わたしがシビレるヒロインたち💀

映画の感想で「主人公に感情移入できなくて、つまんなかった」という内容のものがあるけど、あれ、わたしにはよくわかんないのよね。だってさー、無理でしょ?そもそもフィクションなんだし(笑)。

つまりみなさまは、リアリティの匙加減を問題にしてるんだろうね。荒唐無稽なものが見たい…かつ、じぶんの日常(リアリティ)を若干かすめながら~という、相反する体験をスクリーンに求めているのでしょう。わからなくもないです、はい。

わたしの場合は、やっぱりじぶんの経験則で測れない主人公が、銀幕を疾走して絵になることこそ映画の醍醐味!と思っていますね。だから、目が留まるのは自然とじぶんと反対性別の男性役がほとんど。それも、恋人願望を満たすべく「ス・テ・キ♡」と惚れるのではなく、じぶんが男になり切り、フィクション全開でその役柄を味わいたくなるってわけ。感情移入というより、ちょっとした着ぐるみ体感ですかね(笑)。

そんな女性主人公に無頓着なわたしが、つい最近「げーっ、カッコイ~イ!」と胸を高鳴らせたヒロインを発見★『午後8時の訪問者』('01)に登場する若き女医ジェニーです!

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ある夜、彼女は診療時間を過ぎた午後8時に鳴ったドアベルに応じず、友人との飲み会へ向かう。この後、ベルを押した少女が、身元不明の遺体となって見つかるとはツユ知らずに…だ(汗)。ここから始まるジェニーの単独大捜査。ほとんど感情を表に出さず、救えたかもしれない命の周辺を、どこまでも粘り強く嗅ぎ分けて突き進むハードボイルドな彼女に、すっかり魅了されたのよ!特に目を惹いたのは、この映画が真相究明の形を取りながらも、ヒロインを単純な正義感へ集約させないところ。亡くなった少女の声なき声を丹念に手繰り寄せる姿勢と、患者の身体に耳を澄ます医師としての横顔とをシンクロさせ、ジェニーというヒロイン像を絶えず重層的に映し出しているんだよね。そう、見ず知らずの少女の死を想像しながら、世界を想像するジェニーの屹立したカッコよさに、心底シビレたってわけ。そこで今回は、「わたしがシビレるヒロインたち」と題し、お気に入りのヒロイン像を振り返ってみることにしました~♪

 

「やさぐれ少女」編

▶今さらですが…若い頃ってバカでイイですよね(爆)。中でも、ティーンエイジャー時の鬱屈した思いを、独りでどう消化するかにスポットを当てる映画は、年を取るほど“ご馳走”になる(笑)。すぐに思い浮かぶのはゴーストワールド('01)。ヒロインは、なーんの実績もないくせに、自ら蓄えたセンスに対する強烈な自負心だけを拠り所に、カッタるく若者やってるイヤなガキ。世の中にイチイチ「ケッ!」と毒づいてる様子が、とても他人事には見えなくて、冷や汗が出たな~(苦笑)。でも、自意識ばかりをギンギンに尖らせるこのクソ生意気な身振りこそ若者のすべて!あの頃、いかにやせ我慢して突っ張ったかの記憶は、やがて思わぬところで花開くものなのだ★

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▶お次の少女ヒロインはなんと吸血鬼!『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』('14)は、イランの架空の町を舞台にし、夜な夜な廃墟を徘徊して悪事を征伐する美少女ドラキュラが怪しい魅力を放って新鮮だった。孤独な彼女は、ペルシャ語を使い、ボーダーTシャツが似合う“オリーヴ少女”ビジュアルで、趣味は音楽(笑)。黒くて長ーいチャドルをドラキュラに見立てるアイデアもムードたっぷりで、もの哀しさにクラクラしちゃった。けっこうガッツリ血をしたたらせるけど、相当カッコいいわよ~(笑)。


『ザ・ヴァンパイア ~残酷な牙を持つ少女~』予告編

▶イギリス映画17歳の肖像('08)のヒロインは、お地味な暮らしと、父の期待通りの優等生でいることに退屈さを覚え始めるまともなティーンエイジャー(笑)。年上の男に恋をし、大人の世界の入口に立ってからの暴走っぷりも、一事が万事予定通りで可笑しい。―が、この映画の一番の魅力は、ヒロインの抑えきれない知性によって、もう一度世界をじぶんのものさしで捉えなおそうと覚醒するシーンなの!堅物だった担任の先生(素敵!)のフォローや、厳しい階級社会を立ち上らせるスケッチも的確で、小品ながらもズシッと手応えが残る作品に仕上がってます。

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「闘いモード」編

▶恋愛は“自我の崩壊”にこそ醍醐味があるわけですが、そこんところをいかに血をたぎらせて描くかの王者は、今も昔もおフランス映画でしょう~。どこまでも対等な真剣勝負で輝くヒロイン、まずは『ラブバトル』('13)。見ている間中、ずーっと「マジか?」と呆気にとられます(笑)。なんたって父の葬儀のために田舎へ帰省した若い女と、隣家の独り暮らしの中年男との壮絶な戯れだけで、映画が一本出来上がっているんだから♥ 言葉を介在させず、共に生傷を重ねて取っ組み合いのケンカSEX(!)を繰返すうち、分かち難い絆を成熟させるという離れ業作品。意味わかんないでしょ?(爆)嘘だと思ったら取り急ぎこちらの動画をのぞいて見て♪ あっぱれなヒロイン、受ける男も豪胆でっせぇ~。


『ラブバトル』予告編

▶もう1本はコスプレもの。19世紀フランスの社交界を舞台にしたバルザック原作のランジェ公爵夫人('06)。空虚な生活にドップリ浸かる高慢な貴族夫人と、ウブで優秀な軍人男との、ある意味頭でっかちで未熟な恋の駆け引きが展開されます。どこを切ってもザ・おフランス(笑)。ただし『ラブバトル』とは正反対に、こちらは油分を抜いてカラカラに乾燥させた“押し花”みたいな印象で意表を突かれます(笑)。ヒロインは押し花になるのにふさわしく痩せてギスギスした変形美人。この薄く伸びた影みたいな女の、猛者を煙に巻きながら徐々に血流をめぐらせる姿が、なかなか渋いんですよね~。同時代の絶世の美女、あのレカミエ夫人と比べたら、同じバッスルスタイルのドレスを召していてもヤっす~くて笑えるが、徒花としてのリアリティは◎なのだ!

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「ボーダレス」編

▶家族を守ることに全体重をかけ、危険な仕事に手を染めるヒロインもいる…フローズン・リバー('08)にはヤラレましたね!舞台はNY州最北端の殺風景な小さな町。縁もゆかりもない2人のかあちゃんが、困窮の果て、タッグを組んでカナダからアメリカ側へ不法移民者たちを密入国させる商売に乗り出すの(汗)。しかも闇の商売とはいえ、凍てついた川を車で渡るという危険極まりない方法で!男抜きの開拓史ドラマを見るようで、その骨太さにノックダウン。ヒロインの眉間の皺にシビレっぱなしだったなあ…。男女問わず必見の1本、ヒリヒリしていただきましょう~。

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▶フランスのマクロン新大統領と奥様は年の差25歳で話題を呼んだが、まだまだ甘い(笑)。60歳の年齢差カップルが登場する伝説の映画がハロルドとモード~少年は虹を渡る』('71)です!自殺マニアの孤独な少年ハロルドは19歳。一方お相手のモードは、ナチスの強制収容体験を持つ79歳。少年は、限りある生を全うしようと冒険の歩みを止めぬこの老女に恋することで、世界と親密な関係が結べるようになるの。ルース・ゴードン扮するモードは、分別くさくなるより前に、命を色っぽく使い切りことに徹する演技で目を見張るわよ。若者の恋心を自然に受け入れるシーンに一切の無理がなく、心底タマげました!映画はこんなにチャーミングなウソをサラっとつけて、「あったらいいな~♪」とまで想像させる魔法の装置★45年前の作品とは思えない瑞々しさがたまんないっス。

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▶最後は、見たばっかりホヤホヤの1本『タンジェリン('15)。全編3台のスマホだけで撮り切ったというこちらのヒロインは、ムショから出たばかりのトランスジェンダー。とあるX’マスイブの1日、彼女が痴話ゲンカの決着を付けるためにLAの町中をガンガン歩き回るだけのストーリーなんだけど、一見ガサツな騒動が意外な噛み応えを秘めていて、侮れませーん!お下劣極まりない与太話が、終わってみれば可憐な一輪の野バラに化けるいう、とんでもないイメージの飛躍体験さえできちゃうの。女もイロイロ、ヒロインもイロイロ。バリエーションが増えるだけ、自由に近づくのは間違いないね★


『タンジェリン』予告

 

▶ここでは、他であまり取り上げられない小さめの作品、かつ洋画のみにスポットを当てて選んでみましたが、振り返れば、わたしがシビレるヒロインたちは全員迷いがありませんでした(笑)。チマチマまどろっこしい女より、絶えず巻きが入ってる女たちを面白く思っているみたい(爆)。よかったらレンタルの参考にでもしてみてね♫

 

PS 次回は6/4にUPします