サクッと大阪✑備忘録②
さてさて前回に引き続き、「サクッと大阪」後半戦のレポートです!
おとろえぬ情熱、走る筆。『ピエール・アレシンスキー展』
▶『クラーナハ展』と同じ国立国際美術館で、もう1企画チェックしたのが『ピエール・アレシンスキー展』。なんと、今年90歳を迎えるベルギー生まれの現役ペインターの大規模回顧展です!わたしもこれが初対面。どんな爺さんがお出ましになるのやら~。でも、いつだってどんなジャンルだって、予備知識なくまっさらな状態で遭遇するのは、一等好きよ♪
▶クラーナハが妄想絵画だとしたら、こっちは身体絵画になるのかな…。つまり作品から作家の身体性が横溢して見えるわけです。じゃあその身体性はどんな形で浮かび上がってくるかというと、アレシンスキーの場合、ズバリ“線”なんですね。初期の小さな版画宇宙から始まって、様々な表現方法にトライしてますが、自由でノリノリな筆致をながめる楽しさが作品に溢れかえってます。手から筆がハエて生まれてきたんじゃないか?ってくらいの勢いなのです(笑)。「移動」(1951) この絵、よかったなあ…。
「見本」(1979)
▶彼の画風は、ザックリ言えば抽象絵画という括りになるんだろうけど、コマ割りみたいに分割して世界を捉えていたり、目を凝らすと1枚の絵に様々な技法がコラージュされていたりして、絵の中に複数の物語がうねり、アクセルとブレーキを同時に踏み込んでいる印象も受けましたね。絵は物体だけど、その絵を何とか動かせてやろう、絶えず変化するよう描いてみせよう!―と、試みている風に映ったのです。とはいえ、けして無邪気さだけで走ってるわけでもなく、知性を湛えた広がりも感じられました。
▶またひと頃、日本の前衛書道に魅せられて、「日本の書」という記録映画まで撮っていたらしい…。会場の片隅で流れているので、ぜひチェックしてみてください。若かりし頃の篠田桃紅女史が映画の中に登場しています。何せ彼女も103歳の現役アーティスト(汗)。墨と親しくなると長生きするってことでしょうかね(笑)。
写真家・楢橋朝子 『NU・E』展
▶さてお次は江戸堀のThe Third Gallery Ayaにて楢橋朝子展を拝見!楢橋さんは以前我がブログでも紹介したご贔屓写真家。なんとラッキーなことに、わたしが未見の初期のシリーズ『NU・E』(1992-1997)から、新たにセレクションしたヴィンテージプリントを展示すると聞きつけ、いそいそと出かけて行ったのであります。ブラボー、大阪!
▶まずタイトルの『NU・E』とは、鵺(ぬえ)のローマ字表記。鵺は、日本に伝わる伝説上の妖怪のことですが、つかみどころがなくて正体のはっきりしない人物や物事を例えるときに用いたりもします。あと余談ですが、鵺からわたしが連想するのは花輪和一の漫画。漫画狂のマブダチKちゃんの熱い勧めにのって、花輪の「鵺」を読んだ日のことは生涯忘れられません…。脳天が破壊されました…けして万人にはお勧めできませんが…(汗)傑作です。
▶で、待ちに待った楢橋さんの『NU・E』。やっぱどこを切っても鵺でしたあ~。なんて言ったらいいのか…写真の中に生き生きとした死体が転がってるというか、死に損ないの日常を目撃するというか…。アンビバレンツなものが想起されて、動揺しまくりましたね。もちろんいい意味で!しかもニヤっと笑えるの~、素晴らしい★ 写真は静止した時間を切り取るメディアだけど、その寸止めゆえの底無しのまぼろし感に、エロティックな興奮も覚えました。
▶楢橋さんの写真を知ったのは2000年以降ですが、それ以前にこんな魑魅魍魎な世界を炙り出していたと知り、じぶんが彼女の作品の何に魅かれているのか、すごーく腑に落ちた展示でした。楢橋さん、特にあの大阪の白日夢のような“虎”の写真は、田中昇監督の傑作『㊙色場めす市場』を連想したりして、シビれました~!引続き、追っ駆けさせていただきます!
神品降臨!『青磁水仙盆』揃い踏み
▶さーて、「サクッと大阪」もいよいよ大トリ。東洋陶磁美術館の特別展、『台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆(ほくそうじょようせいじすいせんぼん)』でございます。まさに真打登場(笑)。なーんて、少々大げさに煽ってみましたが、青磁が吟味できるほどの好事家でもないちんぴらは、「人類史上最高のやきもの 海外初公開、初来日」との惹句にウケて、足を伸ばしてみたに過ぎません(汗)。そもそも最近の美術展の広宣関係は、いささか煽りがエグくて鼻白むこともしばしば。まあ、行政のフラットすぎる仕事ぶりには常々呆れてはいましたが、動員目標を課せられた果てに極端に攻勢に転じるのもどうかと思いますよ、まったく。サブコピーが「もう、二度と出会えかもしれない。たった6点、世紀の展覧会。」なんですから(笑)。バブってんなぁ…往年の西武セゾングループの戦略みたい(苦笑)。
▶で、本当に小さなお部屋に6点だけ並べての特別展。どこかの小金持ちの居間にお邪魔したサイズ感ですわ(爆)。しかも、そこに並ぶのは、「おいおい、これのどこが違うんかいっ!教えろよぉ~」と突っ込まずにはいられないほど、6点すべて薄青いカレー皿に脚がついてるようなフォルムで…(汗)。チラシをご覧ください。「無印良品」?それとも「ニトリ」のパンフ?と尋ねる人も少なからずいるでしょう(笑)。
▶とはいえ、ここには6点の小さな器が並んでるだけだから、いちおうゆっくり深呼吸しながら、見て歩く…解説も読まず見て歩く…。するってーと、脇の下から汗がにじんでくるわけです(汗)…マジに。神品降臨にウソはなかったんですよね。降参しました、はい。こーんなに疑い深いわたしが、あっさり白旗をあげちゃいました。
▶中国北宋時代(960~1127年)に、宮廷用の青磁を作っていた汝窯は、雨が降った後の空の色を見立てた天青と呼ばれる釉色を追及していたとか。その汝窯の最高傑作が「青磁無紋水仙盆」。この他、北宋汝窯の青磁水仙盆4点と、清朝の皇帝・乾隆帝が「青磁無紋水仙盆」を真似て作らせた景徳鎮官窯の1点を集結させて、今回の展示が構成されています。
▶はてさて、どの娘が一番べっぴんか?―と、さながら飾り窓をのぞくオヤジ状態で身を乗り出して眺めていたら、たまたま並んで見ていたホンモノのおっさん(リタイアして悠々自適な佇まい…おっさんと言うより小津安二郎映画に登場しそうなビジュアルのオジさま。「サライ」読んでそうな…「美の壺」とか見ていそうな…笑)が、「キミはどれがお気に召したかな?」「こっちの色とあっちの色とどっちがお好み?」と話しかけてきたりして(新種のナンパか?笑)、さーすが関西人、その場が妙に和んで楽しかったですぅ。でも何度見返しても「青磁無紋水仙盆」は別格!だって、器そのものが発光体になってんですよ~。ウブな光を放ち、色っぽいったりゃありゃしません。ウソだと思った見に行ってください! 特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」は3/26(日)まで開催中です。
特別展「台北 國立故宮博物院―北宋汝窯青磁水仙盆」予告動画(2分)
▶特別展は6点ですが、東洋陶磁美術館の所蔵品は、ハンパじゃないですから!平常展だけでも、陶酔の連続で、あっという間に2時間経ってしまう…(汗)。惚れ込んでる作品はいくつかありますが、強いて言えばこの2点!「飛青磁 花生(とびせいじ はないけ)」(14世紀)「鉄砂 虎鷺文 壺(てっしゃとらざきもんつぼ)」(17世紀)。花生は、国宝であります★日本一奥ゆかしい国宝ですよぉ~。わたしはこの娘を見る度、樋口一葉を思い出すのです。でもって鉄砂で描かれた虎の方は、こいつをトレーナーにプリントして身に付けたいと…。業が深くてスイマセン(ぺこり)。
▶厳冬の2月の平日に行ったせいもあって、どの展示も客はまばらで、名品独り占め鑑賞。あー、極楽極楽♨ The Third Gallery Ayaの前にあった昔ながらの喫茶店に入って、一服する時間も至福でした♪ 久しぶりの大阪、ぬるエロっぽい作品の数々、ぜーんぶブラボー♫
PS 次回は3/12にUP予定です
サクッと大阪✑備忘録①
2月某日。雪をシンパイしながら、日帰りでサクっと大阪へ。案の定、米原は見事な雪景色で15分遅れの到着となったが、大阪・筑前橋は穏やかな晴天。勝ったも同然!
1番のお目当ては国立国際美術館で開催中のクラーナハ展である! だけどこの強欲なちんぴらが、わざわざ金も時間も使って足を延ばすんだから、それだけで済むはずはありません。ドイツ・ルネサンス期を代表する芸術家⇒90歳の現役ペインター⇒ご贔屓作家の写真展⇒究極の陶磁器…と、あらゆるジャンルをぶっ込んだコースに挑んで参りました(笑)。―ということで、今回と次回の2回にわたり、大阪美術探訪記をお送りいたします♫
500年後の誘惑 『ルカス・クラーナハ展』
▶ルカス・クラーナハ(1472-1553)…誰それ?との声が聞こえてきそうですが…いいです、いいです。そんなもんです。わたしだって詳しくは知りませんでした(汗)。ウィキで調べてください(苦笑)。わたしの場合は、かなり前に深井 晃子女史の『名画とファッション』(小学館)で見たのが最初です(この本、かなりオススメ)。その絵がこちら。
▶「ホロフェルネスの首を持つユディット」(1525年頃)。生首ですよ~、ぶっ飛びでしょ?A5サイズの本でながめても、強烈なインパクトで頭くらくらしましたよ~。これがナマで見られる…ウィーンに行かなくても、向こうからやって来る!となれば、そりゃあ行くしかないでしょう♪ 日本初となるクラーナハの大回顧展。ナマ鑑賞しながらこの作家の全貌を、しかとお勉強させていただきました、はい。
▶クラーナハの予備知識として覚えておきたいことは次の3つ。 ①旧東ドイツ南部の領主ザクセン侯に使えた宮廷画家 ②工房を開設して絵画の大量生産を始めた実業家 ③マルティン・ルターの宗教改革に大きく関与 そう、作品の変遷を見ながら歴史の大きな流れに立ち会えるという興奮もありましたね★
▶クラーナハの初代ボスはこちら「ザクセン選帝侯フリードリヒ賢明公」(1515年頃)。何とここんちの3代に仕え続け、宮廷芸術家人生を全うしたらしいです。まっ、相思相愛のいい関係だったんでしょうね(隣は彼のサイン―指輪をくわえた蛇)。それにしても、この見事な毛皮の描写力!そして背景の黒無地の効果で、存在感はあるけど、エラソーには見えず、ひどくモダンな印象がしませんか? お次はルター夫婦の2連肖像画「マルティン・ルターとカタリナ・フォン・ボラ」(1529年)。ここでもブルー一色の背景が超クール。肖像画から手垢を消し去り、あえて人工的にパッケージングしてるような…極めて“今”なかんじです。
▶ーというわけで、たくさんの肖像画を描いているけど、顔とお召し物のトータルで人となりが完結していて、無駄な画き込みが一切ない印象を受けましたね。ズバリ、カッコいい!わたしの遺影用にもお願いしたかったわよ…500年早く生まれていたら~。
▶その他、版画はチャレンジ精神にあふれているし、一風変わった聖母の表情に目が釘付けになる宗教画も楽しい。雀百まで踊り忘れず~♫なーんて調子の、次の一品を見て!「メランコリー」(1533)と題したこの1枚にはタマげましたね。若い女が部屋の片隅で、かったるそうにゴボウのササガキ(?)しながら妄想してる絵でしょうか…(爆)今夜はきんぴら?
▶おっと~、ストレートにヒヒジジイを転がすこんなシーンも絵にしちゃう!視線あってませんね?(笑)「不釣り合いなカップル」(1530~1540年頃)。オッサンは白肌を舐め廻し、若い女は指輪をゲット。ちゃんと等価交換が成立しております。500年も前の絵とは信じがたい若い女の方からオッサンの首に手を回す構図…なんとこれとクリソツな絵が他にも―(汗)。
▶「アダムとイヴ(堕罪)」(1537年以降)。 ホラいっしょでしょ?ある意味壁ドンの逆バージョンか。それにしても、原初の男女に、こんな危なっかしくていたずらな空気をまとわせるなんて…テーマをズバッと言い当てて清々しくもあります。リンゴとイヴのおっぱいが球形で呼応してるもんだから、蛇が迷ってしまってる?(笑)後ろに横たわる鹿の目も怖~い。
さてさて、ここでちんぴら参入!神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その1
▶―が、やっぱクラーナハの最も先鋭的な試みは、女性の裸体表現になるのでしょうね。かの有名な「ヴィーナス」(1532年) 、息を飲むほどエロい!裸にアクセサリーと薄物の布だけで、小石の上に立ってぬらぬら~っと登場!生命力全開のガッツリ官能美が主流のルネサンス期に、狭い肩幅と浅い肉付きの陰影の薄い東洋的な裸婦を描くとは!恐るべしクラーナハ。60歳を過ぎて、裸婦描きまくってます。しかも時代を超越したファッション・アイコンを生み出しているわけです。意外とサイズが小っちゃいから、パトロンの女の好みを反映させ、寝室に飾るように書いたのかもしれませんね。
神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その2
神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その3
神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その4
▶クラーナハが繰り返し描いたモチーフのひとつに「ルクレティアの自害」という物語があります。このシリーズがまた、どれもわたし好みで…(涎)。自死に対して悲壮感も自己陶酔もなく、へなちょこの虚無感が漂って見えたわけです―わたしには(笑)。BGMに流すなら、ぜひゆらゆら帝国『空洞です』をお願いしたい!
▶そして見よ!こちらの「ルクレティア」(1532年)。「ヴィーナス」同様、背景黒+足元に小石が。なぜオール・ヌードに河原なのか?誰か研究者はいらっしゃらないかしら…。惑星Xから届いたエロ便りという趣。いや、深海からあがった魚か?兎にも角にもひどく謎めいています。そうそう、ルクレティア・シリーズを眺めながら、かつての私のミューズ女優・永島瑛子のことを思い出していたんですよ~。全然似ていないんですけどね(苦笑)。脱ぎっぷりの良さと、めんどくさそうに美人してる気配に共通項はありそうですが―。
神をも恐れぬ ちんぴらコラージュ その5
▶最後に恒例の「1枚もらって帰るとしたら?」妄想を発表しましょう。かなり迷いましたが、今回はこれかな…。
▶「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」(1530年代)。お皿に生首乗せて、うっすら微笑んでみせたりして、いいわあ~。赤いベルベットの素材感も強烈。このちょっと前に、映画『沈黙ーサイレント』を見たばかりだったから、生首つながりです(笑)。『名画とファッション』から引用すると、この頃暗色のベルベットはトレンド素材で、ダーツという仕立て方がまだ発明されていなかったから、布に切れ目を入れて、袖と身頃をリボンや紐でつないでいたとか。ダンダンになった袖がサイボーグみたいですねぇ。
そんなこんなで、見世物小屋に入った余韻はいまも脳裏に焼き付いてますよ。クソ寒い中を、わざわざ足を伸ばして本当に良かったぁ~。
『クラーナハ展―500年後の誘惑』大阪会場
2017年1月28日(土)~4月16日(日)
クラーナハ展 4章「裸体表現の諸相」 国立西洋美術館 クラーナハ展 ─ 500年後の誘惑
PS 次回「サクッと大阪 備忘録②」は2/28にUPします。お楽しみに
勝手に映画年間ベスト10! 2016年版
どうやら2016年は邦画の当たりだった年らしいが…申し訳ございません(ぺこり)。ちんぴらは10本も見ておりません。もはや映画について語れませんね(汗)。そもそも最も多く劇場に通っていた頃と比べたら、1/3の量になっているんで、かなり偏ったベスト10になっていると、あらかじめお断りしておきます。ただ、映画年間ベスト10をピックアップして総評する作業は、なんと31回目(つまり31年も継続)!それだけ楽しい作業だということだけは間違いないのよね~★では恒例のドラムロール夜露死苦♪
第1位 とうもろこしの島(’14)ギオルギ・オバシュビリ監督作品
文章にするのをちょっとためらうなあ…。私の乏しい言語表現能力では、どうあがいても本作の魅力を伝えきれないだろうから―。つまり、実物を鑑賞して頂くしかないんだけど(汗)、とりあえずここでは外堀だけ、メモっておくね。
舞台となるエングリ川(地図で調べて!)は、かつてコーカサス山脈からの雪解け水による洪水で、肥沃な中洲がぽっかり出現し⇒次の洪水で流され、を毎年繰り返し、理想的な農業が行われていた場所らしい。映画は、そんな中洲に川岸から老人と孫娘が小舟で渡り、掘立小屋を建て、中洲を拠点に地道にとうもろこし農業に勤しむ日々を、静謐な筆致で定点観察しながら進んで行くの。と同時にここは、アブハジアとジョージアが敵対する紛争真っ只中の、最も危険な中間地点でもあるわけ。つまり、終始寡黙な老人と孫娘だけど、実は2人はある意味すんげ~博打打ちなの!キナ臭い状況下を素知らぬ顔でうっちゃり、天と地の恵みを信じて自分たちの生業を貫く賭けに挑むのだから―。
ところがですよ、ラスト10分、想像を絶する展開に言葉を失い茫然自失!まさに“口あんぐり”とはこのことです。反戦映画のフリをしながら、実は神との闘い映画だったと恐れおののく苛烈なエンディングが待ち構えてて、気絶しかけちゃいました(汗)。
現在のエングリ川は上流にダムが出来て中洲ができるようなことがなくなったため、撮影は、川を模した大きな貯水池に人工島を作り、シーンに合わせて何度もとうもろこしを植え替え、CGを一切使わず制作されたとか(涙)。ただ、そう聞いても、どうやったらあんな絵が撮れるのか、やっぱりわからない…。奇跡としかいいようがない映像美に着地してるんだよね。生きている間にもう一度、劇場で再会したい1本になったわ。
5位にランクインした『みかんの丘』と同時予告。こちらも傑作!
第7位 コップ・カー(’15)ジョン・ワッツ監督作品
2016年一番の掘り出しモノがコレ!『とうもろこし~』は劇場必見映画だけど、こっちはDVDでもじゅうぶん楽しめるよ~。今すぐレンタル店へGO! 家出中のワルガキ2人組(小学生?)が、なんとパトカーを盗み、田舎道を舞台に人生初乗車体験をおっぱじめて大騒ぎするドラマ(爆)。盗まれた側の警官がその上をゆく本気の悪人で、超ヤバイ展開に爆走するけど(汗)、終始こわおもろい匙加減が絶妙だから、新しい娯楽映画の予感すら感じたわ。痛快な原っぱ追いかけっこ対決と、哀愁漂う逃避行劇をミックスさせたセンスに舌を巻きましたね。さらに言えば、『スタンド・バイ・ミー』と、フィルム・ノワール(虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画 を指した総称)と、なぜかNHKみんなのうたを連想したのは私だけ?(笑)初遭遇の監督ジョン・ワッツ、しかと赤丸つけましたあ~。
第10位 マジカル・ガール(’14)カルロス・ベルムト監督作品
さて3本めはスペイン映画。うーん、これは上記2作品とはまた違った厄介な内容だから、マジに説明が難しいっす(汗)。例えば映画の視点から分類すると、『とうもろこし~』⇒定点観察 『コップ~』⇒移動観察 『マジカル~』⇒運命観察ということになるのかな…。アニメ好きな白血病の娘に、高価なコスプレ衣装を着せてやりたくて銀行強盗を思いつく父親から始まった物語が、自己犠牲と復讐のつづれ織りへと有無を言わせず突入する展開。すべてのエピソードは、「愛」と「金」が引き金になって艶めかしく這いずり回り、ときにメーターが降り切れるほどのインパクトを与えるが、一方でひっそりと咲く野菊のような清楚な印象も…。カトリックが強いお国柄も影響しているのかなあ…正直言って、未だ整理できていません(汗)。不思議な肌触りのランジェリーを身に付けた気分とだけ書いておきましょう。これまた“要注目赤丸”監督です!
その他のベスト10洋画はこちらの映画評でたっぷりお楽しみくださいまし!
2位『キャロル』
http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/03/19/003424
3位『母よ』
http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/04/24/202845
4位『オマールの壁』
http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/05/24/230324
6位『彷徨える河』
http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/10/20/175957
ドキュメンタリーはこちらから―。
2位『FAKE』
http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2016/07/10/225118
http://chinpira415.hatenablog.com/entry/2017/01/09/230246http
ドキュメンタリー映画年間ベスト5も同時掲載の一覧です
DVDをレンタルする際のご参考にどうぞ★もう店頭に並んでいるものもあるよ~♪
PS 次回は2/12にUP予定です
鶴舞公園―年末年始 総集編🐓
みなさま、年末年始はいかがお過ごしでしたでしょうか。お正月からすでに20日も過ぎ、今さらですがいちおうご挨拶。わたしなんて、つい先日、ようやく重い腰をあげて大掃除をしましたよ(苦笑)。いいの、いいの、だって年末年始の“ハレ気分”は、私の別邸=鶴舞公園で、十二分に堪能させていただきましたから♫
知ってた?公園正門前のヒマラヤ杉が巨大ツリーに!
ある朝、突然デコられててびーっくり★もしかしてクレーン出してデコってる?てっぺん、かなり高いよねぇ?やるなー、鶴舞公園!1本だけツリーしてるのも◎。わたし、基本的にイルミネーションは野暮だと思ってるからさー(笑)、このくらいがちょうどいい。
でもってクリスマスが終わったらすぐに模様替え!公園作業員の皆さま方が、朝からせっせとお正月仕様に―。なるほど、鶴が舞う=鶴舞になるわけか!和のモチーフがこんな風に輝くのは悪くなかったなぁ。あくまでも控えめなのがいいかんじ★
それと12月の後半から1月頭にかけて、公園内はさながら山茶花祭りしてた!
最初、椿?って思って見てたら、花の開き方や花びらの形が若干違うような気がして、ネット検索して山茶花だと判明したってわけ。そういえば、11月の終わり頃だったか、垣根状態になってる山茶花の葉を、作業員の方がチェーンソーでバリバリ切り落として刈り上げていたことがあったのね。ド派手な伐採だなあ…と訝しく眺めていたんだけど、その1か月後にはポツポツ花が咲き始め…可愛いったりゃありゃしない!
草木はちょっといじめて強くしてやらなきゃダメって話を聞いたことがあるけど、なるほどこういうことなのか、と思いましたね。まっ、彼らは我々のためだけに咲いてるわけではないだろうけど(汗)。ドレスのような垣根、いやこれも逆か―。自然からインスパイヤーされた人間が、装飾に2次活用させてもらってるという話ね。
それにしても、紅葉が終わり、周囲に彩りがなくなった頃に開花期を迎えるから、ひと際鮮やかに見えるなあ。思わず、さざんか さざんか さいたみち~♪たき火だ たき火だ おちばたき~♫ と鼻歌を歌ってみましたぁ(笑)。でも花が基部に合着していないので、簡単にバッラバラに散ってしまう…なかなか酷い運命を背負った花でもあるみたい。そう、たき火も今じゃ街中ではご法度。たき火にあたってダラダラ過ごすの、わたし大好きだったんだけどなあ…。
…と、我が別邸でひとしきり“冬のハレ”をあじわったところで、次は本宅で満喫したハレをご紹介しましょう!
本宅でのハレとはすなわち、年末年始の来訪者が持参してくださった土産品です★この時期、東京からの帰省の際に立ち寄ってくれる人が多いので、ハレ度がさらにUP。しかもわが友だち群は全員食いしん坊!美味しくかつ新しいものをこぞって届けてくれるのです。資生堂パーラーのクッキーでしょう、大好物の花のれんの銀座餅はなんと箱ごと直送(笑)。とらやのお年賀ミニ羊羹セットに、おしゃれ番長たちが買い占めると評判のNYキャラメルサンドまでいただいちゃって、こーんなにババアになったのに、お年玉をもらう小学生みたいにウキウキ♥
甘いものだけじゃございません。築地ちとせの天ぷらせんべいという一品は、お菓子の枠を軽々と超え、かき揚げを食べてるとしか思えない美味でびっくり。あと、三重 川越町のおかきや マヨネーズあられにも、腰を抜かした!こんなに上品なマヨ味お菓子があるなんて…。さらに、年末にマブダチAくんから届いた贅沢ちりめん山椒セットを炊き立て新米しろめしにのせて頂く幸せ…あ~日本人に生まれてよかったですぅ。
そうそう、手作りの贈答品もいただきました!野菜が高騰する年末に、岐阜にお住いの先輩から届いた土付きのお野菜でしょ、そしてこちらは旧友Mの手作り門松~♫ 正月には梅の花が咲いて、可愛かったなあ。
この他にも、物珍しいものがたくさん寄せられて、イチイチ感動(涙)。何より、いただいたものを、訪ねてくれた友人たちとおしゃべりしながら一緒に食べたり、お裾分けしたりする交換の時間が宝物ですぅ。
ちなみに2016年の大晦日 12月31日の「1日1神様」は寺田寅彦で締めくくりました!「ばかを一ぺん通ってきた利口」というものに、わたしもなってみたい―。
PS 次回は1/31にUP予定。2016年映画年間ベスト10を発表します。乞うご期待!
勝手にシネマ評/『ヒッチコック/トリュフォー』('15)
あけましておめでとうございます。…と、書きながら正月早々、年末に見た映画の感想をお届けします(汗)。しかもヒッチコック!いったいオマエの時間感覚はどうなってんだ?と突っ込みが入りそうですが、しばしお付き合いを。今年もよろしくお願いします(ぺこり)。
年の瀬に、まさかこ~んなにとっておきの贈り物が届くとは!
映画に魅せられた人々が通過儀礼のように読みふけり、愛してやまない本がある―『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』(写真参)だ。1962年、新進気鋭のフランス人映画監督フランソワ・トリュフォーが、30歳以上も年の離れたサスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックに熱烈なラブコールを送り、50時間に及ぶインタビューを実現させ、4年後、映画史に残る伝説の一冊を世に送り出した。そして、“あなたが世界中で最も偉大な監督であると、誰もが認めることになるでしょう―”と、トリュフォーが宣言した通り、完成したインタビュー本は各国で翻訳され、ヒッチコックを唯一無二の映画作家であり、真の芸術家だと世界中に知らしめすこととなったのだ。
はい、もちろんわたしの本棚にもデーンと鎮座している。1988年頃かな…上前津の古本屋で購入して以来、何度紐といたかわからない。デカくて場所をとるのに(汗)、未だに手放す気にはなれませんね。シネフィル(映画狂)でなくても、ヒッチコック作品を未見の人でも、誰が読んでも文句なく楽しめる1冊である。そんな至宝が、出版されて50年経た今、なんとドキュメンタリー作品に衣替えし、再び我々の元に届けられることに―。実際の動画記録は残っていないものの、貴重なインタビュー音源や対話時の写真が公開される一方で、名だたる現役映画監督10人が登場し、本から受けた影響や、作り手側からのヒッチコック礼賛が事細かに語られるという贅沢な構成である。監督はケント・ジョーンズ。まったく君はエライよ!
さてここからは映画の具体的な感想を記しておこう―。まず本では、対談と写真で構成された一作品ごとの解説(制作秘話)が、映画では実際の映像を見ながら目と耳で確認できるわけで、インパクトはやはりデカかった。当時の本としては写真資料が画期的に多く、それゆえ映画の教科書として重宝されただろうが、そりゃあホンモノの動くシーンを例題で用いた方が手っ取り早いにきまってる。ただし、本の忠実な映像化だけでは、すぐに見飽きてしまっただろう。受け手の想像力が喚起されないまま流されてゆくだけの、単なる映画鑑賞ガイドでお役目終了だから。つまり本は、動くメディアを静止させ、映画作品を原初の姿(連続撮影)で並べたからこそ、ヒッチコックの大胆な手法が明らかになった―と、映画化によって逆に教えられる結果となったのだ。
また一方で、本の構成を新たに組み替えて、映画向きのUPテンポのリズムに編曲してお披露目している演出が、実に楽しい!本には出てこない2人の個人史を組み入れたり、本の一節にマーカーを引っぱったり、撮影現場の様子や販促写真の活用など、めくるめく多彩なコラージュで敷居を下げ、専門性より好奇心に薪をくべて進行する。観客心理に絶えず目配せしたヒッチコックを紹介するにふさわしい仕立てだ。意外な作品がバッサリ割愛されていたりもするが(汗)、それもまた一興。むしろどんなにランダムにつなぎ直しても、一つずつのパーツの磁力が強くて求心力はまったく揺るがない。何を見てもちょっと怖いくらい、ヒッチコック・タッチが漂い出てくるのには心底驚いた。それでも監督冥利に尽きただろうなあ…。師の本で学んだテクを、師の胸を借りて駆使できたのだから―。それに、インタビューに応じた現役監督の豪華な顔ぶれから察するに、これほどの人選が可能で、映画史に踏み込める仕事が許されるのだから、きっと映画からも愛されている人に違いない。トリュフォーは映画を1本撮る構えで準備し、インタビューに臨んだというが、そんな50年前のパッションが今こうしてK・ジョーンズ監督に継承され、再燃している事実に胸を打つのである。
でもって、現役監督たちが夢中になってイイ話をするの!映画の中に、本の形式を入れ子細工的に挿入させているのだが、誰もみな映画少年魂を全開にするとともに、 “映画とは何だ?”という命題と向き合う同業者ならでは思考が垣間見られて、目が離せなかった。私が一番ハッとしたのは、黒沢清のコメント―作家性でいうと極端にはじっこにいる人―だ。“映画は観客のもの”が大前提で、観客にいかにウケるかを目的に映画技術をフル活用した作家が、誰よりも異端なクリエイターだという一見矛盾するような話…、でも確かにそれこそが、ヒッチコックなのだと共感したのだ。
ここで私個人のエピソードも書き加えておこう。私がティーンエイジャーだった70年代後半は、映画はテレビで見るものだった。映画と言っても、オリジナル作品からは程遠い、ザクザクに短縮された吹替版だ。ヒッチコック作品も、かつてヒットした映画がお茶の間に流れる形で頻繁に目にしていた。その後、本格的に映画に興味を持ち始め、80年にイギリス時代の秀作2本立て―『バルカン超特急』(38)と『逃走迷路』(42)を、ようやく劇場で目撃したときは興奮したなあ…。娯楽映画だし…などと悠長に構えていられるスキ間は1ミリもなく、映画そのものが迷路と化し、身体ごと映画内に引っ張りこまれる感覚を味わったものだ。しかも亡き父とふたりで見た最初で最後の映画なのよね―。やがて『映画術』との出会いである。タイミングよく、レンタルビデオ店の大盛況時代だったから、入手できるソフトを片っ端から借り、読んでは見て&見ては読んでを繰り返したっけ(笑)。特に『めまい』(58)に関しては、いつもの素早い展開が姿を潜め、なぜこれがミステリアスなのか、いまいちピンとこなくて、本を読んでようやく男性心理とファム・ファタールを結びつける映像マジックが理解できた記憶がある。本作でも厚みを持たせて追跡しているが、ジェームズ・スチュアート演じる主人公の落胆と歓喜が交差する表情を、スクリーンいっぱいで再見するのはかなりの特典!男性客は文句なく感情移入してしまうだろう(笑)。
そして最後に、本も映画も触れていない注目ポイントを追記しておこう。ヒッチコック映画が今も艶っぽく輝いている理由は、ヒロインのビジュアル設計にある。特に忘れちゃならないのが衣装だ。先の『めまい』をはじめ、『汚名』『裏窓』『泥棒成金』『北北西に進路を取れ』『鳥』etc…ヒッチコックがハリウッドへ渡ってから手掛けた多くの傑作で、あの“ドレス・ドクター”イディス・ヘッドが衣装を担当しているのだ。彼女は、ヒッチコックが理想とする女性のイメージ“昼間は上流階級の洗練された淑女でありながら、寝室に入ったとたんに娼婦に変貌する女”を、カンペキに具現化!衣装によって、セリフ以上に雄弁にヒロインを物語り、映画のマジックを補強する役割を見事にこなしていたのだ。
そんなイディス女史の仕事ぶりに感嘆したわたしは、かつてイラストと文章で備忘録にまとめた経験がある(汗)。20数年前に作ったそのファイルは、いま見返すとかなりこっ恥ずかしい代物だが、目の付け所だけは今もさして変わらず(進化していない証拠でもあるがー)…。そう、ヒッチコックの映画作りの極意は、わたしのような一映画愛好家の視座にも多大な影響を与えた。さらに言えば、本作を眺めながら、脈々とつながる映画史の末端に、じぶんも机を置いて在籍しているような、そんな幸福感に包まれたのだった。
あー、しんぼうたまらん(汗)。レンタル屋に足を向けなくなってずいぶん経つが、DVDでいいから、あのとんでもなく優美なハッタリ世界の数々を、今すぐ見直したい!
1/13(金)まで伏見ミリオン座で公開中
2015年/仏・米/カラー/80分
監督/脚本 ケント・ジョーンズ
ナレーション マチュー・アマルリック
音楽 ジェレマイア・ボーンフィールド
キャスト マーティン・スコセッシ
デビッド・フィンチャー
黒沢 清
PS 次回は1/23にUPします
2016年「1日1枚シリーズ★」発表!
2016年の制作テーマは…「1日1神様」!
7/1号の我がブログでご紹介した「1日1枚シリーズ★」。2016年も1月1日から毎日せっせと1テーマを追い駆け続けているわよ(汗)。さて今年のテーマは「1日1神様」。
その日に没した世界の著名人を調べ⇒ピックアップし⇒Webで画像とその人の名言を探し出し⇒絵にまとめるという作業工程をこなしてます。これがまったく似ていなかったりしてタイヘン(汗)。でも亡くなった人はみんな神様(笑)。だから発言もより深い処まで届く。まずはご覧いただきましょう~。1つくらいお気に入りが見つかるかもね♫
▶1/6 ルイ・ブライユ/点字開発者(仏)▶1/7 岡本太郎/画家(日)▶1/24 チャーチル/政治家(英)▶1/25 三木のり平/俳優(日)▶1/28 どんと/ミュージシャン(日)▶1/29 藤田嗣治/画家(日)▶1/26 アンナ・パヴロヴナ/バレリーナ(露)▶1/27 A・ザ・ジャイアンツ/プロレスラー(仏)
▶実業家対決!2/7 岩崎弥太郎 VS 2/8江副浩正 一筋縄でいかない輩たち(笑)
▶3/26 ベートーヴェン/作曲家(独)▶3/27 植木等/俳優・コメディアン(日)▶3/30 中川幸夫/華道家(日)▶3/31 六代目中村歌右衛門/歌舞伎役者(日)たまたま並んだとは思えない組合せ
▶職人対決!4/5 升田幸三/将棋棋士 VS 4/6 長谷川一夫 俳優 かーっこいい~
▶4/11 吉本順三/建築家(日)▶4/12 宮口精二/俳優(日)▶4/15 リンカーン/政治家(米)▶4/16 ゴヤ/画家(スペイン)▶4/17 フランクリン/政治家(米)▶4/18 アインシュタイン/理論物理学者(独)▶4/29 ヒッチコック/映画監督(米)▶4/30 永井荷風/小説家(日)
▶神がかり対決!5/5 ナポレオン/軍人(仏) VS 5/6 宜保愛子 霊能者(日)宿命に生きた2人
▶5/17 猪熊弦一郎/画家(日)▶5/18 マーラー/作曲家(オーストリア)▶5/25 R・キャパ/写真家(ハンガリー)▶5/26 ハイデッガー/哲学者(独)▶5/29 デニス・ホッパー/俳優(米)▶5/30 ヴォルテール/哲学者(仏)▶5/31 L・ブルジョア/彫刻家(仏)▶6/1 大野一雄/舞踏家(日)
▶大スター対決!6/24 美空ひばり/歌手(日)VS 6/25 M・ジャクソン/エンターティナー(米)
▶6/28 林芙美子/小説家(日)▶6/29 エドワード・ヤン/映画監督(台湾)▶7/18 大河内傳次郎/映画俳優(日)▶7/19 梅崎春生/小説家(日)ヤンの訃報には心底凹んだ(涙)
▶紫煙対決!7/28 山田風太郎/小説家(日)VS 7/29 R・ブニュエル/映画監督(スペイン)
▶9/19 正岡子規/俳人(日)▶10/11 岡本一平/漫画家(日)▶10/19 カミーユ・クローデル/彫刻家(仏)▶10/27 今和次郎/民俗学研究者(日)▶10/28 洲之内徹/画商(日)▶レヴィ・ストロース/社会人類学者(ベルギー)天才ゴロゴロ!
▶父の命日賞 10/1 古今亭志ん朝/落語家の名跡三代目(日)ご贔屓噺家といっしょとは!
▶わたしもこんなこと言いたい賞 10/31 幸田文/小説家(日)上等お転婆発言に共感
▶11/17 辻喜一/料理人(日)▶11/24 F・マーキュリー/ミュージシャン(英)▶11/30 呉清源/囲碁棋士(中)▶12/1 益田喜頓/俳優(日)▶12/2 植草甚一/編集者(日)▶12/7 小松崎茂/イラストレーター(日)シブイオヤジたちが続く(笑)
▶クール&ユーモア作家賞 12/13 獅子文六/小説家(日)再評価するべき一人
手持ちの無線綴じ無地ノート2冊に描いて正解だった!描きにくかったけど、終わったら本の形でモノとして残るのは、今回のテーマにふさわしい気がするから。
最初は全く知らない人をあえて選ぼうと思ったりしたが、やはり多少なりとも思い入れがないと、人物画は描いてて楽しくないのよね(苦笑)。だから、映画関係者、画家、小説家が多くなったなあ。あと、人選に悩みまくる日も何日かあった。特に4/30、12/10はもう2~3人描きたいほどだったっけ…。使用した没年データベースはこちら。眺めているだけでも面白いよ。
兎にも角にも、今年もあとわずか。毎日所要時間15分の作業行程はカウントダウンだ。最後は誰で終わるのやら…。あー、大晦日が楽しみ楽しみ♪ そして年明けから新たな「1日1枚」始めまーす★(まだ検討中!)
ブログも年内はこれにておしまい。年明けは、1/10から再開です。ではよいお年を!
なぜか魅かれるもの―⑦
ねぇー、ねぇー、土人形って知ってる?
表面と裏面の型に粘土を押しつけて(写真参)⇒貼り合わせ⇒それを素焼きにして⇒彩色を施した、素朴な味わいが特徴の置物人形のこと。江戸の中期から昭和30年代頃まで日本各地で作られ、とってもポピュラーなものだったんだよね。
今から20年以上前に、名古屋市博物館が企画した『愛知の土人形』という展示で偶然見かけたのが興味のはじまり。そもそも愛知県は、良質の粘土に恵まれた焼き物の生産地だから、全国でも土人形が盛んな県として評判だったらしいのよ。市街地の再開発時に発掘された近世の遺跡からは、様々なタイプの土人形が出土される機会も多いと聞くから、きっと庶民の暮らしにかなり密接した大ヒット玩具だったんだろうね。
―というわけで、今回は愛知県陶磁美術館で見た『くらしをうつす~郷土の土人形展~』レポートをお贈りしま~す♪
▶雛人形シリーズ
・まず、なぜ土を使って人形なのか…ここが肝心なところ!要は、雛祭り行事が特権階級から市井の人々へと広まり、それとともに高価な雛人形の代用品として、土と型によって安価かつ大量生産できる置物タイプのやきもの人形が普及したってわけ。
・想像するに、“なーんちゃって”でもいいから、我々庶民だって子供の成長を祝ってささやかに盛り上がりたい!という欲望の現れなんじゃないかな。そして、“なーんちゃって”で始めたことも、けしてそれだけに終わらず、工夫を重ねて差別化を図るところが我が国らしさ(笑)。ほら見て!焼き物とはいえ、ある意味ホンモノを凌駕するポップカルチャーセンスでしょ。色数の多さだけでも圧倒されるよね。
▶鯉抱き金時シリーズ
・もちろん男の子向け玩具だって負けちゃいない!いやむしろ、男の子向けの人形の方がバリエーションも多くて、優遇されている気がした(苦笑)。やっぱ長男待望神話が漂って見えたなあ~。こちらは「鯉抱き金時」と題した初節句もの。プクプクした二の腕と、活きのいいポージングがめちゃカワイイ★
・「俵童子」の奥で、力士になり切ってる童子人形は、荒川良々にそっくり(笑)。
▶ヒーロー・ヒロインシリーズ
・子供向け玩具からスタートした土人形の世界観が、イッキに大きく開花したのが、物語の主人公をモチーフにしたバージョンだ。そう、今で言う戦隊ヒーローですよ。それこそ陶製の人形は世界中で作られただろうし、今も作られているだろうけど、こんな風にアクションシーンを再現した人形が他にあるかしら…。こちらのモデルは加藤清正。浮世絵でも頻繁に取り上げられた人気キャラを、動きと共に形にしてるところがとてもユニーク。
・特に愛知県三河は、歌舞伎狂言モチーフの人形が好まれ、たくさん作られたとか。人気芝居の一場面が劇画チックに再現されている様子は、現代のアニメとフィギュアの関係性とまったく一緒。時代は移り変わっても、人々が求めるテーマ性自体は案外変わらないものなんだよね。
・それにしても、女子の華やかさの代表格が、花魁とお姫様の両極端な2パターンしかないってどうなの?(爆)。それ以外では、子守り姿や御高祖頭巾姿なんかがあったけど、めちゃ地味。一体これを家のどこに飾って喜んでいたんだろう???不思議(笑)
・こちらはマツコDX花魁人形とでも呼びたい一品。こんな風に人形になって大衆の生活に入り込んでいたのだから、わたしが想像する以上に花魁はトップアイドルだったんだろうなあ。
▶これまたシンボル
・今回一番驚いたのが明治天皇をモデルにした土人形だ。いっしょに行った友人と、「庶民の玩具にしちゃっていいの?」と、思わず立ち止まった(笑)。帰宅後ネットで調べてみたら、日本が日清戦争に勝っていた頃に作られ、一時は庶民も広く親しんだものだったらしい。ただし天皇制軍国主義が強まると、天皇は神聖なものとして作られなくなったというから、これは貴重なお姿だ。人形としてもちょっと素敵だったわよ。
▶塗り込み少なめ赤坂人形
・今回の展示では、日本各地の土人形もたっぷり紹介されていて、地域によって人気モチーフや製造方法が異なる様子も一望できた。わたしが目を付けたのは福岡県の赤坂人形。フォルムも色付けもざっくりしていてその粗さが魅力的に映ったなあ。
▶表情がいのち
・土人形の基本用途は招福と厄除け。今もその残り香は十二支の置物として親しまれてはいるが、かつてのような生活に密着した形で買い求められることはなくなり、人形師たちは廃絶していった。
・個人の趣向が先に立つ今のキャラクターグッズとは異なり、土人形は一家を護るための「祈り」の要素が強い。つまり、それだけ我々の家に対する考え方が、急速に変わったってことなんだろうな。
▶最後は爆笑で幕を閉じ…
・さてそんなこんなで、友人ともども大いに楽しんだ企画展。写真撮り放題&人影まばらな会場は、温泉街の射的場のようで、心ゆくまで浸ったわあ~。
・そういえば、各地の人形展示コーナーには、明らかに土人形でないものも混じっていて(汗)、思わず「おいおい、これは入れちゃマズイだろう~」などと突っ込みまくりましたね(笑)。こちらの福助が二段重ねになってる一品は、扇子に“ロート”と書いてあり、「ロート製薬がオマケに作った企業ものだよー!」なーんて茶化していた私。ところが同級生のMが一言クールに、「それ、ロートではなく叶でしょ」と諫めてくれて…。はー、あまりのバカバカしさに大笑いした次第です。
・「ロート」と見えなくもない…でしょ?(爆)
PS 次回は12/23にUPします