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勝手にシネマ評/『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島』('16)

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』は、第66回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作ドキュメンタリー映画で初の最高賞に輝いた注目の作品である。

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“世界一位の絶景”と謳われる美しい海に囲まれたイタリア最南端の島、ランペドゥーサ。監督のジャンフランコ・ロージはこの小さな漁師町に1年半移り住み、住民たちと暮らしを共にしながら本作を撮ったという。ところが幕開け早々不思議な心持になる―「あれ?ドキュメンタリーじゃなかったっけ?…」と―。

島の少年サムエレくんが、何やら木の枝ぶりを熱心に眺めまわし、ついにはナイフで切り落とすシーンから始まるが、その様子に劇映画(フィクション)の萌芽を感じさせるからだ。サムエレくんが、カメラの存在をまったく意識していないせいもあるが、かといって演技にも見えないので、「何これ?」と思う。子供の無邪気な遊び時間にしては、切り取り方に陰影が漂い、何だろうこの固いしこりみたいなものの正体は…、いったい何が内包されているのだろう…と、複雑な手触りにひとり気を揉んだ。

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いて映し出されるのが夜の海と無線の交信。救助を懇願する叫び声の主が、避難民たちを乗せたボートからだとすぐに察せられる。しかし、危険を顧みず母国から避難する話は、ニュースとしては伝わっていても、リアルな救助要請の交信をまともに耳にしたのは初めてだ。声だけなのに、いや声だけだからこそ、命がけの世界が突如目の前に出現するようで、じぶんでも意外なほど動揺した。

ランペドゥーサは、北アフリカから最も近い欧州に位置するため、アフリカや中東からの難民や移民が、最初にたどり着く“希望”の玄関口にあたるらしい。それゆえ、20年間で40万人の難民がすし詰め状態で海を渡り、1万5000人もの溺死者が出ている海難事故現場の最前線でもある。もちろん、そんな詳細情報は鑑賞後に目にした資料から得たもの。わたしは丸腰で、緊迫した状況をひたすら追いかけるだけだった―。

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んなふうに映画は、同じ島の2つの動向―「漁師町の平穏な日常」と、「難民たちが背負う過酷な運命」―を交互に映し出し、終始落ち着いたトーンで進行する。例えば、どちらか1つの設定なら、ある意味、定型化された方法だ。陽光まばゆい南仏の漁師町に暮らす少年の成長ドラマで1本、避難民たちの現状告発ルポで1本というように。同一舞台を対照的なフォーマットで描いても、どちらも飲み込みやすい。いや、2つの内容を抱き合わせ、ちょっと見せ場の多い社会派ドラマにだって、容易くイメージできる。島育ちの少年と異なる世界との交流には、柔軟性も持たせられるしね。ところが映画は、そんな推測を軽々と越えたところでさざ波を立たせる。

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ず2つの動向には接点が一切ない。それが現実だからだ。サムエレくんは、自然豊かな漁師町ですくすく育つヤンチャ盛りの12歳。おじいちゃんやお父さん同様、海の男として生きることを素直に夢見ている。そんな穏やかな家庭のラジオからは、毎日のように難民救助に関する報道が流れるが、対岸の火事扱いでおしまい。一方、命辛々たどり着く難民たちも、島は一時避難と手続きのための窓口にすぎなくて、その後は個々の希望地へ向かう仕組み。ではなぜ映画は、接点のない2つの顔を、あえて平行線のまま提示し続けるのか―。

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る日、いつも元気なサムエレくんの左目が、弱視だと医者から診断される。本人も気づかぬうちに、世界の半分を見えないものとして過ごしていたらしい。そこで、サボっていた左目もしっかり使うよう矯正が始まる。サムエレくん、手作りのパチンコでいつも遊んでいるからなあ、片目を閉じて的を狙うクセが日常化していたのかな…などと、ボンヤリ見守る。

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方、避難民側のスケッチは、次第に惨劇の内側へ足を踏み入れ始める。生存できることが奇跡にしか思えない劣悪な船内、脱水症状で身動きが取れず死の淵に漂う人々、志半ばで袋に入れられた遺体の数々、そして黙々と処理に徹する施設関係者たちの横顔…。言葉を失う光景の連続。この世界で一体何が起きているのか、映画は対象との距離を絶えず一定に保ち、事実を事実として見せ続ける。しかし、カメラを回す監督が平穏なはずはなく、深いところで受けとめるために、ひとり堪えているのは察するに余りある。…とその時、あの見ようとしていなかったサムエレくんの左目が、時折り頭をもたげていた複雑な手触りが、フイにつながり始める…、我々も無関心の果てに世界を閉ざし、見えないものはないものと編集して生きているのではないかと―。そう、自己欺瞞の常態化に、はたと気がついてしまうのだ。

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は、接点のない同じ島の2つの動向に唯一立ち会う人間がいる。初老の医師である。彼だけが、サムエレくんの治療に当たる一方で、極限状態の避難民たちを保護し、夥しい数の亡骸を見届けてもいる存在だ。いわば映画は、作品の背骨となるキーマンを平行線の真ん中に配置し正攻法で構える。ただし映画は、医師の横顔をとてもさり気なく慎ましやかに捉えているため、リアルな現場の報告というより、悲喜こもごもな物語を口承する語り部のような印象を湛え、私はすっかり魅せられた。

この映画、予測できないもの同士を結びつける知性もさることながら、観客の想像力を呼び覚ますための余白の取り方が素晴らしいのだ。すぐには見えないことも、どうつながり始め、何が紐解かれるかわからない魅力が本作では際立つ。だから、この世界の過酷な現実に対して、たじろぐだけでなく、わずかながらでも自らの思考を回して近づけた気がするのだ。

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後にもう一つ忘れられない光景を書いておこう。それは料理上手で家庭的なサムエレくんのお祖母ちゃんが、ひとり寝室の片づけに勤しむシーンだ。大袈裟でなく、私は未だかってこんなに行き届いたベッドメイク術を見たことがない。家族のために何度も優しくシーツをなで、布のたるみを取り除き、新しい空気をまとわせるその手作業の美しいこと!ゆったりした時間に心が洗われて、全身がトロトロになった。ロージ監督は、こんな小さな営みこそ見逃さない。カメラを回し続ける。平凡な母性の振る舞いを通し、平和な漁師町の尊い日常を見事に表現している。そしてこの時、私の頭の中に、性も根も尽き果て茫然自失な表情でうずくまる、たくさんの難民女性たちの横顔が浮かび始めた…。地獄を見てきた彼女たちが、せめて1晩あの清らかなベッドで横たわれたら…。心ひとつだけ持って裸足で逃げてきた彼女たちが、肌触りのいいシーツに包まれて深い眠りに落ちる姿を、夢想せずにはいられなかった―。

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督のジャンフランコ・ロージは、前作『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』('13) でもヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞し、今、世界が最も注目するドキュメンタリー作家。伝えたいテーマを直截的に掲げず、滞空時間をたっぷり儲け、中心と周辺を行ったり来たりするうちに、世界の断片が克明に浮かび上がる仕立てで観客を魅了する。この名前と顔、しかと刻印して!


『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』予告編

 3/31(金)まで名演小劇場で公開中

 

『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島』

2016年/伊・仏/カラー/114分

監督/撮影   ジャンフランコ・ロージ
編集      ヤコポ・クワドリ   

 

PS 感想書いても上映が残り1週間では…。申し訳ございません(汗)。次回は4/8に更新します。

「おこしもの」でお雛祭り☝

「おこしもの」って知ってます?

桃の節句用の和菓子のことです。幼い時に、雛人形とセットで飾られ、フツーに食べていたので気にも留めていなかったけど、愛知県のお菓子なんだってね。地元の郷土料理とは…知らなかったなぁ。その名称と語源には不明点が多いらしく、「押し紋(おしもん)」「押し物(おしもの)」「起こし物(おこしもの)」など、地域や家庭によって様々だとか。ゆっる~いSNS風なノリで、ぼんやり拡がっていき、そのまま定着⇒郷土の和菓子として残ったってことかな(笑)。いつの時代も口コミは、生活のエンジンなのでしょう。

さてそこで今回のお題です。同級生マブダチのMから「毎年手作りしている友だちがいるけど、いっしょにどう?」とのお誘いがあり、すでに何年も食べていなかった「おこしもの」といきなり急接近!人生初「おこしもの」作り体験にトライして来ました★

 

① まずは木型のお披露目 ♬

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▶こちらが招いてくれたIちゃんの木型コレクション。素材はだと思われます。 Iちゃんは数年前に、おこしものカワイイなあ~、作ってみたいな~と、なんとなく思い立ち、じぶんでネットで調べて独りで作り始めたらしいです。いいなあ、このアクション!そう、人生の愉しみは、「密かに」「単独」ではじめてこそじぶんのものになりますね。やがて毎年トライするうち、新しい木型も欲しくなり、ポツポツ買い集めて現在7種。木型を見るだけでモチベーションも上がるってもんです(笑)。

② 次に米粉と食紅のご用意を ♪

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▶主原料は米粉です。ボウルには、一袋全部(一体何グラム入りだったのだろう…笑)を放り込み、着色用食紅―赤・緑・黄の3色を小皿にときのばしておきました。

③お地味に米粉こねます ♫ 

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▶Iちゃん、何かとザックリ・レクチャーで、いいかんじなんですよ~。米粉に熱湯を入れてこねるときも、超テキトー(笑)。ゆるかったら粉を足せばイイし、硬かったらお湯を注げばイイってな塩梅(笑)。だいたい、酸いも甘いも噛み分けた50代女子4人が、それ以上御託を並べても聞く耳持たないしね(爆)。だって自由にやらせときゃ、勝手にパフォーマンスあがんだから(笑)。ほらこの通り―。

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ただ、数日間、手首と骨盤に疲労感が―(笑)。

⑤木型に打ち粉をして ♩ 

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▶型から取り出しやすくするために、前もって米粉を指で塗っておきます。このとき、粉が多すぎると凹凸が塞がってしまうので要注意。余分な粉は、木型の底をポンポン叩いて取り除いておきましょう。

⑥いよいよ投入 ♬

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▶さーて、こね上がった種をいよいよ型に入れます!で、ここが一番難しい(汗)。ぎゅーぎゅー、押し入れては取り出せなくなる。でもある程度の力を入れないと、凹凸が立ち上がらない。鯛焼きみたいに型の縁からハミ出すと、外しにくいわ出来上がりのフォルムはボケるわで…厄介です(汗)。こればかりは、やっぱ体得ですね。職人の道は険しい(笑)。

⑦お楽しみの絵付け ♪

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▶そして、いばらの道を通り抜けた先には、絵付けの楽しみが待ってます!桃の節句ですから、はんなりタッチで仕上げるのが“らしい”振舞いみたいですね。でも、ホラ、そこはクラーナハをデコっちゃうわたしですから、はんなりではすぐに物足りなくなっちゃうわけです(苦笑)。何より、くだらないおしゃべりに興じつつ、思い思いに筆を走らせるひとときが「行事」の醍醐味なんでしょうね。

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⑧蒸し器へGO ♫

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▶仕上げは、蒸気立つ蒸し器に入れて20分程度蒸しあげます。するってーと、色の角が取れて、より落ち着いた風合いになります。子ども心に、カワイイ食べ物という記憶が強く残っていますが、味より、玩具お菓子というサプライズ感が響いたんでしょうね。

⑨いっちょ出来上がり~ ♩

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▶こんな調子で米粉3袋を作り切りました!「おこしもの」自体は何の味付けもしていないので、軽く焼いて砂糖醤油をつけて食べるのが一般的です。「ねーねー、来年はカレー粉入りも作ろうよ~」と口走ったら、「邪道!」と速攻で却下(爆)。確かにこれ以上ないってくらい素朴な味わいだから、手が伸びるんでしょうね。味は却下されたけど、型はそのうちオリジナルで彫ったりして…(笑)。そしてこちらがIちゃんちの雛人形。娘さんが生まれたときに購入したものらしく、20年以上は経っているはずだけど、とーってもキレイ。お道具は「ヤフオク」で物色したらしいわよ。

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雛祭り番外編

▶当日は他にもこんな楽しみがありました!Mが、ダンナの実家(高知)から届いたばかりの魚と野菜をお裾分けしてくれて、夜はひとり優雅に贅沢ディナー★うまかったあ~、カマスの塩焼き、サイコー♥ 鰤のカマは大根と煮て、柚子の皮の千切りをたっぷりトッピング。肉体労働に勤しんだご褒美ね(笑)。

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▶氷砂糖に着けておいた残りの柚子もそろそろ食べ頃です。

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🎬今週オススメ映画

唐突ですが、目下上映中の作品で強力にオススメしたい映画が3本も!走り書きしておくから、お時間がある方はぜひ★

「人類遺産」3/11~名演小劇場

去年見たドキュメンタリー映画の中でぶっちぎりの第1位!騙されたと思ってGO

「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島」3/18まで 名演小劇場

どうしたらこんな映像が編めるのか…その構成力に感服。詳細は次回のブログにて。

「ブラインド・マッサージ」3/24まで 名古屋シネマテーク

盲目のマッサージ師たちの生を鮮烈に描いたまばゆい1本。見えない彼らの目に成り代わって、映画と対峙するひとときに陶酔―。

 

PS 次号ブログは3/26頃にUP予定です。Mんちの梅の花をながめながら―。

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サクッと大阪✑備忘録②

さてさて前回に引き続き、「サクッと大阪」後半戦のレポートです!

おとろえぬ情熱、走る筆。『ピエール・アレシンスキー展』

▶『クラーナハ展』と同じ国立国際美術館で、もう1企画チェックしたのが『ピエール・アレシンスキー展』。なんと、今年90歳を迎えるベルギー生まれの現役ペインターの大規模回顧展です!わたしもこれが初対面。どんな爺さんがお出ましになるのやら~。でも、いつだってどんなジャンルだって、予備知識なくまっさらな状態で遭遇するのは、一等好きよ♪

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クラーナハが妄想絵画だとしたら、こっちは身体絵画になるのかな…。つまり作品から作家の身体性が横溢して見えるわけです。じゃあその身体性はどんな形で浮かび上がってくるかというと、アレシンスキーの場合、ズバリ“線”なんですね。初期の小さな版画宇宙から始まって、様々な表現方法にトライしてますが、自由でノリノリな筆致をながめる楽しさが作品に溢れかえってます。手から筆がハエて生まれてきたんじゃないか?ってくらいの勢いなのです(笑)。「移動」(1951) この絵、よかったなあ…。

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「見本」(1979)

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▶彼の画風は、ザックリ言えば抽象絵画という括りになるんだろうけど、コマ割りみたいに分割して世界を捉えていたり、目を凝らすと1枚の絵に様々な技法がコラージュされていたりして、絵の中に複数の物語がうねり、アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいる印象も受けましたね。絵は物体だけど、その絵を何とか動かせてやろう、絶えず変化するよう描いてみせよう!―と、試みている風に映ったのです。とはいえ、けして無邪気さだけで走ってるわけでもなく、知性を湛えた広がりも感じられました。

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 ▶またひと頃、日本の前衛書道に魅せられて、「日本の書」という記録映画まで撮っていたらしい…。会場の片隅で流れているので、ぜひチェックしてみてください。若かりし頃の篠田桃紅女史が映画の中に登場しています。何せ彼女も103歳の現役アーティスト(汗)。墨と親しくなると長生きするってことでしょうかね(笑)。

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写真家・楢橋朝子 『NU・E』展

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 ▶さてお次は江戸堀のThe Third Gallery Ayaにて楢橋朝子を拝見!楢橋さんは以前我がブログでも紹介したご贔屓写真家。なんとラッキーなことに、わたしが未見の初期のシリーズ『NU・E』(1992-1997)から、新たにセレクションしたヴィンテージプリントを展示すると聞きつけ、いそいそと出かけて行ったのであります。ブラボー、大阪!

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▶まずタイトルの『NU・E』とは、鵺(ぬえ)のローマ字表記。鵺は、日本に伝わる伝説上の妖怪のことですが、つかみどころがなくて正体のはっきりしない人物や物事を例えるときに用いたりもします。あと余談ですが、鵺からわたしが連想するのは花輪和一の漫画。漫画狂のマブダチKちゃんの熱い勧めにのって、花輪の「鵺」を読んだ日のことは生涯忘れられません…。脳天が破壊されました…けして万人にはお勧めできませんが…(汗)傑作です。

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▶で、待ちに待った楢橋さんの『NU・E』。やっぱどこを切っても鵺でしたあ~。なんて言ったらいいのか…写真の中に生き生きとした死体が転がってるというか、死に損ないの日常を目撃するというか…。アンビバレンツなものが想起されて、動揺しまくりましたね。もちろんいい意味で!しかもニヤっと笑えるの~、素晴らしい★ 写真は静止した時間を切り取るメディアだけど、その寸止めゆえの底無しのまぼろし感に、エロティックな興奮も覚えました。

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 ▶楢橋さんの写真を知ったのは2000年以降ですが、それ以前にこんな魑魅魍魎な世界を炙り出していたと知り、じぶんが彼女の作品の何に魅かれているのか、すごーく腑に落ちた展示でした。楢橋さん、特にあの大阪の白日夢のような“虎”の写真は、田中昇監督の傑作『㊙色場めす市場』連想したりして、シビれました~!引続き、追っ駆けさせていただきます!

 

神品降臨!『青磁水仙盆』揃い踏み

▶さーて、「サクッと大阪」もいよいよ大トリ。東洋陶磁美術館の特別展、『台北 國立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆(ほくそうじょようせいじすいせんぼん)』でございます。まさに真打登場(笑)。なーんて、少々大げさに煽ってみましたが、青磁が吟味できるほどの好事家でもないちんぴらは、「人類史上最高のやきもの 海外初公開、初来日」との惹句にウケて、足を伸ばしてみたに過ぎません(汗)。そもそも最近の美術展の広宣関係は、いささか煽りがエグくて鼻白むこともしばしば。まあ、行政のフラットすぎる仕事ぶりには常々呆れてはいましたが、動員目標を課せられた果てに極端に攻勢に転じるのもどうかと思いますよ、まったく。サブコピーが「もう、二度と出会えかもしれない。たった6点、世紀の展覧会。」なんですから(笑)。バブってんなぁ…往年の西武セゾングループの戦略みたい(苦笑)。

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で、本当に小さなお部屋に6点だけ並べての特別展。どこかの小金持ちの居間にお邪魔したサイズ感ですわ(爆)。しかも、そこに並ぶのは、「おいおい、これのどこが違うんかいっ!教えろよぉ~」と突っ込まずにはいられないほど、6点すべて薄青いカレー皿に脚がついてるようなフォルムで…(汗)。チラシをご覧ください。「無印良品」?それとも「ニトリ」のパンフ?と尋ねる人も少なからずいるでしょう(笑)。

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▶とはいえ、ここには6点の小さな器が並んでるだけだから、いちおうゆっくり深呼吸しながら、見て歩く…解説も読まず見て歩く…。するってーと、脇の下から汗がにじんでくるわけです(汗)…マジに。神品降臨にウソはなかったんですよね。降参しました、はい。こーんなに疑い深いわたしが、あっさり白旗をあげちゃいました。

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 ▶中国北宋時代(960~1127年)に、宮廷用の青磁を作っていた汝窯は、雨が降った後の空の色を見立てた天青と呼ばれる釉色を追及していたとか。その汝窯の最高傑作が「青磁無紋水仙盆」。この他、北宋汝窯の青磁水仙盆4点と、清朝の皇帝・乾隆帝が「青磁無紋水仙盆」を真似て作らせた景徳鎮官窯の1点を集結させて、今回の展示が構成されています。

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▶はてさて、どの娘が一番べっぴんか?―と、さながら飾り窓をのぞくオヤジ状態で身を乗り出して眺めていたら、たまたま並んで見ていたホンモノのおっさん(リタイアして悠々自適な佇まい…おっさんと言うより小津安二郎映画に登場しそうなビジュアルのオジさま。「サライ」読んでそうな…「美の壺」とか見ていそうな…笑)が、「キミはどれがお気に召したかな?」「こっちの色とあっちの色とどっちがお好み?」と話しかけてきたりして(新種のナンパか?笑)、さーすが関西人、その場が妙に和んで楽しかったですぅ。でも何度見返しても「青磁無紋水仙盆」は別格!だって、器そのものが発光体になってんですよ~。ウブな光を放ち、色っぽいったりゃありゃしません。ウソだと思った見に行ってください! 特別展「台北 國立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆」は3/26(日)まで開催中です。


特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」予告動画(2分)

 

▶特別展は6点ですが、東洋陶磁美術館の所蔵品は、ハンパじゃないですから!平常展だけでも、陶酔の連続で、あっという間に2時間経ってしまう…(汗)。惚れ込んでる作品はいくつかありますが、強いて言えばこの2点!「飛青磁 花生(とびせいじ はないけ)」(14世紀)「鉄砂 虎鷺文 壺(てっしゃとらざきもんつぼ)」(17世紀)。花生は、国宝であります★日本一奥ゆかしい国宝ですよぉ~。わたしはこの娘を見る度、樋口一葉を思い出すのです。でもって鉄砂で描かれた虎の方は、こいつをトレーナーにプリントして身に付けたいと…。業が深くてスイマセン(ぺこり)。

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▶厳冬の2月の平日に行ったせいもあって、どの展示も客はまばらで、名品独り占め鑑賞。あー、極楽極楽♨ The Third Gallery Ayaの前にあった昔ながらの喫茶店に入って、一服する時間も至福でした♪ 久しぶりの大阪、ぬるエロっぽい作品の数々、ぜーんぶブラボー♫ 

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PS 次回は3/12にUP予定です

 

 

サクッと大阪✑備忘録①

2月某日。雪をシンパイしながら、日帰りでサクっと大阪へ。案の定、米原は見事な雪景色で15分遅れの到着となったが、大阪・筑前橋は穏やかな晴天。勝ったも同然!

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1番のお目当ては国立国際美術館で開催中のクラーナハである! だけどこの強欲なちんぴらが、わざわざ金も時間も使って足を延ばすんだから、それだけで済むはずはありません。ドイツ・ルネサンス期を代表する芸術家⇒90歳の現役ペインター⇒ご贔屓作家の写真展⇒究極の陶磁器…と、あらゆるジャンルをぶっ込んだコースに挑んで参りました(笑)。―ということで、今回と次回の2回にわたり、大阪美術探訪記をお送りいたします♫

 

500年後の誘惑 『ルカス・クラーナハ展』

 ▶ルカス・クラーナハ(1472-1553)…誰それ?との声が聞こえてきそうですが…いいです、いいです。そんなもんです。わたしだって詳しくは知りませんでした(汗)。ウィキで調べてください(苦笑)。わたしの場合は、かなり前に深井 晃子女史の『名画とファッション』(小学館)で見たのが最初です(この本、かなりオススメ)。その絵がこちら。

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「ホロフェルネスの首を持つユディット」(1525年頃)。生首ですよ~、ぶっ飛びでしょ?A5サイズの本でながめても、強烈なインパクトで頭くらくらしましたよ~。これがナマで見られる…ウィーンに行かなくても、向こうからやって来る!となれば、そりゃあ行くしかないでしょう♪ 日本初となるクラーナハの大回顧展。ナマ鑑賞しながらこの作家の全貌を、しかとお勉強させていただきました、はい。

クラーナハの予備知識として覚えておきたいことは次の3つ。 ①旧東ドイツ南部の領主ザクセン侯に使えた宮廷画家 ②工房を開設して絵画の大量生産を始めた実業家 ③マルティン・ルター宗教改革に大きく関与 そう、作品の変遷を見ながら歴史の大きな流れに立ち会えるという興奮もありましたね★

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クラーナハの初代ボスはこちらザクセン選帝侯フリードリヒ賢明公」(1515年頃)。何とここんちの3代に仕え続け、宮廷芸術家人生を全うしたらしいです。まっ、相思相愛のいい関係だったんでしょうね(隣は彼のサイン―指輪をくわえた蛇)。それにしても、この見事な毛皮の描写力!そして背景の黒無地の効果で、存在感はあるけど、エラソーには見えず、ひどくモダンな印象がしませんか? お次はルター夫婦の2連肖像画マルティン・ルターとカタリナ・フォン・ボラ」(1529年)。ここでもブルー一色の背景が超クール。肖像画から手垢を消し去り、あえて人工的にパッケージングしてるような…極めて“今”なかんじです。

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▶ーというわけで、たくさんの肖像画を描いているけど、顔とお召し物のトータルで人となりが完結していて、無駄な画き込みが一切ない印象を受けましたね。ズバリ、カッコいい!わたしの遺影用にもお願いしたかったわよ…500年早く生まれていたら~。

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 ▶その他、版画はチャレンジ精神にあふれているし、一風変わった聖母の表情に目が釘付けになる宗教画も楽しい。雀百まで踊り忘れず~♫なーんて調子の、次の一品を見て!「メランコリー」(1533)と題したこの1枚にはタマげましたね。若い女が部屋の片隅で、かったるそうにゴボウのササガキ(?)しながら妄想してる絵でしょうか…(爆)今夜はきんぴら?

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▶おっと~、ストレートにヒヒジジイを転がすこんなシーンも絵にしちゃう!視線あってませんね?(笑)「不釣り合いなカップル」(1530~1540年頃)。オッサンは白肌を舐め廻し、若い女は指輪をゲット。ちゃんと等価交換が成立しております。500年も前の絵とは信じがたい若い女の方からオッサンの首に手を回す構図…なんとこれとクリソツな絵が他にも―(汗)。

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「アダムとイヴ(堕罪)」(1537年以降)。 ホラいっしょでしょ?ある意味壁ドンの逆バージョンか。それにしても、原初の男女に、こんな危なっかしくていたずらな空気をまとわせるなんて…テーマをズバッと言い当てて清々しくもあります。リンゴとイヴのおっぱいが球形で呼応してるもんだから、蛇が迷ってしまってる?(笑)後ろに横たわる鹿の目も怖~い。

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さてさて、ここでちんぴら参入!神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その1

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▶―が、やっぱクラーナハの最も先鋭的な試みは、女性の裸体表現になるのでしょうね。かの有名な「ヴィーナス」(1532年) 、息を飲むほどエロい!裸にアクセサリーと薄物の布だけで、小石の上に立ってぬらぬら~っと登場!生命力全開のガッツリ官能美が主流のルネサンス期に、狭い肩幅と浅い肉付きの陰影の薄い東洋的な裸婦を描くとは!恐るべしクラーナハ。60歳を過ぎて、裸婦描きまくってます。しかも時代を超越したファッション・アイコンを生み出しているわけです。意外とサイズが小っちゃいから、パトロンの女の好みを反映させ、寝室に飾るように書いたのかもしれませんね。

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神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その2

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神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その3

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神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その4

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 ▶クラーナハが繰り返し描いたモチーフのひとつに「ルクレティアの自害」という物語があります。このシリーズがまた、どれもわたし好みで…(涎)。自死に対して悲壮感も自己陶酔もなくへなちょこの虚無感が漂って見えたわけです―わたしには(笑)。BGMに流すなら、ぜひゆらゆら帝国『空洞です』をお願いしたい!

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▶そして見よ!こちらの「ルクレティア」(1532年)。「ヴィーナス」同様、背景黒+足元に小石が。なぜオール・ヌードに河原なのか?誰か研究者はいらっしゃらないかしら…。惑星Xから届いたエロ便りという趣。いや、深海からあがった魚か?兎にも角にもひどく謎めいています。そうそう、ルクレティア・シリーズを眺めながら、かつての私のミューズ女優・永島瑛子のことを思い出していたんですよ~。全然似ていないんですけどね(苦笑)。脱ぎっぷりの良さと、めんどくさそうに美人してる気配に共通項はありそうですが―。

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神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その5

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 ▶最後に恒例の「1枚もらって帰るとしたら?」妄想を発表しましょう。かなり迷いましたが、今回はこれかな…。

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「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ(1530年代)。お皿に生首乗せて、うっすら微笑んでみせたりして、いいわあ~。赤いベルベットの素材感も強烈。このちょっと前に、映画『沈黙ーサイレント』を見たばかりだったから、生首つながりです(笑)。『名画とファッション』から引用すると、この頃暗色のベルベットはトレンド素材で、ダーツという仕立て方がまだ発明されていなかったから、布に切れ目を入れて、袖と身頃をリボンや紐でつないでいたとか。ダンダンになった袖がサイボーグみたいですねぇ。

 

そんなこんなで、見世物小屋に入った余韻はいまも脳裏に焼き付いてますよ。クソ寒い中を、わざわざ足を伸ばして本当に良かったぁ~。

クラーナハ展―500年後の誘惑』大阪会場

2017年1月28日(土)~4月16日(日)


クラーナハ展 4章「裸体表現の諸相」 国立西洋美術館 クラーナハ展 ─ 500年後の誘惑

 

PS 次回「サクッと大阪 備忘録②」は2/28にUPします。お楽しみに

勝手に映画年間ベスト10! 2016年版

どうやら2016年は邦画の当たりだった年らしいが…申し訳ございません(ぺこり)。ちんぴらは10本も見ておりません。もはや映画について語れませんね(汗)。そもそも最も多く劇場に通っていた頃と比べたら、1/3の量になっているんで、かなり偏ったベスト10になっていると、あらかじめお断りしておきます。ただ、映画年間ベスト10をピックアップして総評する作業は、なんと31回目(つまり31年も継続)!それだけ楽しい作業だということだけは間違いないのよね~★では恒例のドラムロール夜露死苦

 

第1位 とうもろこしの島(’14)ギオルギ・オバシュビリ監督作品

文章にするのをちょっとためらうなあ…。私の乏しい言語表現能力では、どうあがいても本作の魅力を伝えきれないだろうから―。つまり、実物を鑑賞して頂くしかないんだけど(汗)、とりあえずここでは外堀だけ、メモっておくね。

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舞台となるエングリ川(地図で調べて!)は、かつてコーカサス山脈からの雪解け水による洪水で、肥沃な中洲がぽっかり出現し⇒次の洪水で流され、を毎年繰り返し、理想的な農業が行われていた場所らしい。映画は、そんな中洲に川岸から老人と孫娘が小舟で渡り、掘立小屋を建て、中洲を拠点に地道にとうもろこし農業に勤しむ日々を、静謐な筆致で定点観察しながら進んで行くの。と同時にここは、アブハジアジョージアが敵対する紛争真っ只中の、最も危険な中間地点でもあるわけ。つまり、終始寡黙な老人と孫娘だけど、実は2人はある意味すんげ~博打打ちなの!キナ臭い状況下を素知らぬ顔でうっちゃり、天と地の恵みを信じて自分たちの生業を貫く賭けに挑むのだから―。

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ところがですよ、ラスト10分、想像を絶する展開に言葉を失い茫然自失!まさに“口あんぐり”とはこのことです。反戦映画のフリをしながら、実は神との闘い映画だったと恐れおののく苛烈なエンディングが待ち構えてて、気絶しかけちゃいました(汗)。

現在のエングリ川は上流にダムが出来て中洲ができるようなことがなくなったため、撮影は、川を模した大きな貯水池に人工島を作り、シーンに合わせて何度もとうもろこしを植え替え、CGを一切使わず制作されたとか(涙)。ただ、そう聞いても、どうやったらあんな絵が撮れるのか、やっぱりわからない…。奇跡としかいいようがない映像美に着地してるんだよね。生きている間にもう一度、劇場で再会したい1本になったわ。


映画『みかんの丘』『とうもろこしの島』予告編

5位にランクインした『みかんの丘』と同時予告。こちらも傑作!

 

第7位 コップ・カー(’15)ジョン・ワッツ監督作品

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2016年一番の掘り出しモノがコレ!『とうもろこし~』は劇場必見映画だけど、こっちはDVDでもじゅうぶん楽しめるよ~。今すぐレンタル店へGO! 家出中のワルガキ2人組(小学生?)が、なんとパトカーを盗み、田舎道を舞台に人生初乗車体験をおっぱじめて大騒ぎするドラマ(爆)。盗まれた側の警官がその上をゆく本気の悪人で、超ヤバイ展開に爆走するけど(汗)、終始こわおもろい匙加減が絶妙だから、新しい娯楽映画の予感すら感じたわ。痛快な原っぱ追いかけっこ対決と、哀愁漂う逃避行劇をミックスさせたセンスに舌を巻きましたね。さらに言えば、『スタンド・バイ・ミー』と、フィルム・ノワール(虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画 を指した総称)と、なぜかNHKみんなのうたを連想したのは私だけ?(笑)初遭遇の監督ジョン・ワッツ、しかと赤丸つけましたあ~。


「Cop Car/コップ・カー」予告編

 

 

第10位 マジカル・ガール(’14)カルロス・ベルムト監督作品

f:id:chinpira415:20170128160932j:plainさて3本めはスペイン映画。うーん、これは上記2作品とはまた違った厄介な内容だから、マジに説明が難しいっす(汗)。例えば映画の視点から分類すると、『とうもろこし~』⇒定点観察 『コップ~』⇒移動観察 『マジカル~』⇒運命観察ということになるのかな…。アニメ好きな白血病の娘に、高価なコスプレ衣装を着せてやりたくて銀行強盗を思いつく父親から始まった物語が、自己犠牲と復讐のつづれ織りへと有無を言わせず突入する展開。すべてのエピソードは、「愛」と「金」が引き金になって艶めかしく這いずり回り、ときにメーターが降り切れるほどのインパクトを与えるが、一方でひっそりと咲く野菊のような清楚な印象も…。カトリックが強いお国柄も影響しているのかなあ…正直言って、未だ整理できていません(汗)。不思議な肌触りのランジェリーを身に付けた気分とだけ書いておきましょう。これまた“要注目赤丸”監督です!


映画『マジカル・ガール』予告編

 

その他のベスト10洋画はこちらの映画評でたっぷりお楽しみくださいまし!

2位『キャロル』

http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/03/19/003424

3位『母よ』

http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/04/24/202845

4位『オマールの壁』

http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/05/24/230324

6位『彷徨える河』

http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/10/20/175957

ドキュメンタリーはこちらから―。

2位『FAKE』

http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/07/10/225118

4位『ヒッチコックトリュフォー

http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2017/01/09/230246http

 

ドキュメンタリー映画年間ベスト5も同時掲載の一覧です

DVDをレンタルする際のご参考にどうぞ★もう店頭に並んでいるものもあるよ~♪

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PS 次回は2/12にUP予定です

鶴舞公園―年末年始 総集編🐓

みなさま、年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。お正月からすでに20日も過ぎ、今さらですがいちおうご挨拶。わたしなんて、つい先日、ようやく重い腰をあげて大掃除をしましたよ(苦笑)。いいの、いいの、だって年末年始の“ハレ気分”は、私の別邸=鶴舞公園で、十二分に堪能させていただきましたから♫

 

知ってた?公園正門前のヒマラヤ杉が巨大ツリーに!

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ある朝、突然デコられててびーっくり★もしかしてクレーン出してデコってる?てっぺん、かなり高いよねぇ?やるなー、鶴舞公園1本だけツリーしてるのも◎。わたし、基本的にイルミネーションは野暮だと思ってるからさー(笑)、このくらいがちょうどいい。

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でもってクリスマスが終わったらすぐに模様替え!公園作業員の皆さま方が、朝からせっせとお正月仕様に―。なるほど、鶴が舞う=鶴舞になるわけか!和のモチーフがこんな風に輝くのは悪くなかったなぁ。あくまでも控えめなのがいいかんじ★

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それと12月の後半から1月頭にかけて、公園内はさながら山茶花祭りしてた!

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最初、椿?って思って見てたら、花の開き方や花びらの形が若干違うような気がして、ネット検索して山茶花だと判明したってわけ。そういえば、11月の終わり頃だったか、垣根状態になってる山茶花の葉を、作業員の方がチェーンソーでバリバリ切り落として刈り上げていたことがあったのね。ド派手な伐採だなあ…と訝しく眺めていたんだけど、その1か月後にはポツポツ花が咲き始め…可愛いったりゃありゃしない!

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草木はちょっといじめて強くしてやらなきゃダメって話を聞いたことがあるけど、なるほどこういうことなのか、と思いましたね。まっ、彼らは我々のためだけに咲いてるわけではないだろうけど(汗)。ドレスのような垣根、いやこれも逆か―。自然からインスパイヤーされた人間が、装飾に2次活用させてもらってるという話ね。

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それにしても、紅葉が終わり、周囲に彩りがなくなった頃に開花期を迎えるから、ひと際鮮やかに見えるなあ。思わず、さざんか さざんか さいたみち~♪たき火だ たき火だ おちばたき~♫ と鼻歌を歌ってみましたぁ(笑)。でも花が基部に合着していないので、簡単にバッラバラに散ってしまう…なかなか酷い運命を背負った花でもあるみたい。そう、たき火も今じゃ街中ではご法度。たき火にあたってダラダラ過ごすの、わたし大好きだったんだけどなあ…。

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…と、我が別邸でひとしきり“冬のハレ”をあじわったところで、次は本宅で満喫したハレをご紹介しましょう!

本宅でのハレとはすなわち、年末年始の来訪者が持参してくださった土産品です★この時期、東京からの帰省の際に立ち寄ってくれる人が多いので、ハレ度がさらにUP。しかもわが友だち群は全員食いしん坊!美味しくかつ新しいものをこぞって届けてくれるのです。資生堂パーラーのクッキーでしょう、大好物の花のれんの銀座餅はなんと箱ごと直送(笑)。とらやのお年賀ミニ羊羹セットに、おしゃれ番長たちが買い占めると評判のNYキャラメルサンドまでいただいちゃって、こーんなにババアになったのに、お年玉をもらう小学生みたいにウキウキ♥

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甘いものだけじゃございません。築地ちとせの天ぷらせんべいという一品は、お菓子の枠を軽々と超え、かき揚げを食べてるとしか思えない美味でびっくり。あと、三重 川越町のおかきや マヨネーズあられにも、腰を抜かした!こんなに上品なマヨ味お菓子があるなんて…。さらに、年末にマブダチAくんから届いた贅沢ちりめん山椒セットを炊き立て新米しろめしにのせて頂く幸せ…あ~日本人に生まれてよかったですぅ。

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そうそう、手作りの贈答品もいただきました!野菜が高騰する年末に、岐阜にお住いの先輩から届いた土付きのお野菜でしょ、そしてこちらは旧友Mの手作り門松~♫ 正月には梅の花が咲いて、可愛かったなあ。

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この他にも、物珍しいものがたくさん寄せられて、イチイチ感動(涙)。何より、いただいたものを、訪ねてくれた友人たちとおしゃべりしながら一緒に食べたり、お裾分けしたりする交換の時間が宝物ですぅ。

ちなみに2016年の大晦日 12月31日の「1日1神様」寺田寅彦で締めくくりました!「ばかを一ぺん通ってきた利口」というものに、わたしもなってみたい―。

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PS 次回は1/31にUP予定。2016年映画年間ベスト10を発表します。乞うご期待!

勝手にシネマ評/『ヒッチコック/トリュフォー』('15)

けましておめでとうございます。…と、書きながら正月早々、年末に見た映画の感想をお届けします(汗)。しかもヒッチコック!いったいオマエの時間感覚はどうなってんだ?と突っ込みが入りそうですが、しばしお付き合いを。今年もよろしくお願いします(ぺこり)。

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の瀬に、まさかこ~んなにとっておきの贈り物が届くとは!

映画に魅せられた人々が通過儀礼のように読みふけり、愛してやまない本がある―『映画術 ヒッチコックトリュフォー(写真参)だ。1962年、新進気鋭のフランス人映画監督フランソワ・トリュフォーが、30歳以上も年の離れたサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックに熱烈なラブコールを送り、50時間に及ぶインタビューを実現させ、4年後、映画史に残る伝説の一冊を世に送り出した。そして、“あなたが世界中で最も偉大な監督であると、誰もが認めることになるでしょう―”と、トリュフォーが宣言した通り、完成したインタビュー本は各国で翻訳され、ヒッチコックを唯一無二の映画作家であり、真の芸術家だと世界中に知らしめすこととなったのだ。

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い、もちろんわたしの本棚にもデーンと鎮座している。1988年頃かな…上前津の古本屋で購入して以来、何度紐といたかわからない。デカくて場所をとるのに(汗)、未だに手放す気にはなれませんね。シネフィル(映画狂)でなくても、ヒッチコック作品を未見の人でも、誰が読んでも文句なく楽しめる1冊である。そんな至宝が、出版されて50年経た今、なんとドキュメンタリー作品に衣替えし、再び我々の元に届けられることに―。実際の動画記録は残っていないものの、貴重なインタビュー音源や対話時の写真が公開される一方で、名だたる現役映画監督10人が登場し、本から受けた影響や、作り手側からのヒッチコック礼賛が事細かに語られるという贅沢な構成である。監督はケント・ジョーンズ。まったく君はエライよ!

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てここからは映画の具体的な感想を記しておこう―。まず本では、対談と写真で構成された一作品ごとの解説(制作秘話)が、映画では実際の映像を見ながら目と耳で確認できるわけで、インパクトはやはりデカかった。当時の本としては写真資料が画期的に多く、それゆえ映画の教科書として重宝されただろうが、そりゃあホンモノの動くシーンを例題で用いた方が手っ取り早いにきまってる。ただし、本の忠実な映像化だけでは、すぐに見飽きてしまっただろう。受け手の想像力が喚起されないまま流されてゆくだけの、単なる映画鑑賞ガイドでお役目終了だから。つまり本は、動くメディアを静止させ、映画作品を原初の姿(連続撮影)で並べたからこそ、ヒッチコックの大胆な手法が明らかになった―と、映画化によって逆に教えられる結果となったのだ。

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た一方で、本の構成を新たに組み替えて、映画向きのUPテンポのリズムに編曲してお披露目している演出が、実に楽しい!本には出てこない2人の個人史を組み入れたり、本の一節にマーカーを引っぱったり、撮影現場の様子や販促写真の活用など、めくるめく多彩なコラージュで敷居を下げ、専門性より好奇心に薪をくべて進行する。観客心理に絶えず目配せしたヒッチコックを紹介するにふさわしい仕立てだ。意外な作品がバッサリ割愛されていたりもするが(汗)、それもまた一興。むしろどんなにランダムにつなぎ直しても、一つずつのパーツの磁力が強くて求心力はまったく揺るがない。何を見てもちょっと怖いくらい、ヒッチコック・タッチが漂い出てくるのには心底驚いた。それでも監督冥利に尽きただろうなあ…。師の本で学んだテクを、師の胸を借りて駆使できたのだから―。それに、インタビューに応じた現役監督の豪華な顔ぶれから察するに、これほどの人選が可能で、映画史に踏み込める仕事が許されるのだから、きっと映画からも愛されている人に違いない。トリュフォーは映画を1本撮る構えで準備し、インタビューに臨んだというが、そんな50年前のパッションが今こうしてK・ジョーンズ監督に継承され、再燃している事実に胸を打つのである。

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もって、現役監督たちが夢中になってイイ話をするの!映画の中に、本の形式を入れ子細工的に挿入させているのだが、誰もみな映画少年魂を全開にするとともに、 “映画とは何だ?”という命題と向き合う同業者ならでは思考が垣間見られて、目が離せなかった。私が一番ハッとしたのは、黒沢清のコメント―作家性でいうと極端にはじっこにいる人―だ。“映画は観客のもの”が大前提で、観客にいかにウケるかを目的に映画技術をフル活用した作家が、誰よりも異端なクリエイターだという一見矛盾するような話…、でも確かにそれこそが、ヒッチコックなのだと共感したのだ。

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こで私個人のエピソードも書き加えておこう。私がティーンエイジャーだった70年代後半は、映画はテレビで見るものだった。映画と言っても、オリジナル作品からは程遠い、ザクザクに短縮された吹替版だ。ヒッチコック作品も、かつてヒットした映画がお茶の間に流れる形で頻繁に目にしていた。その後、本格的に映画に興味を持ち始め、80年にイギリス時代の秀作2本立て―バルカン超特急』(38)と『逃走迷路』(42)を、ようやく劇場で目撃したときは興奮したなあ…。娯楽映画だし…などと悠長に構えていられるスキ間は1ミリもなく、映画そのものが迷路と化し、身体ごと映画内に引っ張りこまれる感覚を味わったものだ。しかも亡き父とふたりで見た最初で最後の映画なのよね―。やがて『映画術』との出会いである。タイミングよく、レンタルビデオ店の大盛況時代だったから、入手できるソフトを片っ端から借り、読んでは見て&見ては読んでを繰り返したっけ(笑)。特に『めまい』(58)に関しては、いつもの素早い展開が姿を潜め、なぜこれがミステリアスなのか、いまいちピンとこなくて、本を読んでようやく男性心理とファム・ファタールを結びつける映像マジックが理解できた記憶がある。本作でも厚みを持たせて追跡しているが、ジェームズ・スチュアート演じる主人公の落胆と歓喜が交差する表情を、スクリーンいっぱいで再見するのはかなりの特典!男性客は文句なく感情移入してしまうだろう(笑)。

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して最後に、本も映画も触れていない注目ポイントを追記しておこう。ヒッチコック映画が今も艶っぽく輝いている理由は、ヒロインのビジュアル設計にある。特に忘れちゃならないのが衣装だ。先の『めまい』をはじめ、『汚名』『裏窓』『泥棒成金』『北北西に進路を取れ』『鳥』etc…ヒッチコックがハリウッドへ渡ってから手掛けた多くの傑作で、あの“ドレス・ドクター”イディス・ヘッドが衣装を担当しているのだ。彼女は、ヒッチコックが理想とする女性のイメージ“昼間は上流階級の洗練された淑女でありながら、寝室に入ったとたんに娼婦に変貌する女”を、カンペキに具現化!衣装によって、セリフ以上に雄弁にヒロインを物語り、映画のマジックを補強する役割を見事にこなしていたのだ。

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んなイディス女史の仕事ぶりに感嘆したわたしは、かつてイラストと文章で備忘録にまとめた経験がある(汗)。20数年前に作ったそのファイルは、いま見返すとかなりこっ恥ずかしい代物だが、目の付け所だけは今もさして変わらず(進化していない証拠でもあるがー)…。そう、ヒッチコックの映画作りの極意は、わたしのような一映画愛好家の視座にも多大な影響を与えた。さらに言えば、本作を眺めながら、脈々とつながる映画史の末端に、じぶんも机を置いて在籍しているような、そんな幸福感に包まれたのだった。

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 あー、しんぼうたまらん(汗)。レンタル屋に足を向けなくなってずいぶん経つが、DVDでいいから、あのとんでもなく優美なハッタリ世界の数々を、今すぐ見直したい!


映画『ヒッチコック/トリュフォー』予告篇

 1/13(金)まで伏見ミリオン座で公開中

 

ヒッチコックトリュフォー

2015年/仏・米/カラー/80分

監督/脚本     ケント・ジョーンズ
ナレーション マチュー・アマルリック
音楽     ジェレマイア・ボーンフィールド

キャスト   マーティン・スコセッシ
       デビッド・フィンチャー
       黒沢 清

                     

PS 次回は1/23にUPします