紙芝居映画劇場『ペーパー・ムーン』(1973年)🌛PART2
さて1973年制作のアメリカ映画『ペーパー・ムーン』を、手間ひまかけた紙芝居仕立てで紹介する特集の後編です。アディとモーゼは、親子と偽り、聖書を売りつけながら、アディをセント・ジョーセフに住む叔母さんの家まで送る旅を続けてきました。ところが、モーゼが見世物小屋に出演していた自称ダンサーのトリクシー(マデリーン・カーン)にぞっこんになり、車に同乗させると言い出すではありませんか!むろん、助手席から追い払われたアディは面白くありません。
付き人のイモジーン(P.J.ジョンソン)も乗り込んできて、縁もゆかりもない奇妙な4人旅が始まります。イチャイチャしながら、男女の駆け引きに夢中になる前列のふたりとは対照的に、後部座席では、9歳と15歳の少女ふたりがかったるそうにタバコをふかしながら、互いの境遇を打ち明け合ったりして、メチャ可笑しい。すでに老成か…?
いえいえ、さすがはアディ、大人しくしてるはずなどありません。どこに座るか問題で、本気でちゃぶ台をひっくり返して自己主張。だだっ広い草原で、女VS女の、意地をかけた一騎打ちが繰り広げられるんです。ただし、ここはトリクシーが一枚上手。本音を打ち明けつつ、今だけ譲れと交渉が成立します(笑)。
とりあえず一旦引き下がったアディ。でも恋に浮かれたモーゼを目覚めさせるため、軽薄そうなホテルのフロントマンを間男に仕立てようと画策するんです。
何度も書きますが若干9歳です(爆)。でも、仮のパパでも、トリクシーの色気に骨抜きにされてゆくのを黙って見過ごせないんですよね~。娘目線の嫉妬と、女目線の嫉妬が複雑に絡み合ったアディの演技に舌を巻きつつ、切なさも募る場面です。
最終的にはイモジーンに協力金を支払い、結託してウソの芝居をし、別れさせることに成功。寝取られ男になったモーゼは、アディに「大きくなっても男をだます女にだけはなるな」と約束させて、再び二人旅に戻るのでした。しかし色ボケの貢ぎ代は大きくて、休業中にせっせとため込んでいた儲けが激減。そんな時、ふたりは密売人らしき男が酒を隠し持ってる納屋を見つけ、泥棒に入ります。しかも、大胆にも盗んだ品を当の密売人に売りつけて荒稼ぎに成功💰…が、ウカれていたのはそこまでで、警官に見つかり、夜更けにしょっ引かれるハメに💦実はこの悪徳警官は密売人の一味で兄弟なんですよ~。よって尋問はシャレにならず、超ハード💦映画はサスペンス調に早変わりします。はてさて最大のピンチをモーゼとアディがどう切り抜けるか…は、見てのお楽しみです★
カーチェイスあり、車交換劇ありで、最後の最後までネタは大盛です(笑)。
何とか追っ手を煙に巻き、州越えに成功したふたり。せしめた大金で、今度は銀山を騙し当てようと意気揚々ですが…。最後の最後にモーゼはボコボコにやられ、有り金全部を、巻き上げられるのです…オーマイガー!
当初の予定通り、モーゼはアディをセント・ジョーセフまで送り届けます。叔母さんちは想像より善人で、落ち着いた暮しができそうなのは一目瞭然。それでもアディは最後にもう一度尋ねてみる…「私のパパでしょ?」と。しかしモーゼはきっぱり否定。そして感傷的なるのを避け、さっさと車を走らせ立ち去って行くのですが…助手席に夜市で撮ったアディの写真を発見👀映画のタイトルがここに重なるのです!
はい、幕切れは映画史に残る見事な仕上がり、セリフも表情も間合いもカンペキです。意地っ張りなふたりの掛け合いは最後の最後まで対等でクール。それゆえに何度見返しても胸に迫ります。
200ドル貸しで振出しに戻ったふたり。そのときブレーキの利かないトラックが、坂道をゆるゆると勝手に下り始め、モーゼとアディは慌てて駆け出します。遥か向こうには一本道がどこまでも続き…。映画を観ることの幸福がここに極まります。
【おまけ】ネタバレどころの騒ぎじゃない、詳細解説でしたね(笑)。『ペーパー・ムーン』は、バディものであり、ロードムービーであり、詐欺に、犯罪に、アクションに、ドタバタ会話劇のテイストも加わった、映画の醍醐味テクがふんだんに使われている贅沢な1本なのです。ちょうど50年前に作られた作品ですが、この先も永遠に愛され続けることでしょう。そうそう、アディがいつも抱えていた葉巻の箱を利用した宝物入れの中味がこちら。子どもの頃、同じようなことしてたっけ…😊
そして、この1ヵ月、ずーっとアディ・モードになっていたあたしは、なんとアディ紙人形を作りました(どんだけヒマなんや~)!映画に合わせてモノクロ仕様です。
とにかく劇中でアディの身に着ける衣装がたまらなく可愛いので、それっぽく再現してみたのです(笑)。オーバーオールだけは、本物のデニム地を利用したのもミソ。彼女の正装ですからね。最後は石鹸の缶BOXを葉巻の箱に見立てて~♫
その後「そういえば、天才子役ともてはやされたテイタム・オニールって今どうしてるんだっけ?」と、ネットで調べたら…なかなか大変な人生のようで—💦本当の親子共演で得た栄光は、映画のように甘いオチとはいかなかったみたい…😢一方映画のヒットにあやかり、TV版が作られて、アディを演じたのは幼い頃のジュディ・フォスター!TV版はコケたけど、その後のJ・フォスターの躍進ぶりはご存知の通り。人生とはなんと皮肉かー。
PS 次回は7/29更新です