ジャコメッティ展✑備忘録

豊田市美術館で開催中のジャコメッティ展に行って参りました!南仏のマーグ財団美術館のコレクションを中心に企画された大回顧展、かなりイイですよ。年の瀬の何かとバタバタするこの時期に、足を向けるのは大正解かと思います。コレクション全体が1つのインスタレーションのように体感でき、ちょっと体内時計が変わるような気分になりました♫ 

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ところで、アルベルト・ジャコメッティ(1901‐1966)って何者?…と問われても、わたしもよー知らんかったです(爆)。正直なところ興味がなかった…。情報ストックは、せいぜい「はいはい、あの針金みたいにガリガリに痩せた人体像で有名な彫刻家ね~」程度(汗)。それだって実物を見た印象なのか、写真なのかも定かじゃなく、定型のイメージと本人のお顔だけが刻印されてました。同時代の彫刻家じゃ、わたしは断然ブランクーシLOVE♥派なんで(笑)。だから今回の回顧展は、初めてまともに全体像を探求できる機会になったわけです。たまたまギャラリートークにも参加でき、今じゃあイッキにジャコとお近づきになれた気がしちゃってます。(この、お調子者が~!)

 

✑備忘録① 故郷スタンパが原風景

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ジャコの故郷はスイス南東部の小さな村スタンパ。幼い時、ここで洞窟と樹々に魅せられた記憶が創作の原風景になっているとか。20歳でパリに出た後も、頻繁に帰省し、画家だったお父さんの残したアトリエで制作を続けたみたいです。ジャコを被写体にした写真はたくさん残されていて、非常にフォトジェニックな人なんだけど、いつだってジャケット着用が可笑しい!社会科の先生にこういう匂いの人いるよね?(爆)

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さて作品紹介に入らねば!まず、初期の作品が並ぶお部屋で遭遇した『ディエゴの肖像』(1919)を見て早くも確信をしましたね、「ほーっ、これは惚れそう♥」と。弟を描いた25.5×19 の小さな油絵。じぶんの見慣れた家族をこんなに奥行のある人物に描くなんて。弟、1歳違いだろ?すでに30代半ばの成熟感が…。しかもジャコが10代に描いた作品だって!

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✑備忘録② シュルレアリスム時代

1922年。田舎からパリに上陸したジャコは、新旧の芸術に刺激を受けたり、同時代を生きる様々な芸術家たちと知り合います。そうそう、若いってだけで世界は無限に広がって行くものよね~♪そんな中、当時もっともトンがってるシュルレアリスム運動に誘われて手掛けた彫刻作品も、今回の展示で見られるの。これがやたらカッコイイ!運動の本家たちが残したものより風化していない。どうやら我々が抱いてるジャコのイメージは第二次大戦後のものらしく、戦前の模索時代作品ももっと深掘りしたくなりました。

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 ✑備忘録③ ちっちゃいの、おっきいの…

とはいえ芸術のトレンドとはあっさりおサラバしたジャコ。1935年、モデルを使った彫刻へ作風を一変させるのです。この路線変更がまたまたユニークな表現方法に発展!

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隣にタバコでも置いてくれないと比較できないのだが(汗)、左の『小像(男)』は高さ6.6cm、右の『小像(女)』はその半分…ちっちゃ~‼‼  ところが、実物を凝視してると頭ん中でグングン像が拡大され、どの角度から眺めてもなんとも絵になるお姿に変身するから驚く。これ1個、ポケットに忍ばせて指先で撫でていたら、ちんぴらハートも浄化しそう…まるで小説『一切れのパン』ですね(爆)。とはいえ、作品があまりに小さくなってしまうので、ジャコは「高さ1m」というルールをじぶんに課したらしいです。するって~と、今度はどんどん細長くなってしまった―という有名な逸話があるとか(汗)。

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悪ふざけでも何でもなく、ジャコはいつだってじぶんの目で「見える通りに」対象を捉え、制作し続けていたらしいんですよ~。つまり、リアリズムを追及したらジャコの場合はこういう表現になった―ってことなんですね。

 

 ✑備忘録④ 細長のヴァリエ

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1956年に制作された女性立像シリーズヴェネツィアの女』乱暴に言えば、クラッシュアーモンド・ポッキープラットフォームシューズを履かせたフォルムなのですが(笑)、肉付きの微妙な違いで、2人として同じ女はいないという世の真実を痛感しましたね。どう?圧巻でしょ。

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続いては、クラッシュアーモンド・ポッキー(しつこいって!)を織部の角皿に並べた箱庭群像小舞台といった趣の作品~♪ 『森、広場、7人の人物とひとつの頭部』(1950)

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引きの絵でながめたら…枯山水やいけばなの「立花」のようにも見える―。小さな空間を宇宙に見立てるのが好きな日本人の感性には、特にフィットしやすい気がしました。見飽きることがなかったです。

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こちらは『広場、3人の人物とひとつの頭部』(1950)。台座の反り具合がたまらん!そこに点在するか細くて不安げな人間模様。刈り込まれた表現にジャコの繊細さが際立ちます。そして3Fフロアから2Fフロアを覗き見ると、会場全体がひとつの群像作品に―。

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 ✑備忘録⑤ 一番欲しかったのは…

そして今回の展示でわたしの欲望に火がついたのは…スケッチ&リトグラフの数々です!書物のための下絵』(1951)シリーズ、その躍動感に思わず心拍数が上りました。

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そう、ドローイングも彫刻も、制作姿勢は首尾一貫して対象への肉迫というか、「コツン」とした手応えを人間の中に掴もうと全身でトライしてる風に感じました。また、そんな緊張感が漂う一方、作品の前に立つと不思議な包容力が立ち上り、実に柔らかなんですよ~。ご本人の狙いや制作の実態はかなりストイックなものだったみたいだけど、わたしはジャコの受け止め力に魅かれましたね。スケッチしてる様子が動画で残っているからチェックしてみて。「おーっ、ここから書き始めるのかーっ!」と目からうろこです★


watch Alberto Giacometti paint!

 

✑番外編 なぜか“古代文字”

鑑賞後、繰返しジャコの作品を思い浮かべていたら、なぜか古代文字のイメージが頭の中を駆けめぐるようになったわたし(汗)。そこで、図書館で『こわくてゆかいな漢字』(二玄社書店)という本を見つけ、文字の字源を知る楽しさに浸りました。ジャコの作品も文字の起源も、人の営みの本質をミニマルに捉えてる気がして、イメージが連鎖したのかもしれません。

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こんな動画もあります。楽しいな~♫


甲骨文

 甲骨文字のデザイン性にはかねてから注目していましたが、字源を探って調子に乗ったところでわたしも創作!マブダチYちゃんからもらったダンス少女プリントのランチョンマットをベースに、酉の市の熊手を意識したミニ団扇を作り、刺繍で文字を入れてみたの~♪ 友人たちへのささやかなお歳暮にしてみましたがいかがでしょうか(笑)。

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 すいません、いつものことながら大きく脱線しましたね(笑)。もう一度ジャコに戻って締めくくりましょう。実はじぶんでもスッカリ忘れていたんだけど、去年の『1日1枚シリーズ』1月11日に亡くなった人の似顔絵ページに、ジャコを取上げていたんですよ!予知してたのかな…(笑)。引き合わせてくれた豊田市美術館に感謝★ みなさんもぜひ実物を拝顔してきてくださいませ~。12月24日(日)まで開催中です。

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PS 次回はX'masイヴの12/24(日)にUP予定。今年の『1日1枚シリーズ』を発表しますんでお楽しみに★

追跡!タンスの肥やし💎

『地球家族~世界30か国のふつうの暮らし~』(TOTO出版)という写真集を知ってます?世界30ヵ国、その国での中流」と呼ばれる家族の持ち物全てを外へ持ち出して、カメラに収め紹介するという、画期的なビジュアル・レポート集なんですわ。1994年、今から20年以上も前に発行された本なので、それこそインターネットで日々アップデートされる情報のリアリティとは大差があるとは思うんだけど、暮しの習慣や文化的背景はそうそう変わらないもの。生活道具を見比べるだけで様々なことが読み取れるこの1冊は、貴重な資料だと太鼓判を押したい。

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ーで、この本の視点がずーっと頭の片隅にあったわたしは、知り合いに「タンスの肥やしになってるものある?今は日の目をみていないけど、処分できずに保管しているものをお披露目して!」と声掛けしてみたの(笑)。本のようなビッグプロジェクトとは雲泥の差(爆)。でも、これがなかなか面白かったのよ~。わたしの質問を聞いてみなさんの頭に何がよぎったか、その捉え方の違いは予想をはるかに超えたわ。

 

【1】“一目惚れ”肥やし

モノ自体に惚れて手に入れたけど、今のところ美を真空パックして寝かせている方たちのご紹介。

マブダチ同級生Kは、むかしっから着道楽で、美しい仕上がりのものに目👁がない。未だに物欲は衰え知らずだが、本当は使うより眺めてウットリする時間の方が彼女にとっては宝物なんじゃないかな…なんて想像してる。そんな彼女のタンスの肥やしは刺繍入りシューズ。10年ほど前に上海のSuzhou Cobblersでゲットしたもの。シルクの光沢が眩しすぎるぅ~。Kは選び切れずに店ごと買い占めたかったって(笑)。こりゃあ確かに外履きにできないね。

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ご近所マブダチのF大阪でゲットしたスカジャンを引っ張り出してきた。たまたま入ったミナミのスカジャン専門店で、色目が気に入っての衝動買い。今の自分に似合うかどうかはさておき、「バアさんになったときに白髪頭で羽織ったらカッコイイかも…」という、将来を見据えてのタンスの肥やしらしい。そして隣に並ぶティディ・ベアは、10年以上前、メチャ仕事して稼いでいたときに、唯一の息抜きに通っていた老舗エステの会員様限定ノベルティ。彼女の趣味と全然違うのに保存してるのは、「散財したじぶんを振り返るため」だって。いいなあ、このじぶんに対する冷徹な視線!カッコイイっす★

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▶お次は東京から参戦のYちゃんの逸品。ジャーン、出ましたケリーバックっすよ~!!!! Yちゃんは、物欲が強いタイプじゃないんだけど、上品コンサバ路線道をずーっと歩み続けている人で、買うなら格調高いすぐれものと決めている。20年ほど前に新宿伊勢丹エルメスで念願のケリーをオーダーし、1年待って手元に届いたものの、「キズがついたら泣く〜🙈💦」と思うと持って出かけられなくてタンスの肥やしに(汗)。が、今回久しぶりに引っ張り出したら、なんと裏側に大きな引っ掻き傷があったらしく「こうなりゃ、使い倒すしかないね!」と宣言してました(笑)。そうこなくっちゃ!だって、ケリーが似合うクールビューティーな姫君なのよ~。

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【2】“想い出”肥やし

モノよりモノにまつわる想い出が肥やしになってる方たちをご紹介。このブロックは男性優位(爆)

▶マブダチ同級生MのダンナKが持ち出してきたのは、男子想い出肥やしの決定版だ。今から30数年前、東京在住時に憧れの高橋幸宏(!)の真似をして、背伸びして買ったルノー4」。愛車はずいぶん前にお釈迦になったが、Kは同じケリーグリーンのミニカーをたまに眺めては、独り愛車との想い出を振り返るわけです、はい(爆)。なぜか一緒に飾った公式野球ボールと名前入りゴルフティーについては、話が長くなりそうなので深くは触れませんでした(爆)。あ~あ、男ってヤツは…(遠い目)。

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 ▶で、これを撮影しているときに、息子のSも参戦してくれて…。去年の夏、単独で歩きお遍路をコンプリートしたときに、77番札所道隆寺の側で見知らぬお爺さんからもらった手作りのミニ地蔵です。「今すぐでも歩きに行きたい♫」と思うほど、お遍路体験は彼のアイデンティティになったらしいから、この先も想い出肥やしは何度となく振り返られることでしょう~。それにしても親子揃って“ミニ”がお好きなようね(笑)。

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 ▶そして、未だによくわかんないのが、マブダチFのダンナKがお披露目したこちらのセット。思わず「えっ何、これ?」「どんだけ、鈴あんねん!」と、突っ込み入れましたあ~(爆)。特別、神社仏閣に関心があるわけでも、宝物でもないけど、お参りに行くと記念にツイ買っちゃうらしいです。かつてのペナントみたいなものか(苦笑)。結婚式を挙げた川原神社の造営記念手ぬぐいまで出してきたが、ヨメの方はさっぱり覚えておらず大笑い。あ~あ、男ってヤツは…(遠い目)。

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 ▶想い出は想い出でも、女の方はダンゼン豪快。2012年から3年間、ダンナの赴任先の北米で、駐在員の妻体験をしたRちゃんがお披露目してくれたのは、ホームパーティー仕様のキッチングッズ。見て見て!料理研究家並にル・クルーゼの鍋がドッサリだあ~。向こうではいろんな種類のパーティが頻繁に開かれるようで、“おもてなし”は駐在員妻のある種の業務になっているみたい(汗)。食器も豪快、翡翠色が美しいファイヤーキング祭り!でも、どちらもデカいわ重いわで帰国後は「使うときありません(笑)」だって。なるほど、住宅事情が違うと食器の出番も様変わりするんだね。こーんなにキレイキレイな器なのに~(涙)。

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【3】“収集癖”肥やし

モノは集まるが…本当に必要かどうかは神のみぞ知る方たちのご紹介。

▶1つのモノに特化して、収集に終わりがない方たちがいる。モノそのものに魅かれるのか、それとも収集という名の征服欲が目的なのか、じぶんでも判断がつかない状態になる方たち…(笑)。映画とクラシック音楽マニアのH氏は、家中なんとなーく捨てられないものばかりで出来ていると言っても過言ではないという。ほとんどが本棚の肥やしとCD(レコード)棚の肥やし。でもある日、ある時、その「なんとなーく捨てられないもの」が、「あってくれて良かった~!」と光り輝いて見える瞬間があるから「断捨離なんて知ったこっっちゃねぇ!」と爽やかに述べられております。今回そのほんの一部を見せてくれましたが、プガジャ(清順特集!)を折り目もつけず、購入した分全部保管してるってあなた、国会図書館にもないわよ~(爆)。

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▶24時間365日、ずーっとマイブーム道を歩み続ける長年の友Kちゃん。女には珍しく若干偏った趣味をお持ちで(しかもしつこい)、ユニーク過ぎていつも笑わせていただいているのだが、今回彼女が押し入れから引っ張り出してきてくれたのは、バービー人形の復刻版たち。化粧箱はもちろん、小物も完コピ。当時の着せ替え人形はコレクターズアイテムで、オリジナルは超高値。20年くらい前、お手頃価格で復刻版が発売されたときには「今だ~♪」と飛びつき、トイザらスに足繁く通いっていらっしゃいました。とはいえ集めていた頃の熱い気持ちが今では思い出せず納戸行き~。つまり熱量は新たなターゲットに向かっているということです(笑)。あー、無常(爆)。

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▶さてトリを飾るのは、知り合いの中で最も収集魂の熱い男子Kちゃん、48歳荻窪の一軒家でヨメと息子の3人暮しだが、家の中の9割はヤツが買い集めてくるモノで埋め尽くされ、ほとんど店舗のバックヤード状態なんだわさ(爆)。コレクター熱の口火を切ったのは、スニーカー・ブーム真っただ中の1996年に買ったAIR SHAKE NDESTRUKT(エア シェイク インデストラクト)。そしてただの運動靴が運動靴で終わらなかったのは、行きつけのSHOPで同好の志たちと知り合い、モノを通じたDEEPな交流が生まれたからという。そのうえ、履かない&同じものが複数あっても「全て加水分解してると思う…」というオチだが(爆)、『モノに思い出』派だから処分する気はないらしい。あ~あ、男ってヤツは…(遠い目)。

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「自分の欲は無くなってきている感じがしています。老けましたね。ですので今は、息子を喜ばせるために、仮面ライダーや戦隊、ウルトラマンのおもちゃを集めています。」 いやいや、十分欲でしょう~(爆)。とはいえ、飲む・打つ・買うに走るダンナに比べたら安上りなのか…胆力のある(?)ヨメでよかったよね~。家族円満の証です❤

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 あー、取材って編集者の醍醐味ね★めちゃ面白かったなあ~。『地球家族』の中でも、日本人一家がダントツにモノが多くて興味深かったけど、モノを通したコト語りに、日本人の特徴が表れるみたい。たまにはタンスの肥やしたちに声掛けしてあげるのも、よろしいんじゃないでしょうか~(笑)。ご協力に感謝(ぺこり)。

 

PS 次回は12/10にUPします(今年も年の瀬でーす…汗)

いつだって筒美京平 ♫

かつては、祖父母や両親が懐メロに聞き惚れている姿を、冷ややかに眺めていたものだったが、いつしかスッカリじぶんがその立場になっていて、唖然とする今日この頃(笑)。TVで歌謡曲黄金時代を振り返る特集が組まれたり、ラジオからティーンエイジャー時に刷り込まれたメロディーが流れたりするだけで、自動的に鼻歌全開になっているのだ(苦笑)。それが、当時たいして魅せられた記憶もない曲だったりすると、いったい何に反応しているのか、我が事ながら不思議でしょうがなくなる(汗)。


桑田佳祐 - 悪戯されて(歌謡サスペンスビデオver. + 映像作品『THE ROOTS 〜偉大なる歌謡曲に感謝〜』トレーラー)

でも、桑田佳祐『ひとり紅白歌合戦THE ROOTS ~偉大なる歌謡曲に感謝~』で、キチンとじぶんの“熱”と向き合っているのを目にして、なんとなく腑に落ちた。とりあえずわたしも歌謡曲ぐっとくる(©みうらじゅん)のである(笑)。特にわたしの場合、筒美京平が仕掛ける楽曲の世界観は、当時から毎回別格の体験だったのだ!

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天才作曲家・筒美京平のことは、いつかは書いておきたいテーマの一つだった。ところがわたし、音は聞き分けられないわ、リズム感は悪いわ、楽器もできないわの音楽的素養ゼロ人間だから、ハードル高くて…(汗)。ヤバイわあ~。

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例えば筒美氏のスゴさを手っ取り早く数字で表すと、1971、1972、1973、1975、1976、1981、1982、1983、1985、1987年と10回にわたって日本の作曲家別レコード売り上げ年間1位を記録。この71~87年は、わたしの小学生~高校生時代とガッツリ重なり、音楽にトキメク体験=筒美京平世界に直結しているってわけだ。具体的に好きだった曲名で年代順に振り返ってみると、まずはグループサウンズ(GS)界の小結役だったオックススワンの涙('68)。小学1年時からしてすでに王道のタイガースには背を向け、脇の布陣に注目してしまう性には我ながら呆れるが(汗)、少女漫画風キャラの赤松愛(わたしの髪型のルーツか?爆)と、なーんちゃって欧羅巴ムード漂うメロディに陶酔してたっけ…。


筒美京平コレクション 1

でもって1971年に入ると、出るは出るは…ヒット曲の連発!尾崎紀世彦『また逢う日まで』堺正章『さらば恋人』平山三紀『真夏の出来事』、南沙織『17歳』野口五郎『青いリンゴ』欧陽菲菲『雨のエアポート』。何とこの年筒美氏は、1年間に19曲もの新曲を世に送り出しているのだ!GSの終焉と同時に、日本の歌謡曲の幅をイッキに押し広げた立役者。子ども心に音楽で背伸びができる快感を味わっていた気がする。


筒美京平コレクション 2

そして翌年、72年年間21曲の爆走(汗)。初代アイドル歌謡の必殺仕掛け人として、西城秀樹麻丘めぐみ郷ひろみ、そのうえ小林麻美岡崎友紀まで網羅する仕事ぶり。1940年生まれの筒美氏は、若干32歳で日本のエンターテイメント界を音楽で揺さぶっていたことになる。とはいえ、子供の頃からへそ曲がりのわたし。オックス以降はアイドルに夢中になることはなく、単純に曲とアレンジのみに反応していた(どうやらわたしは、歌手=声質にしか関心がないみたい…汗)。中でも決定的だったのは、73年に人気ラジオ番組 不二家歌謡ベスト10で、南沙織『傷つく世代』を耳にしたときだ。

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カッコイ~イ!と心底ホレた★南沙織は、べたついた女子っぽさがない歌い手で、どちらかというと好感を持ってはいたが、このアップテンポな曲を我がものにしたときのイメチェンにはドキっとした。Gジャンから皮ジャンへ衣装替えしたかんじというか…(姉妹編となる『夏の感情』は、無名だった頃のキャラメル・ママが参加!今聴いても新鮮♪)。と同時に、生まれて初めて作曲家という黒子の影響力―つまり筒美京平その人に目が向いた記念すべき1曲となったのだ。


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 その後も怒涛の如く歌謡界を刷新し続けた筒美氏。74年郷ひろみよろしく哀愁野口五郎甘い生活が共にヒットチャートの1位に輝き、翌75年は岩崎宏美イヤー『二重奏』『ロマンス』『センチメンタル』と、ぶっ飛びの傑作ラインナップが続くぅ~。一方でわたしも御多分に漏れず、中学&高校へと進むにつれ、背伸び欲求は洋楽にシフトし、青春気分はフォークやニューミュージックで補完していたが、夜のヒットスタジオのサロン的雰囲気で流れる都会派歌謡曲にも、やっぱり魅かれ続けたなあ…。


たそがれマイ・ラブ / 大橋純子

そして78年。渡辺真知子かもめが翔んだ日を、ユーミン『埠頭を渡る風を自作自演した同じ年に、筒美氏は大橋純子たそがれマイ・ラブを書いている。高校2年のわたしは、「なんかよくわかんないけど、女の人のバリエーションは色々あって、大人になるってカッコイイことなんだなあ…」と、この3曲によってボンヤリ噛み締めていた。そう、洋楽ではかなえられない具体性…なりたい未来の女の人のイメージを手繰り寄せた楽曲なのだ。天才筒美京平の引き出しは無尽蔵!世の中はピンクレディー旋風が吹き荒れていたけどね(遠い目)。


筒美京平コレクション 6

 そして80年代、筒美氏は勢いに乗るニューミュージックに目配せしつつ、アイドル歌謡の請負人として再びマシーンと化す!正直言ってわたしは、すでに歌謡曲のエグ味にお腹いっぱいだったが、当時の音楽業界は、発掘⇒実験⇒検証のサイクルによってアイドルの裾野は爆発的に広がり、もはや歌謡曲と一言で括り切れないほど多様な楽曲が日本中に吹き荒れていた。つまりバブっていたんですね。筒美氏も、田原俊彦近藤真彦といった最後の大物男子アイドルから、稲垣潤一CCB小泉今日子少年隊とまあ、あらゆる新素材の魅力を引き出し、黒子の帝王の健在ぶりを知らしめていた。


筒美京平 TV出演映像

筒美氏の活動「匿名性をどこまで維持しながら、音楽活動を行えるか」がコンセプトだという。これほど夥しい数のヒット曲を世に送りながらも、ご本人が取材に応じることはめったになく、もちろん今も現役。一時期、曲を発表するペースがあまりに早かったため、「実在しないのでは?」「ゴーストライター集団による擬人ペンネームでは?」といった噂まで流れたらしい(笑)。後ろ姿はおろか、その影さえ踏めないほどのスピード感で時代を牽引し続けるプロ中のプロ(知ってた?「サザエさん」のテーマ曲も彼の作品♫)。しかもこの天才が手掛けるものには、絶えず新しさと憂いが共存しているのだ―。あ~、カラオケいきて~え♫

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余談…ここで話は大きくそれるのだが(汗)、本特集を書くにあたり、多少は歌謡曲についてのお勉強をしておかなくては…と、金子修介『失われた歌謡曲を引っ張り出してきて再読した。17~18年前に非常に面白く読んだ1冊なのだが、いやー、またもやバカウケ!地下鉄車中で、声をあげて笑ったことも!ー(本文より)「洋楽ってのは結局、外国の歌謡曲のことだろ、日本の歌謡曲を差別するんじゃない」と、自ら打ちたてた理論に縛られ、その結果、大脳新皮質<歌謡曲体>が形成されてしまった ーと書く金子氏は現役の映画監督。はい、こちらの善良そうなオッサン(1955~)です。

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けっこうイイ映画撮ってんのよ。一方で、彼の説くドメスティック歌謡曲理論は、愛と屁理屈が交差し、笑って片付けてばかりもいられない鋭い考察に満ちている。特にアイドル論に関しては、日本を俯瞰した視座で捉えていて脱帽。ここに書き切れないのがザンネンだが(いつか金子特集組みたい❤)、ぜひ古本でゲットして読んでほしいわ。ちなみに監督は、わたしが今一番カラオケをご一緒したいお相手で~す(笑)。

 

PS 次回は11/19にUPします

 

 

 

 

勝手にシネマ評/『あさがくるまえに』('16)

ザンネンながら上映はすでに終了(汗)。でも、今後注目したい監督と出会った記念すべき作品、あさがくるまえに』の紹介をしておきますね★ 臓器移植をめぐる1日の人間ドラマ。レンタル時の参考にでもしていただければ幸いです。

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仏映画あさがくるまえに』は、新鋭の女性監督カテル・キレベレの日本初公開作品。予備知識ゼロで遭遇したが、なかなか大胆なことを、終始なめらかな手つきで差し示してくれて、その余韻が今も後を引くコートジボワール出身37歳。自ら切望してベストセラー小説を映画化できるなんて!…早くもその才能は、高く評価されているようだ。

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映画は立場の異なる3つの人間模様をシャッフルさせながら、早朝から翌朝までの1日のできごとを描く。1つは交通事故で脳死状態になった青年シモンにまつわる物語。喪失の痛みとドナー問題に揺れながら、ル・アーブルを舞台に進んで行く。2つめは、移植コーディネーターのトマを中心に、シモンを担当する医療スタッフたちのスケッチ。そして3つめは、移植を必要とする側に焦点を当て、パリに住み、2人の息子の母であり、重い心臓病に苦しむ音楽家クレアの周辺が綴られる。 

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シリアスなテーマ、かつ1日限定。…なのに群像劇で押してくるとは見上げたものである。そのうえ3つの人間模様には、時間を過去にもさかのぼり、登場人物一人一人の生の痕跡を刻むエピソードが散りばめられていて、情報量はハンパなく多い。でもこれが、けっこう重要ポイントになっている。わたしの偏見かもしれないが、ちょっとレベルの高い映像表現を志している作品は、登場人物の背景や内面描写を極力割愛し、シーンとシーンのつなぎに冒険の限りを尽くし、観客の想像力に勝負を挑むものだが、そうした作り手の跳躍がかえってアダになるケースも多い。

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一方ここでは、臓器移植という取り扱いに慎重さを要するテーマが横たわっているため、まずは実験精神より観客からの信頼獲得が肝心だ。そのうえで、何を起爆剤にして観客を映画の時間に止まらせるかが腕の見せ所となる。倫理観と親密さへの配慮は不可欠だが、扱い方には新味がないと、スクリーン内生命鮮度が急速に下がるのは避けられない。では、定石通り「喪失」から「再生」までをFIXしたうえで、予定調和を差っ引き、映像で語る必然性を、本作は何処に宿したか―。

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まず、目を惹くのが移動撮影である。冒頭、友人たちと早朝の海へ繰り出し、サーフィンを楽しむ生前のシモンの姿が、乗り物つなぎで捉えられる。自転車→車→サーフボードという流れは、一瞬たりとも止まることのない10代の躍動感を増幅させると同時に、この後の悲劇との対比を際立たせるための残酷な仕掛けにもなっている。

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しかし、幕開けから数分で、横たわったまま動かなくなる17歳が、この先も映画を通してずっと“動き続ける”からさらに驚く。恋人との想い出の中では、心臓破りの坂を鮮やかに駆け抜け、泣き濡れる両親の背後には、絶えず気配となって立ち現れるのだ。もし、帰らぬ人となったシモンを括弧で閉じたり、奇跡に転じていたら、映画自体が死んでしまっただろう。そうならないギリギリのところで、生命を浮遊させ続け、我々の想像力をつなぎとめているのである。

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反対に、臓器を受ける側からは、忍び寄る死の影を通して、ゆっくりと生命の輪郭が浮かび上がる。脳死状態の青年の心臓はイキイキと動き続け、生きているはずの彼女の心臓は停止寸前という皮肉な構図…。そしてクレアが、他人の生命を引き換えにしてまで生きる意味があるのかと自問自答するとき、我々も共に思いをめぐらす…延命がすべてなのか、何をもってじぶんの生死を定義づけるのかと―。生命至上主義に対する一歩引いた視線と、合理性だけでは処理できない人間の複雑さが、映画のリアリティを高めていた

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さらにここに、日々仕事として生命を扱う医療現場のスタッフたちの振る舞いが加算されて行く。しかも、彼らを社会的役割の範疇に留め置かず、多様な日常の一コマを頻繁に差し挟み、映画のトーンをちょっと乱すほどだったりする。大袈裟に言えば、「そのシーン、要るか?」の連続なのだ。でも、この広がりが生命の意味を異なる角度から照射し、我々を映画の時間に滞在させる要因にもなっている

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コーディネーターの通勤風景や、看護士の喫煙タイムは、テーマを際立たせるための余話ではない。生死を分けるアクションだけに時間が流れ、情緒の起伏があるわけではなく、私の目には、誰もが期間限定で借り受けた肉体を使用し、与えられた生を全うしようとしている光景に映ったのだ。

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臓器移植の猶予は24時間。2つの家族によって決断が下され、最後はル・アーブルとパリを、「臓器」だけが移動する。その一部始終は、まったく別の記録映画が始まったのでは?と見間違えるくらいのリアル映像に転じ、予想を見事に裏切る。メロドラマをねじ伏せての鮮やかな転調に、思わず息を飲んだ!

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もちろん「喪失」から「再生」へは定石通りに着地するのだが、桃色の心臓が放つ強烈なオーラを目撃した瞬間、わたしは鳥肌が立った。まるで今にもオギャーと声を上げそうな、生まれたての赤ん坊のように見えるではないか!人々がめぐらす思いや祈りは吹っ飛び、臓器そのものが湛えるエネルギーに圧倒され、頭の芯がいつまでもクラクラした。監督は危険を顧みず、映像に潜む暴力性を最大限に利用してみせているのだ。

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本作では、臓器移植をめぐって様々な言動や情感が行き交うが、どのエピソードも根底に流れているのは他者への想像力。これによって、生死がじぶんの身に起こる一回性のできごとに集約し切れない感触を残したのも印象深い。カテル・キレベレ、次作が楽しみな映像作家の一人となった。(余談だが、トマ役のタハール・ラヒムはわたしのご贔屓役者❤こんなお地味な役でもキラっと光って…うーんいいなぁ~♪)

 


9.16 (土) 公開[あさがくるまえに]予告編ロングバージョン

 

あさがくるまえに

2016年/仏・ベルギー/カラー/104分

監督/脚本   カテル・キレベレ
撮影   トム・アラリ
音楽   アレクサンドル・デプラ
編集   トマ・マルシャン

キャスト タハール・ラヒム アンヌ・ドルバル
     エマニュエル・セニエ ドミニック・ブラン

 

PS 次回は11/5にUP予定です

人生最期の晩餐は🍙おにぎりです!

大袈裟なタイトルで始めてしまいましたが…ホンキです(笑)。40過ぎたあたりから、しょっちゅう口にしていますー「人生最期の晩飯は🍙おにぎりと。本当は“母の”と付けたいところだけど(今のところ健在)、それはさすがにワガママ過ぎるだろう~、順番に逝かないとマズイだろう~…ですよね?(苦笑)でもやっぱ、ショーケースに並ぶおにぎりはパスだな(汗)。願わくば、人の手の感触が消えないうちに、握りたてをほおばるというシチュエーションが理想(意表を突く画像「世界食料デーキャンペーン おにぎりアクション」からチョイス。なんとエジプトで🍙!)

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はい、そこで今回は、知り合い8人に作ってもらった、そこんちの定番おにぎりを一挙にお披露目★ 家に押しかけ「おにぎり握れとねだる、行けないときは「おにぎり持って来いと脅す、はたまた遠方から「エアーおにぎり、画像で送れと詰め寄る…をやってみた。さながら『アウトレイジ 🍙編』ですね(笑)。メチャ美味し楽しかったわ~ この分では、最期と言いながら、何度も蘇ってリクエストしそう(笑)

1.【混ぜご飯おにぎり】

 ▶トップバッターはYちゃんちの定番『ワカメおにぎり』。愛娘Sちゃんの好物なんだって。炊き上がった白米に、ワカメご飯の素をまぶしただけらしいけど、冷めてもちゃーんと磯のかおりがするんだよね。こんな風に小ぶりに握って置いてあったら、間違いなくおやつにパクつくなあ…。あー、Yちゃんちの娘になりたい~♫

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 ▶さてお次は、バンコクで暮らすRんちの『ネギ梅おにぎり』。お盆の帰省中に強引にオーダーしたのに、竹皮に包んで持参してくれたよ~(涙)細ネギのみじん切りと、固めの梅干しを刻んだ組み合わせが新鮮息子たちもダンナもお気に入りの一品だって。飲んだ後につまんだら、たまんないだろうなあ~(涎)。ちなみに、タイ人に好評なのは食べるラー油であえた高菜漬けおにぎりらしい。暑い国ならではの反応だね

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2.【海苔勝負おにぎり】

 ▶とにかく海苔好きなの、わたし(笑)。もし小腹が空いて、すぐに食べられるものが見当たらなかったら、常時置いてある海苔をつまみ食いしてひとまず飢えをしのぐ(爆)。だからおにぎり、ブラボーなんです さて、同級生のKちゃんに定番おにぎりをオーダーしたら、Kちゃんの母上が代打に登場すでに40年近い付き合いなんで、母上ともご昵懇の間柄なの~。こちら、あらかじめすき間なく巻いたしっとり海苔使いがそそられるぅ~。具は焼鮭。細かくほぐしてご飯にまぶしつつ、真ん中にも切り身をぶっこんだ、2WEY贅沢おにぎりでした。感謝です

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▶表参道の洒落オツなバルを切り盛りするTちゃんにオーダーしたエアーおにぎりは、お店でよく出す『おっぱいおにぎり』☆彡 一番人気は練り梅で、中に紫蘇が入っているらしいわ(笑)。「乳首から攻めるお客さんもいて面白いよ」だって。…するってーと、この場合、海苔はお布団?それともブラ?(爆)

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3.【変わり種おにぎり】

伊賀上野のお寺の嬢ちゃんだったヨガの先生Mさん。絶えず大人も子どもも寄り集まるオープンな場所に生まれ育ったから、家の手伝いをするのは日常茶飯事だったらしい。食事もおやつも遊び道具も、見よう見まねで何でも手作り。中でもおにぎりは、子どもの工夫が発揮しやすいアイテムだから、たくさんの思い出があるとか。棒状の海苔巻きは、伊賀の里ならではの巻物再現忍者は山菜の炊き込み、くの一は赤飯巻き

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 ▶ご近所に住むFんち夫婦とは、しょっちゅう行き来し合う親戚状態の間柄(笑)。先日も、互いに手作り惣菜を持ち寄って夕食会を開いたばかりだ。〆に出してくれたトウモロコシ炊き込みご飯が美味しかったので、おにぎりバージョンをねだったら、バター醤油を塗って焼きおにぎりに~♬甘じょっぱくてマジにヤバイ美味しさ(涎)冬瓜汁との相性もバッチリ

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4.【塩むすび】

 ▶ちなみにわたしの最も好きなおにぎりの具は「志ぐれ」なの最期の晩餐は、「貝新」の手むき志ぐれ蛤入りで、なんとかひとつお願い申し上げたいところです~。母方の亡くなった祖母が遊びに来るとき、よくあさりの方を土産に持参してくれたなあ(涙)大人になって値段を知って驚愕(汗)…あさりだって牛肉並のお値段(汗)…。きっと孫の好物と思い、奮発してくれてたんだね(涙)。 

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▶そして最後はおにぎり界の“裸婦”こと塩むすびです。まずは、お盆休みに実家へ立ち寄った時に作ってもらった母の塩むすび。帰省したら、どんなにお腹いっぱいでも必ず握ってもらうことにしてる(汗。電子レンジで温め直したご飯でも、彼女が握るとなぜかツヤツヤすきやばし次郎」も顔負けよ(笑)。海苔は後巻き。1個その場で食べて、1個持ち帰るのが定番。あと何回食べられるかは、神のみぞ知るですな…

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同級生のM宅も、しょっちゅうみんなでゴハン会をする居心地のイイ場。わたしも出張料理人で腕を奮いま~す。毎回たっくさんのお惣菜がテーブルを占拠するけど、〆にはMの塩むすびをリクエストするのがいつもの流れMのダンナの故郷・高知のコシヒカリ「四万十のかおり」で握ったおにぎりをほおばれば、もはや昇天でございます

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そういえば、他人が握ったおにぎりが食べられない人がいるらしいよね。わたしは逆だな。料理好きなくせに、じぶんが握ったおにぎりはイマイチ美味しいと思えない(汗)。わたしの場合、おにぎり=「誰かに気持ちを委ねて食べるもの」「甘ったれモードでパクつくもの」と、イメージしてる節がある。つまり、さんざん勝手放題に生きて、最期は赦されてこの世とバイバイしたいのかもしれないね~(爆)。協力していただいたみなさま、オレさま全開のちんぴらにご協力いただき、誠にありがとうございました(ぺこり)★ 

 

PS 次回は10/22にUPします

 

 

勝手にシネマ評/『ロスト・イン・パリ』('16)

わーい、わーい、心底うれしい!夫婦道化師、ドミニク・アベルフィオナ・ゴードンの新作を紹介できる日がついにやって来た!何かと一言多いこのわたしが、もろ手を挙げて「ブラボー!」と喝采を贈る数少ない作り手、それがアベル&ゴードンだ。

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本当は余計なことなど、グダグダ書きたくないんだよなあ…。何せ2人はパントマイムを芸道の神髄にしているから、言葉で説明するほどに野暮になってしまう(汗)。見事な身体フル稼働おしゃべりを、黙って眺めているだけで、じわじわと彼らの波動に感染し、「これ以上、なにか要りましたっけ?」なーんていう境地に至るわけだ。でも、監督・脚本・主演もこなす名コンビとはいえ、もともと舞台出身の道化師だから、強力な前フリがないと、多くの人にとっては「誰それ?」「何それ?」で終わってしまいかねない…。

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幸運なことに、わたしは2010年に公開されたアイスバーグ』(‘05)と『ルンバ!』(‘08)を、立て続けに目撃してノックダウンしちゃった口なんで(どちらも傑作!今すぐチェック!)、ここはあえてデバって、鑑賞の動機づけにしてもらおうと筆を取った次第です、はい。

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新作『ロスト・イン・パリ』のあらすじはこうだ―。

雪深いカナダの田舎町で暮らす図書館司書のフィオナ(フィオナ・ゴードン)の元に、パリで自由な独居老人生活を謳歌しているはずのマーサおばさんから、助けを求める手紙が届く。心配になったフィオナは、“はじめてのおつかい”さながらに、憧れの地パリへ旅立つが、アパートを訪ねてもマーサの姿はないわ、セーヌ川に落ちて所持品を丸ごと失くすわ、怪しげなホームレスの男ドム(ドミニク・アベル)にまとわりつかれるわで、踏んだり蹴ったり。果たして、フィオナとマーサとドムの3人の関係をグルグル巡る人生すごろくが、“あがり”に着地する日はくるのか?!―

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どう?なんとなくお気楽な喜劇を想像したのでは?そうそう、のんきに構えて頂いて大いにけっこう。ひとたび幕が上がれば、そんなに単純な映画じゃないってことが一瞬でわかるから。むしろギャップを味わえて、ちょうどいい塩梅よ。さてここから先は注目ポイントをご紹介★

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まずは身体性。セリフを抑え、パントマイムを語りにして物語を紡ぐ彼らの作法は、これぞまさに身体を張った純度100%のアクション映画。例えば、フツーに歩く、フツーに走る、そしてフツーに立つ姿までも、けしてフツーじゃない。いや、この説明じゃわかんないか(苦笑)。つまり、無意識で行う動作のすべてに、想像力をかきたてる芽がぎっしり生えているので、一つの動作を機転にして何が巻き起こるか、予測不可能な愉しみがある。物語に奉仕するアクションではなく、アクションによって物語が自然発生し続ける…そんなニュアンス

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しかも、フツーの動きから逸脱しているのに、意図的に映らないから驚く。2人の足は、シャガールの絵のようにファンタジーの絨毯に乗って浮世を離れることはなく、軽やかではあるが、絶えず我々の足元と同じ大地をステップしている。彼らの作品に流れる親密さの源泉は、こんなところにある気がした。

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次に色彩設計。赤、黄、青の3原色を惜し気もなく使い切る彼らの作法は、パントマイム同様、色を語りに用い、物語の展開に花を咲かせる。雪の「白」から始まり、カナダ国旗の「赤」が小物となって飛び跳ね、ウブな心を持つフィオナには「緑」、ヒロインを照らすドムには光の「黄」をまとわせて、2人を引き合わせたマーサが「青」いマフラーで聖母の象徴となる―。色彩とアクションの掛け合わせで、映画のマジックがさらに際立つ設計。そのうえ、これだけ色彩を前面に押し出しながらも大袈裟な印象は皆無で、ノンシャランな香りが損なわれないのも、特筆すべき点だろう。

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最後は世界の捉え方である。映画は、おばさんを救出しに行ったヒロインが脱線を繰返し、「ミイラ取りがミイラになる」スケッチをしつこく盛り込む。ステップは軽妙、絵はカラフル、情感は控えめ…なのに、行く先々で遭遇するハプニングは、かなり酷くてギョッとする。緩急交えながらのノンストップ波乱中継。そう、ギャグと匂わせる一方で、リアルな世界の不条理さもつかまえて逃さないから、やけに骨身に染みるのだ。

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火葬場に閉じ込められるコント、コインランドリー野宿にゴミ箱あさり、はたまた自由すぎるおばさんの下半身事情までぶちまけ(!)、我々を煙に巻いて澄まし顔♫ えぐいエピソードの数々が、ここでもアクションの浄化作用で、愛らしく様変わりするからタマらない~。

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やがて3者3様に世界を彷徨い、多様なメロディーに乗って身体一つでたどり着いた先には、エッフェル塔自由の女神がしっとりと浮び上がる。原題は裸足のパリ。自由を我がものにした“あがり”の絵に、もっともふさわしい地、パリのきらめきの中で、無常観まで漂わせて映画は幕。散骨に降る雨までも自由で心憎いアベル&ゴードンの世界…無論、締め括りの一言は「ブラボー!」でキマリよ★

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名古屋シネマテークにて公開中!

9/16(土)~ 9/22(金)⇒12:45~   18:40~

9/23(土)~ 9/29(金)⇒11:00~


映画『ロスト・イン・パリ』予告編

 

『ロスト・イン・パリ』

2016年/ 仏・ベルギー/カラー/83分
監督・脚本・製作・主演  ドミニク・アベル フィオナ・ゴードン
撮影      クレール・シルデリク ジャン=クリストフ・ルフォレスティエ
美術      ニコラ・ジロー
キャスト    エマニュエル・リバ ピエール・リシャール フィリップ・マルツ

 

PS 次回は10/2にUPします

テオ・ヤンセン展と“夏休み自由研究” PART 2

【どうやって動かす?

さて、前号『テオ・ヤンセン展と“ティンカリング” PART  1』 で記したように、テオ・ヤンセンの作品群に触発されたわたしは、―どうやったら手動で動く物体を生み出せるか―を、四六時中考えることになったのであります(笑)。これがねー、頭で考えてもぜんぜん思い浮かばないわけ(汗)。だいたいわたしの長年培った発想では、「動く」どころか「平面」でしかプログラムできないからさー、マジに、自我を揺さぶる意識改革となったのよ~。で、そういうときは、ゴタクを言わず、手を動かして頭をほぐすっていうのがわたしのモットー。なので、前号でご紹介した本―『THE ART OF TINKERING(ティンカリングをはじめよう)』の中から、わたし好みのアイデア「オートマタ」(からくり)を真似て作ってみた!

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まずは材料集め。竹串、ストロー、発泡スチロール、段ボール、ガムテ、目打ち…など、ウチにあるもので調達できた。ここから⇒「カム」「レバー」「継ぎ手」の3つのパーツをテキスト通りに作り⇒全部を組み付けていちおう完成。こんなシンプルな構造で本当に動くかどうか、作りながらも半信半疑だったわよ(笑)。でも、せっかくなんで、動かす部分につける飾りは、わたしの仮想メンターとなったテオ氏に敬意を表し、彼の顔にしてみた(笑)。こちらがテオからくり人形の完成品♪

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どう?置物としてもけっこうよくない?(笑)いやいや、それだけじゃございません!マジにいい動きをするのよ~、サイコーに愉快なんだよ~!動画UP方法がわかんなくて(汗)、動画でお見せできないのが悔やまれる(涙)。黄色のレバーをグルグル回すと⇒小さい赤いカムが回転し⇒大きい赤いカムフォロアに伝わり⇒垂直の竹軸が回転。テオ氏の顔と紐が回って回ってまわ~る~♫状態に(爆)。カムの位置と、カムの形を楕円にすることで、上下運動も加味され、想像を超えた玩具制作が実験できた。最も素朴なからくりだけど、シンプル故に、工夫次第で味わい深い動きになることがわかったわ

 

【風鈴もどきもあり?

とはいえ、アイデア一発トライじゃあ、イマイチでしょう~。ここで、何かと強欲なマブダチKとMの顔を浮かべたら、ダメ出しされるのは目に見えているもんなあ(爆)。本当なら、風を動力にしているテオ氏に倣いたいところだが…できっこないし…。そこで2作目は、風鈴もどきでお許しいただくことしました(苦笑)。

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せめてを受けやすくするため、紙にひねり技なんか駆使してみたよ(笑)。テオ氏がヘビーローテしてる重要アイテム、「結束バンド」を真似してあしらってみたり(爆)。素材が軽すぎて、びゅんびゅん動きすぎるのは舌打ちもんだったけど、フォルムはなかなか気に入ってるわ。ロシア構成主義のデザイナー、ロトチェンコ(1891-1956)風に見えなくもない?!(関係者のみなさま、勝手書いてすみません…ぺこり)

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【工作界のヒーロー発見!

そうだ!困ったときはネット検索。やっぱり、動きのバリエーションを増やしたくて、「工作」「からくり」「玩具」etc…テキトーに入れて検索したら、出てくる出てくる―。作り方まで載っけた大量の動画がUPされてて、興奮しちゃいましたよ~。その中でも、わたしの眼にとまったのは、野呂茂樹氏の作品たち。動きも、デザインもセンス抜群!可愛いったらありゃしないのよ❤一体、このオッサン何者?


ミニしかけ絵本(3)

野呂茂樹氏の経歴は、【昭和17年(1942年)生まれ。弘前大学卒業。昭和40年~平成15年まで青森県高校教諭。所属に日本物理教育学会、科学読物研究会、サイエンスレンジヤー(日本科学技術振興機構)、科学する心応援隊(青森県)】と、お地味に紹介されていた。理系のせんせいだった方なのね。これぞまさにわたしがイメージするティンカリングの体験者。イデアが炸裂していて、まったくびっくりポンですよ。あれもこれも真似して作ってみた~い(動画を眺めるだけでもホホがゆるむ)。取り急ぎ、テオ人形3つめの動きはこのカエルバージョンで!

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市松模様の部分を押したり引いたりすると、テオ氏の骨格が伸び縮みするしくみ(爆)。手はアイスクリームの棒でーす。背中に★をしょってまーす。ボディにお菓子の箱を利用したけど、野呂せんせいのカエルように、薄い紙の方がジャンプが軽快になる気がした。今度は折り目の位置も変えてみよーっと。

 

アルカトラズからの脱出

野呂せんせい、UPしている動画のセンスもサエてんの。子ども向け動く工作教室と侮るなかれ!


科学工作:羽ばたく蝶

イデアはもちろん、モチーフが◎、ユーモアが◎、構成が◎、作りのユルさも◎だし、動画のテンポまでぜんぶ◎(笑)。映像の最後に「おしまい」とテロップが出るのも大好き❤ ジャック・タチの映画に通じる上等喜劇の香りさえ漂って見えるのはわたしだけ?(爆)


『ジャック・タチ映画祭』予告編

鉄棒シリーズは、素材違いで様々なバージョンがあるけど、手足の屈伸を入れたゴリラ版が一等お気に入り★ 4つめのテオ人形の動きに取り入れてみたよ。


手動クランク式鉄棒人形

なんとわたしの鉄棒人形は、テオ氏を囚人に見立て、さながらアルカトラズからの脱出だ!海と鮫が迫り来る~(笑)。

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手足の関節に切れ目を入れての大車輪!あー、このダイナミックな動きを、テオ氏にお見せしたい~(笑)。怒られるかな?(爆)ヘへへ

 

というわけで、自由研究に夢中になった2017年の夏の想い出は、いかがでしたでしょうか―。手動で動くモノ作り熱は、しばらく続きそうです。―次は友だちの顔を貼りつけてプレゼントしちゃお~っと(有難迷惑?笑)。

 

PS 次回は9/17にUP予定。アベル&ゴードンの新作映画『ロスト・イン・パリ』を紹介します!