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すべては雑誌からはじまった!   【① 暮しの手帖の巻】

とと姉ちゃん』に朝から燃える!

◆ちんぴらとNHK朝の連続テレビ小説―不釣り合いな取り合わせだと思うだろうが、4月から始まった『とと姉ちゃん』毎回楽しみにしている。それまでは、ほぼ時計代わりに流しているだけだった朝の連ドラだが、たまたま初回で目にしたヒロイン一家の生活空間に目が止まったのをきっかけに、熱心に眺めるようになった。

◆舞台は1930年の浜松。両親と3姉妹が暮らす小橋家の住まいは、当時のごく一般的な家屋を再現したものなのだろうが、現代と比べたら格段に端正で趣味がよかった。いや、むしろ贅沢と呼びたい代物だった。必要最低限の道具を整理整頓してスッキリ暮らす住まい方には品格があり、上質な撮影セットにツイ身を乗り出してしまったのだ。そんな美しい日本家屋で繰り広げられる一家5人ののびやかな生活描写と、敬語で交わされる親子の日常会話が、これまた妙に新鮮で…。日本人って、何て慎ましくいじらしかったのだろうと改めて思いましたね(涙)。

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◆そんなわけで、このシリーズはちゃんと見るぞ!と姿勢を正したら、ヒロインのモデルが、あの暮しの手帖を創刊し、暮しの手帖社の創業者でもある大橋だとわかり、さらに興味が湧いたのだ。大橋さんの名前は知っていたが、創業当時のエピソードや、戦後すぐに登場した女性編集者の生き方がドラマ化されるのは、めったにないことだものね ~♪ そして今月に入るとドラマは小橋家の戦後編となり、ついに先週(第16週)、天才編集者・花山伊左次(モデルは花森安治)を編集長に迎え、新雑誌立ち上げの中盤の山場へ突入!もう、朝からワクワクしちゃってタイヘンだ(笑)。

【ここに注目👀】ヒロイン常子の高畑充希や花山役の唐沢寿明をはじめ、達者な役者のそろい踏みはもちろんのこと、『とと姉ちゃん』の撮影セットは毎回ホントすんげーいいのよ~。クオリティの高さに頭クラクラ!単なる金のかかった背景じゃない。さりげないところまで美意識が行き届いていて驚いちゃう。花山伊左次がバイトしていたバラックの喫茶店なんて、モロ私の理想の小屋だったわ★ 青柳商店&森田屋セット紹介|特集|連続テレビ小説「とと姉ちゃん」|NHKオンライン

 

唯一無二の硬派生活雑誌暮しの手帖

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◆さてそこで『暮しの手帖』である。 泣く子も黙る天才編集長・花森安治と、女性企業家の先駆者・大橋鎭子が創刊した独創的な硬派生活雑誌だ。いまも他の追随を許さぬこのユニークな雑誌の軌跡は、ドラマ&書籍&暮らしの手帖HPを参考にしていただくとして、個人的な感想をこの機会に書き記しておきたい。ちなみにバックナンバー、けっこう持ってます!色褪せしてても、私の貴重なお宝資料です★

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暮しの手帖』と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、毎号丸ごと一冊ひとりで全てをこなしていた花森安治グラフィックアート。特に創刊号から亡くなるまでの30年間、彼が手掛けた表紙は、息をのむほど素晴らしい★ 左の2冊は創刊間もない頃、昭和24年発行の5号と6号。どうよ、この室内イラストのセンス!一つ一つの器物選びの審美眼とその配置&配色、そして絵にしたときの風合いまで…パーフェクトだよね?いまの雑貨スタイリストが見たら悔し泣きするんじゃない?(笑)はたまた次の3冊は、昭和26~30年発行のもので、一転してぐっと抽象度が増してゆく。余白の取り方が上手いよね~。

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 ◆普段使いの道具をイラストにしても、イチイチ洗練されてて目を見張る。モノを通して日々の暮らしが愛おしく感じられるような空気まで立ち上り、思わず手に取りたくなる。ただし、生活実用書であっても一般的な意味での保守性とは無縁。画材を変えたり、写真を撮り込んだりして絶えず自由で大胆な試みがなされている表紙からすでに、この雑誌の基本姿勢が物語られているのだ。

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◆左の59~60号はちょうど私が生まれた年、昭和36(1961)年に発行されたもの。グリンピースの水玉、フレアースカートに見立てた傘、シルエットで構成された台所収納棚…私の好きなデザイン性がすべて出揃っていてウットリ。そして不思議なことに、今の私の生活周辺のデザインも、このイメージの延長線にあるものばかりなんだよなあ…。生まれながらにして花森ワールドが刷り込まれているのか?(笑)

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◆いやいや刷り込みは、生まれた年の号ばかりじゃない!こちらは超有名な創刊号の表紙(1948年)だが、その隣は昨日(2016年)の私の部屋の一角(汗)。もちろん真似したわけじゃないが、自分でも撮ってみてビックリ。20代にこの表紙絵と遭遇しすごく惹かれてそれが30年以上ずっと変わらずいつしか自分のインテリア感性の黄金比と化しているみたい(苦笑)。箪笥の引き出しに、その日着用した服を挟んでしわ伸ばしをするクセだけは、母からの伝授だが(一晩吊るすとけっこう元に戻るんだってば~)。

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◆ただ正直言うと、1970年代のティーンエイジャ―時代にこの雑誌から受けていた印象は、“風紀委員みたいでウザイ”だった(汗)。銀行や病院の待合室で仕方なく手に取っても、文字量は多いわ、級数が小さいわ、明朝だらけで、冒頭のグラビアページの斜め見だけで片づけていた。カッコいいのか悪いのか判然としない味わいだけは見過ごせなかったが…。ところが、19歳の頃に知り合ったバイト先の非常に先鋭的なオーナーが、花森安治草間彌生を敬愛している女性で、そこからちょっと見る目が変わった。当時『STUDIO VOICE』や『流行通信』を購読しているオーナーが、一方で正反対のイメージの花森=『暮しの手帖』に一目置いている点に新味があり、強く記憶に残ったのだ。

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◆やがて80年代、世の中がバブルに浮かれ出すと、流通するものがどれも同じでアホらしくなり、ひとり古本屋を巡り歩いて、自分がインスパイヤーされる資料を収集するようになった。美の基準は私自身が「ハッ!」とするものであればなんだっていい、自分から見つけに行き、それをヒントに創造の花を咲かせよう♪と―。古い『暮しの手帖』を見つけ、遅まきながら花森安治の天才ぶりに気づいたのも、ちょうどその頃だった。結局読み物(贅沢な執筆陣!)ページには、一向に食指は動かなかったが(汗)、グラフィックアートの教科書として、何度見返したかわからない。

 

すべては雑誌から― 📖

◆そう、私のアイデンティティは雑誌を通して育まれた。この半世紀をざっと振り返ってみても、「すべては雑誌からはじまった!」と思うことばかりだ。そこで、せっかくだからシリーズにして、自分の血肉となった雑誌の数々をぼちぼち紹介して行こうと思う。気の向くままに綴るから、引続きよろしくね~。

 

PS 唐突ですが、目下公開中の映画『ブルックリン』('15)がオススメです★ 故郷アイルランドを遠く離れ、ひとり見知らぬ街ブルックリンで新生活を始めるヒロインの心模様が繊細に綴られ、ぐっぐっーと引き込まれます。野に咲く花のような、ささやかで可憐な印象を残す1本。『とと姉ちゃん』が好きな人なら、必ずフィットするわよ!

次回は7/30に更新です。