ジャコメッティ展✑備忘録

豊田市美術館で開催中のジャコメッティ展に行って参りました!南仏のマーグ財団美術館のコレクションを中心に企画された大回顧展、かなりイイですよ。年の瀬の何かとバタバタするこの時期に、足を向けるのは大正解かと思います。コレクション全体が1つのインスタレーションのように体感でき、ちょっと体内時計が変わるような気分になりました♫ 

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ところで、アルベルト・ジャコメッティ(1901‐1966)って何者?…と問われても、わたしもよー知らんかったです(爆)。正直なところ興味がなかった…。情報ストックは、せいぜい「はいはい、あの針金みたいにガリガリに痩せた人体像で有名な彫刻家ね~」程度(汗)。それだって実物を見た印象なのか、写真なのかも定かじゃなく、定型のイメージと本人のお顔だけが刻印されてました。同時代の彫刻家じゃ、わたしは断然ブランクーシLOVE♥派なんで(笑)。だから今回の回顧展は、初めてまともに全体像を探求できる機会になったわけです。たまたまギャラリートークにも参加でき、今じゃあイッキにジャコとお近づきになれた気がしちゃってます。(この、お調子者が~!)

 

✑備忘録① 故郷スタンパが原風景

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ジャコの故郷はスイス南東部の小さな村スタンパ。幼い時、ここで洞窟と樹々に魅せられた記憶が創作の原風景になっているとか。20歳でパリに出た後も、頻繁に帰省し、画家だったお父さんの残したアトリエで制作を続けたみたいです。ジャコを被写体にした写真はたくさん残されていて、非常にフォトジェニックな人なんだけど、いつだってジャケット着用が可笑しい!社会科の先生にこういう匂いの人いるよね?(爆)

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さて作品紹介に入らねば!まず、初期の作品が並ぶお部屋で遭遇した『ディエゴの肖像』(1919)を見て早くも確信をしましたね、「ほーっ、これは惚れそう♥」と。弟を描いた25.5×19 の小さな油絵。じぶんの見慣れた家族をこんなに奥行のある人物に描くなんて。弟、1歳違いだろ?すでに30代半ばの成熟感が…。しかもジャコが10代に描いた作品だって!

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✑備忘録② シュルレアリスム時代

1922年。田舎からパリに上陸したジャコは、新旧の芸術に刺激を受けたり、同時代を生きる様々な芸術家たちと知り合います。そうそう、若いってだけで世界は無限に広がって行くものよね~♪そんな中、当時もっともトンがってるシュルレアリスム運動に誘われて手掛けた彫刻作品も、今回の展示で見られるの。これがやたらカッコイイ!運動の本家たちが残したものより風化していない。どうやら我々が抱いてるジャコのイメージは第二次大戦後のものらしく、戦前の模索時代作品ももっと深掘りしたくなりました。

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 ✑備忘録③ ちっちゃいの、おっきいの…

とはいえ芸術のトレンドとはあっさりおサラバしたジャコ。1935年、モデルを使った彫刻へ作風を一変させるのです。この路線変更がまたまたユニークな表現方法に発展!

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隣にタバコでも置いてくれないと比較できないのだが(汗)、左の『小像(男)』は高さ6.6cm、右の『小像(女)』はその半分…ちっちゃ~‼‼  ところが、実物を凝視してると頭ん中でグングン像が拡大され、どの角度から眺めてもなんとも絵になるお姿に変身するから驚く。これ1個、ポケットに忍ばせて指先で撫でていたら、ちんぴらハートも浄化しそう…まるで小説『一切れのパン』ですね(爆)。とはいえ、作品があまりに小さくなってしまうので、ジャコは「高さ1m」というルールをじぶんに課したらしいです。するって~と、今度はどんどん細長くなってしまった―という有名な逸話があるとか(汗)。

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悪ふざけでも何でもなく、ジャコはいつだってじぶんの目で「見える通りに」対象を捉え、制作し続けていたらしいんですよ~。つまり、リアリズムを追及したらジャコの場合はこういう表現になった―ってことなんですね。

 

 ✑備忘録④ 細長のヴァリエ

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1956年に制作された女性立像シリーズヴェネツィアの女』乱暴に言えば、クラッシュアーモンド・ポッキープラットフォームシューズを履かせたフォルムなのですが(笑)、肉付きの微妙な違いで、2人として同じ女はいないという世の真実を痛感しましたね。どう?圧巻でしょ。

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続いては、クラッシュアーモンド・ポッキー(しつこいって!)を織部の角皿に並べた箱庭群像小舞台といった趣の作品~♪ 『森、広場、7人の人物とひとつの頭部』(1950)

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引きの絵でながめたら…枯山水やいけばなの「立花」のようにも見える―。小さな空間を宇宙に見立てるのが好きな日本人の感性には、特にフィットしやすい気がしました。見飽きることがなかったです。

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こちらは『広場、3人の人物とひとつの頭部』(1950)。台座の反り具合がたまらん!そこに点在するか細くて不安げな人間模様。刈り込まれた表現にジャコの繊細さが際立ちます。そして3Fフロアから2Fフロアを覗き見ると、会場全体がひとつの群像作品に―。

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 ✑備忘録⑤ 一番欲しかったのは…

そして今回の展示でわたしの欲望に火がついたのは…スケッチ&リトグラフの数々です!書物のための下絵』(1951)シリーズ、その躍動感に思わず心拍数が上りました。

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そう、ドローイングも彫刻も、制作姿勢は首尾一貫して対象への肉迫というか、「コツン」とした手応えを人間の中に掴もうと全身でトライしてる風に感じました。また、そんな緊張感が漂う一方、作品の前に立つと不思議な包容力が立ち上り、実に柔らかなんですよ~。ご本人の狙いや制作の実態はかなりストイックなものだったみたいだけど、わたしはジャコの受け止め力に魅かれましたね。スケッチしてる様子が動画で残っているからチェックしてみて。「おーっ、ここから書き始めるのかーっ!」と目からうろこです★


watch Alberto Giacometti paint!

 

✑番外編 なぜか“古代文字”

鑑賞後、繰返しジャコの作品を思い浮かべていたら、なぜか古代文字のイメージが頭の中を駆けめぐるようになったわたし(汗)。そこで、図書館で『こわくてゆかいな漢字』(二玄社書店)という本を見つけ、文字の字源を知る楽しさに浸りました。ジャコの作品も文字の起源も、人の営みの本質をミニマルに捉えてる気がして、イメージが連鎖したのかもしれません。

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こんな動画もあります。楽しいな~♫


甲骨文

 甲骨文字のデザイン性にはかねてから注目していましたが、字源を探って調子に乗ったところでわたしも創作!マブダチYちゃんからもらったダンス少女プリントのランチョンマットをベースに、酉の市の熊手を意識したミニ団扇を作り、刺繍で文字を入れてみたの~♪ 友人たちへのささやかなお歳暮にしてみましたがいかがでしょうか(笑)。

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 すいません、いつものことながら大きく脱線しましたね(笑)。もう一度ジャコに戻って締めくくりましょう。実はじぶんでもスッカリ忘れていたんだけど、去年の『1日1枚シリーズ』1月11日に亡くなった人の似顔絵ページに、ジャコを取上げていたんですよ!予知してたのかな…(笑)。引き合わせてくれた豊田市美術館に感謝★ みなさんもぜひ実物を拝顔してきてくださいませ~。12月24日(日)まで開催中です。

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PS 次回はX'masイヴの12/24(日)にUP予定。今年の『1日1枚シリーズ』を発表しますんでお楽しみに★