこの展示で楢橋さんは堀川を動画で撮影した作品も発表。これが、たまんなかったのよ~。私の抱いた若干の後ろめたさを、今度は反対に川の方がバッサリ無視し、あるがままに流れて行くの。春、水際は舞い散る桜の化粧で表情を刻々と変え、我々を桃源郷へ誘う…。最期にたどり着く風景がこんなんだったら、ほくそ笑みながら往生できるだろうなあとツイ夢想した―。

 

f:id:chinpira415:20160502191244j:plain

いうわけで、私の素人解説では伝えきれないので、楢橋さんの写真に興味を持った方は、直接こちらをチェックしてみて。サイト(03magazine)が新しくリニュアルされ、水際写真シリーズ以前の作品もUPされています。実は私は、C・スクエアのアーティスト・トークイベントで楢橋さん本人とお会いし、なんとその後文通友だちにもなったの(笑)。しかも私が書く映画評を面白がってくれて、そちらのサイトでキトキト映画雑記」という読み物コーナーを担当させてもらっているのです。それにしても縁とは奇妙なものですね…。泳げない私が楢橋さんの写真の中で漂い、見知らぬ世界を放浪するようになったのだから。楢橋さん、ぜひ引続きこのちんぴらに、トンデモないものをお見せくださいませ(ぺこり)。

※ここで使用している画像はすべて楢橋朝子作品です

 

 

勝手にシネマ評/『母よ、』

ナンニ・モレッティ監督作品『母よ、』('15)の感想をまとめました!モレッティは、現役で活躍する映画作家の中でも私の10本指に入るご贔屓監督。新作公開となれば、何はともあれ駆けつけるぅ~★でもって本作は、おフランスのうるさ方映画人が編集する映画批評誌カイエ・デュ・シネマの2015年ベスト1に輝いているらしいっス。残念ながら劇場公開は終わってしまいましたが、いつかDVDなどで見られる機会があればぜひ。もうすぐ「母の日」、イメトレに活用していただいて…いやー、最も参考になりにくいかあちゃん映画かもしれないです(笑)。

f:id:chinpira415:20160423104425j:plain

画監督のマルゲリータは八方塞がりだ。クランクインした新作が思い通りに進まない。ハリウッドからスター役者を呼び寄せて、硬派の社会派作品に仕上げるつもりらしいが、主役が現場入りする以前に早くも苦戦中。「いやーダメでしょ、こんな古臭い労使紛争シーンを撮ってちゃ。一体誰が見るの?」と、私でさえ思わずツっ込みを入れたわよ(苦笑)。そのうえ彼女のイライラにスタッフは振り回され、撮影現場の空気は最悪―。

f:id:chinpira415:20160423104606j:plain

事を離れても、マルゲリータの気は休まらない。入院中の母の容態が気がかりで、何とか頑張って病院へ顔を出す。そこには籠の鳥となって不安そうな母親が横たわっているのだが、病床の身でありながら娘の仕事ぶりには上から目線で見定めたりして、なかなかの気丈ぶり。この親にしてこの子ありか(笑)。いや、もしかすると2人は、親子の関係を一度も逆転させぬまま今に至っているのかもしれない…。ここで一服の清涼剤となるのが、モレッティ監督自身が扮する兄のジョヴァンニだ。母に手作り惣菜を差し入れに来て、甲斐甲斐しく世話をする姿の微笑ましいこと!どうやらイタリアのマンマの愛情深さは、兄に継承されているらしい。ただ母を元気づけたい一心で自然に行動が伴う兄を見て、マルゲリータは内心焦っただろう。仕事で凹み、親孝行でも兄に出し抜かれ、じぶんの落としどころに迷う働く女の心理状態が、実にシビアに描かれる。それだけじゃない。一方でマルゲリータは恋人に強引に別れ話を切り出し、サクサク一人荷造りをして仕事に専念するという。どう説得されても聞く耳持たず、以上おしまい!だ。不調にあえいでいてなお、慰めの場所など不要だとツッパるヒロインの硬質さは、一体どこからくるものなのか。また、彼女には別れた夫との間に中学生の一人娘がいて、自分も一人の母親の立場から反抗期の娘に手を焼いている様子。要は、仕事もプライベートも問題が山積みで、マルゲリータは始終ピリピリしているのだ。そんな中、追い打ちをかけるようにトラブルが降りかかる。現場入りした主役俳優のバリーが大物ヅラした俗物野郎で、彼女のカンに触ることばかりやらかし、撮影はますます難航。しかも、母の病が予想外に重く、余命わずかだとの宣告まで受けてしまう―。

f:id:chinpira415:20160423104859j:plain

ころで肝心なことを書き忘れた。マルゲリータは美しい。ボリューミーなイタリアのマンマのイメージとは異なり、スレンダーな体系の知的美人である。特に後ろ姿なんて本当に可憐で、まるで女子大生のよう!誤解を恐れずに言えば、神経を張りつめてピリピリする必要がどこにある?美人が独りで生真面目に何でも背負い込むと、周りがいたたまれない雰囲気になるのわかんない?と、ハラハラしてしまった。男が幅を利かせる映画業界にいて、しかもこの美貌で女優ではなく監督業に長年就いてるなんて、相当強い征服欲をお持ちなのだろうが、見た目とのギャップを絶えず感じてしまったのは私だけだろうか…無理してないか?と。もちろんそのあたりは監督の計算なのかもしれない。もともとこのお話は、母親を亡くしたモレッティ監督自身の体験談を下敷きにしたもので、自分が演じるにはあまりに辛くて、主役を女性に置き換えて制作した作品なのだ。だけど自分(監督)が解放された分、マルゲリータを追い詰めるエピソードがイチイチ手厳しくて、仕事と家庭の両立に懸命な女の人たちが見たらイタすぎて目を伏せるかも(汗)。それだけ男女の垣根なく、人間として対等に見ている証拠とも言えるのだが―。さらに驚いたことに、こんな風に全編ストレスが噴出する作りでありながら、なぜだかやたら面白いから呆れてしまったのだ!

f:id:chinpira415:20160423105122j:plain

えば劇中には、問題山積みのリアルな時間と並行して、ヒロインの内面の葛藤を幻想的な絵柄で差し挟み、彼女の八方塞がりな自意識をうっちゃるシーンがたびたび登場する。難しいアプローチだが、これがかなりイイのである。親しい人の最期と向き合うのも、切羽詰まった仕事への責任も、相当な重圧には違いないが、そんな時でも人は頭の中で自分を欺き、見当違いな妄想を繰り広げたりして、深刻ささえ無意識に自分仕様にアレンジするもの。そんな個の作業を、気取った抽象化ではなく、ひとりノリ突っ込みと呼びたい軽さと唐突さで演出していて、私にはとても魅力的に映った。映画の力を信じているなあーと。監督はこの美女を哀しみに暮れさせない、むしろより忙しくさせる。そしてバタバタさせながら、自分の判断を絶対視し、すべてを自己完結してきた彼女が、実際には何もわかっちゃいなかったことを遠巻きに気づかせる。母のこと、娘のこと、兄のこと、恋人のこと、そして自分自身のことも、わかっているつもりなだけだった…と。マルゲリータと我々は近しい。彼女を通してフと自分を振り返るとき、映画は苦笑いを誘う―。

f:id:chinpira415:20160423105342j:plain

スト。遠い目をした母に向かいマルゲリータが「何を考えているの?」と尋ねると、母は一言「明日のことよ」とそっけなく応える。実際のやりとりなのか、ヒロインの幻想なのか曖昧なスケッチなのだが、死にゆく者が「未来」を見つめ、生き残る者が「思い出」を紡ごうとするその逆説的な構図がひどく印象に残った。わかったつもりになるな―と最後の最後まで予定調和を崩しにかかるモレッティ。涙と相互理解で我々を安心させて幕を降ろすような甘さなど、この作家にあるわけない(笑)。だが、映画のそこかしこに人生の手応えや歓びを小さく刺繍していて、何度そのテクにノセられたことか!特に落目の大物俳優バリー(暖かく狂い咲くジョン・タトゥーロの演技が素晴らしい💛)の存在によって、ドラマが家族の話に閉じなかったのは大きな勝因。マルゲリータには、仕事で結ばれるもう一つの家族がある…そう、映画があるのだ!


映画『母よ、』予告編

母よ、
2015年/イタリア・フランス/カラー/107分
監督   ナンニ・モレッティ
撮影   アルナルド・カティナーリ
脚本   ナンニ・モレッティ フランチェスコ・ピッコロ
キャスト マルゲリータ・ブイ ジョン・タトゥーロ 
原作   パトリシア・ハイスミス 

れに対抗する日本映画を頭の中でめぐらせてみた。成瀬巳喜男の『おかあさん』('52)でどうだろう…。イタリア野郎にまったく引けを取らない日本映画黄金期の傑作!この画像を見ただけで涙腺が緩みそう…と思うでしょ?でも実際の映画は美しくクール。今見直してもきっと古びていないと思う。GWにレンタルでぜひ★

f:id:chinpira415:20160423112158j:plainf:id:chinpira415:20160423112233j:plain