勝手に年間cinema🎬 2021年度版

さて、今年もやって来ました ちんぴらジャーナル恒例の年間映画特集です。2020年に引き続き、コロナ禍での映画興行となりましたが…洋画68本+邦画19本計87を劇場でチェック。昨年より20本も増えたのは…無職で自由になる時間がたくさんあったから~♬「時間」に勝る贅沢品はありませんね。ここでは、連載で触れなかった作品を中心にご紹介しましょう。

 

上等少女に魅せられる2本

映画の中で“上等少女”を見つけ出すのは、じぶんにとって大切なテーマのひとつ。


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ホロコーストで家族を失くし独り生き残った16歳の少女と、42歳の寡黙な産婦人科医が偶然出会い、疑似親子の間柄になるハンガリー映画『この世界に残されて』('19)。ハグシーンがいいんだよね亡霊のように日常を漂っていた孤独なふたりに、再び重力がチャージされるかんじでさー、この世界にしがみつくための“結束の絵”に映るの。希望という名の大きな物語を紡ぐためのささやかな結束…。説明を省いた編集リズムも◎!


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『夏時間』('19)は、10代の少女オクジュが、父と弟と一緒に大きな庭のあるお爺ちゃんちへ引っ越してくるシーンから始まります。両親の別居、経済的問題、老いの目撃、叔母さんの乱入etc…じぶんを取り囲む状況が一変し、戸惑うことばかりの彼女のひと夏の体験が、繊細に綴られる仕立て。特に、あの日あの時の光の移ろいを見事な絵にしていて感心しました。郷愁に収まり切らない無常観まで捉えられていて実に見事です!

 

デビュー作にして堂々の群像劇


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▶再開発のただ中にある杭州市の富陽地区を舞台に、ある大家族の運命を描いた『春江水暖』('19)で、グー・シャオガン監督はデビュー作とは信じがたいほどの力量を披露した。老いてゆく母と、成人した4人の息子が下りなる悲喜劇は、あえて特定の人やコトを中心に位置づけないよう設計し、カタルシスを巧妙に外しながらスーッスーッと横展開。しかも絵巻物を紐解くようなそのリズムは、大河・富春江の流れともシンクロし、一族の過去と未来を想像せずにはいられない―。続編制作に期待も膨らみます

 

かつての悪童、今もピュア全開


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▶『春江~』と同じ水際ロケ映画でも、かつての悪童ハーモニー・コリン監督が撮ると趣きは一変(笑)。『ビーチ・バム まじめに不真面目('19)は、サイテーな輩のサイコーにピュアな瞬間に狙いを定め、我々を楽園に誘いますぅ~♬何せこちらの主人公は、ハッパとアルコールとSEXを白飯にして、ありきたりの倫理観を全部チャラにする詩人だからね。しかも演じるマシュー・マコノヒー短足とド派手な衣装の組合せがカンペキ。なぜそんなサイテー野郎が人々を魅了するのか…わかる人にはわかります、はい

 

タガが外れる女のドラマ2本


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▶フランス人女性作家のベストセラー小説を映画化した『シンプルな情熱』('20)は、大学で文学を教えるシングルマザーのヒロインが、ロシア大使館に勤める年下の既婚者に一目惚れして、世界が一変する愉快な1本。ヒロインは肉欲にまみれ、待つだけの女に成り下がり、息子に呆れられるくらいタガが外れるんだけど、ド直球で恋に溺れる姿はパッションそのもの!憑き物が落ちたように生まれ変わるラストまで爆笑の連続よ👀


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▶待ち焦がれる恋物語と対照的なのが『逃げた女』('20)。結婚して5年間、夫と1日も離れたことのなかったヒロインが、夫の出張中に3人の女友達を訪ね歩くドラマ。訪問先で噛み合わないやりとりが続くも、事件が起こるでもなく、日常の振る舞いが微かに揺らぐ程度。もつれそうでもつれないギリギリのところでサラリと身をかわす演出に、ツイ引き込まれるの。まるで水面下の見えない波乱を予感させるような空恐ろしい作品。

 

忘却してはならない史実を描いた2本

▶新旧2人の女性監督が、重心を低くしながら忘却してはならない史実に踏み込んだ!


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▶実際にあった事件をもとにペルーの闇の現代史に迫った傑作『名もなき歌』('19)。生まれたばかりの子どもを裏組織に奪われた先住民の母親と、巨大な権力社会に立ち向かう新聞記者の束の間の交流は、解決の糸口さえ見つけられぬままフェイドアウト―。今もペルーの大地にこだまする虐げられた人々の叫びを、静謐なタッチで蘇らせ、類を見ないほどの完成度。これまた長編デビュー作だというから心底たまげた…必見です!


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アイダよ、何処へ?』('20)は、1995年、ボスニア紛争の中で起きた大量虐殺事件の全貌を、国連平和維持軍の通訳として働くひとりの女性の立ち位置から目撃した問題作。刻々と状況が変化する中、丸腰で独り奔走し続けるアイダの徒労感に、我々は目を伏せていられなくなる。しかも彼女の夫と子どもには危機が迫り、待ったなしの状況。たかが映画と侮るなかれ。あなたならどうする?と、観客に絶えず揺さぶりをかけてくる1本…向き合うしかない!

 

劇場で見てナンボのダークファンタジー


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▶童話の実写化、『ほんとうのピノッキオ』('20)がスゴイことになってた!引きの絵がトンデモなく美しいのと音響効果が抜群で、原作のことなどすっかり忘れ、悪ガキ・ピノッキオのロードムービーとして楽しんだよ~。身体の動きが操り人形みたいでイチイチキュートだし、主人公以外の悪魔的キャラのバリエーションもハンパない!どっぷり浸かり過ぎて、今や木目を見たらなんでもピノッキオに見えちゃうわ(笑)。

 

監督のテリで撮影した3本


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▶元トーキング・ヘッズデイヴィッド・バーンによるブロードウェイショーを、スパイク・リー監督が映像化したアメリカン・ユートピア('20)。予告を見れば一目瞭然。楽器もダンスもまるで縁がないあたしでさえ、思わず裸足で舞台に駆け上がりたくなっちゃったよ。特にバーンを先頭にして、終演後の演者たちが、N.Yの街中を自転車で走り抜ける幕切れには大興奮♬ そう、幕が下りても音楽は続くのよ、どこまでも―!


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▶軍事クーデターが勃発した1973年以降、左派の夢がついえた監督の故郷チリ。『夢のアンデス('17)は、監督自身のナレーションで進行し、様々な芸術家たちのインタビューを交え、クーデター前と後の祖国の変貌を静かに俯瞰する。故郷を語るとき、人は誰しも詩人になる。さらにその詩人たちを包み込むアンデス山脈に、縁もゆかりもない我々の郷愁が反応してしまうから不思議だ。まさかじぶんが古いマッチ箱に胸を打たれるなんて!


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巨匠フレデリック・ワイズマンが、自身の故郷ボストンの行政と街を記録した『ボストン市庁舎('20)は、274分の長丁場ながら退屈するヒマが一切ない傑作。正直言って、あまりに理想的な市政なので、フィクションなのかと疑ったほどよ(爆)。だって行政に革命を起こしたウォルシュ市長の主張があまりに一貫しているため、演者にしか見えないんだもん…いや、プロの役者より迫力あるわよマジで。逆にそのくらいじぶんは理想の社会リーダー像を持ち合わせていないことが判明し、ヤバイと思っちゃいマシタ💦

 

邦画イロイロ~♫


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メディア業界で働くヒロインが、最後にカメラの暴力性を自身に向けて閉幕する『由宇子の天秤』('20)。大学生活を自虐的キャラ設定で軽く流してきたヒロインが、卒業間近になって初めて他者との関わりの渦に没入する『君は永遠にそいつらより若い』('20)。そして、コロナ禍後の日本を背景に風俗店で働くシングルマザーの矜持を熱さMAXで狙い撃ちした『茜色に焼かれる』('21)。日本人若手監督たちの躍進ぶりにも拍手喝采したわ!


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▶また2021年、世界から注目された濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』『偶然と想像』の2作品の完成度は特筆すべきものでした。2本とも「見終わってから始まる」映画になっているの。そう、幕が下りてから鑑賞者個々の妄想が始まるよう念入りに仕掛けられてるってわけ。特別思い入れを抱かせるような登場人物が一人もいないのに、他者の物語が鑑賞者の内側に忍び寄るスリルがここにはある。妄想を誘発させるための薪のくべ方が非常に洗練されているんだよなあ。新しい映画と出会いたい人、必見よ👀

それでは最後に、去年ブログに書いた長編映画評もおまけに付けておきます、どぞー🎬

 

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PS 次回は2/20に更新します。少し先になりますが忘れないでね~😊