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すべては雑誌からはじまった!【② それいゆ の巻】

雑誌『それいゆ』創刊70周年!

◆戦争が終わり、ちょうど1年経た1946年8月15日に、伝説の女性向け雑誌『それいゆ』が創刊された。前回このコーナーで紹介した『暮しの手帖』が始動したのも同じ頃だが、物資はもちろん食べ物さえも乏しく荒廃した地で、女性雑誌が復興の起爆剤となった事実に、私は強い関心を持っている。そして、現在も発行中(!)の『暮しの手帖』に対し、『それいゆ』は1960年8月までの全63冊で幕を閉じているのだが、むしろそれゆえに伝説と化していて、10年おきくらいにスポットが当たり⇒再燃という流れが繰り返されてきたように思う。創刊70周年を迎えた今年は、ついに特設サイトもオープン。イベントや販促にも力が入ってて、もはや懐かしさをそそるだけの狙いではなく、日本人女性の琴線に触れる「カワイイ文化」の源泉として立ち上がっているのだ。

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中原淳一ワールド全開!

◆例えば、花森安治編集長の暮しの手帖』が、硬派に生活全般のレベルUPの一助になるのを目標にしていたとするなら、『それいゆ』は、スーパー・クリエイター中原淳一が手掛ける“女性のための”美的生活追及マガジンといった印象だ。2誌共にカリスマ編集長が、雑誌の美意識を決定づけていたわけだが、『それいゆ』は美しくかつ新しいものに対する感度が高く、今の女性誌の原型ともいえるだろう。何せ淳一は雑貨屋からスタートしているからね~。精神性と物欲の両方を刺激し、“美しいものに囲まれて、わたしもキレイになりたい!”と、日本中の女性たちを虜にしたのではないだろうか。ただ、華麗にトレンドを生み出してしまったがために、力尽きて63冊で廃刊。

◆余談だが、花森と中原…一時代を築いた天才編集長の比較を誰かやってくれないかなあ…。学術書が出てもおかしくない研究テーマだと思うのだが―。

 

古本屋からマイ・ブームへ!

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◆なーんてエラソーなこと書いてしまったが(汗)、『それいゆ』は私が生まれた前年にピリオドを打っているので、もちろんリアルタイムで熱狂したわけではない。聞きかじった情報が脳裏にあり、20代半ばのある日、仕事場の近くの古本屋Mで実物を見つけたのをきっかけにマイ・ブームとなった。

◆そこには大量の『それいゆ』がひっそり眠っていたのだが…ズルいのよー!ぜーんぶビニールが掛けられ…ビニ本状態(涙)。開封は許されず、なんと1冊のお値段は1500~2000円相場(汗)。当時の私のバイト料は時給800円で割といい方だったが、それでもジャケ買いの博打に出るには勇気が必要だったわよー(笑)。結局バイト料が入るたび2~3冊ずつ博打を打ち、合計20冊ほどご購入。世の中がバブっていたときに、DCブランドの服でも高級フレンチでもなく、こんなお地味な博打を打っていたのが我ながら可笑しい。

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中原淳一は、自前メディアの在り方を固定化せず、絶えずトライアルし続けた点でも一歩先を進んでいた。『それいゆ』が爆発的に売れてこれを柱としつつも、そこから人気コンテンツをピックアップし、臨時増刊号として発行。読者の反響に呼応して進んでいたんだよね。そう、フィジビリの連続!また、少女向けに『ひまわり』(のちに『ジュニアそれいゆ』へモデルチェンジ)を出したり、イベントや販促と連携させたりと、出版の可能性を押し広げたその手腕には今更ながら驚かされる。さしずめ「日本のリアルクローズを世界へ」がテーマの東京ガールズコレクションなぞは、淳一が70年前に敷いたレールの上を走っているということだ。

 

『それいゆ 手芸集』に感涙!

◆子供のころからサンリオ系のファンシーグッズやキャラクターにはまったくノレなかった(汗)。カワイイ=丸系のデザインと二頭身のルックスを見る度、妙にムカつく少女だった(笑)。しかし、せっせと買い集めた『それいゆ』を舐めるように見た私が、最も魅かれたのは手芸インテリア。そこには私の理想の人形や小物の作り方が掲載され、そうした物たちを散りばめた部屋のインテリアまでトータルに紹介されていたのだ!

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◆夢中で作り倒しましたね(笑)。内藤ルネのイラストをアップリケしたり、水野正夫(最も影響を受けたデザイナー!)のデザインセンスを参考に人形を作ったり…。ボロボロながら捨てられず今も残る手作り品。けっこう味わい深かったりして―。

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◆こちらのBAGは使い続けて20年以上経つ代物(汗)。よれ&煤け具合にアンティークの趣きあり(笑)。周囲の評判も良かったんだよね~♪

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生涯の宝物、臨時増刊『生活の絵本』!

◆ここだけの話、私には自分の思い描く間取りの一軒家に住みたい!という壮大な夢がある。 我が経済状態を鑑みて、それはこの年でオリンピック選手や宇宙飛行士を目指すくらい途方もない夢だが(爆)、まっそれはそれ、これはこれで…お許しいただくとして。そんな妄想に火をつけたのが、「A+U」「Casa Bella」「2G」らの名立たる建築雑誌ではなく、『それいゆ 臨時増刊号 生活の絵本』シリーズなのだ!へへへ

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◆おそらく、当時一世を風靡していたモダニズム建築のエッセンスを、どう日本家屋に取り入れて泥臭い生活とおさらばするか―が、この増刊号のコンセプトだったのだろう。何せ「住宅の問題は戦後一番厄介な問題の一つだ」という一文で始まるのだから。

◆とはいえ、内容はいきなり現実的かつ具体的。「工費拾万円 期間21日間で作る」「七万五千円で建つ若いふたりの家」「庭の片隅に山小屋を作る~1萬5千円の大人のオモチャ」などの総力特集記事もあれば、ご予算に合わせて「千円で模様替えしたアパートの四畳半」といった小ネタも満載(笑)。とにかく快適な生活を目指した工夫がてんこ盛りで、思わずその真っ直ぐさに目頭が熱くなった。

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◆久しぶりに見返したが、やっぱりいいなあ~『生活の絵本』。今も大好き、宝物よ!無理して買ってホントよかった(涙)。特に、まるでお洋服を手作りするような軽快なフットワークで、家も建てちゃってるところがサイコー(笑)。芝居の書割りのような…段ボールハウスのような…(爆)。きっと目指す姿は欧米のモダン住宅だったのだろうが、むしろ私にはこの慎ましく可憐なmade in JAPAN風合いが、いまも一番好ましく映る。さーて、あとはいつ建てるかだけだな。妄想に終わりなし★

 

繰返しに堪えるファッション性!

中原淳一のブームは、それこそ定例化しているので正直言って新味はない。彼の好きな気高き美しさと、彼が登場した40~50年代の健やかな保守性がピタッとシンクロしたから仕掛け人になってしまったが、そもそもがあだ花的なファッションリーダーじゃないものね。本来、流行とは反対の人。ウエストが必ずきゅっとしまってて、スウェット素材なんて絶対許さないタイプよ(笑)。セクシャル度が低いところも鮮度が落ちない理由だと思う。

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◆30年以上も前になるのかな…。資生堂のPR誌花椿誌上(写真切り抜き)で、淳一ファッション特集を見たときのトキメキは忘れられない。衣装制作はこぐれひでこさん(写真はもちろん小暮徹氏!)。淳一の本質を射抜き、ノスタルジーに傾かず、カンペキに今に蘇らせていた。ちゃんとお洋服が呼吸していたのよね~。色々な人が淳一ファッションを再現しているが、未だこぐれさんの仕事に勝るものは出てこないなあ。モデルに伊藤蘭(現、水谷豊夫人ですね。確かに古い日本映画に登場しそうな顔立ち!)を指名し、細かくポージングをつけているのも素敵すぎるぅ~。

 

◆私なんてぜんぜんマニアの足元にも及ばないけど、雑誌にまつわる四方山話は尽きない。それだけ私の血肉になっている証でもある。「すべては雑誌からはじまった!」シリーズ、引き続きよろしくです★

 

PS 次号は9/30に更新予定です。