2021年「1日1枚シリーズ★」発表!📅

2021年の制作テーマは…

「1日1ページ 本の書き写し」!

あっという間に2022年がスタートしました💦 そこで、恒例となっている、去年の「1日1枚シリーズ★」の発表です!去年の1月1日から丸1年間、毎日毎日飽きもせずに続けたのは…「1日1ページ 本の書き写し」でした~。

f:id:chinpira415:20220106152135j:plainちなみに「書き写し」をネットで検索すると、これを趣味にしている人がけっこういて驚きました👀写経をはじめ、天声人語を毎日書写するとか、小説を一冊丸ごとノートに手書きで完コピするとか…出てくる出てくる💦みなさんホント熱心なんっすよね。じぶんは、1年間やり通すことが大前提なので、もっといい加減です(笑)。ただし、手書きを楽しみたかったので、ノートは吟味しました。選んだのはツバメノート

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みなさんも見覚えがあるのでは…?黒澤明も愛用したという老舗メーカーのノートが、デザイン的にも使用感的にも一番しっくりきたのです📓 そしてやっぱり日本語の書き写しは、縦書きじゃないと雰囲気が出ない。あと、2Bの鉛筆でグイグイ書いてゆくのに似合いそうだったのが、こちらの「ツバメノート 立太罫(12mm)11行」です。

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1日1ページ、5冊あれば概ねOK。ページ数が若干足りないけど、まあコピー用紙で足せば何とかなる(笑)。365日使う道具が決まれば、あとはお茶の子さいさいですね~♫しかもそんなプランを、暮れに遊びに来ていたマブダチのYちゃんに共有したら、元旦に間に合うよう鉛筆を届けてくれて…(感涙)「トンボ きれいに消えるかきかた鉛筆 2B」です。これ、力を入れなくてもマジにきれいに消えるんですよー!!!というわけで、2021年元旦から書き写しまくった記録をちょこっと公開しますね✍

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【1冊目 文学のことば編 1.1~3.13

さて、じぶんの本棚の整理も兼ねての「1日1ページ 本の書き写し」。毎日1冊本を選び、目に止まったページから11行くらいを書き写すというルールで始めました。記念すべき1冊目は、言わずと知れた夏目漱石『それから』。[財源の杜絶] [他人の細君] なんていう言い回しは、書き写すことでよりドキっとしてしまったな…代助の人生の方が生身のあたしよりよっぽど重いんだわさ~、ひぇー💦

f:id:chinpira415:20220106165042j:plain元旦に漱石を取上げたこともあり、ノートの1冊目は日本文学から拾い集めることにしました。1月16、17日は、画家・岸田劉生『劉生日記』より、大正10年の元旦と大正12年9月1日のページを書き写し。何と関東大震災の当日に日記をつけてんのよ~!

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こちらは震災時の動画。この惨劇を目にすると劉生の観察精神により驚かされます💦


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あたしととって日本で一番濃厚な親子といえば…岡本一平岡本かの子岡本太郎です。この三位一体ぶりは、漫画「アタックNO.1」の八木沢三姉妹を超えるインパクトがあります(笑)。一平がかの子を看取った文章、太郎が一平&かの子を克明に捉えた文章、どちらも鮮烈。書き写しながら、鉛筆の芯が燃え上がりそうになりマシタ~🔥

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【2冊目 翻訳のことば編 3.14~5.22

ツバメノート2冊目は、我が本棚の海外文学のコーナーからピックUPして書き写し。「私にとって、自己中心的であるということは一つの美徳である。」…ギッシング、かっけー!これぞ英国人、正統派の隠栖道ですね。1902年に書かれた『ヘンリ・ライクロフトの私記』は1998年版岩波文庫で37刷!かつての日本人はこれほどクールな人生哲学書にフツーに親しんでいたのね。ノマドの古典『ハツカネズミと人間』も大切な1冊。

f:id:chinpira415:20220106205630j:plain偶然ですが5月6日と7日の書き写しは、戦場で女たちを夢想したパルチザン原子爆弾の開発中に妻に先立たれた研究者…共に戦争の片棒を担ぎ、孤独を知ってしまった男たちの横顔が垣間見られる一節でした。両方とも、繰り返し読みたくなる名著です。

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ゴンブリッチ『若い読者のための世界史』はシャレてます。世界史解説本を読んでいる気が1ミリもしません(笑)。世界史=昔ばなし語りが素晴らしいのです。日本もチラッとだけ登場しますが、その素っ気ない扱い方にシビれます。端役の端役ですから~

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【3冊目 新書のことば編 5.23~8.2

そして3冊目のノートは、蔵書の中の新書に的を絞って書き写し。様々な専門分野の入門書として刊行される新書は、ピンポイントに知識を得たいときにもってこいですよね。しかもお手軽価格。スリムサイズなので、読み返しやすいという点も◎です。内田樹『先生はえらい』橋本治『国家を考えてみよう』は、柔らかな語り口ながら、何度紐解いてもその度に発見がある新書の王様👑書き写すのも楽しかった~♫

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【4冊目 映画のことば編 8.3~10.13

まだまだ情報が少なかった時代に映画に目覚めたので、映画関連書籍はかなり読み漁りました。映画は総合芸術だから、様々な角度から論じられている書籍がたくさん出ていて、「こんな見方ができるのか…」「こうやって制作されたのか…」と、映画を見る眼が鍛えられました。ポーリン・ケールの映画評を読んだときの衝撃、キアロスタミ監督にお会いしてサインをもらった日の記憶を呼び起こしながら、書き写しは続きます―。

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シネフィル(映画狂)たちの勝手な妄想を読むのも好きでした。映画という夢物語を、もう一度じぶん仕様の夢物語に祭り上げるには、ある種の芸が必要なんですよね。ただ、自宅にPCを持ったことで一番買わなくなったのは映画関連書籍かもしれない💦好きな映画に関してさえ、情報以外の間口を求めなくなっているとしたら…ちょっと反省

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【5冊目 いろんなことば編 10.14~12.31

最後は、ジャンル分けしにくかった本をチョイス。書き写しながら、水村さんの「もし」にはドキっとしたし、高橋さんの「なぜ」はジェンダー問題の奥の深さに気づかされました。結局2冊とも、この後、再読したんですよねー。

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お次は、写真家・小林紀晴芸術家・村上隆の文章です。どちらかと言うと、お2人の作品より、文章の方が好みなんですよね…💦

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都築響一の編集者人生は、心の底から“あっぱれ!”と呼びたいものです。単なるキワモノ好きとは違います。じぶんが惚れ込んだものを、長く深く捉え続けますが、頭のどこかで「たかが…」と思っている節が見受けられるのです。そう、「たかが」と考える批評性があるからこその「されど」の強度。あたしもブレない独居老人を目指します😊

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美術にまつわる話は、真面目に語られれば語られるほど、どこかハッタリ臭くて可笑しいんですよね。価値が定まっていないものに、一旦尾びれ背びれがつき始めると、もはやその暴走は誰にも止められなくなるみたい。それにしても28歳でミケランジェロの素描画を落札って…相当派手な博打だね。しかも半分しか描かれていないとは…大笑い♫

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森達也『世界はもっと豊かだし―』は、SNSがなかった時代に、明確な射程もないまま憎悪することが目的化してしまった世界の恐ろしさを説いているが、20年後の今、憎悪の連鎖は感染症並みの破壊力を持ってしまったのはご存知の通り…💦そのうえ豊かさに賭けることが、冷笑される世界になってしまった…。予言めいた一節でした。

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そこで大晦日、最後の書き写しは『般若心経で締めくくりましたあ~。ぎや~てい ぎや~てい はら ぎや~てい♫ 生れて初めて写経だ ぎや~♪ イッパツ呪文かけといたから、これでOK★ 2022年もほがらに過ごしましょう😊

f:id:chinpira415:20220107184443j:plain書き写し、誰でもできます、オススメですよ。面白いのは、文章を書き写すとき、何度も音読することになるので、意味より著者のリズム感に敏感になるんですよね。それとやっぱり、前後の文脈が気になって、そのまま読書の波に乗っかり、ツイ再読しちゃったこともしばしば。再読して愛着がわき、処分するつもりがそっと本棚に戻した本もありました~(笑)。2021年の「1日1枚シリーズ★」、今回も大いに楽しみました!

PS 次回は1/29に更新します

 

カラダ うずうず 冒険三昧🗻

【カラダ うずうず絵画】

今年の6月に、マブダチで画家の今村 哲(1961-)くんの新作―『アンリ落下傘部隊』('21)と題した絵を見て以来、身体感覚にまつわるイロイロなことを考える機会が増えた。どうもじぶんの肉体が、飛んだり跳ねたりふわっと浮いたりといったアクションに飢えていたみたい…もしかしたらコロナ禍の影響もあるのか―。さてこの作品、絵の中の5人は穴に吸い込まれていくのか、それとも穴から噴出した風に突き上げられているのか???

f:id:chinpira415:20211205105433j:plainそもそも天上なのか地底なのかもよくわからないけど、とにかくこの瞬間は全員で浮遊している。手の届かない隙間は、黄金色のボールでつなぎ留まりながら、辛うじて輪になって踊っている。スカートの裾が風に舞うこのかんじ、恐怖より愉快な気分が先行するのはあたしだけ?キモチよさそう~思わずハーモニー・コリン監督の映画ミスター・ロンリー('13)を連想したわf:id:chinpira415:20211205114712j:plainなんとこの映画には、修道女たちがパラシュートなしで朗らかにスカイダイビングするシーンが登場するの!メインの物語はすっかり忘れているのに、この寓話的エッセンスだけはどうにも忘れ難くて―。インパクト大でしょ😊そして『アンリ落下傘部隊』はあのアンリ・マティス『ダンスⅡ』(1910)にインスパイアされて描いた1枚なんだって~

f:id:chinpira415:20211205132011j:plain青と緑と朱赤の3色だけで鮮やかに描かれたこの傑作を見るたび、森の木陰でドンジャラホイ~♪とツイ口ずさみたくなるけど、手前のふたりの手と手の間にはわずかな隙間がある。そのため踊りのスピードに追っつけないかんじが際立ち、絵が外へ外へと拡張し、生命の波動もより高まって見えるわけ。一方今村くんは、勢いを止めることなく5人の輪を維持させようとボールでジョイント。浮遊の輪からはしゃぎ声が聞こえた~♬

 

【カラダ うずうず山歩き】

その後、緊急事態宣言明けの11月に、大人美術部のみんなと念願の熊野古道へ行った!人里離れた山道を歩く楽しさ、ハンパなかった👣

f:id:chinpira415:20211205221449j:plain険しい山道を想像し、旅の前からなるべく歩く生活を心がけていたけど、実際はアスファルトより山道の方が、足の裏にはうーんと優しいものですね。宿から熊野本宮大社へ向かう1時間半コースで、心も肉体も弾みっぱなしのアンリ歩兵隊~♬ただ聖地へと続く巡礼の道は、見どころがありすぎて1度の訪問では味わい尽くせません💦とりあえずお勉強なしに歩くだけでも、全身にエネルギーの行き渡るのが体感できちゃいマシタ。

f:id:chinpira415:20211205220347j:plain石段のぼり~の、急な坂道駆け降り~のを繰り返すうち、宗教心の乏しいじぶんにも何やらヒタヒタと聖性を感じるようになるから不思議…。いやはや、ここは間違いなく2度3度と足を向ける場所ですね歩く行為がそのまま巡礼!旅を終えた瞬間から「また歩きに行きたーい!」と願うようになったちんぴらです。

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【カラダ うずうず美術展 ①】

熊野古道から戻ったら、今度は今村くんと染谷亜里可(1961-)さんのユニット、D.D.の新作が体験できると聞いて、栄にあるギャラリーSA・KURAへ突撃。するってーと会場にビニールシートや布で張りぼての山ができてて、また山登りか~!と大ウケ😊実際は手前の水玉の布部分の穴から潜り、身体をねじりながら登る仕掛けになってて、熊野より数倍ハード(爆)。布の中では鯉の滝登り図を想像しながら独りもがいておりマシタ👍

f:id:chinpira415:20211224160540j:plain日常ではけして体感できない刺激がクセになりそう(笑)。作品名は『王様だけがパンツを履く』。アーティストたちの脳ミソは凡人では計り知れませんね(笑)。構造物として眺めても、“きわめてよい風景”…いや、“きわめてよいパンツ”でした~。

 

【カラダ うずうず映画鑑賞】

でもって、衝撃的な映画とも遭遇👀コロンビアで50年以上続いた内戦を下敷きにした物語『MONOS 猿と呼ばれし者たち('19)です。主役となるのは、「モノス(猿)」というコードネームで呼ばれ、ゲリラ組織の戦闘員として訓練された8人の少年少女。人質のアメリカ人女性を監視しながら、外界から遮断された山岳地帯で無邪気に暮らす彼らが、ある事故を契機に連帯感にヒビが入り始め、チームの統制がきかなくなるの―。


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1980年ブラジル生まれのアレハンドロ・ランデス監督による長編2作目。とにかく時代や場所を特定していない架空の物語なのに、子どもたちの悪ノリアクションをはじめ、意味よりリズムや音を先行させる演出センスや、着古した戦闘服の馴染み具合など、異様にリアリティをかんじてしまい、ずーっと前のめって魅入っちゃってたのです。しかも、山が舞台になるわ、マティスの『ダンス』や今村君のアンリ隊のイメージも重なるわで大興奮!ひたすら続く“山つながり”…偶然にしては出来過ぎじゃないかー⁇⁇

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【カラダ うずうず美術展 ②】

さらに11月の最終週には、2泊3日のお江戸旅をぶっこみました(笑)。一番のお目当ては東京都現代美術館で開催中のクリスチャン・マークレー(1955-)『トランスレーティング[翻訳する]』展。マークレーは、過去にブログで取り上げたこともある作家ですが、『THE CLOCK』('10)という傑作映像作品しか知らなかったの…。

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経歴をネットでざっくりカジってはいたけど、正直言ってテキストで読んでもピンとこなかったわけ💦…あたしの苦手な音楽や音にまつわる実験的アーティストみたいだから余計に。ところが百聞は一見に如かずですね👀何と終わってみたら滞在時間3時間超え鑑賞(笑)。それでも美術館を後にするのが名残惜しく、後髪が引かれまくりでした。

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会場内では、じぶんが今まで思い込んでいた“音楽”とはまるで異なる解釈で“音楽”が説かれているので、あっけにとられることばかり…まさに蒙が啓かれたかんじ。特にオススメなのが『スクリーン・プレイ』('05)古いフィルムを寄せ集めて作った映像に、線や点のアニメーションが重ねられて進行する30分の作品で、身体の動きが視覚化されるセンスに心底シビれました。立ったまま鑑賞は若干キツイけど、絶対に見逃さないで👀


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【カラダ うずうず山登り】

そしてお江戸の最終日は早起きして高尾山へGO!すでに山歩きはお手のものです(笑)。お天気◎紅葉◎、案内してくれたYちゃん手作りお稲荷さんも極上で、至福の一時を過ごしましたいやー、足を延ばしてアクションすると命が燃え上がりますね♬

f:id:chinpira415:20211224181616j:plainしかも頂上では富士山がお出迎え🗻 行きの新幹線でしかと目に焼きつけた富士山が、最終日にも再び登場するとは…ぶっちゃけ、感動以外の言葉が思いつかなかったよ~。

f:id:chinpira415:20211224180043j:plain2021年に還暦を迎え、残り時間を意識し始めたちんぴらは、来年も愉快な冒険を続けたいです。次回は年明け1/13に初UPします。ではではよいお年をお迎えください―。

みんなの「行きつけの■■」アンケート【イロイロ編】

さてマブダチたちへのアンケート、2回シリーズの後半戦は【イロイロ編】です。お店以外の「行きつけ」の場所が並びます。人は何に引き寄せられ「行きつけ」になっているのか…想像以上に範囲が広くて、ホント面白いものですわ~😊

f:id:chinpira415:20211122140905p:plain【レポート1】Y・Kさん 太宗寺

わたしの行きつけの場所は新宿御苑近くの「太宗寺」です。新宿散歩コースの一つとして、立ち寄ったのが始まりです。散歩のついでが、今は、太宗寺に行くためにその道を通っているような気がするよ。気がつけば、10年以上ほぼ毎週末に、ここのお堂に安置されている閻魔大王と奪衣婆に、1週間の出来事を報告しに行ってるの。イイことも悪いことも、じぶんのすべてを振り返る貴重な時間…神様ではないのにね(笑)。

f:id:chinpira415:20211122143745j:plain▶そういえば、太宗寺のことは以前にもYちゃんから聞いたことあったね。でも毎週末に業務報告をしていたとは知らなかった。いいなー、そのルーティン👍あたしも神さまじゃない何かに向かって語り掛けたい♪ 混雑していないところもイイね(笑)。東京暮しの拠り所になってるスペシャルな場所、今度連れて行ってね👣

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【レポート2】A・Hさん 秋葉原電気街

80年代後半に知人に連れて行ってもらって以来、東京に在住時も上京時も「何か面白いものはないか」と思ったら立ち寄る街です。どの店も応対はぶっきらぼうで、こちらの勉強度合いが見透かされていると言うか…。これまでに電子部品や無線機、ジャンク等いろいろと購入してきました。値引き交渉等も意外とできましたし。時代が変化するに従って、私にとって魅力だったジャンク屋は姿を消し、レンタル屋の使い古しCDの販売ショップもなくなり…💦幸い、昔のままの風景を残した店も少しは残っていますけどね。変化していく様を観させてもらっている街とも言えるのでしょう。思い入れも惰性も楽しさも満点の5点です。

f:id:chinpira415:20211122150608j:plain▶Yちゃんが西なら、Hさんは東京の東を贔屓にしてるわけね!秋葉原御徒町、上野…そう、寄席に寄れて、美術館も博物館も楽しめるあの界隈は、Hさんが“じぶん十分になれる庭”といっても差し支えないでしょう。電気街の様変わりぶりは名古屋の大須を歩いても痛感するけど、人が集まり、魑魅魍魎な空気を漂わせる場所にはどうしたって足が向く―。Hさんはこの先もずーっとキョロキョロしに行くのでしょうね~♪

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【レポート3】R・Hさん 近所の内科

今の住まいに引っ越して7年。以来私の「行きつけ」は、徒歩1分のところにあるおじいさん先生の内科医院です。風邪でお邪魔したある日のこと、「足がかゆい」と何気なく言ったら、「もともと皮膚科もやっておったんじゃ、診てあげよう」と言われ、処方された薬がピカイチ✨で、以降、体のどこかが不調だと、皮膚だろうが、腰だろうが、ヒザだろうが、なんでも診てもらえるようになり、「わたしの健康の源」となりました!先生が仙人のようにいつまでも長生きしてほしい…と切に願っています。思い入れも惰性も、5点満点です🥇
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▶いわゆるかかりつけのお医者様ってヤツね!そりゃあ心丈夫だなあ。「行きつけ」の最高峰かも~(笑)。Rは歯医者さんもずーっと通い続けているところがあるようで、わざわざ1時間以上もかけて通院してるらしいのよね。30年以上の付き合いだけど、確かにこだわりの強さは昔からハンパなかった(笑)。飲食店も洋服屋さんも、気に入ったらしばらくは毎日通う勢いで発掘してきたわよね(笑)。よっしゃー、「行きつけ」発見のプロに決定だ!

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【レポート4】Mさん 飛び出しくんと出会う道

地下鉄の池下駅の裏手、キンコーズを少し東に行った辺りにある、今言うところの“渋ビル?!”を、以前から気になって眺めているのですが、特にそこの階段横に飾られている飛び出しくんの看板を見るのが密かな楽しみなんです!なんと時期によって着せ替えられているんですよ~。このビルの人が作っているのかな…次はどんな衣装になるんだろう⁇…と、散策の度に毎回楽しませて貰ってます。何度見ても飽きません―お気に入り度5点満点です

f:id:chinpira415:20211122164438j:plain▶マジかー!ウチのすぐ近所じゃないの~。3つの並びをよく見ると、「父の日」「中秋の名月」「芸術の秋」とテーマを変えてデコってて、営業のための看板仕様にしていない点がニクイよね。もともと、こども向けの注意喚起が飛び出しくんの使用目的だから、目的を踏まえたうえで遊び心を加えているかんじ。あー、あたしもこのデコチームに入りたいなあ~😊

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【レポート5】K・Mさん 職場某所の男子トイレ

行動パターンを固定化すると、待ち伏せされて刺されるリスクが高まるから、「行きつけの〇〇」はつくりませ~ん。あえて挙げるとしたら、職場某所の男子トイレかな? 女子は知らないと思うけど、男子専用トイレのウォシュレットにも何故か「ビデ」がついてるんです。で、このトイレのビデの角度が、あっしの尻の穴にピッタリなんです~ ♪ 思わず足が(尻が?)向いてしまいま~す。あっしが刺されるとしたらココですね~。惰性 5 点満点です。

f:id:chinpira415:20211123110649j:plain▶まさかトイレを「行きつけ」に選ぶとは…💦も~~~、自意識過剰!誰もMさんを刺したりしませんから~~(笑)。で、思わずマジトークしてしまうけど、ビデの角度とMさんの穴がなぜ合うのかがわからない。何度頭の中で図解してみても、イメージできないよー???単純に、すごーく便座の前に腰かけているってことじゃね?そのうち転げ落ちて、尾てい骨骨折したりして…お気をつけて~♬

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【レポート6】M・Mさん 名城公園

常に足を運んで馴染んでいる行きつけの場所は名城公園です!その昔、田舎暮らしだった私がテレビ塔のすぐ側の飲食店に嫁ぎ、半年ほど経った頃、環境変化のストレスで歩行困難になりました😢あらゆる病院に駆け込んだけど回復せず、悩んでいたある日、東洋医学に詳しい某先生と出会い「今日から歩きなさい!」と助言されました。以来、ウォーキングに目覚め、じぶんの心身に最も最適だと発見した場所がこの公園。1周1.3キロの土のコースが足に優しいの~。現在も毎日コツコツ歩きに行き、親愛なる友のような存在です。

f:id:chinpira415:20211123223823j:plain▶わたしも1度お付き合いさせていただきましたよ、名城公園ウォーキング!広いんだよねー、とても都心の一角にあるとは思えない…日本の歴史公園百選に選ばれているとか。もちろんお城の眺めも抜群ですよね★

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【おまけ】ちんぴらの行きつけは… ツーハンズ 今池

最後はあたしの行きつけの場所で締めくくっておきましょう。いろいろ迷いましたが、結局お店にしてみました。近所のリサイクルファッション専門店「ツーハンズ」です!リサイクル衣料店はこの10年くらいすごーく増えてますが、ここの良いところは圧倒的な安さコンディションの良さ。1枚500~700円が相場です。f:id:chinpira415:20211209180620j:plain

ポイントは、イオン今池店の中に入っているので、食材買い出しのついでに何も期待せずにぶらーっとのぞいてみる…というスタンスにあります。間違っても目的化してはいけません(爆)。衣類に限らず、中古商品との出会いは、偶然を楽しむマインドがあってこそ。つい最近、まるでミッソーニみたいなニット・ポンチョを460円で手に入れました😊そう、個人の想像力がノンブランド商品を輝かせるのです思い入れも惰性も満点のお店です。

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PS 次回、年内最後の更新は12/29です

みんなの「行きつけの■■」アンケート【お店編】

今年最後のマブダチたちへのアンケート、今回の質問は「行きつけの■■」を紹介して!です。「オススメ」や「お気に入り」ではなく、あくまで「行きつけ」という点がミソ。思い入れがあってもなくてもどちらでも構わないので、自然と「行きつけになった」場所を教えてもらいました。2回シリーズの今回は【お店編】。やっぱ、人を習慣化させてしまう場所には、何かしらの磁力があるんでしょうね~😊

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【レポート1】S・Iさん フレッシュフーズ フィール 野並

娘の習い事の送迎ついでなので、思い入れはあまりないです。教室の駐車場に車を停めて片道徒歩10分かけて向かい、ここで30分ぶらぶらして、帰りも10分歩いて教室に帰るとちょうど50分間の習い事が終わる時間。送迎の待ち時間に買い物+ウォーキングができています。店内は、品揃えと値段のバランスが良い上にレジスタッフの数が多く待ち時間少なめ。まだお座りできない赤ちゃん用のカートがあることも◎。最近UFJのATMが新設されたのも高ポイント。…思い入れがないといいつつ、自分がフィール推しなことに今気づきました(笑)

f:id:chinpira415:20211121110115p:plain▶なるほど~、娘の習い事の送迎ついで…とは!いや、子育てママにはかなりササるポイントかも。送迎時間のやりくりってストレスたまるらしいもんね。しかも、ウォーキングとセットのメリットには、コロナ以降の世の中が見えたりして面白い!フィールの店長さんに教えてあげたいな~、きっと泣いて喜びそう(笑)。

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【レポート2】K・Kさん コープ上社店鎌倉シャツ大名古屋ビルヂング

コープ上社店は駅から家までの途中にあるスーパーで、ここのトロ鉄火680円が大好きなのです!だがしかーし、あったりなかったり…💦法則性もないので、買うものが無くても必ず立ち寄ります。惰性4点こだわり5点。一方鎌倉シャツは、シャツ以外の仕事着に必須のアイテムも揃うお店。たがしかーし、ここも少量生産なので、イイと思ったらその場で買わないとなくなる回転ぶり💦近くへ行ったら毎回寄るけど、今年の戦利品はシャツではなくタートルでした(笑)。でも毎度覗いて店員さんにお礼して帰る…惰性5点こだわり2点です。

f:id:chinpira415:20211121113322p:plain▶トロ鉄火とシャツの並びにウケました~。そのうえ2店舗とも、足を運んでも必ずお目当てのものが手に入るとは限らないからこその「行きつけ」なのね!きっとそのスリルも込みで、テンションあがるんだろうなあ~。この出たとこ勝負感は、ネットでは絶対に味わえない買い物の醍醐味。お目当てのコーナーに突進するKの姿を監視カメラでチェックしたいよ(爆)。

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【レポート3】Y・Tさん “自宅に一番近かった”ローソン

利便性だけで利用していた近所のコンビニ。仕事に忙殺されていたある時、ヘロヘロ状態のわたしがヤバ目に見えたのか、一人の店員さんが釣銭といっしょにポソっと「おつかれさまです」と声を掛けてくれたんです。その一言がどんなゴッドハンドのマッサージよりも心身をほぐしてくれて…。以来そのローソンは行きつけの店に昇格!とてもシャイな方だったのですが、よく観察すれば接客が超丁寧。やがて【やまちゃん】と呼び始め、一日の終わりに若者とのささいな会話を楽しみに帰宅してました~。最近地元へ越したのでもうやまちゃんと逢う機会はなくなったけど、東京のよき思い出です。

f:id:chinpira415:20211121135259p:plain都市型単身生活者だと、意外に身に覚えのあるコンビニ物語かもしれないね。その日の終わりに最後に言葉を交わす人が、家族でも恋人でも友だちでもなく、お店の店員さんである確率はきわめて高いだろうから―。Yちゃんは、名札を見て「やまちゃん」と呼んでいたらしいけど、「愛」ってヤツは名前を付けるところから始まりますからね~(笑)。中目黒で人知れず咲いたちっちゃな愛の花…ババアになっても思い出すかもよ。

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【レポート4】K・Nさん とう吉饅頭

去年友人に教えてもらった中村区役所近くの和菓子屋さん。試しに母の好きな草もちを買って以来、リピーターになりました。行けば10個は買いだめし、大半を冷凍しておいて、母が少しづつおやつに食べているよ(笑)。つきたてのお餅や赤飯も◎。味も思い入れも5点満点!もっと近くに和菓子屋さんはいっぱいあるのに、母は相当気に入ったみたいで、買って帰るとめっちゃ喜んでくれるからね~。親孝行ができるお店、今後も間違いなく通い続けますわ。

f:id:chinpira415:20211121144151j:plain和菓子屋さんってどこも同じような店構えだから、教えてもらわないとスペシャルな違いに気づかないよね。でも、Kのお母さんが買って帰るとはしゃぐ姿は想像できるな。きっと、お昼間にラジオ聴きながら嬉しそうに食べてるんだろうなあ~😊冷凍室に在庫がないとちょっぴり寂しいんだろうな~なんてね😊おやつ文化で親孝行、理想的な姿だと思いマシタ!

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【レポート5】O崎さん夫婦  中華酒菜 黄龍/ だるま鮨

名東区に引越ししてから開拓して行きつけになった飲食店2件。近くの町中華黄龍」は、帰宅が遅くなって「夕飯ど〜する〜?じゃ黄龍!」が合言葉。何食べても美味しくて、私たちの心の支えになってます。もう一件は、回っていないお鮨屋さん「だるま鮨」。お鮨屋は敷居が高いな…と思いつつ、いつも賑わってる様子なので恐る恐る入ってみたら、お客さんが居酒屋使いしているような気楽で美味しいお店。最近はカウンターを予約すると、大将の正面の特等席に案内されるよ~。どちらも思い入れ5点満点!

f:id:chinpira415:20211121174121p:plainコロナ禍で「つぶれたら困る」お店を応援してます!去年はテイクアウトもよく利用した。黄龍は「全面解除になっても9時過ぎたらお客さんはいない、なかなか戻らない」。だるまは「以前の9〜8割減」と今後暫くは厳しそう…😢2店とも家族経営のカウンターとテーブル(小上がり)の小さなお店。やっぱりこういうお店が一番好き

f:id:chinpira415:20211121173037p:plainそうそう~♬あたしも家族経営の小さなお店が大好きだあ~。O崎夫婦は、仕事で2人いっしょに動くことも多くて、帰りが遅くなったらそのまま直行し、フツーに美味しい晩御飯が出てくるお店をベストだと思ってるんだよね。派手なご馳走ではなく、繰り返しに耐えられる味のお店…ホント貴重です。

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【レポート6】K・Kさん  雑誌の置いてある喫茶店

わたしが幼い頃、母が喫茶店を経営していたこともあり、喫茶文化が欠かせない家庭に育ちました。家族3人、週末は行きつけの喫茶店のモーニングから1日が始まるという流れで、コーヒーを飲みながら週刊プレイボーイ、文春、女性自身、ノンノ、モアetc…大量の雑誌を読むのが日常でした。結婚してからも行動パターンは同じ。ただ、ずっと個人店に通っていたけど、最近では近所にTSUTAYAとスタバが進出し、行動が様変りしました。スタバで飲み物買って、雑誌はTSUTAYAで読み放題…こんな日常が来るとは!

f:id:chinpira415:20211121180837j:plainコーヒーが好きなのか、雑誌が好きなのか…いや、両方ある場所が、Kちゃんにとっての行きつけの喫茶店の必須条件なんだよねっ!確かにTSUTAYAとスタバのコラボは、目下Kちゃんの理想の空間だろうけど、もしかして、お店にいる方が家にいる時間より長くない?そして究極の老後の慰安場所は、TSUTAYAとスタバと町医者のコラボでキマリだね(爆)。今から三位一体の事業展開を心待ちにして~。

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【レポート7】Y・Kさん  トータルファッションハヤシヤ

惰性3点 思い入れ3点 行きつけ歴2年…映画を見に行った帰りに、必ずたち寄るのが「ハヤシヤ」です。映画館が入っている大型ショッピングセンターは軽く流し、その向かい側に建つ「ハヤシヤ」こそがわたしのお目当て。正直言って何屋なのかわからないし(笑)、色んな物が雑多に置いてあるけど全部商品で(汗)、思いがけないお宝がたまに見つかるので侮れないの。意外や意外、他にも何店舗かあるらしいのよね~♪

f:id:chinpira415:20211121221437p:plainYちゃん、タイヘンタイヘン!ハヤシヤのキャッチは、“超特価が自慢のファミリーファッションのお店”だってさ。HPもちゃんとあった。3店舗営業中で、中・高の指定制服まで扱っているらしいわよ。びっくりドンキー!好きだな~、この店構え。何かと抱き合わせて「行きつけ」化になるかんじがメチャわかるぅ~。市内からちょっと外れた場所ならではの毎日フリーマーケット状態店舗に、グッときたー(笑)。

 

PS みんなの「行きつけの〇〇」アンケート【イロイロ編】は、12/13にお届けします。お楽しみに―!

勝手にシネマ評/『〈主婦〉の学校』('20)

な、な、なんなんだこれは…。予告をチラ見しただけで、心身ともに寛いでしまった。しかも隅々までスキっと美しいではないか!


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『〈主婦〉の学校』は、アイスランドの首都レイキャビックにある家政学校「Hússtjórnarskólinn」を密着取材したドキュメンタリー。1942年に創立した生活全般の家事を実践的に教える伝統校らしいが、いやはや、想像以上に様々なことを考えさせられる映画だった。

f:id:chinpira415:20211102100415j:plain何せ疑い深いタチなので、まずはキレイキレイな印象を受けたじぶんを、一旦括弧に入れて座席に着いた。北欧マジックに騙されないぞーと(笑)。ところが開口一番、淡いピンクのセーターをお召しになり、静かに執務にあたっている校長先生を目撃したら…もうダメですね。

f:id:chinpira415:20211102100534j:plain金八先生by赤木春恵ではなく、苦み走った草笛光子似のマルグレート校長が、超かっけーのだ。日本とはビジュアルだけでもこうも違うのか~。そしてひとたびそのハスキーボイスで穏やかに語り始めたら、英国諜報部MI6のボスにしか見えません。もちろん007は出てこない、ここは家政学校ですから―(笑)。

f:id:chinpira415:20211102100805j:plain次の“こうも違う”事例は、建てられて100年になる真っ白な学び舎だ。少人数制の学校だから、ちょっと大きなお屋敷を校舎に利用しているようだが、どこもかしこも小ざっぱりと気持ちよく整えられ、さりげなく飾られた絵画がイチイチ決まっている。簡単に真似ができないレベル。それでいて誰もが親しみを抱くインテリアで心落ち着く。

f:id:chinpira415:20211102101005j:plainさらに屋根裏には寄宿生のための寮が用意され、まるで絵本の世界ではないか。ここで暮らしながら学べるってマジに天国じゃね?恐るべし北欧マジック。少なくともわたしが知る学校環境とはまるで異なり、機能的かつ温もりのある空間作りに早くも脱帽するしかない。

f:id:chinpira415:20211102101152j:plain学生側に目をやれば、アイスランド全土からごくフツーの若いお嬢さんたちが集まってきている。「主婦になるためじゃない」「手仕事に興味があって」…と、目的は様々だが、誰もがここで学ぶことに意欲的。そう、生活全般の知恵や技術を身につけることは、じぶんの人生をよりよきものにすると考えているのだ。「就職」に紐づいた学びにしか価値がないと思い込んでいる日本人とは、“決定的に違う”のだ。

f:id:chinpira415:20211102101335j:plain授業シーンがこれまた楽しそう!秋に入学した学生たちはバスに乗って遠出し、ベリー摘みの実習から始まる。ケーキやジャムを作るため、収穫から体験させるというダンドリだ。すんばらしいロケーション、ベリーってこんなゴツゴツした岩肌に実るのか。日本でこんなプログラムを実現するなら、授業というより旅行会社のツアー商品だろう。

f:id:chinpira415:20211102104733j:plain授業シーンの中で、登場頻度が高かったのは、やっぱり調理実習。目の保養にもってこいだからね。ただこの学校では、じぶんたちのその日の食事作りから始まっているので、授業と生活の区分けがなく、とても理想的な基礎実習方法に思えた。完成した夕飯を校長先生も交えて大家族のように食べ、食事を終えたら手をつないで「ごちそうさま」とねぎらいあうシーンなんて、美しすぎてめまいすら覚えたわ…(汗)。

f:id:chinpira415:20211102101744j:plainその一方で、伝統料理や凝ったおもてなし料理も丁寧に学べるわけで、生活文化はこんな風に自然体で伝承されるのがベストだと感じた。母から娘とか、母から嫁へみたいな形骸化した家族幻想に未だに縛られていたり、食事作りの価値を無償奉仕としてしかみなしてこなかった我々とは “こうも違う”のだ。

f:id:chinpira415:20211102102004j:plain他にもテーブルセッティングにマナー、洗濯&アイロンかけ授業もあれば、洋裁や手芸ワークと、盛りだくさんな内容。家事を基礎の基礎から学べるなんて、なんて贅沢!何よりすべての学びを、じぶんの生活技能を高めるための実学とおいているところにグッときた。

f:id:chinpira415:20211102102155j:plain映画の構成は、卒業生たちのインタビューを交えて進行する。1997年に学校初の男子学生となった彼は「卒業するとき、校長に『あなたは幸運な男性になるわ』と言われた。人生でうまくいかないことがあるたびに、その言葉を思い出し乗り越えてきた」と語る。さらに、卒業後に環境大臣になった男性まで登場し、母校の取り組みを「いまこそ意義がある」と賞賛する。かんじ良すぎてケチのつけようがない。本当にここでの体験が、じぶんの人生に実をなしているのだろう。

f:id:chinpira415:20211102102250j:plain今回初めて知ったのだが、良き主婦になることを目的としたいわゆる“花嫁学校”は、かつて世界中に作られていたらしい。でもって今ではどこも衰退。同様の目的で創立しながら本校は、時流に目配せしつつ「主婦」から「家政」へ学校名を変えたり、男女共学にしたりと教育内容はそのままに、アピールポイントを刷新して、現在も存続する数少ない例とか。それでも、学校継続の許可が下りるのは、毎回新学期が始まる1ヵ月前(!)だと言うから、マルグレート校長も、気が休まる暇はないだろう。

f:id:chinpira415:20211102105034j:plain運営母体の大小にかかわらず、どんな学びの場を継続的に整えて行くかは、その国に生きている人々の在りたい姿が反映される。気負うことなく生活を大切に営み、自立した人生を楽しもうと考えるアイスランドの人々に、俄然興味がわいた

f:id:chinpira415:20211102102543j:plain生活全般を回せるようになることは、自らと社会の関係について認識することであり、それは共同体を維持するための規範を考えることにつながる。これぞまさに教養だ!ジェンダー平等”先進国は、国の旗振りだけでなしえたものではない。よりよき市民になるための意識が、長い時間をかけて日常的に育まれているのだ。

f:id:chinpira415:20211102102710j:plain映画は卒業式後の歓談シーンで幕を閉じる。小さな学校の小さなセレモニーのそのまた小さな階段前の通路が舞台だ。何もこんな窮屈なところでカメラを回さなくても…と呆れるような一角である(笑)。でも、ここに入れ代わり立ち代わり現れ、感謝と歓びをそっと噛み締め合い、別れを惜しむ学生たちの姿がたまらなくイイ。静かにねぎらいあう姿が胸に染みた…。寝食を共にしながら学んだ校内の道辻に、よき市民たちが集う絵として、忘れ難いものとなった

f:id:chinpira415:20211102102806j:plainところで日本の家庭科教育は現在どうなっているのだろう。50年前のわたしの体験とは様変わりしているはず。本作を見て急に気になり始めた。ちょっと調べてみよう―。

 

『〈主婦〉の学校』

2020年/78分/アイスランド

監督/脚本/編集  ステファニア・トルス
製作/音楽/音響  ヘルギ・スババル・ヘルガソン
出演        マルグレート・ドローセア・シグフスドッティル                      

 

PS 次回は11/29に更新します

この夏、出会った“女たち”👗

今年の夏はいろんな意味で熱かった🌻狙ったわけでもないのに、ユニークかつ濃ゆーい女たちのドラマと接する日々が続き、やたらにぎやかだったのよ~。ようやく秋風も心地良くなってきたし、ここらでそんな変わり種の女たちを蔵出ししておきますね。

【STEP1】バレエで少女漫画革命

▶皮切りは、先日掲載した“胸アツ”コンビ特集の流れで、40年ぶりに再読した山岸涼子のバレエ漫画アラベスク。やっぱ山岸先生は少女漫画の革命家でした。

f:id:chinpira415:20211009164717j:plain▶画期的だったのは少女漫画ならではのお姫様展開―「派手に失敗を繰返すヒロインが実は天才で」➡「無垢な振る舞いで周囲の人々をちゃっかり隷属させ」➡「しれーっと成長&王子様もゲット」―に、妖気漂う絵を持ち込んだところ。この落差にシビれたんだよね。そこにマブダチFから「私は『SWAN』派!全巻あるよ~」との声がけが―。

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▶初めて通読した有吉京子『SWAN』は、1976年に連載が始まり、40年以上も続いた大ベストセラー。ざっくり言うと『SWAN』全巻も『アラベスク』全巻と同様、ヒロイン(聖真澄)が少女漫画の王道展開をひた走るけど、長期連載に至った分キャラの肉付けが厚みを増し、読了後は聖真澄があたかも実在したかのように記憶されてしまうというスゴ技なんですわ。はい、1970年代に誕生したバレエ漫画の2大傑作は、ノスタルジーで取り扱えるようなヤワな代物ではなかったです💦両巨頭の実験精神こそ熱かった~

【STEP2】少女漫画の感性は世界言語

▶7月。今度は少女漫画のエッセンスを2本のアジア映画に発見👀

f:id:chinpira415:20211010113516j:plain『1秒先の彼女』('20)は、人よりワンテンポ早い女子とワンテンポ遅い男子が、空白の1日を埋めてめぐり会う台湾発の恋愛映画。キャラの設定、ギャグの間合い、ロケーションの選び方など、スクリーンから流れ出る空気が絶えずなめらかでさー、かなりのトンデモ話なのにスンナリのれて、最後には涙ぐむ始末(笑)。パッとしないヒロインを一発逆転で輝かせるテクは、上等な少女漫画のアプローチと共通していた気がしたよ。


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▶打って変わって『少年の君』('20)は、現代の中国が抱える様々な社会問題に苛烈に踏み込んだヘビーな1本。で、こっちの主役男女は、地獄絵のような毎日を、まるで『愛と誠』ノリに魂の一心同体化で共闘します。青春純度も高く、ババアのあたしからすると“せつなまぶしさ”に目がくらみました。主役二人のおぼつかない足取りや距離感にはくらもちふさこ漫画がダブったり…。少女漫画の感性は間違いなく世界言語ですね

 

【STEP3】美術作家・寺内曜子に唸る

▶8月。豊田市美で寺内曜子(1954~)作品と初遭遇。インスタレーションパンゲア』をはじめ、すっごくシャープでカッコいいんですけど…この人誰?鑑賞後もしばしば思い返していたところ、なんと本人による作品解説を動画配信で拝見できたのです。

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▶この講演が目からウロコの連続!例えばこの赤と青の面はどっちが表か?と問われたら、判断に困らない?そもそも赤と青の他に切り口もあるし、1つの造形物と考えれば見る角度でも変わるし…ぶっちゃけ全体を捉えられなくて答えられない…。つまり寺内作品は、鑑賞者自身の価値基準の曖昧さに気づきを与える展示をしてるわけ。あたしは「モノ」の美にときめいたけど、本人は「モノ」として作ってないんだって!ひぇー

f:id:chinpira415:20211011132439j:plain▶とはいえ、作家から未知の視座に気づかされるのはよくあること。それより興奮したのは、当時の貴重な写真を交えて語られた寺内さんの留学体験談でした1979年に渡英し、セント・マーチンズ美術学校でアンソニー・カロに学んだ寺内さんは、憧れの彫刻家に近づくことで、逆に「モノ」を作らない意思を固めていったのです。これまた今から40年以上前に試行錯誤を繰り返した女の人の横顔です。そして今も実験継続―熱い!

 

【STEP4】女性ドライバーが裏ヒーロー

▶カンヌで脚本賞を受賞した濱口竜介監督作品『ドライブ・マイ・カー』('21)。綿密に仕立てられた映画の中でひときわ印象的だったのが、女性ドライバー・みさきでした。

f:id:chinpira415:20211012100031j:plain化粧っ気もなく無口なみさきは23歳。妻を亡くし喪失感を抱える舞台演出家の専属ドライバーとして雇われる設定で、縁もゆかりもない孤独なふたりが運転席と後部座席に身を置き、同じ時間を過ごすシーンが繰り返されます。『ナイト・オン・ザ・プラネット』('91)以来記憶にないよ~、プロの女性ドライバーが存在感を発揮する映画なんて!

f:id:chinpira415:20211012121238j:plain▶『ナイト~』のウィノナ・ライダーと同様にみさきも喫煙者に設定していて、やさぐれ感を漂わせていますが、30年の歳月を経た現代の女ドライバーは、さらにプラスαで折り目正しき黒子の陰影が加味されてるの。クール!さりげなくフィルムノワール(犯罪映画)ムードが薫ってましたわ。みさきに扮した三浦透子マジで高倉健です👀


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【STEP5】歌人の少女時代

▶9月。図書館で手に取ったのは与謝野晶子が少女時代を綴った『私の生い立ち』

f:id:chinpira415:20211012201835j:plain▶可愛がってくれた叔母が与謝野晶子の歌が好きで、子どもの頃に読み聞かせてもらった思い出はあるけど、彼女の才能やエネルギッシュな生き方にはずっとノレず…💦なにせ評価が確立されてるものに、あえて飛び込もうとしないちんぴらですからね(笑)。ところが、堺での幼少期の記憶を紐解いたこの1冊はべらぼうに面白くて、何度も声を上げて笑っちゃったのです。いやはや感受性がナミの少女じゃない!

f:id:chinpira415:20211013110303j:plain▶特に5つ目の「嘘」と題した章には爆笑。同級生たちと継母話(ママハハばなし)で盛り上がるうち、嘘がヒートUPして止まらなくなるという…(笑)。傾きかけた老舗和菓子屋の三女に生まれた晶子の妄想力に少女漫画の原点を見た気がします。短いし、エピソードごとに分かれていて読みやすいからぜひトライしてみて。竹下夢二の挿絵も素敵。ちなみに青空文庫でも読めますよ。

 

【STEP6】遅ればせながら出会った本命

▶さらにタイヘン💦遅ればせながら映画監督、ケリー・ライカートを知ってしまった!

f:id:chinpira415:20211013114812j:plain▶ケリーは1964年フロリダ生まれ。最初の長編『リバー・オブ・グラス』を発表したのが1994年だし、じぶんと年齢が近いこともあって「なんで誰も教えてくれなかったのよ~」と非常に悔しがったわけですが、どうもご本人にメジャー映画制作の志向がなく、紹介が遅れたみたいですね。旧作4本をチェックした今ではそれも納得。世に送り届けたい作品の方向性が明確で、市場ありきで進めていない。腹が据わった作家なんです。

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▶ケリーの作品はとてもシンプルな語り口ですが、今まで見たどの映画にも似ていません名もなき人たちのささやかな生の断片と、ひび割れた世界の断片が共振し、落ち着きどころのないまま我々の頭上を低空旋回し続けます。西部劇にも、犯罪サスペンスにも、自分探しドラマにも回収されない唯一無二のケリーの世界…これからようやくリアルタイムで彼女の活動が追跡できると思うと、それだけで心が震えるちんぴらです。


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【STEP7】天才は忘れた頃にやってくる

倉橋由美子(1935~2005)の伝説の一冊『聖少女』とも遂に対面…息も絶え絶えです✟

f:id:chinpira415:20211014100848j:plain▶記憶喪失になったヒロインが出てくる…彼女の日記が届く…近親相姦エピソードが盛られる…死の匂いがする…素足で都会を駆け巡るイメージが横溢する…ヘタレな“僕”が騎士になる…ってな具合で、あらすじさえ掻い摘めないのに、感想を書こうなんて到底ムリ💦―が、1965年に発表されたこの小説の一節にでも触れたら最後、身体のどこかに『聖少女』傷跡が残り、一生消えません。ちなみにあたしは横隔膜が破れマシタ~。

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村上春樹川上弘美吉本ばなな、そして漫画家の大島弓子らの創作イメージ遡れば、『聖少女』にたどり着くと言われているようですが、ホントその通り!いや倉橋さんは、どこまで追いかけてもたどり着けない別の惑星の住人かもしれません。汗も涙も真実もない絵巻物なのに、“永遠”の輝きが放たれていて、国産みの神話と肩を並べるような風格があるんです。いずれデビュー作のパルタイ('60)にも挑戦したいけど、その前に体力をつけないと💦

 

【STEP8】ジェンダーバランス?

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▶そして10月の早朝、一瞬我が目を疑った👀日課にしている『テレビ体操』に、なんと男子アシスタントの姿を発見。1957年の放映開始以来初の男女混合編成なんだって。まあさー、10月1日って、様々なモノの値上がり話題で持ちきりになる日だけど、女たちの牙城に男たちも集うようになったという話なら、むしろウェルカムだよね。早々に見慣れちゃったし…(笑)。最後は男サイドの巻き返しでオチとしておきましょう~♬

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PS 次回は11/13に更新します

 

 

 

映画はパンフレットで2度おいしい 🍴

春先に重い腰をあげて本棚の整理をした。定期的に見直しはしているが、唯一保留にしたままの一角があり、今回はそこに踏み込もうと、ねじり鉢巻きさながらに取り掛かった。はい、映画のチラシとパンフレットをぶっこんでるゾーンです。何せ40年以上続けている愉しみなので、振り返るのも恐る恐るだったりするんだよね…(汗)。チラシはタダだからバッサリ捨てられても、パンフは厄介💦まずは吟味から―。

f:id:chinpira415:20210928112212j:plainたまに調べ物をするときにのぞくことはあっても、もはや何冊あるのかすらわからない状態の棚。軽い気持ちで1冊ずつ手に取り出したら、ぜんぜん終わらなくて焦った。最近ではWeb情報が充実してきているので、ここ10年くらいは買っても年に1~2冊程度のはずが、蓋を開けたら何と600冊以上もあるじゃないの(汗)。どうせならと、装幀の凝り具合、コンテンツの充実度、写真の多さ、シナリオ付録のあるなし、美術廻りの仕事の好み判断…など、簡単なスペック欄を設けてエクセルで一覧化するハメに―。

f:id:chinpira415:20210928120859j:plainいやはや、紙好き体質はヤバイですぅ~。ペラペラめくるだけでも、作品記憶がダイレクトに身体に届いちゃって、テンションMAXなんですよ。じぶんの映画アーカイブ劇場に丸4日間、通い詰めていたような体験でしたね。動画ではすぐ飽きるのに、なぜか紙だと成立。ってことで、我がパンフコレクションの想い出をここに綴っておきましょう

🎬ミニシアター全盛期パンフ

f:id:chinpira415:20210929115813j:plain「シネマスクエアマガジン」「シネ・ヴィヴァン」「シネセゾン」「シネマライズ」「シネマシャンテ」「ガーデンシネマ」「キネカ大森」「シネスイッチ」etc…。高校卒業後、本格的に映画館通いを始めたタイミングと80年代にスタートしたミニシアターブームが重なり、持っているパンフの半分はミニシアターがオリジナルで作っていたもの。本家で鑑賞したことは1度もないのに…情報は東京発信だったんだよね

f:id:chinpira415:20210929131454j:plain▶例えば、1991年発行のフィンランドアキ・カウリスマキ監督『マッチ工場の少女』('90)のパンフのコンテンツを書き出すと、とんでもなく豪華な執筆陣で腰を抜かす!

  1. 歯科医でロッカーのサエキけんぞう
  2. 小説家の辻邦生
  3. 映画評論家からは、北川れい子、黒田邦雄、齋藤敦子、三木宮彦、梅本洋一河原晶子の6人
  4. アテネフランセ安井豊
  5. 贅沢な見開きカラーはイラストライター三留まゆみ
  6. 吉武美知子による海外最新映画情報
  7. カウリスマキ監督へのインタビューも収録

総勢12人が様々な角度から論じる56頁!もちろんシナリオも付いてて、パワーの掛け方がハンパない。観客は、ミニシアターが競い合うように作っていたこうしたパンフを熟読し、1本の作品情報にとどまり切らない海外映画文化を吸収しまくっていたわけよ。映画鑑賞はひとりで愉しむ娯楽だけど、パンフには同好の士を見つける喜びがある。エンタメを提供する側とされる側、両者によってサブカルの華は咲いていたのよね~🌼

🎬イラストレーター活躍パンフ

f:id:chinpira415:20210929152522j:plainカウリスマキ作品は美術や音楽に携わる人々に愛されていて、左上の『浮き雲』('96)のパンフには安西水丸がイラストとエッセイを寄せている。ヒロインの肖像画が表紙の『あなたがいたら/少女リンダ』('87)ペーター佐藤のイラスト。50年代の英国の田舎町を舞台にしたお転婆な女の子の物語、大好きだったな~。ユーミンがエッセイを書いてたりしてなかなか貴重。そしてセンス抜群のポップカルチャー映画『コーンヘッズ』('93)三留イラストのテイストにピッタリで、パンフの出来も超キュートです


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🎬変わりダネ映画パンフ

f:id:chinpira415:20210930101522j:plain新しい表現方法に切り込んだ映画を見た後は、「誰だ!これを作った奴は!」とパンフを買って夢中で作品背景を貪る。写真をつないだだけの画期的SF映画ラ・ジュテ('62)のパンフはリバイバル上映時の特別仕様。美しい。『ルンバ!』('08)アイスバーグ('06)の2本の小さな映画で、道化師夫婦アベル&ゴードンの世界に初めて触れた興奮は今も忘れられない。映画を見ている間中、「パンフ買わなきゃ!」と焦りマシタ~♬そしてカルト映画作家アレハンドロ・ホドロフスキーと初対面した『サンタ・サングレ』('89)のパンフも宝物。敬愛する詩人の荒川洋治が寄稿してるの、信じらんな~い!


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🎬007シリーズパンフは2冊

f:id:chinpira415:20210930111954j:plain▶メジャー映画のパンフだって、それなりに揃ってますよ…007シリーズはこの2冊だけだけど(笑)。5代目ボンド、ピアース・ブロスナンダイ・アナザー・デイ('02)と、6代目のダニエル・クレイグカジノ・ロワイヤル('06)。なにせ007シリーズは、ボンド以上に男の子アイテムが主役だからさー、パンフも商品タイアップ図録と化してて家庭画報みたいなのよね(笑)。ゴージャス感演出で攻めてます💎

🎬資料性に徹したお地味パンフ

f:id:chinpira415:20210930114815j:plain▶007とは正反対な超お地味パンフを作り続けているのが岩波ホール。基本、写真はモノクロで添え物扱い。その一方でアカデミックな執筆陣が寄稿するため文字数は多く、ふんわり映画の余韻に浸るというより、お勉強モードに突入します😊初岩波パンフは40年前に見た『ピロスマニ』('69)。最近ではパトリシオ・グスマン特集が印象深かったな…どちらもパンフが映画の補助線になってくれました。あと、さらに資料性に振り切っているのが京橋のフィルムセンター発行パンフ。国立の施設ならではの手触りです。


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🎬若手作家のパンフ

f:id:chinpira415:20211003102902j:plainじぶん好みの若手作家と出会っても、「まあ、次の作品を見て判断だな」などと、渋く見積もるクセがある…特に邦画は…(笑)。ところが、掟に反し衝動買いしたパンフの中で、特に思い入れのあるのが山本浩資『ランデブー』('99)富田克也国道20号線('07)。富田はその後もコンスタントに“オレが見ている空”を監督として更新し続けているが、山本は映画現場の照明スタッフで活躍しているらしい。もう一度見直したくてもその機会がない『ランデブー』、だからこのパンフは余計に宝物

🎬古本屋で物色パンフ

f:id:chinpira415:20211003112605j:plain▶ネット配信全盛期の今では想像しにくいかもしれないが、若い頃にたまたまTVで吹き替え&短縮版を見て惚れ込んだ映画が何本かある。デリンジャー('73)『ダーティー・メリー クレイジー・ラリー』('74)…その後古本屋でパンフを見つけたときは、思わずむせび泣きましたよ。中でも『ウィークエンド・ラブ』('73)は、未だDVD化されておらず、パンフを持ってるだけでも気持ちは温かいYouTubeで予告編を見つけたわ~、見て見て!これが大人の不倫映画だと信じられる?ふたりの掛け合いにブラボー♬


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🎬蓮實センセイお墨付きパンフ

f:id:chinpira415:20211003123125j:plain▶1992年「ルビッチ生誕100年祭」1994年プレストン・スタージェス祭」1995年カネフスキー、その清冽な瞬間」映画史における最重要監督の特集上映が企画されるとき、パンフには言わずと知れた映画評論家・蓮實重彦センセイが颯爽とご登場になります。ぶっちゃけ広告塔なんですが、蓮實印が付くとシネフィルたちに向けた大看板となるので、とーっても重宝されるわけです。でもこんな風に身を乗り出して旗振りをしてくれる先人のおかげで、単なる消費で終わらない映画鑑賞の道筋が作られるのよね。


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▶☝はスタージェスのレディ・イヴ('41)。『ウィークエンド・ラブ』の艶っぽいドタバタ劇も、スタージェスの暴走にはかなわない!今わの際にスタージェス作品を目にしたら、クレイジーな浮世に未練が残り、思わず生き返りそう♪

🎬パンフレットが血肉となった!

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▶パンフの整理を終えてしばらくした頃、映画保存のエキスパート・岡田秀則が書いた『映画という<物体X>』(立東風)たまたま再読。すっかり中身を忘れていたけど、タイムリーなことに、本の中にチラシとパンフレットを礼賛する章が出てくるではないの!パンフの機能を―“瞬時に消えゆく「映画体験」を紙上に再び追い求め、最終的には消えることのない「記憶」に達しようとするためのツール”と例え、パンフを“持ち帰ることのできる映画”だと綴る著者に、激しく共感しちゃいました。

f:id:chinpira415:20211003135009j:plain▶そう、たかが本棚の整理ではじめたことですが、映画館でしか買えないパンフレットによって、じぶんがいかに鍛えられたかを振返る作業となりました。「映画はパンフレットで2度おいしい」改め➡「映画はパンフレットで何度でもおいしい」―です!

PS 次回は10/29に更新します