勝手に年間cinema🎬 2020年版
すでに正月気分は吹っ飛んでますが(笑)、遅ればせながら、ちんぴらジャーナル恒例の年間映画特集です。2020年は、映画館が1ヵ月も閉鎖するという生れて初めて体験をしましたが(汗)…洋画48本+邦画19本の計67本を劇場でチェック。ふたを開ければ前年度より2本多いじゃん(笑)。いい映画、たくさんあったよ★紹介しておくね~♫
上等少女たちが覚醒する2本
▶『はちどり』('18)は、90年代の韓国を舞台にした中2女子病物語👧14歳の少女が、家と学校と社会の3つの大海を日々漂いながら、孤独にサバイバル術を磨いてゆく姿がたまらなく愛しい。少女の言葉にできない息苦しさや痛みに耳を澄まして寄り添い、ささやかな仕草で訴える仕立てなの。やがて少女の水面下の声と唯一共振する大人をめぐり逢わせ、幕切れでは唐突に史実をもぶっこんできたりして…何とも大胆な傑作でした!
映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』日本版予告編
▶ガリ勉女子高生2人組が、卒業式前夜になって、寸止めにしてきた青春を取り戻そうとハジけまくる痛快コメディ『ブックスマート』('19)。ギャグのキレが強烈&高速すぎて、全部を理解するには3回くらい見ないとムリかも(笑)。『はちどり』とは対照的に、こっちは全方面に解放されすぎてて、目標設定が生きる糧になってしまう危うさは気になるが…💦それでもエンジン全開の友情譚は、やっぱ理屈抜きでタマらんぜよ~♪
しっとりとLOVEが咲く2本
2020.1.17公開『オリ・マキの人生で最も幸せな日』予告
▶殴り合いより恋を選んだボクサー、オリ・マキ😊『オリ・マキの人生で最も幸せな日』('16)は、実話を下敷きにしたフィンランド映画です。とにかく勝利至上主義というハシゴをあっさり外す柔軟さがスキスキ♥タイトル通り、幸福とは個別に定義するものよね。スポーツ競技がナショナリズムに利用される気味悪さに比べたら、恋につまづく方がよっぽど真っ当。白黒16ミリフィルムで撮影された躍動美にも震えまくるわよ~
▶『ペイン・アンド・グローリー』('19)は、スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督が70歳にして撮った自伝的映画。創作意欲を失くした映画監督が、幼き頃の記憶を紐解いて慰められるうち、思わぬ経緯で過去の時間が現在につながり、さらにもう一度過去を引き寄せて自身の生命の輝きを再発見する…。ここでしっとり咲く愛は、老境のじぶん自身を慈しむ愛。アクの抜けたバンデラスの演技がシックで実に色っぽかった♥
画家が主役のドラマチックな2本
▶ドイツ激動の時代を背景に、現代美術の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに描いた『ある画家の数奇な運命』('18)。リヒター自身は完成作品に異議を唱えているらしいが、真実かどうかはともかく、大きな歴史的時間と一人の芸術家誕生時間がサスペンス色たっぷりに交差する宿命ドラマに、めちゃワクワク。映画の虚構性に紛れ込んでもリヒター作品の評価が変わるわけではなく、ちゃんと上等娯楽映画に着地してマシタ
▶18世紀フランスの孤島。『燃ゆる女の肖像』('19)は、望まぬ結婚を控える貴族の娘と、彼女の肖像を描くためにパリから呼び寄せられた女性画家との悲恋を描く。見る側と見られる側の攻防を経ながら、モデルと画家が徐々に接近するくだりが極めて劇的で、過呼吸になりそうなほど濃密💦特に生活音を通じて2人の関係を間接的に物語る演出のエロティックなこと!300年前の女たちの人生に思いを馳せ、胸が高鳴ったな~🔔
そして震災後の時間はつづく―
▶津波で家族を失い広島の叔母の元で暮らす17歳の少女が、震災以来一度も帰ってなかった故郷の岩手県大槌町へ向かう―。あたしの2020年の邦画ベスト1は諏訪敦彦監督作品『風の電話』('20)。絶望を受け入れるための喪の儀式に要する時間は一律ではない。そして独りだけで執り行えるものでもない。少女が旅をしながら息を吹き返して行くエピソードのどれもに、唯一無二の瞬間が捉えられていて、何度も泣きそうになった。
▶『空に聞く』('18)は、震災後の陸前高田でラジオパーソナリティを務めていた阿部裕美さんに長期密着したドキュメンタリー。ゆったり丁寧に語りかける阿部さんの声を耳にしたら、2度と忘れられないだろう。何だろうこの包容力の源泉は…懐かしいようなくすぐったいような…。阿部さんの語りに導かれて町の再建をながめていると、かつての町と未来の町が自然につながり、さらには町と無縁のあたしの足元にまでつながりを感じずにはいられなくなる―。映画ならではの見事なマジック、脱帽です。
まがまがしさに魅せられた2本
▶中国社会の底辺で生きる人々のサバイバルゲームを描いた『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』('19)。仲間割れ、復讐、逃走、裏切り…迷宮感がめっぽう高くてどっぷり酔いしれた。謎解きは宙吊りにしたままで、触覚に直に届く演出効果でひっぱるの。取り残された土地のうめき声がとどろくセット、闇の深さ、作り物めいたセリフ…最強のオーケストラになってます!女2人が連帯し、「光」を受けながらサラリと出し抜く幕切れもカッケ~
▶『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』('19)は、1970年代に4人の女性を殺害し、アパートに死体の一部を隠していたドイツの連続殺人鬼を主役にした実録もの。グロテスク極まりないエピソードの連続だけど、振り切れ方がハンパないんっすよ~。殺人鬼のイタい横顔から、敗戦後遺症に蝕まれた70年代ドイツの闇を照射するとき、登場人物全員が狂人に見えてくる…。狂気への暴走スイッチは、社会の中にこそあるんだろうな…。
目の前で歴史が蘇る傑作ドキュメンタリー2本
▶中国共産党によって55万人もの人々が強制収容された「反右派闘争」。地獄の収容所体験から奇跡的に生き延びた人びとにカメラを向け、8時間半に及ぶドキュメンタリーに完成させた『死霊魂』('18)は、2020年の洋画ベスト1です👑もしじぶんがTV局を持っていたら、本作品を24時間ループ上映で流し続けたい(笑)とにかくタマげたのは、カメラを前にした生存者の語りに、犠牲となった同胞たちの気配が絶えずたなびいて見えること!途切れていた時間が再び流れはじめる現場に居合わす興奮は予想以上だった👍
▶こちらもスゴイ!『彼らは生きていた』('18)。人類最初の大戦=第一次世界大戦時の膨大な映像資料を4年半かけて再編集したドキュメンタリーで、映像技術の進化に腰を抜かすと同時に、真実であり嘘でもある映像の特性を考えさせられもした。カメラ慣れしていない当時の兵士たちが、無防備にカメラを直視してくる生々しさに息を呑んだり、歯並びの悪いいかにも貧しい階層の若者たちが物見遊山的に志願し、そのまま戦場に散ったであろう経緯を想像したり…と、100年前の悲喜劇を体感できる貴重な1本です
他にもイロイロ~♫
▶トンデモ法廷シーンをはじめ、マフィアの喜劇性を暴露する『シチリアーノ~裏切りの美学』('19)、スターリン時代の圧政に肉薄しながらも一級の娯楽映画として作り込んだ『赤い闇』('19)、仮面夫婦の化かし合いと映画in映画の組合せが見事にキマった『スパイの妻』('20)、くっだらね~青春の断片をチマチマ拾い上げて硬派アニメに一発逆転させた『音楽』('19)…あー、映画ってホント楽しいわ~♪最後に、去年ブログに書いた長編映画評もおまけに付けておきます、どぞー🎬
PS 次回は2/20に更新します。少し先になりますが忘れないでね~😊