勝手にシネマ評/『アネット』('21)

映画という虚構の中にさらに別の虚構を組み入れ、入れ子細工の形でお披露目する『アネット』は、140分の長尺であり、かつミュージカル仕立てである。おそらくこう聞いただけで、戸惑う人も多いだろう。どこを映画の現実ラインとして見るべきか…なんとなくめんどっこくて嫌だなあと。でもだいじょうぶ。1ミリも身構える必要はない。

オープニングを飾るのは、とある音楽スタジオでの録音風景。監督のレオス・カラックスご本人が、コントロール・ルームの真ん中に鎮座し、演奏者たちにプレイ開始を告げると、アメリカのベテランロックバンド・スパークスが演奏を始め、何とそのまま歌いながらご陽気にスタジオを出て行く

おっと~、楽屋ネタかと思っていたら、曲といっしょにすでに始まっているではないか―。途中、本編の登場人物たちも合流し、みんなでSo May We Startを歌いながら夜の路上へ繰り出すシーンのカッコイイこと!さあ、夢の世界のはじまりだといわんばかりの、高揚感溢れる長廻しがたまらない。そう、音楽スタジオがミュージカルへの導入口として機能し、瞬く間に虚構の中へワープできるダンドリだ。そして主演ふたりが役の衣装を軽やかに羽織れば、目の前で物語の扉がすーっと開きはじめる―。

バイクに跨り走り去った男の名はヘンリー。ストイックに過激な笑いを追求する人気スタンダップ・コメディアンだ。緑色のガウン姿で独り舞台に立ち、客との丁々発止が見世物の際どい芸で名を馳せている。一方、お抱え運転手付きの車に乗り込んだのは、世界的ソプラノ歌手のアン。映画は、美女にリンゴをかじらせたりして、早くも不吉な予感を漂わせつつ、人気セレブ・カップルの恋愛ピーク時を幕開けに置いた

美女と野獣カップリング。しかも、それぞれの舞台を終えたふたりが、取り巻きたちから逃れ、太ももを露わにしながらバイクの二人乗りで人里離れた森へ逃げ込んだりして、何だか私の方が照れくさくなるくらいキッラキラなロマンチックLOVEシーンの連投であるまるで一条ゆかり先生が描く華麗な少女漫画の一コマのよう…思わず目を細めた。

“私たちは愛し合う~ 心から あまりに深く~♪”とかなんとか、歌いながら&じゃれながら山道を歩くふたり。めまいがする。いや、それどころか、絡みシーンまで歌いながらの睦まじさ…。いやー、地球はふたりのために回っているこのかんじ、ディズニー・アニメを軽々と越えてしまっていて、アッパレとしか言いようがない。言葉とメロディの共振によって、空間が色鮮やかに塗り替えられて見えるのだ。実際、ミュージカルシーンはLIVE撮影だというから贅沢極まりない。

一方で、誰にも邪魔されずに蜜月を過ごす森の中の邸の佇まいとか、インテリアの隅々やら、身につけている着衣の色彩&素材感が、リアルに計算されていて、ファンタジーワールドに回収されない点がミソだ。ありえない設定ではなく、趣味のいいセレブのありそうな隠家蜜月を創造しているから、観客はじぶんたちのリアルと地続きで眺められ、好奇心が持続するというわけだ

要はリアリティの扱い。例えば映画では、度々ふたりの仲をゴシップ記事的体裁でウォッチし、大衆が欲望するセレブ・カップルの通俗的なイメージを、観客に投げ掛けてくる。スターを崇めながらも、下世話なネタに引きずり降ろさずにはいられない我々の日頃の好奇心とやらが、いかにありきたりで貧相なものかを生々しく皮肉るのだ。キッラキラマジックと世俗の垢のブレンド配合が絶妙で…楽しくって笑った。

やがて結婚そして妊娠。案の定、出産シーンまで大賑わいなミュージカル仕立てで綴られ、物珍しさMAXである。ところが驚くのはまだ早い。映画は、アネットと名付けられた女の赤ん坊を、しれーっと人形の姿で登場させるから腰を抜かす

へっ?ご冗談でしょ?もしかしてギャグ映画だった?…と、どこまでホンキで見るべきか、一瞬腰が引けるが、それさえすぐにメタファーとして受け入れ可能になる。日本には人形浄瑠璃という語りもあるし、シラケるどころかむしろ赤ん坊を人形にしたことでセレブ枠は取っ払われ、現代を生きる我々の話として不気味に迫ってくるのだ

さて、アネット誕生がきっかけとなり、徐々に崩壊し始めるセレブ・カップル。アンは産後ウツなのかヘンリーの人間性に疑いを持ち始め、ヘンリーもイクメンしている間に芸人として落ち目になってゆく。意外な取り合わせが旬だったふたりだが、成功格差が広がるにつれ、溝は深まるばかり。さらにはやり直しを賭けて出た船旅の途中、なんとアンが荒れ狂う海に飲み込まれ、帰らぬ人になるではないか!

このサスペンスフルな嵐のシーンをはじめ、邸内のプールや、オペラの舞台など、名作絵画を連想させるような撮影が繰り広げられ、それはそれは見事な出来栄えで、鳥肌が立った。しかも歌とアクションの連続技で進行するので、映画内の現実ラインが絶えず曖昧になり、身体ごと映画に浸かってしまうからたまったものじゃない。まさにこれぞ映画!

結局、事故か事件かわからぬまま、アンは映画から退場し、怨念だけが燻ぶり続けるからコワイコワイ。そこへママと入れ替わるようにアネットが表舞台に押し上げられ、物語はスキャンダラス方面へまっしぐら

というのも、妻も名声も失くしたヘンリーが、アネットにアンを超える歌の才能を発見し、マネージャーとなってイッパツ逆転を図るからだ。娘をベイビー・アネットの愛称で強引にSNS上のアイドルに仕立て、世界制覇を目論む女衒なパパは、どこまでも腐り続け、地の底まで転げ堕ちる―

パパとママは演じられても、親にはなれなかったセレブ・カップ。一方娘は、最後に毅然とした態度で彼らの身勝手さに唾を吐く。そして、じぶんの意思で家族ごっこに終止符を打ったそのとき、何と人形だったアネットが生身の少女の姿に移り変わるのだ!見得を切り、独り我が道を歩いて行く娘と真っ赤な囚人服で取り残される父の絵…大向こうから声がかかりそうな鮮やかな幕切れである。

こんな荒唐無稽な展開なのに?と疑問を持つかもしれないが、『アネット』は極めてシンプルで美しい作品である喜劇の要素と悲劇の要素を併せ持ち、重心の低い古典的な作りの映画だと思う。映画(虚構)の中に舞台(虚構)があり、舞台では生死が演じられ、幕が下りれば夢物語も消えてなくなり、「あー、映画を味わいつくしたなぁ」という充実感に身体が満たされる。現実社会とはかけ離れた物語であっても、ここには憂いが漂い、観客の胸を打つデタラメが実っている。繰り返し言おう、これぞ映画だと―。

ちなみに、悪い父親の転落劇なのに、ツイ魅せられてしまうのは、ヘンリー役のアダム・ドライバーの存在感に寄るところが大きかった。アクが少なく、体温低めで、かつどこまでも闇の広がるキャラクター作り…歌舞伎でいうところの色悪を、サラリと演じていて付け入るスキなし!実にイイ役者である。


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『アネット』

2021年/140分/仏・独・ベルギー・日

監督/脚本     レオス・カラックス
原案/音楽     スパークス
撮影        キャロリーヌ・シャンプティエ                       
出演        アダム・ドライバー マリオン・コティアール

※5月末に20年ぶりの引っ越しをします!しばらくバタバタするので、次回の更新は6/13の予定です。では1ヵ月後に―See You Again♬

 

みんなの「妄想転居計画」アンケート 【リアル編】

マブダチたちへのアンケート、2回シリーズの後半戦は【リアル編】です。具体的な建物イメージが浮かんだ方たちの妄想が並びます。何せ人間の道楽で最もスケールの大きいのが普請道楽ってヤツですからね(笑)。せいぜい風呂敷拡げてくださいな~😊

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【レポート9】K・Tさん 豪邸に住んでみたい!

実は私、有名人の豪邸拝見が大好きなんです★床から高〜い天井まで、一面ガラス張りの広〜いリビングに太陽がサンサンと降り注いで、20人位座れるソファに、螺旋階段、広い庭、サンルーフにウッドデッキetc…、映画やドラマに出てくるテンプレ通りのお洒落な豪邸に住んでみたいです。強いて言うなら映画『パラサイト半地下の家族』の金持ちの家かな。あっ、でも地下室はいらない…知らないおじさんが住んでモールス信号送ってると怖いから~。それと、今住んでる3LDKのマンションですら掃除が面倒なんで、お掃除してくれるお手伝いさんのオプションも必須でーす(笑)。f:id:chinpira415:20220407142502j:plain▶すごーくロマンチックなことを口する一面がある一方で、超ミーハーな欲望を全開にしていつも笑わせてくれるTさん。わっかりやすい妄想でエエわあ。それにしても螺旋階段つけてどうすんだよ~~!(爆)ママさんバレーで鍛えてる脚力をここでイッキにお披露目か?ちゃーんとお掃除面も視野に入れてるところも抜け目ないな(笑)。

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【レポート10】S・Iさん 外観と内装、それぞれに妄想が!

まず外観軽井沢のルヴァン美術館文化学院の校舎を再現したイギリスのコッテージ風の建物で、三角屋根に白壁が上品です。絵本の中に迷い込んだような世界観にうっとり…。お庭のカフェではこの景色を楽しみながら贅沢な時間が過ごせます。f:id:chinpira415:20220407144213p:plainそして内装は、TBSで放送されていたドラマ『妻、小学生になる。』に出てきた家が好み!
石田ゆり子扮する貴恵(レストランのシェフで事故で亡くなってしまう)が生前、夫と娘と過ごした家。中古で買った家に好みのタイルを自分たちで貼ったりしてリフォームしたというこだわりが詰まったインテリア。どの部屋も素敵でセンスの良さと温かみを感じます。f:id:chinpira415:20220407144915j:plain▶速攻で返信してきたS。転居と問われ、外観と内装のイメージをすぐさま提示できるってさー、いったいあなたは何者?(笑)いつでも住み替えできるように、データベースを絶えず点検してるのか~。Sは現在子育てしながらライターやってるけど、次はキッチンメーカーのショールーム営業やってみたらどう?小金持ちな奥様顧客相手への営業トーク、きっとカンペキにこなせるぜー、熱いぜー。

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【レポート11】K・Kさん ミニマムな平屋の一軒家

ミニマムな平屋でお願いします。間取りは2LDKSが理想。LDKは20畳以上マストです。一部屋は寝室に、もう一部屋は仕事場兼誰か泊まる用。Sは、とにかく季節で入れ替わるもの入れるために。基本的な収納もたくさん欲しいです。キッチンは、今ならアイランド型で。
一番のこだわり…LDKは窓フル開放サッシで開けると海です(笑)f:id:chinpira415:20220403130159j:plain▶出た~、またもや一面ガラス張りだよ~!どいつもこいつも、そんなに太陽を独り占めにしたいんかいっ!シンプルな間取と言いながら、敷地面積でいったら相当なもんでしょ。そのうえ窓の外には海だって?奥さん、いい加減にしなさいよ~。間違いなく億の金が必要だろ?海はあたしが書割りで描いてあげるから、それで我慢しな~😊

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【レポート12】M・Oさん 有名建築家作品に住みたい①

数年前、天橋立にある旅館文殊荘』に泊まった時、「なんだか居心地良いし、この感じ好きだなぁ〜」と好印象だったので、帰りのバスの中で検索したら、あの吉村順三の設計と判明。「もっとちゃんと見て来れば良かった…」と後悔したけど、知らずに行って「いいなぁ」って感じたから、これはホンモノだと思ったよ。他にも映画で観たコルビュジエの家とか、フリーダ・カーロの青い家や、ガウディのアパートとかミーハーにいろんな名建築家の手掛けた家に住んでみたい!


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▶ヤバイ💦今すぐ行きたいよー!さーすが吉村作品、うっとり~。Mが予備知識なく「なんだか居心地イイ」と感じたのも、わっかるわー。旅館だけど、ええ家の日常風な顔つきだもんね。以前、ブラタモリ天橋立編を見て、死ぬまでに訪れたい観光地の一つに入れてるし…さー、今日から100円貯金を始めて、5年後にGOだ~♬

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【レポート13】K・Nさん 有名建築家作品に住みたい②

回答が遅れてすみません。返信しないとと思いながら、15年前にじぶんが施主となり、実家を建て替えたときの負の感情で萎えてしまって…💦とにかく次から次へ決めなきゃ行けない事が多すぎて、全然楽しくなかったのよー。むしろ苦痛だった…。そこで次のチャンスがあれば建築家にお任せしたい。おまかせおまかせ~♪出会いは森の中の住宅をTVで見た時。設計期間におよそ1年8ヶ月、工事期間が8ヶ月だって。ゆっくり時間をかけて建築家 田根剛に是非お願いしたいっすf:id:chinpira415:20220407172935j:plain▶PARIS在住の田根剛だよね、「情熱大陸」で見たことあるよ。「Todoroki House in Valley 」は50坪とか…しんじらんない。こそっと立っててこの存在感。隣んちの木々と融合してて、まるで森の中に住んでるよう。素敵だなあ。建築家におまかせなんて、一度でいいからやってみたいけど…怖くて値段が聞けない(笑)。

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【レポート14】Y・Kさん グーギー建築の家

昔のハリウッド映画によく出て来る奇抜なデザインの建物グーギー建築。曲線タイプや、やたら張り出した屋根とか、重力を無視したデザインとか、当時のアメリカが原子力宇宙旅行に熱心だったという社会の流れに影響を受けていたそうな…。ただ、建築的価値が低いらしく😢、ほとんど取り壊されているみたいなんで、今こそ住んでみたいの~。そして2階建ての場合、2階から1階への移動は登り棒?で降りてきたい!f:id:chinpira415:20220407180229j:plainネットでグーギー建築の建物を色々眺めていたら、子供の頃に長良川河口堰を「こんな集合住宅があったらいいのにな〜」と思っていた事を思い出したよ(笑)。

f:id:chinpira415:20220407180520j:plain▶フィフティーズ好きなYちゃん、グーギー建築にハマるのもわかるよ~。いいよねー、むしろ時代のあだ花感がタマラン★こういう濃度の高いクダラなさには、見過ごせないパワーを感じるなあ。そう、日本だと大阪万博のパビリオンにも同じようなノリを感じたものだけど、長良川河口堰から理想の集合住宅を連想してたなんて、Yちゃんのトンデモぶりに感服だー。

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【レポート15】A・Sさん 極小住宅を設計

現在、自宅で制作もしているため、ぼんやりでかい空間に住んでいるので、憧れる妄想家は極小のものを考えている人たち①はほとんど家具!キッチンやトイレは共有のものを広場に一つ建てて、個人のスペースを置くと言う発想。②は小さいスペースは寝るだけで、街の風呂屋とか、コンビニトイレとか使って、街を家の延長とする村上慧

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そして私が最も素晴らしいと思うのは、③のRenzo Piano小さくてモバイルな家。これは雨水やソーラーもついていて完全に自立型。室内も相当おしゃれで機能的。

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そこで①~③をミックスした家を考えてみた。ハイエースワゴンに、寝る機能、事務機能、簡易トイレ、炊事セットを備えて、街のあちこちの駐車場で寝泊まりし、街中を利用し、また戻る「基地」的な家。できれば「基地」の場所は少々田舎で、高台の景色の良いところに。f:id:chinpira415:20220407193036j:plain

▶図面まで引くところがアーティストだわ(笑)。でもこの基地、インチキじゃん!西側ゾーンが改造ハイエースを駐車するスペースみたいだけど、その隣に階段があるじゃん!2階建てなら、極小でも何でもないぞー、まるでサンダーバードのトレーシーアイランドじゃないか~。贅沢の極みだよ。思わず、動画で出動風景見ちゃった(笑)。いやー、今見ても泣ける~。あたしも滑り台状態でお出かけしたいよー。


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【おまけ】ちんぴらの 憧れの小屋

さてあたしの場合、「妄想転居計画」の究極を言っちゃえば、桂離宮ってことになるのですが、もうちょっとリアルな方がワクワク感は募りますよね(笑)。ってことで、グーンとシフトダウンして…あたしもA・Sさんと同じように極小住宅=小屋に行き着きました~。30年以上も前に古本屋で見つけた『それいゆ 臨時増刊号 生活の絵本』シリーズに載っていた手作りハウスが理想。ちっぽけな一軒家ながら、モダニズム建築のエッセンスが入っているところがタマランのです。f:id:chinpira415:20220410185115j:plainさらに最近では、もっとちっこくてもイイなあと考え始め、英国の劇作家バーナード・ショーが執筆のために庭に建てた小屋に憧れるように―。何とこの1坪ほどの書斎にはキャスターがついてて、日の射す方向に合わせて回転できる仕組みになってるんだって😊まあ、広大な邸宅の片隅にポツンと佇んでいるから趣きがあるんだろうけどね(笑)

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PS 次回は5/13に更新します

 

みんなの「妄想転居計画」アンケート 【ロマン篇】

今年も始まります、マブダチたちへのアンケート!今回の質問は、あなたの「妄想転居計画」をおせーて!です。実現できるできないは別にして、「こんな家に住んでみたい!」と、自分で勝手に妄想している住居のイメージを募りマシタ~。他者の見えない欲望を炙り出し、にぎにぎしく陳列して見せるのはとっても愉快な作業。今回も2回に分けてお届けします。1回目は妄想強めの【ロマン編】からです。どぞー!

f:id:chinpira415:20220403105332j:plain【レポート1】K・Oさん 現実と空想の狭間で…

まとまらないので2パターンに分けました💦現実ランキング1位帝国ホテル サービスアパートメント月額360,000 円~840,000円。コロナ禍で始まったサービス。銀座のオフィスに徒歩通勤…マジに憧れる2位アクアタウン納屋橋家賃95,600円~325,400円。UR賃貸物件で以前ここの23階に住んでいた。永住しようと考えていたが東京へ異動となり転居…でもいつか帰りたい😢f:id:chinpira415:20220403105709j:plainそして空想ランキング1位は銀河超特急999号自動的に色々な星に行けるのが魅力。※言葉が通じる前提。鉄郎もメーテルもベッドで寝ているシーンはなかったが、個室もあると信じています。ただ、『機械の身体になる事は幸せなのだろうか?』の問いの答えはまだ出ていないけど…💦2位ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベースジオン軍に攻撃されたり、食堂の塩がなくなる等々多々問題はあるが、ガンダムが間近に見られるのが魅力。わざわざ横浜に行く必要なし。ただ、ア・バオア・クーで沈む前には下船したい。f:id:chinpira415:20220403110125j:plain▶なるほど~、身も心もザ・オタクのKちゃんの回答に大いに納得!つまり、引きこもりたいんだよね…じぶんじゅうぶんでいられる空間に!元祖オタクの淀川長治先生は、晩年全日空ホテルのスイートで過ごしたというから、Kちゃんも見習ってもらいましょう。取り急ぎ理想を実現するための資金稼ぎに、地下鉄でせっせと通勤して(笑)。

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【レポート2】M・Mさん お城でお姫様気分…

40年以上前、姉と一緒にバックパッカー旅行でおフランスへ♬ノートルダムで暮らす知人にアテンドしてもらい、1ヵ月間おフランスを味わい尽くしました。中でも、ロワール河の古城めぐり体験は鮮烈で、非日常の極みでしたね。ベタな観光地とはいえ、夢ものがたりに出てきそうなお城を本当に目の前にしたときの興奮が忘れられません。世界遺産・ソミュール城城塞都市カルカソンヌお姫様気分で暮らしてみたいf:id:chinpira415:20220406173329j:plain▶Mさんは、60歳過ぎて初めてディズニーランドへ行き、超興奮して帰ってきたからね~。根っからのお城とお姫様妄想の人。子どもの時に絵本を通して目覚めた“ウットリ”感が、今も脳ミソにそのまま真空パックされてるかんじよ。ちなみにMさんが王子様キャラとして認めたのは、若かりし頃の沢田研二=ジュリーなのでした~。

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【レポート3】K・Oさん 鳥の巣🐤

唐突ですが、妄想でいいなら鳥の巣に住みたいです💦あったかそうだし、ふわっとしたものに包まれている感じが良いのです。高い場所で暮らすのも楽しそう~♬

f:id:chinpira415:20220403114406j:plain▶Kさん、還暦前のおっさんなんだけどね…。しかも甘いもの好きで、腹がぽてっと出てるじゃんかよー、こんな華奢な構造物に入れないだろう~~と、ツッコミどころは山盛り(笑)。でもちっこいものだったり、狭くてコックピット感がある場所をやけに気に入ったりする人だから、これまたわからなくもない。あとは、どうやって卵で生まれるようになるかだねっ!

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【レポート4】A・Hさん 海の見える高台🐤

土地代も、建物代も、家賃も何もかも「無制限」という条件であれば…そうですね、海の見える高台に住んでみたいと思いますね。朝起きると、湾曲した水平線が開放的な窓の外に広がり、ウッドデッキに出て新鮮な空気を吸って一日がスタートする。夜は満天の星に、遠くを大型客船がゆっくりと移動していく…うーん、我ながらワクワクしますね。ガレージには赤いオープンカーが格納されていて、時には海辺をドライブするとか。勿論、マニュアルミッション。流れている音楽は大滝詠一さんか松岡直也さんでしょうか。うーん、これでは完全にわたせせいぞうさんの世界のようにも思えますね。f:id:chinpira415:20220403122713j:plain

▶いやー、懐かしすぎます、“わたせせいぞう”!…。あたしより1歳年長のHさん、妄想に若干バブルな匂いがしたりして、ウケたわ~。なんたってご本人は、赤いオープンカーという単語が綴られるとは想像できないクールな統計学のプロフェッサー(!)だからさー、まるで見てきたかのような背景描写に意表を突かれて、感服しました~(ぺこり)。ホント、男のロマンは計り知れませんね😊

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【レポート5】K・Fさん 実家の庭がイメージソース

基本は実家の庭が私の家妄想の起源かもー。池とそれにかかる家の縁側とか、鯉やザリガニ、アメンボ、満天星つつじや侘助や栗の木、ザクロの実やくちなしの花とか…。自然と住居が密着していてワクワク感がいっぱいの子供時代を過ごしました。やがて、小学3年くらいになったらムーミンシリーズ(青い鳥文庫にドハマりして―。都心の高層マンションに住んでいる身としては、今でも森の世界は憧れです

f:id:chinpira415:20220403135220j:plain▶Fの実家は、あたしも何度か訪れていますが、切り立った裏山も冒険の匂いがぷんぷんして興味深いのよ~。そして今は彼女が愛した思い出の池が、埋められて残っていないので、余計に妄想に郷愁が入り混じり脳裏に焼き付いているような気がします。ムーミンの森、こうして改めて凝視すると、水木しげるの世界と重なるなあ~。怪しくて愛らしくてワクワクしちゃった~♬

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【レポート6】Y・Tさん 海外旅気分

「住居」で考えてた時、どうも私は【建物(アジト)】的なhard面はさほど…で笑。
どちらかというと‥‥soft面を刺激するような【何に包まれるか(住環境)】な方向性の妄想ばかりが膨らみましてもし拠点を持つならスリランカ。そこから絶えず旅気分で暮らしたいっすねオルホン渓谷のゲルが別荘で、ブエノスアイレスへ踊りに行き、サンセバスチャンの飲み屋街をハシゴし、ボーっとしたいときはオアハカへ。定住願望より、気ままなその日暮らしの自由さに魅かれま~す。

f:id:chinpira415:20220403211657j:plain▶ハードに働いた後、自分へのねぎらいのためにひとり旅に出るのを心の糧としていたTちゃんが、こう綴るのはわりと自然な姿。彼女には家と街の境界線がないからさー、様々な場所へイベントを求めてほっつき歩くと、かえってエネルギーがチャージされるのかもしれない。安らぎの場も人それぞれ。世界=我が家なのね!

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【レポート7】K・Mさん さすらいを気取る

あくまで妄想で OK と言われれば、男のロマンはコレに決まってるじゃん!キャンピングカー暮らしですよ~。毎日ふらっと気の向いたところにお引越し。や~どカリカリこだわりやさ~ん♪トイレ・風呂・キッチン・ホームバー付きでお願いします。トイレと風呂掃除はめんどっこいですけどね~。

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▶愛車で歴史的スポットへふらっと行くのがお好きなMさん。退職金でキャンピングカー買って、毎日社会見学していそうな未来図が想像できるな。そういう意味ではぜんぜん妄想じゃないじゃんかよー。まあ、家族を巻き込んでの男のロマンじゃないところはよしとしよう~。ノマドは孤独を気取らないと…ねっ!

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【レポート8】C・Hさん 時代を逆行してのロマン

現実味のない内容…妄想の世界です!最小限の荷物で、ロバと小さい幌馬車で季節ごとにゆっくり移動しながらの生活です。道中、採取したもので草木染をしたり、 蔓で籠を作ったり、 ヘンテコなキルトを縫ったり 、木の実で五平餅?!まで作り、夜には焚き火で餅を焼きながら 小さな木工品を作り、コーヒー飲みながらギターをひいたりして.... (笑)。そんなん出来たら楽しそうだなぁ~🌼

f:id:chinpira415:20220403223352j:plain▶おーっ、わざわざ時代を逆行してのさすらい人ロマン!妄想も念入りですんばらし~い👏最低限の生活体制すら視野に入れてなくて、たくましいなあ~。よっ、未来の西部開拓者!やれAIだー、やれVRだー、って騒いでる現代にこの発想、メチャ痛快じゃないの。しかもこの画像…ヨダレものです。幌馬車と比べたら男のロマンがケチ臭く見えるわね(笑)。

 

PS みんなの「妄想転居計画」アンケート 【リアル篇】は、4/29にお届けします。お楽しみに―!

うねって光ってゴッホ🌄

名古屋市美術館で16年ぶりに開催中ゴッホ『響きあう魂 ヘレーネとフィンセント~へ行って参りました!ヘレーネとは、ゴッホ作品の超コレクター、ヘレーネ・クレラー=ミュラーのこと。1938年に彼女が設立したクレラー=ミラー美術館のゴッホ・コレクションをガッツリ見られる企画展です。あのときの興奮が、今再び~!

f:id:chinpira415:20220321095819j:plainゴッホ…その名を口にするだけで思わず体温が上昇する気がしてしまうのは、時間軸と切り離せないからかもしれません1880年の夏に画家として生きることを決意し、じぶんの腹部をピストルで撃ち抜いてそのまま最期を遂げる1890年の夏までの10年間が、私の目の前に宮島達男(1957~)デジタル・カウンターのごとく迫ってくるわけです💦天賦の才を持ちながらも人知れずこの世を去る人は多々いらっしゃいましょうが、ゴッホの作品ほど絶えず時間軸を意識して対峙してしまうケースは他にないです、はい

f:id:chinpira415:20220321103210j:plainというのも、彼が画商の弟テオに宛てて書いた大量の手紙に創作プロセスを詳細にしたためていたことと、ヘレーネという個人コレクターがゴッホ作品にぞっこんになり、まとめてお買い上げしてくれたからでしょう。つまり、作家自身の批評性と身内のフォローと金の力の三位一体で一次資料と制作物が散逸せず、検証が可能になったから時間軸が立ち上るのです。ドキュメンタリー性が高すぎて心拍数があがっちゃうけどね(笑)。ではそろそろ作品を見て行きましょう~♫

f:id:chinpira415:20220322164518j:plain【麦わら帽子のある静物(1881)画家宣言をしたゴッホの初期の油彩画。前にも見たけど、これ、お地味ながら好きな作品なんですわ ほぼ独学で絵描き山脈を登り始めた彼のまっすぐさが、すっごーく伝わってくる1枚だと思う。我々が見慣れたゴッホのイメージにはまだまだ遠いけど、個々の材質の違いを見極めつつも、トータルでじぶんが大切にしたい1つの美に帰結していて、いい絵なんだよなあ~。

f:id:chinpira415:20220322171822j:plain【オランダ時代の素描画の数々16年前に最も衝撃を受けたのがオランダ時代の素描画の数々。今回もたくさん出ていて、「かっけ~!」を連発しちゃった📣この時代、農民の暮らしを描いたミレーの絵を題材に、ひたすら模写を繰り返し、やがてじぶんのお気に入りのモデルを見つけたりもしてるゴッホ。コーヒー飲んでる髭の爺さんは頻繁に登場します。かぶりもんしてる人物スケッチが多いのも見てて楽しい🎩f:id:chinpira415:20220322184207j:plain頭部や座る人物の素描を繰り返し描いていたゴッホが、練習の成果を1枚の構図にまとめ、リトグラフで制作したのが『ジャガイモを食べる人々』(1885)若い頃は暗くて陰気な絵としか映らなかった1枚だけど、今見るとおっそろしく実験的な絵画に思えて、じぶんでもビックリ(笑)。習作の合体で視線がバラバラなところが、逆に現代的だし、ランプの光が部屋の隅々にまで様々な階調で届いている描写力に震えマシタ~。

f:id:chinpira415:20220322182816j:plainあとねー、掘る人刈る人種まく人、といった農作業のアクションを何枚も素描していて、これがヨダレがでるほど好きで好きで…(笑)。上質なモノクロのドキュメンタリー映画を見ているようなかんじなのよ。

f:id:chinpira415:20220322182308j:plainあまりに好きすぎて、模写したこともあったちんぴらです(左側)。

f:id:chinpira415:20220323154643j:plain何にそんなに魅かれるのかというと、おそらく人体のバランスなのでは?と思うわけ。手と足が異様におっきくて、しかも腕が長いでしょ。わかりやすく言うとミッキーマウスのシルエットに近い。もちろんキャラクターを作っているわけじゃなく(笑)、ゴッホが自然と一体化して作業する農民の姿から感じたものが、このバランスになったってことでしょうかね。

f:id:chinpira415:20220322182337j:plain農家の女たちを描いたシリーズもきわめて美しい!ひとつの塊として捉えているよね。

f:id:chinpira415:20220322182409j:plainはい、『炉端の女』も模写したのよね。ヤカンがぜんぜん描けてないけど―💦

f:id:chinpira415:20220323154707j:plainギャザーたっぷりの白い帽子と隣はボリューミーなスカート…立体的なモチーフの練習をしていたのかな。素描と油彩を交互に描いて、じぶんの絵画道を探求してる時代です

f:id:chinpira415:20220322182426j:plain【レストランの内部(1887)1886年2月遂にゴッホは故郷を離れ芸術の都PARISへ♫ロートレックと出会ったり、印象派展を見たり、イタリア人の恋人までできたりしてイッキに世界が広がります。当時先鋭的だった点描画にもトライし、都市の一角をこんなに甘く明るい色彩の絵に仕上げるなんて…じゃがいもが花に化けた?

f:id:chinpira415:20220324163308j:plain【レモンの籠と瓶(1888)1888年2月。さらに陽光を求めてアルルへ向かう。移住後の5月に描いた1枚が次の静物画。レモンか玉ねぎかジャガイモか…ちょっと判断がつきかねるけど(笑)、そのいびつな存在感とほぼワントーンで仕上げたこの絵の斬新さには、言葉を失いますよゴッホの眼👀には絶えず黄砂が舞ってたのか?

f:id:chinpira415:20220324171233j:plain【サント=マリー=ド=ラ=メールの眺め(1888)6月には地中海沿いの漁村へ小旅行👜オレンジや黄色の屋根と青い輪郭線に心弾むね♬さらに手前の畑にも空の青が映り込み、まるで海のようではないの~!自由な色彩設計に感嘆です。

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【黄色い家(通り)(1888)9月ゴッホは画家たちの理想郷になることを夢みて、アルルのラマルティーヌ広場にある「黄色い家」に移り住みます。こちらはファン・ゴッホ美術館所蔵の1枚。またまた独創的な絵だよね…ぺったりと塗りこめられた空の青さが不穏な気配を漂わせつつ、それ故に黄色い家が神々しく輝きまくるという対照性ウクライナ国旗の配色だと言えば、最もタイムリーな例えか―。1枚の絵に朝と晩が一度に押し寄せてきた印象だわ。f:id:chinpira415:20220324170933j:plain【緑のブドウ園(1888)ぺったりと塗りこめられた空が、10月に描いたブドウ畑では徐々に渦巻き始めます。しかも葡萄の木、枝、葉、それに人物までもうねった点描で表され、絵の具はこんもり。葡萄が踊る生気溢れる前景から~の、奥へ奥へと視線を誘うダイナミックな構図が好き。そしてここでも青と黄の補色劇場です

f:id:chinpira415:20220324171417j:plain【サン=レミの療養院の庭(1889)そしてポール・ゴーギャン(1848-1903)との共同生活の破綻から精神を病み、耳切事件へ至ってしまったゴッホ💦1889年5月療養中の病院の荒れた庭を描いた1枚は、むしろ十分すぎるほどエネルギーに満ちていて驚かされます。短い筆触と色とりどりの色彩で花は咲き乱れ、花火のよう。突き当りの黄色の壁と、ところどころからのぞく空の青さが全体を支えていますね。

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【夕暮れの松の木(1889)ほほーっ、ゴッホの夕暮れは黄色なのか…。沈みゆく赤い太陽は、まぶしい割には重量感がなく、書割りみたいに見えたりしておもしろい。一方、画面の下は雪化粧で、急ぎ足で傘を差して歩く女の人の姿が見える。手前にガクッと折れた枝の迫力と相まって、思わず広重名所江戸百景を連想しちゃった。

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【草地の木の幹(1890)度重なる発作に襲われながらもひたすら描き続けたゴッホ1890年4月、またもやとんでもない傑作を誕生させました。この木の幹を見て!樹皮の質感を配色と筆致で表現していてスゴ~い迫力早くも抽象絵画の領域に踏み入ってるよね。柔らかく光り輝く草地との対照性にもウットリ…まるで天国ですわ~

f:id:chinpira415:20220324172333j:plain【夜のプロヴァンスの田舎道(1890)亡くなる2ヵ月くらい前の渦巻きてんこ盛りな作品いろんな意味で激しいな。天空を突き抜ける糸杉の背後には月と金星と水星が居並ぶ。ここでは小麦の黄色に穏やかさはなく、やたらざわついて見えた…

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番外編①【ドービニーの庭(1890)最晩年の作品でいえば、実は亡くなる数日前に制作したひろしま美術館所蔵のこちらの方がちんぴら好み。ペパーミントグリーンがロマンチックでそれはそれは美しいのですよ~。うねりと光のバランスも申し分なし。広島へ行く機会があったらぜひチェックして。多幸感に包まれます!

f:id:chinpira415:20220326160917j:plain番外編②そうそう、ドラマチックな生涯と資料の充実ぶりが食指を動かすのか、ゴッホを題材にした映画はたくさん作られております。イチオシはモーリス・ピアラ監督作品『ヴァン・ゴッホ('90)ジャック・デュトロ演じるゴッホを一度目撃したら、もうゴッホはジャックのビジュアルなくして想像できません。映画がまたすんばらしいのなんの…娯楽性を意識しながらも徹底的にクールでさー、1つ1つのシーンがぜーんぶ絵画に見えちゃうの。個人的には死ぬまでにもう一度見直したい映画の1本です🎬


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番外編③【模写✕3鬼才フランシス・ベーコン(1909-1992)は、ゴッホ『タラスコンへと向かう途上の画家』(1988)をもとにした連作を制作していて、その絵に衝撃を受けたちんぴらは、これも模写してたんですわ。そう、模写の模写の模写(爆)。ベーコンは「道の上の亡霊のような人物を描きたかった」と語っているけど、ちんぴらの模写は亡霊からさらに色を抜いた陽炎ゴッホ。ちょっと楳図かずお入ってる?

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まあ、ちんぴらのごたくは無視していただいて結構ですので、何はともあれ、ぜひ実物を見に足を運んでくださいませ。ゴッホ展は完全予約制です

PS 次回は4/13に更新します





満開🌼昭和洋食器コレクション

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に一度のお愉しみ♫ 大人美術部が2022年最初に訪れたのは、愛知県陶磁美術館の企画展『昭和レトロモダン 洋食器とデザイン画』です。1950~70年代に地元の愛知や岐阜で製造された懐かしの洋食器が、所狭しと集められたお宝展示!なんたって1961年生まれの我々は、こうした生活美意識をリアルタイムで体験してますからね~♬戦後の洋食器文化をお勉強しながら、四方山話に花を咲かせた鑑賞となりました🌼

f:id:chinpira415:20220220113412j:plain戦前から海外で評価の高かった日本の洋食器産業は、GHQから優遇され、戦後の早い時期に生産を再開することができてたみたい。特に「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の文字が刻まれた輸出向けの製品は主に米国に送られ、貿易事業として復興の足がかりを担ったらしいわ。こちらは岐阜のヤマカ製陶所が手掛けた輸出用洋食器のフルセット。まだまだ食べるのにも苦労していた時代にこんな商品を生み出していたとはね👀

f:id:chinpira415:20220220114358j:plainでもって高度経済成長期に入り、日本国内の生活様式が徐々に変わり始めると、一般家庭にも洋食器が普及。そこには、海外のデザイン動向を調査研究したり、欧米を代表するデザイナーを招聘してデザインの向上に努めたりしながら、各メーカーが日本独自の洋食器作りを確立していった背景があるんだよね。意匠認証制度を確立し、模倣からオリジナルでの切磋琢磨…これぞ日本のお家芸ですわ~🎌

f:id:chinpira415:20220227111404j:plainそして当時の輸出用人気デザインが竹笹文!東洋テイストが神秘的に見えるのか、竹って陶器に限らず欧米ウケのテッパン意匠だよね。こちらもヤマカ製陶所が1947~1952年に製造したシリーズ。抑えた色味がかえって目を引き、今でもシックで新鮮🐼

f:id:chinpira415:20220220222148j:plain今回初めて目撃したのが国内向けに作られた鳴海製陶ツンドラシリーズ。これまたMADE IN JAPANならではの凛とした美を感じますが、油性マジックでキュキュッと描いたかのような線画がタマランですなんてカッコイイの~、ツンデレではなくツンドラ😊ソーサーはケーキ皿としても兼用できるよう高台がなく、しかも木の葉を模した丸四角形になってるわ、カップにはひねった把手がついてるわで、超エレガント💎

f:id:chinpira415:20220227131807j:plainロングヒットパターンとなった《ツンドラ》は、大皿1枚とカップ&ソーサー6脚で一揃え。いくらナイスなデザインとはいえ、少子化が進んだ今じゃそんな大仰なセット購入なんて考えられないでしょう💦ただし生活水準が右肩上がりの高度経済成長期では、一般家庭も洋食ブームに乗ってディナーセットを手に入れたい“高嶺の花願望”があったのよ。あたしもしっかり覚えてますわ~、日本陶器《若杉》シリーズ!食器=5組で1セットがキホンでしたね。茶碗蒸し皿やお銚子もあるのがご愛敬(笑)。

f:id:chinpira415:20220227131737j:plainでもって、およそ日本の食卓では不要なアイテムもあるのに、洋食器一揃えをコンプリートし、応接間の茶箪笥に並べるという中流儀式にノリたがったのが昭和の日本家庭。そしてこれが実現できたのは、各メーカーがこぞって実施した「頒布会」という販促方法にあったのよ!おそらく異なる商品が定期的に届けられる頒布会の仕組みに、積立&カタログ好きな日本人の血が騒いだんだろうね。当時の手書き企画書にも大ウケ。

f:id:chinpira415:20220227132550j:plainそうそう一揃え感は贈答品でも威力を発揮してましたね。結婚式の引出物でどれだけ出回ったことか!逆にセットのゴージャスさに腰が引け、押入れの奥に眠ったままになるのもよくある話(笑)。こちらは阪神百貨店の箱付きのカップ&ソーサー6脚セット三郷陶器のデザインワークがキマってるね♬ ところがあたしは中身より箱にそそられるヒネたガキでさー、金具とリボンに陶酔し、パッキンを外して宝箱にしてたっけ…

f:id:chinpira415:20220227154914j:plain三郷陶器といえば、以前、尾張旭市の友人に誘われて陶器市に行ったことがあったなあ…。戦前に設立されているんだね。服部時計店が事業に出資して企業化したこと3人のデザイナーの活躍で“デザインのサンゴー”と呼ばれたこと、磁器に代わる新素材「マグナ」の開発など、なかなか勉強になった。こちらも朱赤と金彩が艶やかな《モダンセット》。グッとくるね~。カップを持つ小指が思わず立ちそうなデザイン😊

f:id:chinpira415:20220227174413j:plain青い薔薇がミステリアスな《ALICE BLUE》シリーズもよかった。昭和30年代後半の現実生活とは最もかけ離れた世界観が漂っているよ(笑)。余計な装飾を外しているからか、図案も色合いもひんやりと寂し気で色っぽいの。フランス窓に似合いそう…。少女漫画妄想が膨らんだわ💙

f:id:chinpira415:20220227174542j:plain洋食器産業が最も活況のあった1950~70年代には、転写技術の変化も著しく、シルクスクリーン本格的に普及。その一方で、むしろ“手描き”で差別化を図ろうという流れもあったというのはうなずける話。コバルトの手描き絵付を、北欧デザインと掛け合わせた鳴海製陶《てまり》シリーズは、グッドデザイン賞を受賞したロングセラー。和食でも洋食でも使い勝手のよい風合い、今も現役商品ですわ~♬

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【おまけ①】マブダチたちのコレクション拝見♬

ってことで、昭和洋食器に浸った後、実際に今でも愛用してそうなマブダチたちに声をかけて見せてもらいマシタ~。まずはHさんのレトロ洋食器。

「主に朝食で使うセットがこちらです。スタメンです !…昔  カレーライス専用の楕円の深皿や角砂糖を入れるシュガーポット、夏になるとガラスの器が出てきたり、正月しか使わない特別な器など、蚊帳つきのとびらの食器棚に入っていたなぁ....と記憶がよみ返りましたぁ」

f:id:chinpira415:20220310162507j:plain展示を一緒に見たMんちも…「左のお皿は使い易いサイズなのでヘビーローテ。食洗機にも入れちゃってハゲハゲ💦右は昭和レトロモダンなカップ&ソーサー。こんな壺の柄って家のカーテンとかに昔あったよね?お皿はケーキ皿にも使えるよう溝が無いタイプ。かわいいけどサイズが小さいのと取手が持ちづらいので普段は飾ってまーす」

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Kの家は…「ウチの昭和食器は、40年位前、三愛のシールを集めて交換したお皿です。どうも家を建て直した時に、私が捨てろ!捨てろ!って言ったそうだけど(苦笑)、残しておいたから思いがけない発見になったわ~」…展示を見ながら盛り上がったよね!

f:id:chinpira415:20220310172444j:plain古い食器好きのYちゃんちは…「左のシュガーポット&ミルクピッチャーはレトロな花と色がとっても好きで、実家から持ってきたやつ。アメリカ育ちだったおばあちゃんが、アメリカに住んでいる妹に送ってもらった60年ぐらい前のメイドインジャパン。」「あと、海外に輸出用に作った昔のメイドインジャパンもの。カップとソーサーがセットじゃないのもあるけれど、組み合わせを色々変えたりしても結構いい感じになる♬」

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【おまけ②】日本の器イロイロ

そうそう、昭和の洋食器を眺めながら、去年の秋に東京で見た『民藝の100年』展のことを思い出してたのよね。民藝運動の歩みも日本の「近代化」と密接に関係してるわけだけど、憧れで突っ走った昭和洋食器の流れと対極にあり、わたしが子どもの頃には、ハッキリ言って「民藝」的なノリはイケてない扱いだったわけよ。

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それが今じゃ立場は逆転💦消費されつくした昭和洋食器はあだ花で、手仕事の美を見抜いていた「民藝」の審美眼こそが日本の宝だとのお墨付きが…。わたしはどっちも好きなものはあるし、そうでないものもあるけどね(笑)。そういえば左手前の『緑黒釉掛分(りょくこくゆうかけわけ)皿』20年くらい前に1日陶芸体験でじぶんが作った皿とそっくりでバカウケ!

f:id:chinpira415:20220310220935j:plain本当にパクってないってば~(笑)。いやはや、まさかこんなオチになるとは…ねっ。『昭和レトロモダン 洋食器とデザイン画』展は21日まで開催中。ぜひお出かけください!

PS 次回は3/29に更新します

勝手にシネマ評/『クライ・マッチョ』('21)

穏やかな日の光を浴び、古めかしいトラックが広大な大地をゆったり走って行く。カントリー・ソングが響き渡る中、運転席に鎮座するのは、監督デビュー50周年を迎えたクリント・イーストウッド91歳。監督業40本目にして主演も務め、マイク・マイロ役に扮してみせる。

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時は1979年テキサス。マイクが余裕綽々と牧場へ乗りつけ、カウボーイハット姿で降車するオープニングを目撃すれば、映画ファンの目頭は早々に熱くなり、思わず「待ってました!」と声をあげたくなるだろう。クリントがマイクなのか、マイクがクリントなのか…もはや本人と役柄の境界線も、現実とスクリーンの境界線も溶解し、何だかよくわかんないけどありがたい光を拝もうと手を合わせたりなんかして…ね(笑)。

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考えてみたら、米国へ行ったことのない私だって、カウボーイ文化や西部劇の様式美は、すべて映画からの刷り込みでイメージしているに過ぎない。どこまでもどこまでも続く荒野の景色なんて、生涯ナマで体感することさえないわけで、わたしにとっては絵空事。なのにこの非日常のロケーションこそ、映画の日常だと承知し、郷愁さえ感じてしまうのだから、脳ミソはじぶん都合でできている

f:id:chinpira415:20220206145630j:plainそして、スクリーンを通じて、米国のヒーロー像を体現し続けてきたと言われるクリントもまたしかり。これだけ長い役者人生を、ある意味、思わせぶりだけで歩き通してきた事実があるのだから、映画館では彼が現実なのだ

f:id:chinpira415:20220206144554j:plainところが『クライ・マッチョ』は、一瞬にして信望者たちの夢を打ち砕く。マイクはヒーローどころか牧場主でもなく、一介の雇われ調教師に過ぎなくて、しかもやる気なしの遅刻の常習者(汗)。開口一番、オーナーのハワードから解雇通達をくらい、問答無用で追い出される始末。もちろん、反省するどころか軽口叩いてどこ吹く風で立ち去るあたりも、クリント映画らしい定石ではあるが…。(幕開け5分の映像がこちら)


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とりあえず映画は、クリントの現人神化を早々と避け、“祭りの後”から始まるドラマに舵を切る。ロデオのチャンピオンだった栄光の時代をひとなめし、その後の落馬事故ですべてを失い、辛うじて住処だけはあるが今や落ちぶれ切った老いぼれだとアピール。そして、そんな孤独な老人の前に、先のハワードを再登場させ、別れた妻に引き取られてメキシコにいる13歳の息子ラフォを連れ戻してくれと依頼させるのだ。

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なるほど。誘拐まがいの厄介な事案でも、恩義のある人間から頼まれたら、国境越えも辞さないのがロンサムカウボーイの美意識か。だってマイクの家は、手狭ながらじぶんの趣味が全開でさー、ぜんぜん不憫に見えないわけ。むしろ独居老人の天国みたいな理想空間だったから、彼の、“家を去り、仁義を切ろう”決断には思わず苦笑いした。そうそう、ヒーローとは不合理を直進する生き物でしたね(笑)。

f:id:chinpira415:20220206145910j:plain先を急ごう、国境越えだ。ところが我らがヒーローは、マニュアル車をヨボヨボ転がし、野宿をしながら気負いゼロで向かう。ラフォの母親の豪邸へもゆるゆると潜入し、案の定捕まってもどこ吹く風。逆に母親の養育放棄に釘を刺したりして、まるで町内会の会長ノリだ。ご都合主義のその上を行くオレサマ展開に、笑いが止まらない

f:id:chinpira415:20220206151201j:plainそのうえ息子探しだってあっさり成功。ラフォは自堕落な母親の元を離れ、独り路上で生き抜いてきたらしい。両親に振り回され、大人を信じられなくなっている少年の唯一の相棒は、闘鶏用のニワトリ“マッチョ”だけ。そこでもマイクは、父親を拒むラフォに対して強い説得を試みない。爺さんとひ孫ほどの年の差があっても、孤独に向き合っている点では同じ地平に立つ身だからだ。知恵は授けても支配者ヅラしない大人との接触で、やがて少年からは屈託のない笑顔がこぼれるようになる

f:id:chinpira415:20220206151236j:plainというわけで、後期高齢者と未成年者とニワトリのオレサマ軍団は、父親の待つテキサスへ向かう。ここからは荒野を舞台にロードムービーのはじまりだ―

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ところで、お察しの通りここが映画の一番のメインディッシュとなるはずなのだが…およそチャージがかからない。サボテンをかじったり…リオグランデ柄のジャケットを買い込んだり…車を盗まれたり&盗んだり…と、終始のんきな旅日記調。いちおう母親が放った追手の気配はあるものの、ほぼ開店休業状態。鼻っ柱の強い2人と1匹が揃っていながら、如何せん「圧」が一個もなくて、荒野が銭湯の書割りに見えてしまうほどだ

f:id:chinpira415:20220206151353j:plain挙句の果てには流れ着いた田舎町で、小さな食堂を営む未亡人と懇ろになり、オレサマ軍団一同、しれーっと居ついてしまうではないか!へっ?ミッションはどうした?こだわりのやせ我慢道はどこへ行った?ファイティングポーズを忘れたのか?…いやいや、何せ今回ばかりは90歳越えでの主役である(汗)。

f:id:chinpira415:20220206151942j:plainそのうえ役どころは、実年齢のひと回り以上年下の設定と推察できるので、確かに絵的に決めたくても限界がある(汗)。そこで、不自然な若作りを避けつつも、それなりの現役感を匂わせるには、男稼業で培ったテクのお披露目が最適解となるのだろう。

f:id:chinpira415:20220206151523p:plain少年にはカウボーイキャリアを伝授し、女こどもには小マメなフォローを欠かさず、村人たちの困りごとのために親切なドクトル先生にも扮してみせるマイク。…おいおい、すっかり善人の代表か?何より目尻が下がり、昼間っから窓辺で無防備にうたた寝をしたりして、世界で一番しあわせな好々爺に鞍替えですわ💦

f:id:chinpira415:20220206151633j:plainそれでもいちおう、じぶんたちが居つくと村人たちがキケンだからと竜宮城を後にし、本来のミッションへ軌道修正。取って付けたように、ゆっる~いカーチェイスをファンに用意するものの、今回のクリント=ヒーローがお披露目するのは、イキがっていたかつてのオレサマ至上主義を、前面撤回する反省の弁だ。そう、オレの二の舞にはなるなと少年ラフォを諭すくだりが見せ場となるのだ。

f:id:chinpira415:20220206151711p:plainラスト。国境で「困ったら来い」と愛弟子を送り出し、じぶんは踵を返し、マッチョと共にベンツでメキシコへUターン。最後までバイオレンスは封印し、一点の翳りも迷いもなく、朗らかに奏でられた91歳のクリント映画。もはや仮想敵は不要らしい。オレサマ指標は減らず口モテ運転に集約させ、目指せ100歳!という魂胆なのね😊

f:id:chinpira415:20220206151802p:plain映画という虚構の世界で実学実践者として振る舞ってきたクリントにとって、生身のじぶんを括弧で括り、ヴァーチャルな英雄像に差し替えることはできないのだろう。その代り、ニワトリに決着をつかせて大団円とは!…意表を突かれたな。これはこれでありでしょう~。唯一、筋肉の落ちた好々爺に肩パットの入った衣装だけは、見てて切なくなったが―💦

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『クライ・マッチョ』

2021年/104分/アメリ

監督/製作/出演   クリント・イーストウッド
脚本       ニック・シェンク
撮影          ベン・デイヴィス                       
出演         ドワイト・ヨーカム エドゥアルド・ミネット

PS 次回は3/13に更新します

勝手に年間cinema🎬 2021年度版

さて、今年もやって来ました ちんぴらジャーナル恒例の年間映画特集です。2020年に引き続き、コロナ禍での映画興行となりましたが…洋画68本+邦画19本計87を劇場でチェック。昨年より20本も増えたのは…無職で自由になる時間がたくさんあったから~♬「時間」に勝る贅沢品はありませんね。ここでは、連載で触れなかった作品を中心にご紹介しましょう。

 

上等少女に魅せられる2本

映画の中で“上等少女”を見つけ出すのは、じぶんにとって大切なテーマのひとつ。


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ホロコーストで家族を失くし独り生き残った16歳の少女と、42歳の寡黙な産婦人科医が偶然出会い、疑似親子の間柄になるハンガリー映画『この世界に残されて』('19)。ハグシーンがいいんだよね亡霊のように日常を漂っていた孤独なふたりに、再び重力がチャージされるかんじでさー、この世界にしがみつくための“結束の絵”に映るの。希望という名の大きな物語を紡ぐためのささやかな結束…。説明を省いた編集リズムも◎!


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『夏時間』('19)は、10代の少女オクジュが、父と弟と一緒に大きな庭のあるお爺ちゃんちへ引っ越してくるシーンから始まります。両親の別居、経済的問題、老いの目撃、叔母さんの乱入etc…じぶんを取り囲む状況が一変し、戸惑うことばかりの彼女のひと夏の体験が、繊細に綴られる仕立て。特に、あの日あの時の光の移ろいを見事な絵にしていて感心しました。郷愁に収まり切らない無常観まで捉えられていて実に見事です!

 

デビュー作にして堂々の群像劇


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▶再開発のただ中にある杭州市の富陽地区を舞台に、ある大家族の運命を描いた『春江水暖』('19)で、グー・シャオガン監督はデビュー作とは信じがたいほどの力量を披露した。老いてゆく母と、成人した4人の息子が下りなる悲喜劇は、あえて特定の人やコトを中心に位置づけないよう設計し、カタルシスを巧妙に外しながらスーッスーッと横展開。しかも絵巻物を紐解くようなそのリズムは、大河・富春江の流れともシンクロし、一族の過去と未来を想像せずにはいられない―。続編制作に期待も膨らみます

 

かつての悪童、今もピュア全開


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▶『春江~』と同じ水際ロケ映画でも、かつての悪童ハーモニー・コリン監督が撮ると趣きは一変(笑)。『ビーチ・バム まじめに不真面目('19)は、サイテーな輩のサイコーにピュアな瞬間に狙いを定め、我々を楽園に誘いますぅ~♬何せこちらの主人公は、ハッパとアルコールとSEXを白飯にして、ありきたりの倫理観を全部チャラにする詩人だからね。しかも演じるマシュー・マコノヒー短足とド派手な衣装の組合せがカンペキ。なぜそんなサイテー野郎が人々を魅了するのか…わかる人にはわかります、はい

 

タガが外れる女のドラマ2本


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▶フランス人女性作家のベストセラー小説を映画化した『シンプルな情熱』('20)は、大学で文学を教えるシングルマザーのヒロインが、ロシア大使館に勤める年下の既婚者に一目惚れして、世界が一変する愉快な1本。ヒロインは肉欲にまみれ、待つだけの女に成り下がり、息子に呆れられるくらいタガが外れるんだけど、ド直球で恋に溺れる姿はパッションそのもの!憑き物が落ちたように生まれ変わるラストまで爆笑の連続よ👀


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▶待ち焦がれる恋物語と対照的なのが『逃げた女』('20)。結婚して5年間、夫と1日も離れたことのなかったヒロインが、夫の出張中に3人の女友達を訪ね歩くドラマ。訪問先で噛み合わないやりとりが続くも、事件が起こるでもなく、日常の振る舞いが微かに揺らぐ程度。もつれそうでもつれないギリギリのところでサラリと身をかわす演出に、ツイ引き込まれるの。まるで水面下の見えない波乱を予感させるような空恐ろしい作品。

 

忘却してはならない史実を描いた2本

▶新旧2人の女性監督が、重心を低くしながら忘却してはならない史実に踏み込んだ!


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▶実際にあった事件をもとにペルーの闇の現代史に迫った傑作『名もなき歌』('19)。生まれたばかりの子どもを裏組織に奪われた先住民の母親と、巨大な権力社会に立ち向かう新聞記者の束の間の交流は、解決の糸口さえ見つけられぬままフェイドアウト―。今もペルーの大地にこだまする虐げられた人々の叫びを、静謐なタッチで蘇らせ、類を見ないほどの完成度。これまた長編デビュー作だというから心底たまげた…必見です!


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アイダよ、何処へ?』('20)は、1995年、ボスニア紛争の中で起きた大量虐殺事件の全貌を、国連平和維持軍の通訳として働くひとりの女性の立ち位置から目撃した問題作。刻々と状況が変化する中、丸腰で独り奔走し続けるアイダの徒労感に、我々は目を伏せていられなくなる。しかも彼女の夫と子どもには危機が迫り、待ったなしの状況。たかが映画と侮るなかれ。あなたならどうする?と、観客に絶えず揺さぶりをかけてくる1本…向き合うしかない!

 

劇場で見てナンボのダークファンタジー


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▶童話の実写化、『ほんとうのピノッキオ』('20)がスゴイことになってた!引きの絵がトンデモなく美しいのと音響効果が抜群で、原作のことなどすっかり忘れ、悪ガキ・ピノッキオのロードムービーとして楽しんだよ~。身体の動きが操り人形みたいでイチイチキュートだし、主人公以外の悪魔的キャラのバリエーションもハンパない!どっぷり浸かり過ぎて、今や木目を見たらなんでもピノッキオに見えちゃうわ(笑)。

 

監督のテリで撮影した3本


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▶元トーキング・ヘッズデイヴィッド・バーンによるブロードウェイショーを、スパイク・リー監督が映像化したアメリカン・ユートピア('20)。予告を見れば一目瞭然。楽器もダンスもまるで縁がないあたしでさえ、思わず裸足で舞台に駆け上がりたくなっちゃったよ。特にバーンを先頭にして、終演後の演者たちが、N.Yの街中を自転車で走り抜ける幕切れには大興奮♬ そう、幕が下りても音楽は続くのよ、どこまでも―!


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▶軍事クーデターが勃発した1973年以降、左派の夢がついえた監督の故郷チリ。『夢のアンデス('17)は、監督自身のナレーションで進行し、様々な芸術家たちのインタビューを交え、クーデター前と後の祖国の変貌を静かに俯瞰する。故郷を語るとき、人は誰しも詩人になる。さらにその詩人たちを包み込むアンデス山脈に、縁もゆかりもない我々の郷愁が反応してしまうから不思議だ。まさかじぶんが古いマッチ箱に胸を打たれるなんて!


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巨匠フレデリック・ワイズマンが、自身の故郷ボストンの行政と街を記録した『ボストン市庁舎('20)は、274分の長丁場ながら退屈するヒマが一切ない傑作。正直言って、あまりに理想的な市政なので、フィクションなのかと疑ったほどよ(爆)。だって行政に革命を起こしたウォルシュ市長の主張があまりに一貫しているため、演者にしか見えないんだもん…いや、プロの役者より迫力あるわよマジで。逆にそのくらいじぶんは理想の社会リーダー像を持ち合わせていないことが判明し、ヤバイと思っちゃいマシタ💦

 

邦画イロイロ~♫


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メディア業界で働くヒロインが、最後にカメラの暴力性を自身に向けて閉幕する『由宇子の天秤』('20)。大学生活を自虐的キャラ設定で軽く流してきたヒロインが、卒業間近になって初めて他者との関わりの渦に没入する『君は永遠にそいつらより若い』('20)。そして、コロナ禍後の日本を背景に風俗店で働くシングルマザーの矜持を熱さMAXで狙い撃ちした『茜色に焼かれる』('21)。日本人若手監督たちの躍進ぶりにも拍手喝采したわ!


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▶また2021年、世界から注目された濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』の2作品の完成度は特筆すべきものでした。2本とも「見終わってから始まる」映画になっているの。そう、幕が下りてから鑑賞者個々の妄想が始まるよう念入りに仕掛けられてるってわけ。特別思い入れを抱かせるような登場人物が一人もいないのに、他者の物語が鑑賞者の内側に忍び寄るスリルがここにはある。妄想を誘発させるための薪のくべ方が非常に洗練されているんだよなあ。新しい映画と出会いたい人、必見よ👀

それでは最後に、去年ブログに書いた長編映画評もおまけに付けておきます、どぞー🎬

 

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PS 次回は2/20に更新します。少し先になりますが忘れないでね~😊