オモロいわぁ~😊『古事記』(読み比べ編)
前号に引き続き『古事記』特集をお贈りしま~す♫
さて、『ラノベ古事記』の読了寸前でテンションMAXになってたときに、例のマブダチMがしれーっと「でもこの本は,古事記の最初の 1/3 のイワレビコが生まれるところまでなんですよね~」。…おいおい、それはないだろう~(汗)、遅出しジャンケンにガックリきのこになったわよ(汗)。Webで続きも読めると知ったけど、昭和36年生まれはやっぱ本にこだわって、困ったときの図書館頼みに猛ダッシュ。そこで戦略変更。神さまの話から代々の天皇の話へ移行する『古事記』の中巻&下巻へ読み進めるのは一旦お休みにし、愛着を感じた上巻のバージョン違いを楽しもうと目論んだのであります!
読み比べ1冊目に選んだのは『橋本治の古事記』(講談社)。敬愛する橋本センセイ♥ やっぱ『古事記』も現代語で蘇らせていたんですねぇ、さすがです(ぺこり)。これがねー、女主人調語りでグッとくるの。岸田今日子や市原悦子のナレーションを想像してみてくださいな~♫ ゆったりと神秘的に構えながら、語りの底に冷え冷えとした肌触りが立上る、何とも大人な味わいなのよ。思わず息をひそめて読み耽りました。
橋本センセイの古事記の特徴を3つ挙げると…
- 「序」は琵琶法師調「本編」は女主人調のトランスジェンダー 語り
- 神さま、土地、モノなど、名前の由来を丁寧に言及しながら進行
- 上巻に収められた8種の歌すべてが現代語訳で今に蘇る!
響きがいいのよ~。『ラノベ古事記』が、チャラ男のオオクニヌシをはじめとしたわんぱく男子校の冒険譚だとすると、橋本センセイ版は女たちのスゴ味を堪能させる流麗な絵巻物風。なにせ古典を現代語で蘇らせた本家本元は橋本センセイですからねっ!その橋本センセイが、ここではグッと渋く年増女な貫録を匂わせて腕をふるっているからゾクゾクしちゃったなあ。例えばあの三貴神誕生のくだりはこんな調子―
イザナキの命は、アマテラス大御神におおせになりました。「あなたは、高天原をご支配なさい。」 イザナキの命は、つぎにツクヨミの命におおせになりました。「あなたは夜の国をご支配なさい。」 そして最後にイザナキの命は、タケハヤスサノオの命におおせになりました。「あなたは、海原をご支配なさい。」―(本文より)
イザナキは男神。なのに独り(!)で3人の尊い神さまを産んじゃって、そこで口にするのがこのセリフ。「ご支配なさい」は、性別を超えたトランスジェンダーな香りがして、実にしっくりきたんだよね~。そうそう、橋本センセイの書き下ろし新刊本のタイトルはなんと『草薙の剣』。ヤッタ~、引続きご教示をお願いできそうだわ!
そして読み比べ2冊目に選んだのは『絵物語 古事記』(偕成社)。はい、出ました、これまた傑作!古典中の古典、しかも“天地のはじまり”の物語となれば、「きっと上等な児童書版が出てるだろう…」と目星をつけ、子ども図書コーナーで物色した1冊なの。文章は富安陽子さん、挿絵はアニメーション作家の山村浩二氏、そして古事記研究者の三浦佑之氏が監修を手掛けています。
こちらはつかみに勝負をかけ、「序」をすっ飛ばして出発進行!児童向け図書には“あり”でしょう~。ページをめくれば「国生み」の章、その語りはこんなかんじ…
なになに、この国のはじまりのことをしりたいというのかな?よしよし、話してあげよう。 でも少々長い話になるぞ。なにしろその物語は、むかしむかし、大むかし、まだこの世の形がさだまらず、なんにもなかったところから、はじまるのだからな。―(本文より)
ザ・翁調ですよ~。素敵でしょ?本編は13章に分かれ、それぞれ20ページ程度の分量でリズム良く構成されています。語りを意識したシンプルな言葉使いが美しくて、何度となく声に出して読みたい衝動に駆られたわ。そのうえ、黒鉛筆だけで全ページに添えられた山村さんの絵がすばらしいのなんの…マジで腰が抜けそうになりました(汗)。ほれみて、日本列島、できてるじゃーん!
『古事記』の上巻は、天地開闢を始めトンデモ話の連続なんだけど、それをことごとく絵にしちゃう山村さんの創造性に、ただただ感服(涙)。もはや、挿絵仕事の範疇じゃございません。新しい宇宙を生み出している感さえあります。もしかして山村さんがイザナキなのではないでしょうか?(笑)
ほらほら、お酒に引き寄せられて、ヤマタノオロチもずるりずるりとやってきましたぜ。ヤッベ―、音も動きも匂いも感じてしまいますです、はい。騙されたと思って、ぜひ手に取ってみてください。一家に一冊、必読の書です★
そして最後はビジュアル本!『古事記 日本の原風景を求めて』(新潮社/とんぼの本)です。「これ、どこのことなんだろう…」―『古事記』を読み始めると、神話の地に思いを馳せずにはいられなくなるの。物語の伝承地に行きたいよ~♪とそわそわしちゃう(笑)。そこで見つけたのが、サブテキストにもってこいのこちら―
さーすが芸術新潮さん、『古事記』の風景がくまなく取り込まれていて、至れり尽くせりな実写アルバムに仕上がっています。えー塩梅の写真ばかりで、“エアー古事記ツアー”を満喫!イザナキとイザナミが最初に作ったオノゴロ島を皮切りに、黄泉比良坂をふさいだ千引岩(ちっこ~い!)や、オロチの首から流れ出る血で赤く染まったという斐伊川に、稲羽のシロウサギの伝承地白兎海岸も!もちろん神さまたちを祀る神社もどっさり登場~★
驚いたのは、高千穂にあるアマテラスゆかりの天岩戸神社の近くに、神さまたちが作戦会議をしたあの天安河原(あまのやすかわら)があるらしいのよ~。つまり、わたしがインテリヤクザと崇めるオモイカネさま♥が、ここで陣頭指揮をとったってことよね?いやー、もっともらしい気配が濃厚じゃないですか~。アメノウズメになり切って、踊り狂うステージとしても悪くないわよ(笑)。ニッポン列島、オモロすぎるぅー。
長年、神社はデートするのに最も好きなスポットだったけど、何が祀ってあるかなんてぜーんぜん興味がなく、ある種のインスタレーションとして体感してたわけ(汗)。それが今じゃ、物語性が先行しはじめ、映画のロケ地に見立てて想像するようになってますわ(笑)。出雲、高千穂、日向…いつか足を伸ばしてみたいなあ♥ この本は『古事記』全編を対象に、紀行文や最新研究ルポも掲載されてて、ちょっとおたくモードになれちゃう欲ばりな1冊。これで中巻⇒下巻への関心も、じわじわと高まってきましたあ~。
オモロいわぁ~😊『古事記』!
「見るなの禁」「穢れ」「禊」「国生み&国譲り」「蘇り」「美醜問題」「誓約(ウケイ)」「兄弟喧嘩」「母性と父性」「神殿」「天孫降臨」…。この2ヵ月、『古事記』を通して神話の世界に遊んでいたら、今まで使ってこなかった思考スイッチがONになり、絶えず脳ミソが喜んでる状態になってマシタ!次から次へと生まれる神さまたち、その誰もが全能じゃないからこそ、こうしてずーっとずーっと語り継がれているんだね。今の世の中に流布するドラマツルギーのすべてがここにある―古典はスゲーよ!
そしてつい最近、これまた何かと御託の多い(!)同級生のHに「古事記がオモロい!」と浮かれて共有したら―「『乞食(アッカトーネ)』ならパゾリーニだが、『古事記』なら、石川淳でしょう。格好いい訳だよ。読んでみらっしゃい。」と、結構なご助言がはいりましたあ~。イチイチ癪にさわるが、確かに石川淳と聞けば思わず食指が伸びる…。負けず嫌いの血が騒ぎ、速攻でアマゾン発注(爆)。いやはやこの後も、神さまに振回されそうな予感のちんぴらでしたー。
※本を物色する時間がない方に動画サービスを付けてみました★
PS 次回は7/10に更新します