勝手にシネマ評/『オマールの壁』('13)

く耳にはするが、実際は何もわかっていないパレスチナ問題。宗教と人種が絡み、なんだか複雑そうだよなぁ…で終わりにしている。でもパレスチナ人監督、ハニ・アブ・アサドの映画を見ると、無関心だったパレスチナのことを我が事のように考えるきっかけになる。劇映画(フィクション)の力を使い切って描き、しかもパレスチナの現在が我が家の隣に越して来るほどリアルな『オマールの壁』('13)。『イケメン映画天国』で大笑いした後は、これをみて泣け!

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ょっと言葉にならないくらい切ない映画である。フィクションと頭でわかっていても、どうにもやり切れない。映画の背景となる現在進行形の政治情勢に、これほど反応してしまった理由は、若者にとっての黄金の切り札―「愛」と「友情」と「青春」―が、ことごとく踏みにじられてしまうからに他ならない。パレスチナ自治区は天空までも壁に阻まれていた―。

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 パレスチナ自治区に高々と聳える分離壁を背にし、ひとり立ち尽くす美青年の名はオマール。次の瞬間、イスラエル兵士の監視を潜り抜け、垂れ下がる綱を掴んでイッキによじ登り、壁の向こうへスルリと潜入する。威嚇の銃声が響き渡り、手のひらには鮮血の花が咲くが、これがルーティンワークと言わんばかりの慣れた振る舞いで、映画は幕を開ける。その深く静かに輝く瞳と、しなやかな身体性に早くもテンションMAXだ。ただし、オマールは今から007やマッド・マックスになるわけではない。切れ味抜群のオープニングを演じた青年は、コツコツと愚直に働くパン職人なのだ。彼が向かったのは幼なじみタレクの家。身の危険を冒してまで訪問する先が、友人宅だという日常に、まずは驚かされる。そう、あのヨルダン川西岸地区を囲む分離壁は、イスラエルパレスチナの線引きだけにとどまらず、自治区内を分断する形で建てられており、パレスチナ人同士を引き離す意図もあるらしいのだ。申し訳ない、まったく知らなかった(汗)。千種区に住む私が中川区の実家へ壁を乗り越えて行く図を想像したら、思わずめまいが…。話を映画に戻そう。ではそんなタレクの家で一体何がおっぱじまるのかというと、幼なじみで集う茶話会(!)である。

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るで放課後の高校生男子のように、リーダー役で堅物のタレクとお調子者のアムジャドと3人で和むユルいひととき。冒頭の分離壁とのギャップが激しくて妙に可笑しい。いや、正確に言えば、我々を拍子抜けさせるこのトボけたリズムこそリアリティの要。むしろ緊張感を途切れさせないポイントなのだ。そして「友情」の次は「愛」の目撃である。オマールはタレクの妹ナディアと密かに愛を育んでいる。壁ドンよりはるかに難易度が高い“壁越え”に励むのは、愛のなせる技らしい。2人は誰にも気づかれぬよう、お茶と一緒に小さくたたんだ恋文をそっと手渡す仲だ。だが燃え上がる思いは、本人たちの気づかぬところで、閉ざされた世界の均衡を次第に崩し始める―。ここで目にする「友情」と「愛」は、一見、懐かしく控えめで純朴な青春の一コマに映るが、我々は冒頭の壁を目撃している。無邪気に酔えるはずはない。いつ終るとも知れぬ占領下の日常は、未来を宙づりにしたまま、息苦しく過ぎてゆく―。

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る日、オマールはいつものように壁を越え、恋人との束の間の逢瀬に胸を高鳴らせた帰り道で、イスラエル兵たちの嫌がらせにあう。その執拗なからかいと、息を殺して耐えるオマールの背中を一つ画面に収めるシーンの暴力的なこと!武力で制圧される側の屈辱感がスクリーンからにじみ出て、客席に座っている自分を後ろめたく感じてしまうほどだった。そしてこの事件を機に、若者たちの抑圧された感情が暴走を始める。積もり積もった苛立ちを晴らすべく、「待ってても切りがない!」と3人はイスラエルの検問所を襲撃。すでにオマールの愛と友情に親しみ、彼の心情と堅く結びついている我々は、このGOサインに躊躇なく飛びつくが、それはオマールと共にさらなる非情な世界へ足を踏み入れることを意味する。イスラエル秘密警察の報復である―。

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の映画で唯一プロの役者が演じる秘密警察の捜査官ラミ。この男の登場とともに、映画はまたも顔つきを変える。まるで金貸しシャイロックのごとく老獪なラミは、オマールを容疑者として逮捕し、協力者になって仲間を売るか、一生収容所で暮らすかの二者択一を迫る。いやー、ねっとりと赤子の手をひねる取引演出に興奮させられた!映画は、一本気な若者VS狡猾な大人というわかりやすい絵に作り込み、イッキに青春ジレンマ物語へとお色直しを図ってみせるのだ。そのうえ、レミの謀略に乗る振りをして、再び恋人と同胞たちの元に戻ったオマールが直面する様々な断片、その葛藤のバリエーションと緻密な構成があまりに見事で、私の意識は自治区内から外へ一歩も出ることなく集中し切った。特に、問題の多いこの地を宗教や民族間の確執からアプローチするのではなく、恋人同士がフツーに夢見る未来や仲間との変わらぬ友情というささやかな心の拠り所に、大きく揺さぶりをかけてくるスケッチの連続だからいたたまれないのだ。嫉妬があり、裏切りがあり、訣別がある…。オマールは何度も壁を越えて、自分の未来を掴みに行くが、その積み重ねがむしろ彼を孤独に追い込むという皮肉。世界はなぜこれほどまでにオマールをいじめるのか―。と同時に、なぜオマールはここまで自己犠牲を貫くのか―。古典的な悲劇の形式を借りることで、かえって占領下パレスチナ自治区の今を強く想像せずにはいられなかった。

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象的なシーンを2つだけ書いておきたい。ラスト近く、恋人も幼なじみもなくし孤高な日々を過ごすオマールが、もう一度分離壁をよじ登ろうとする。しかし壁を越えることができずに途方に暮れていると、通りがかりの老人が「大丈夫、すべてうまくゆく」と手を貸すシーンが描かれる。衰弱して縮こまった心に染み入る一言と一陣の風…オマールの代わりに声をあげて泣き出したくなるほど、胸に突き刺さった。そして、アムジャドの妻になったナディアとの2年ぶりの再会場面。オマールは穏やかな笑みを浮かべて尋ねる「勉強は続けてる?」と―。家父長制が強く、男女間の壁も高く聳え立つ慣習の中で、教養は女の人たちの力になる!と励ますような一言に聞こえて、これも私には忘れ難いシーンとなった。…それにしてもせつない(涙)。

若者たちの黄金の切り札は、みんなが嘘を信じたことで崩壊した。云わば壁に取り囲まれた中での自壊によって消失したのだ。その重苦しさは他国の政治情勢だけにとどまるものではない。今見るべき映画、必見である。


第86回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品!映画『オマールの壁』予告編

 

オマールの壁
2013年/パレスチナ/カラー/97分
監督・脚本・製作 ハニ・アブ・アサド
撮影      エハブ・アッサル 
キャスト アダム・バクリ、ワリード・ズエイター、リーム・リューバニ

 

イケメン映画天国★最新ルポ PART 2

い、はい、お待たせいたしました!先週に引き続き『イケメン映画天国』のPART2をお贈りいたします♪ なんとPART1のアクセス数は通常連載の2.3倍!マジにびーっくり。やっぱイケメンというワードは強力な掴みになるのね~、勉強になりましたよ(笑)。そして指南役となってくれた映画愛好家マブダチRのこだわり解説が、細かいんだけど、読者にウケるツボを外さないからさー、きっと面白がって読んで頂けたのではないかしら。何せRは元・雑誌編集者。今も絶えず編集者目線で世の中を見渡していて、情報の伝え方にも敏感なの。イケメン画像を選んでいたときも感心したなあ…。自分の好みだけで押し切らず、基本は万人向けのビジュアルの中からピックアップ。「まずは、誰にでもちゃんとわかりやすく伝わるイケメンのイメージをお見せしないと意味がないですから!」だって。いやー、えらい!カスタマー設定まで自然にできちゃうあなたは生涯編集者よ~。というわけで、後半戦スタート🏁 

※前回同様画像が2カットある場合は、左側に顔・右側に身体のRがセレクトしたベストショットを配置しています

 

ザック・エフロン(Rポイント💛💛💛💛点)

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 ▶誰、コイツ?ザック?ごめん、ホント知らないわあ~。顔と名前が一致したとしても、追いかける要素が一個も思いつかないんだけどね(苦笑)。視界に入っただけでお腹いっぱい(汗)。左は少年隊の克ちゃん?右のバーベキュー野郎、ジョージ・クルーニーじゃないの?ジョージなら好きな方だけど…。「どうしてこの魅力がわかんないんですか!アイドル顔で、この肉体!ギャップがたまんないんですよ~」…だーかーら、私にはそのギャップが気持ち悪いんだってば(笑)。「ザックは子役からずーっとアイドルの最前線にいるんですよ。日本でいえばジャニーズです。キラキラ輝いていてめちゃくちゃキュートじゃないですか!」。なるほど合点がいった。アイドルと言うけれど、透明感ゼロで、やけにスレっからしな感じがしたのは業界歴が長いからなのか!つまり坂上しのぶ?ヤッスイわ~(笑)。実際は1987年10月18日 生まれの28歳らしいのだが…。

▶Rがザックに最初に目を付けた『ニューイヤーズ・イブ』('11)から、またもや細かすぎて伝わりにくい萌えシーンを紹介してもらいました。「ミッシェル・ファイファーとのダンスシーンが必見です。ミッシェルと一緒に踊る前に、ソロで、嬉しさを表現するようなダンスをするんだけど、これがなんともカワイイ❤︎出演シーンは超少ないけど、キュートな魅力が凝縮されてます!」―そもそも、この映画が細かすぎるわ…タイトルさえ今初めて聞いた(汗)。そして一番のオススメ作品は『ペーパーボーイ 真夏の引力』('12)だって。こっちも私は見てませ~ん。

 

ジョエル・キナマン(Rポイント💛💛点)

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▶おっと、ようやく共感できるイケメンじゃな~い?私も好きよ❤︎(ようやく❤︎出せた…)おでこが好み。でも1本も見ていない(汗)。「『デンジャラス・ラン』('11)で見初めたんです。北欧男子★めちゃくちゃ背が高くて、顔小っちゃくて、最高のバランスです!」。そこで早々にウィキで出演作を調べたら…『デンジャラス・ラン』でジョエルが演じているのは、“マットがトビンを連れて来た隠れ家の客室係”。端役も端役、客室係だって!いやー、Rのすごさを思い知らされましたね…一体どこまで目配せしてんだあ?超たまげたよ。すでにこの時上腕二頭筋、いいジャン!」と思ったらしい…天才(脱帽)。

▶Rオススメのジョエル出演作は『ラン・オールナイト』('15)。パリコレのモデルが演技しているような美しさ」だというから気になる。取り急ぎ名前だけはインプット。1979年11月25日生まれの36歳。そうそう、何とジョエルの身長は189cm。対してザックは173cmだって。くどいようだがザック、チビの筋肉バカじゃ、アマレスやるしかないね(笑)。

 

カルロト・コッタ(Rポイント💛💛点)

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▶「カルロス、退廃的でいいよね~!」と、私が初めて身を乗り出したら、「もー、違いますって!カ・ル・ロ・トですよ~、しっかりしてください!」と間髪入れずに赤入れされました…だって言いにくいんだもん。「知る人ぞ知るポルトガルジョニー・デップ!ビンテージ感のある帽子がこんなにも似合う男は、ジョニデとカルロトしかいない。『熱波』('12)1本でメロメロ。パーフェクトにカッコ良かった。ドラムたたいても良し、バイクに乗っても良し、逢いびき中も当然良し!、もっと彼の作品はを見たいので、海外進出を早くしてほしい俳優さんの一人です❤︎」

▶ちょっと、誰が『熱波』を薦めたと思ってんのよー。アタシよ、アタシ!ミゲル・ゴメス監督作『熱波』は、2013年の私のベスト1映画。カルロス…じゃなくカルロトの出演作は、『ミステリーズ 運命のリスボン』('12)も忘れ難いわ。目下彼に関しちゃ、私の方が接近中★

 

トム・ハーディ(Rポイント💛💛💛💛💛満点)

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 ▶とにかくRが顔の中でしょっぱな目をつけるのが鼻のライン!鼻ボレが顔ランキング入りの必須条件なんだって。で、身体の要はやっぱり上腕二頭筋(爆)。いいなー、採用基準が明確で。2010年、たまたまチェックしたSFアクション映画『インセプション』('10)の脇役で見かけたのがトムハ狂いに走るきっかけ。鼻のラインとシブイ声でまずは合格。1977年9月15日生まれ、38歳のトムハも、今や押しも押されぬトップ・スターの仲間入りを果たしているが、Rは早い時期から目をつけ、“自分で探し当てた!”感に自負がおありのご様子(この思い込みこそファンの証!)。

「2012年はトムハyear。ノックオンされました!『ダークナイト ライジング』、ブラック&ホワイト』、裏切りのサーカス』。その後も、アート系、エンタメ系、硬派な監督達とタッグを組んで主演として映画に出ずっぱりでした!」 私は忘れないわ~この年、Rの口から「ジョニデを越える男が見つかりました…」と遠い目をして語られた日のことを(爆)。イケメン・チェックのキャリアは相当長いRだが、顔に関しちゃずーっとジョニデが不動の第1位。情も込みで、これはもうスペシャルな存在なんだなあと思っていたのだが、勢いは感じたけどまだまだ知名度の低いトムハを抜擢するとは…私でさえ耳を疑ったわ。でも1度ロックオンしたらRの握力は強い!連日DVDで出演作を繰り返し見直し、携帯に画像を盛り込んでホホを緩ませていたよね~(笑)。

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▶そんなトムハ出演作でRのオススメは『ブラック&ホワイト』('12)↑。「『マッドマックス』もトムハの魅力全開だけど、ロマンティックなラブシーン&アクション&コメディとてんこ盛りにトムハの魅力が楽しめるのはこれ。映画の質はさておき、トムハの幅広い才能を堪能するなら、これしかない!」らしいよ~。「意中の女性(リース・ウィザースプーン)との長いキスシーン。車中キス、からの、リースの部屋へ突入しながらのキス、からの、壁ドンキスの嵐、からのベッド押し倒しキス…、たまらん。キスシーンって横顔しか映らないから、横顔が美しいと惚れ惚れするわけ。横顔が美しい=お鼻が高い、おまけにトムハは唇がポッテリしてるから、キスしてる時の下唇がセクシィなのです!」ゲロゲロ…熱すぎてここは多治見か?愛は盲目。「でもトムハ、気をつけないと太るタイプです(汗)。歯並びも悪いし、ファッションもメチャダサイけど…こんなに色男なのにキメキメじゃないところがまた可愛い❤︎」はー、しばらく愛の煉獄は続きそうですな。そうそう、Rが力説する『7代目ジェームスボンドはトムハで決まり!』には私も同意。これ本当に実現するかもね~。

 

て、2週にわたってお贈りしましたイケメン映画天国、いかがでしたでしょうか…。改めて映画は総合芸術だなあと思いましたね!同じ映画を見てるつもりでいても、注力ポイントが異なれば、捉え方も印象も全然変わっちゃうわけだから(笑)。そして自分が如何に役者の身体はおろか、顔さえまともに見ていないとわかり、まだまだ精進が足りんと反省(汗)。サンキューR!これからも、HOTなネタを夜露死苦~。

PS・みなさま、来週からはまたお地味&ニッチなネタに逆戻りで~す(期待値調整)。

イケメン映画天国★最新ルポ PART 1

なさま、GWはいかがお過ごしでしたでしょうか…。もしかしたら、腑抜けのまま現実生活に舞い戻り、重い足を引きずるように通勤してたりして…(苦笑)。はい、そんなあなたに朗報です。いつもはニッチなネタしか提供できない我がコーナー(汗)に、華やぎの王道をぶっこんでみました!題して『イケメン映画天国』★ 映画愛好家マブダチRに取材し、彼女が惚れこんでいるムービー・スターたちの魅力をタップリ聞いてきましたよ~。どの話も面白すぎてカットできないので(笑)、2週にわたってお届けしましょう♪R妄想のすさまじさにつられて顔がほころんだら、あなたもすでに天国の住人です!

うそう大切な前置きを一言。Rのイケメン分類は「顔編」と「身体編」の2本柱で精査していて(汗)、今回ご紹介する基準は「顔も身体も両方好み!」という最もグレードの高いイケメンたちだそうです(笑)。また画像が2カットある場合は、左側に顔・右側に身体のRがセレクトしたベストショットを配置しています。ちなみに彼女のデータベースには「顔だけが好み」「身体だけが好み」もきっちりストック。絶えずランキングを見直して変動させているようです(脱帽)。

 

チャニング・テイタム(Rポイント💛💛💛💛点)

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▶冒頭からすでにわかんないわ~。Rからチャニング・テイタム(チャイ)がモデル上がりだって聞いて、信じられなかったわよ。どこがモデル適正要素なんだっけ?(笑)年齢も1980年4月26日生まれの36歳と知って驚いた。けっこう年とってるのね。私の中では、ガテン系のバイトをしながら奨学金で大学に通う万年苦学生イメージがあるからさー、傑作『フォックスキャッチャー』('14)にはドンピシャだったけど、ウットリ対象とはどうにも思えず…。Rは『第九軍団のワシ』('11)でチャイの男くささに目が止まり、『エージェント・マロリー』('11)でのラブシーンで一気に❤︎『ホワイトハウス・ダウン』では、危険な闘いシーンなのに不必要にタンクトップで演じきり、筋肉全開でまたもや❤︎Rいわく「つまり長い下積み経験が活きてるんですよ~。そういう苦労が武器になって、映画関係者から可愛がられ、出演作が増えていったんですよ。きっと性格もいい奴なんですってば~。」と、会って聞いたようなことまで妄想してます(笑)。

▶Rオススメのチャイ出演作品は『マジック・マイク』('12)。「男性ストリッパーのチャイによる小ワザの効いたダンスが続いた後に、上半身ハダカにネクタイ姿で、先頭のチャイが右手を右耳にあてるプチパフォーマンスしてからの、激しい腰振り!!ドヤ顏もたまりません!」…確かにこの映画は私もウケた。ただし私が笑ったのは、チャイが運動神経のいいジミー大西にしか見えないところなんですが…(トホホ)。

 

ウォンビン(Rポイント💛💛点)

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▶韓流ドラマブームの発端となった"冬のソナタ"の秋ヴァージョン『秋の童話』('00)が、ウォンビン萌えの始まりだとか。いやー、冬のソナタに秋バージョン(!)があったことさえ初めて知ったわよ(苦笑)。韓流四天王の一人として、国民的アイドル俳優時代もありながら、慎重な作品選びをしている姿勢を感じるところが好感が持てます。アジアの役者で唯一顔も身体も◎なのは彼だけ!」。だけどさー、私も映画で何回か見てるけど、1977年11月10日生まれの38歳。すでに終わった感があるんじゃないの?あの童顔が逆に足かせになり、今後の展開はかなりキツくない?私の中では若い頃の安藤政信とビジュアルがカブるなあ。

▶Rオススメのウォンビン出演作品は『アジョシ』('10)。「鏡の前で上半身裸で髪の毛を五分刈りに剃るシーンに萌え~❤︎ナイフ使いもカッコ良いっす!」

 

ロドリゴ・サントロ(Rポイント💛💛💛点)

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▶身体チェックは『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』('03)のサーファー役から。ほんのチョイ役だったけど、そこはすかさずチェックしたらしい(笑)。その後すぐに、サーファー=裸=頭弱そう、っていう図式(スゴイ図式ですね!)を覆す威力を、メガネ男子に転じて成功したのが『ラブ・アクチュアリー』('03)なんですよ!」知的なロドリゴが、壁ドンするシーン、萌えぇでした❤︎」

▶つまりRにとって、映画はある種の絵巻物なのではないかと私は考える(笑)。ここでは全く関係のない『チャーリーズ・エンジェル ~』と『ラブ~』が、ロドリゴを中心に勝手に一続きにまとめられ、絵巻物として眺められて行くわけよね。国宝ではなくR宝絵巻物…。一度気になったターゲットに対して、意外と息の長い見守りを続ける秘策はここにありか。1975年8月22日生まれの40歳。「顔よし身体よしなのに、イマイチ作品に恵まれなくて気の毒イケメンなんです(涙)。事務所の力が弱いのかな…」と繊細な心配りも見せてくれましたあ~。

 

ギャスパー・ウリエル(Rポイント💛💛💛点)

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▶ひんやり美男子ギャスパーは、日本でもヒットした『ロング・エンゲージメント』('04)で一躍時の人に。フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞の新人賞を受賞しているが、日本未公開作品が多い分、消費され過ぎず、ひんやり感がキープできていてラッキーだよね(笑)。Rは、彼の憂い顔お洋服の着こなしにぞっこんだとか。1984年11月25日生まれの31歳。顎がとんがりすぎだろう?と突っ込みたいところだが、Rはあの顎のラインが美しい!とベタ褒めですわ。

▶Rオススメのギャスパー出演作品は『サンローラン』('14)。あのファッションデザイナー、イヴ・サン=ローラン の生涯をスキャンダラスに描いていて、見ごたえあり。イヴと全然似ていないギャスパーが次第に本人にしか見えなくなる…怖いよ~。「ルイ・ガレルとの男同志のキスシーンはフェロモンたっぷりでした❤︎一糸まとわね全裸シーンもビューティフル!海外では一切モザイク入らないらしいんですけど、そうとう立派なモノをお持ちらしいです^^」 むしろノーカット版じゃなくてよかったね。ノーカットだったら、即パリまで追っ駆けて行ったかも(笑)。

 

ダニエル・クレイグ(Rポイント💛💛💛💛点)

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▶ダニエルとの最初の出会いはサム・メンデス監督の秀作『ロード・トゥ・パーディション』('02)だが、トム・ハンクスジュード・ロウの陰に隠れていたから、気にもしてなかったそうな…。正直言って「好きな顔」とスンナリ言いたくはないらしい(苦笑)。「だけどやっぱり007シリーズが決定的!あの年齢であの肉体を維持する努力がスゴいと思うし、ジェームズ・ボンドの人気を復活させた映画貢献度も◎」だって。1968年3月2日生まれの48歳…Rのお目にかなってよかったね、ダニエル。

▶そして『007スペクター』('15)から、細かすぎて伝わりにくい萌えシーン❤︎も紹介していただきました。さー、笑っていただきましょう~「スペクター本拠地へ行くため、駅で迎えを待つボンドとマドレーヌ(レア・セドゥ)。ロールスロイスが視界に入ると、視線はあくまで前方ロールスロイスに向けたまま、両手をさりげなく後ろに回し、銃の発射準備をするボンドの流れるような動作のスマートなこと!マドレーヌにも分からないよう、愛する女性を守るためのジェントルマンな所作に感動です❤︎」よかったね、ダニエル。これで任期満了までシークレット・ブーツを履いて6代目ボンドを演じきった甲斐があったね。

 

さて前半パート、いかがでしたでしょうか―。次週PART 2では、Rがここ5年夢中の本命イケメンの登場です!乞うご期待★

  

 

写真家・楢橋朝子をご存知か?

画を見続けて早何十年と経つが、正直言って女性で一目置いている映画監督は,ほんの一握りだ。そもそも国内外を見渡しても、監督業に就いている女性は男性に比べて極端に少ない。なぜだろう…。才能の問題?体力の問題?統率力の問題?それとも女じゃ金が集まらないという投資の問題なのか?…よくわからない。だが、女性の写真家となると、もはや「女性」冠など必要としないくらい自分勝負に出ていて静かに百花繚乱。あの90年代のガーリー・フォトブームなんかも、ちゃんと消化されて今に至っているような気がする。

の場合、写真を作品として認識するようになったのは、美術館で写真展と対面する機会が増えてからだ。ハコのマジックって大きいですね!白いハコを額縁に見立て、何枚も続けてヨコ移動しながら写真をながめると、自ずとそこから作風というヤツが立ち上ってきて、自分と共鳴するもの&しないものが明確になってくる。そこまでは絵画といっしょ。ただ絵画と大きく異なるのは、写真は100%シャッターを切ったその瞬間の現実が素材となっているわけじゃない?だから、「どうしてこの人には世界がこんな風に見えたのかな…。こんな風に見たいと思ったのかな…。」と、自分と同じ地平に立っている前提で思い巡らしてしまうことだ。構造的には同じ👀を持っているはずなのに、その作家の👀と私の👀の違いが露わになるから、私との落差が大きいほど“面白い!”となるみたい。なぜだか技術的なことはまったく無視しているのよね(苦笑)。私が魅かれる写真家は、人知れずトンデモないものを見ていて、それをこっそり炙り出すように提示することで世界を再定義している人―。想像するに、リアリスト&単独行動派が写真家に向いているのではないか?…女性写真家に優れた人が多い理由はそこじゃない?…と、勝手に踏んでいるがどうだろう。具体的に日本人で好きな女性写真家を挙げると…石内郁オノデラユキ米田知子川内倫子志賀理江子…たくさんいるよ~。あなたたちの👀で1日過ごしてみたいです、はい(笑)。そして今回ここで紹介するのが楢橋朝子(ならはし あさこ)

 

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橋さんの写真と出会ったのは2001年秋。東京都写真美術館『手探りのキッス~日本の現代写真』にて、≪half awake and half asleep in the water≫と題したシリーズを見たのが始まりだ。すでに15年も経つが、このとき味わった感覚は今も忘れられない。12枚並んだ写真のすべてが水際から撮影されたもので、ながめていると下半身の力が抜けてきて、危なっかしくも愉快な冒険に繰り出したかのような気分になったのだ。タイトルの半睡半醒は言い得て妙だが、私は泳げないので(汗)、優雅な夢うつつ気分というより、一寸法師になってちっこいお椀の船に乗ってプカプカ漂ってるかんじ。家出した心細さはあるが、お椀の中で一寸法師がエラソーに「俗世とは懐かしきものなりー」とかなんとかつぶやきながら、ひとり胡坐をかいて水際からながめてる情景がこのシリーズなんじゃないかと勝手に想像した(笑)。そしてこれを機に、楢橋朝子=プカプカの写真撮ってる人!として、しかと刻印されたのである。

 

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の後、出張で上京したときに、タイミングよく京橋のギャラリーでプカプカの“今”を見る機会に恵まれた。6年ぶりの再会。あの一寸法師の家出は、のんきムードにとどまることなく、ワイルド方面に跳躍していて「カーッコイイ!」と興奮★参考資料として置いてあった写真集が気に入り⇒タイトルをメモり⇒アマゾンで検索したら⇒引っかからずに⇒ガックリきのこ(涙)。ホームページらしきサイトも見つけたが、あまり更新されていないようだったので、長期伴走計画に気持ちを切り替えた(笑)。

 

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 度気になったものに関して私はかなりしつこい。「いずれまた」出会えると確信していて、いつまでも気長に待てる。で、ちゃんと新作と遭遇できちゃたんですよね~、しかも地元名古屋で!2013年、八事のC・スクエアにて、堀川を撮影した作品展が開催されると知って快哉を叫んだ。堀川ですよ、あの堀川!カヌーを借りて、延べ8日間、長期スパンで撮影されたシリーズを前にしたときは、やっぱあまりにも身近な川だけに複雑な感情が押し寄せてきたなあ…。もはや覗き込むことさえない川から、逆に我々の日々の営みを見返されているような気がして、足元が揺らいだんだと思う。それこそ汚れまくりの負のイメージが鼻の先に刷り込まれている世代だから(とにかく街中にありながら悪臭が強烈だった!)、川の存在をあえて無視し続けてきたんだよね…。そんな後ろめたい記憶が蘇り、動揺したのかもしれない。

 

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してこの展示で楢橋さんは堀川を動画で撮影した作品も発表。これが、たまんなかったのよ~。私の抱いた若干の後ろめたさを、今度は反対に川の方がバッサリ無視し、あるがままに流れて行くの。春、水際は舞い散る桜の化粧で表情を刻々と変え、我々を桃源郷へ誘う…。最期にたどり着く風景がこんなんだったら、ほくそ笑みながら往生できるだろうなあとツイ夢想した―。

 

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いうわけで、私の素人解説では伝えきれないので、楢橋さんの写真に興味を持った方は、直接こちらをチェックしてみて。サイト(03magazine)が新しくリニュアルされ、水際写真シリーズ以前の作品もUPされています。実は私は、C・スクエアのアーティスト・トークイベントで楢橋さん本人とお会いし、なんとその後文通友だちにもなったの(笑)。しかも私が書く映画評を面白がってくれて、そちらのサイトでキトキト映画雑記」という読み物コーナーを担当させてもらっているのです。それにしても縁とは奇妙なものですね…。泳げない私が楢橋さんの写真の中で漂い、見知らぬ世界を放浪するようになったのだから。楢橋さん、ぜひ引続きこのちんぴらに、トンデモないものをお見せくださいませ(ぺこり)。

※ここで使用している画像はすべて楢橋朝子作品です

 

 

勝手にシネマ評/『母よ、』

ナンニ・モレッティ監督作品『母よ、』('15)の感想をまとめました!モレッティは、現役で活躍する映画作家の中でも私の10本指に入るご贔屓監督。新作公開となれば、何はともあれ駆けつけるぅ~★でもって本作は、おフランスのうるさ方映画人が編集する映画批評誌カイエ・デュ・シネマの2015年ベスト1に輝いているらしいっス。残念ながら劇場公開は終わってしまいましたが、いつかDVDなどで見られる機会があればぜひ。もうすぐ「母の日」、イメトレに活用していただいて…いやー、最も参考になりにくいかあちゃん映画かもしれないです(笑)。

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画監督のマルゲリータは八方塞がりだ。クランクインした新作が思い通りに進まない。ハリウッドからスター役者を呼び寄せて、硬派の社会派作品に仕上げるつもりらしいが、主役が現場入りする以前に早くも苦戦中。「いやーダメでしょ、こんな古臭い労使紛争シーンを撮ってちゃ。一体誰が見るの?」と、私でさえ思わずツっ込みを入れたわよ(苦笑)。そのうえ彼女のイライラにスタッフは振り回され、撮影現場の空気は最悪―。

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事を離れても、マルゲリータの気は休まらない。入院中の母の容態が気がかりで、何とか頑張って病院へ顔を出す。そこには籠の鳥となって不安そうな母親が横たわっているのだが、病床の身でありながら娘の仕事ぶりには上から目線で見定めたりして、なかなかの気丈ぶり。この親にしてこの子ありか(笑)。いや、もしかすると2人は、親子の関係を一度も逆転させぬまま今に至っているのかもしれない…。ここで一服の清涼剤となるのが、モレッティ監督自身が扮する兄のジョヴァンニだ。母に手作り惣菜を差し入れに来て、甲斐甲斐しく世話をする姿の微笑ましいこと!どうやらイタリアのマンマの愛情深さは、兄に継承されているらしい。ただ母を元気づけたい一心で自然に行動が伴う兄を見て、マルゲリータは内心焦っただろう。仕事で凹み、親孝行でも兄に出し抜かれ、じぶんの落としどころに迷う働く女の心理状態が、実にシビアに描かれる。それだけじゃない。一方でマルゲリータは恋人に強引に別れ話を切り出し、サクサク一人荷造りをして仕事に専念するという。どう説得されても聞く耳持たず、以上おしまい!だ。不調にあえいでいてなお、慰めの場所など不要だとツッパるヒロインの硬質さは、一体どこからくるものなのか。また、彼女には別れた夫との間に中学生の一人娘がいて、自分も一人の母親の立場から反抗期の娘に手を焼いている様子。要は、仕事もプライベートも問題が山積みで、マルゲリータは始終ピリピリしているのだ。そんな中、追い打ちをかけるようにトラブルが降りかかる。現場入りした主役俳優のバリーが大物ヅラした俗物野郎で、彼女のカンに触ることばかりやらかし、撮影はますます難航。しかも、母の病が予想外に重く、余命わずかだとの宣告まで受けてしまう―。

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ころで肝心なことを書き忘れた。マルゲリータは美しい。ボリューミーなイタリアのマンマのイメージとは異なり、スレンダーな体系の知的美人である。特に後ろ姿なんて本当に可憐で、まるで女子大生のよう!誤解を恐れずに言えば、神経を張りつめてピリピリする必要がどこにある?美人が独りで生真面目に何でも背負い込むと、周りがいたたまれない雰囲気になるのわかんない?と、ハラハラしてしまった。男が幅を利かせる映画業界にいて、しかもこの美貌で女優ではなく監督業に長年就いてるなんて、相当強い征服欲をお持ちなのだろうが、見た目とのギャップを絶えず感じてしまったのは私だけだろうか…無理してないか?と。もちろんそのあたりは監督の計算なのかもしれない。もともとこのお話は、母親を亡くしたモレッティ監督自身の体験談を下敷きにしたもので、自分が演じるにはあまりに辛くて、主役を女性に置き換えて制作した作品なのだ。だけど自分(監督)が解放された分、マルゲリータを追い詰めるエピソードがイチイチ手厳しくて、仕事と家庭の両立に懸命な女の人たちが見たらイタすぎて目を伏せるかも(汗)。それだけ男女の垣根なく、人間として対等に見ている証拠とも言えるのだが―。さらに驚いたことに、こんな風に全編ストレスが噴出する作りでありながら、なぜだかやたら面白いから呆れてしまったのだ!

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えば劇中には、問題山積みのリアルな時間と並行して、ヒロインの内面の葛藤を幻想的な絵柄で差し挟み、彼女の八方塞がりな自意識をうっちゃるシーンがたびたび登場する。難しいアプローチだが、これがかなりイイのである。親しい人の最期と向き合うのも、切羽詰まった仕事への責任も、相当な重圧には違いないが、そんな時でも人は頭の中で自分を欺き、見当違いな妄想を繰り広げたりして、深刻ささえ無意識に自分仕様にアレンジするもの。そんな個の作業を、気取った抽象化ではなく、ひとりノリ突っ込みと呼びたい軽さと唐突さで演出していて、私にはとても魅力的に映った。映画の力を信じているなあーと。監督はこの美女を哀しみに暮れさせない、むしろより忙しくさせる。そしてバタバタさせながら、自分の判断を絶対視し、すべてを自己完結してきた彼女が、実際には何もわかっちゃいなかったことを遠巻きに気づかせる。母のこと、娘のこと、兄のこと、恋人のこと、そして自分自身のことも、わかっているつもりなだけだった…と。マルゲリータと我々は近しい。彼女を通してフと自分を振り返るとき、映画は苦笑いを誘う―。

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スト。遠い目をした母に向かいマルゲリータが「何を考えているの?」と尋ねると、母は一言「明日のことよ」とそっけなく応える。実際のやりとりなのか、ヒロインの幻想なのか曖昧なスケッチなのだが、死にゆく者が「未来」を見つめ、生き残る者が「思い出」を紡ごうとするその逆説的な構図がひどく印象に残った。わかったつもりになるな―と最後の最後まで予定調和を崩しにかかるモレッティ。涙と相互理解で我々を安心させて幕を降ろすような甘さなど、この作家にあるわけない(笑)。だが、映画のそこかしこに人生の手応えや歓びを小さく刺繍していて、何度そのテクにノセられたことか!特に落目の大物俳優バリー(暖かく狂い咲くジョン・タトゥーロの演技が素晴らしい💛)の存在によって、ドラマが家族の話に閉じなかったのは大きな勝因。マルゲリータには、仕事で結ばれるもう一つの家族がある…そう、映画があるのだ!


映画『母よ、』予告編

母よ、
2015年/イタリア・フランス/カラー/107分
監督   ナンニ・モレッティ
撮影   アルナルド・カティナーリ
脚本   ナンニ・モレッティ フランチェスコ・ピッコロ
キャスト マルゲリータ・ブイ ジョン・タトゥーロ 
原作   パトリシア・ハイスミス 

れに対抗する日本映画を頭の中でめぐらせてみた。成瀬巳喜男の『おかあさん』('52)でどうだろう…。イタリア野郎にまったく引けを取らない日本映画黄金期の傑作!この画像を見ただけで涙腺が緩みそう…と思うでしょ?でも実際の映画は美しくクール。今見直してもきっと古びていないと思う。GWにレンタルでぜひ★

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モランディ展✑ 備忘録

念すべきブログ連載第1回目の最後に書き記した通り(なぜか魅かれるもの―①)、待望のジョルジョ・モランディ展を見にサクっと東京へ―。鑑賞後、すでに1ヵ月ほど経つのだが、正直言って未だ消化し切れていない。うーん、困った(汗)。神々しさに打ち震えたわけでも、色香に翻弄されたわけでも、圧倒的な新しさを前に言葉を失ったわけでもない…。そういうわかりやすい衝撃とは一線を画し、ただただじぶんの内側がザワついているのである。でもってそれを上手く言語化できない(涙)。確かなのは、モランディの作品群を見る前と見た後では、例えば空のペットボトルから受ける印象すら変わってしまう。あー、ヤバイものを見てしまった…(汗)。

 

20 世紀最高の静物画家と称されるジョルジョ・モランディ(1890~1964)の存在を、私は全く知らなかった。友人からのお薦めコメントと、ネットでの画像検索による“お見合い”を経て、取り急ぎ駆けつけたというわけだ。まっ、グダグダ言う前に、まずは画像を見てもらいましょう!

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ろそろ「まだ続くのか?寂れた商店街の金物屋に来たわけじゃねえんだから、いい加減にしろ―!」とドヤされそう…。はたまた「えー、なんかカワイイ!雑貨屋さんみたい~」という声も上がりそう(苦笑)。どちらもありかと思います(汗)。生涯にわたり、卓上静物とアトリエの窓から見た風景という限られたテーマを探求し、ずーっとこんな風に淡々とした調子の絵をお書きになった方らしい。“終わりなき変奏”と付けられた美術展のサブタイトル通り、テーブルの上に置かれた質素な雑器類が、微妙に配置を変えて繰り返し描かれ、深掘りの極みをエンエンと見続ける体験となったのよ。じゃあ、一体彼は生涯かけて何を深掘りしているのかと問われたら、それがよくわからない(汗)。そこで、まず手掛かりを探るために二者択一のテスト方式で自問自答してみた。派手なのか地味なのか、にぎやかなのか静かなのか、溌剌としているのかぼんやりしているのか、HOTなのかCOOLなのか、野性的なのか知性的なのか、写実なのか抽象なのか、喜劇なのか悲劇なのか…と(苦笑)。パッと見では、全て後者に軍配が上がるんだけど、ナマで作品と対峙すると、全然静謐じゃなかったし、意外な図太さも感じたんだよね。そもそもそんな風に短絡的にカテゴライズすること自体が、モランディ作品を最も遠ざける行為だってわけ…反省。だってこのビジュアルだもん…いかにも複雑そうでしょ。

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術界のメイン・ストリートから身を隠すかのように、故郷イタリアのボローニャを終生離れず、教職に就きながら独り黙々と薄暗い自宅のアトリエに引きこもって描き続けたモランディ。いつも黒いスーツを着用し、生涯独身。身の回りの世話をしていた妹たちに向かって「ツボの埃をはらうな!」と叱責したというエピソードにバカウケしたわ。あのぼんやりした淡い色調は、慎ましく神秘的な表現というより、実は埃がイメージの源泉なのか?ざっくり言えばかなりの変わり者?(爆)いやいや、何だっていいのよ。人目も気にせず、描きたい絵をテメエの好きなように描く…画家にとってこれ以上の満足はないでしょう。しかも、こんなにオレ様王様ぶりで絵筆を取っているのに、作家の息遣いがまるで掴めないから後ろ髪が引かれるのだ。

 風景画も微妙にヘンでしょ。扱いは雑器といっしょ。この人、きっと自然に興味ないね。一般的な命の捉え方と、違うような気がする。

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してとりわけ私を魅了したのが花の絵だ。こんなに可憐な花の絵、見たことない!!!何なんだこれは!胸がザワザワする💛と腰を抜かしたら…笑ったわ~、何と造花を描いているんだって(笑)。これにも当然埃がかぶっているのでしょう、たんまりと。モランディにとって、きっと埃は蜜の味だったのよ(サッサもウエットティッシュもノーサンキューですな)

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で、花シリーズを眺めたとき、瞬間的に私は思いましたね。彼にとってモチーフは、瓶も水差しも花も容器もすべて、マネキン人形に見えていたんじゃないかと―。それもウインドウ越しに見る煤けたマネキン。埃は格好のレフ版効果。だからありふれた雑器がどこか怪しくて、江戸川乱歩と共通の匂いを微かに感じたみたい。絵は劇的に訴えかけてこなくても、鑑賞者の妄想を肥大化させる装置…それがモランディ作品。こりゃあ相当ヤバイ代物だわ。

 

こで、ボローニャにあるモランディ美術館 へ行きたくなってしまった私は、月1000円の旅行積み立て貯金をしているマブダチたちに相談。「イコイコ。80歳までには行けるでしょう~」という気の長ーいご返事が届いたので、構想3日制作4時間でモランディ・ミニミニコーナーを部屋の一角に拵えた!へへへ、この仮設美術館でしばらくは楽しめそうだ♪

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んなオマケも発見。画像検索してたら、フェリーニの『甘い生活』('59)の中でモランディの絵が登場するではないか!全く覚えておりませーん。こりゃあ見直すしかないな。あー、なんだか今週も数珠つなぎだ(汗)。

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なぜか魅かれるもの―⑤

なぜか魅かれるもの…その⑤は「数珠つなぎ」です。数珠のようにつながっている形態で一番想像しやすいものとなると、やっぱネックレスやブレスレットなどのアクセサリーになるのかな…。ところで「数珠つなぎ」の話に入る前に、お土産にもらった花のエピソードに触れておかないと―。

 

花はしぶとい!

▶まだまだ寒かった2月の終わりに切り花をもらった。毎年雛人形シーズンに遊びにやって来る美人姉妹が、いつもウチに似合いそうな花をセレクトして持ってきてくれるのだ。今年は艶やかなピンクの牡丹が登場★そのゴージャスなビジュアルに一瞬でシビれましたね。わたしをイメージしてくれたらしいが、すいません、色気もボリュームも足元に及びません(汗)。外は冬枯れ、家の中にはメラメラ燃え上がる牡丹一輪―。

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大ぶりの花一輪とつぼみだけの組合せがよかったんだよなあ~♪ もちろん毎日水を取り替えて定点観測👀 花はさらにググっと大きく華やかになり、まるで造花のように堅くテカっていたつぼみも、徐々にほころび始めてすごくスリリングだった

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やがて色は薄まり、花びらの勢いもつぼみ側へ移り変わり…。ヒロイン交代です

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日々、目の前で繰り広げられてゆく無常観劇場(笑)

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でも最後のこの出涸らし感が妙に気に入り…

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枯れ散る前に花びらを収集。さらに、花びらの一個一個を丁寧に麻紐にくっつけて…

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ようは、観察だけでは飽き足らず、花の変化に勝手に介入し、別の文脈で再構成したのです。はい、ここでようやく本題の「数珠つなぎ」に至るというわけ(笑)。この間、40日以上も楽しんだことにー。でも恥ずかしいオチがあって…。牡丹だと思い込んでいたこの花、念のためにネットで調べたら日本ぼたん協会 - ぼたん図誌、(牡丹の品種の多さにめまい!)どうも葉の形が違うではないか(汗)。もしかしてダリア?さらに調べてみたら「京絵巻」というダリアの品種がかなり近いとわかったの。というわけで、ダリア=夏に咲くものという概念も崩壊(苦笑)。自然を簡単に解釈しちゃイカンね。さてここからは、我が家のそこかしこにある「数珠つなぎ」のミニコーナーをご紹介!

 

数珠つなぎ「厚紙」

▶いま住んでる部屋に引っ越した際に、友人から客用スリッパをもらい、そこに型崩れ防止用の厚紙が差し込まれていた。まだ部屋の中が殺風景だったから、にぎやかしのために厚紙に落書きをして吊るしたのがこちら。すでに12~13年も経っているから、煤け具合もちょっとした味わいになってるよ(笑)。

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数珠つなぎ「紙ものスクラップ」

▶2014年の正月から大晦日までの1年間に、ウチに届いたり、持ち込んだり、投げ入れられた紙製品で、ポストカードサイズに収まるものを無作為に綴じ続けたのがこちらの数珠つなぎ。くだらなさの極致。でもあと10年くらい経て見直したら、かなり笑えると思うわ。さらに50年経ったら歴史考証品として一級の価値を持つ…わけないか(笑)。

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数珠つなぎ「唐辛子」

▶これまたいただき物(汗)の自家製唐辛子。でっかーい唐辛子だったから、紐でつないで数珠つなぎにし、米櫃に入れて虫よけにしている。宮脇綾子のアップリケ(右画像参)の上品さには程遠いが、見るからに無敵でしょう~。

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「数珠つなぎ」にして愛でるのは、どうもわたしのクセのようだ。何よりそのモチーフのほとんどが、もらい物だと判明してしまい、お恥ずかしい限り(汗)。「数珠つなぎ」は、“人の記憶に美しく残る形態”だと言い訳して、本日のお開きとさせていただきます(ぺこり)。