画家・染谷亜里可は宙に遊ぶ🛸1/2

染谷亜里可展へ行く

◆栄のKENJI TAKI GALLERY染谷亜里可(そめや ありか)展~Left inside Right~ がスタート!(6/22まで)4年ぶり、待ちに待った新作展のオープニングへ行って参りましたので、まずはそちらのご紹介★「お、ねだん以上。」byニトリ…じゃなくてー、「期待以上。」byソメヤ~♫ クールに変化し続けてて、ごっつカッコよかったー👍

f:id:chinpira415:20190524230007j:plain◆画像ではわかりにくいんだけど、これはベルベット地を脱色して描く「Decolor」というシリーズで、彼女の代名詞となっている表現方法なの。そもそもベルベットって毛足があって、光の反射角度によって表情が変わるでしょ。素材そのものに光と影を招き寄せる力があり、なおかつ滑らか。これをキャンバス代わりにしただけでも、おーっと唸るんだけど、そこに引き算(脱色)を使い、足し算(絵を描く)にしちゃうところが天才プラマイゼロのマジックですわ~。

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▶ほな、プラマイゼロってことは、無重力かいな~。確かに今回の積み木みたいなモチーフだと、浮遊感がハンパなくて、無重力漂流に体ごと魅せられたわ。どうもこの積み木の描き方にLeft inside Rightの試みがされているらしいけど…テクを聞いてもさっぱり飲み込めず(汗)。ただ絵画というより彫刻作品風なインパクトがあって、長年定点観測してるあたしの👀には、またまた大胆なユーモアとペーソスを搭載した印象でした★

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ところで染谷亜里可をご存知か?

◆染谷亜里可の存在を知ったのは2003年。もう15年以上も前のことよ…。名古屋市美術館が企画した、この地方に活動拠点を置く美術作家9名を紹介する展覧会『現代美術のポジション2003』で、ガツーンと出くわしてしまったの~、やっべー💦

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◆ガツーン…とはいえ、記憶にこびりついたのは―①お月様が浮いてる作品を仰ぎ見て思わずクラクラした ②それはキャンバスではなくベルベットの布に描かれ、ラフに垂れ下がっていた ③作家名をチェックしたら、じぶんと同じ年=1961年生まれの女性だった 以上3点のみ。そんな運命の1枚がこちら―

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◆こんなざっくり感想じゃ、ガキの使いにも劣るわね(笑)。ただこの3点がじぶんにとってはやけに鮮烈で、染谷亜里可という名をしかとインプットしたのであります。

ここから始まる大レース~♪

◆で、“愛”は名前をつけた瞬間から始まっちゃうんですよね~♥タメ年のソメヤくんの作品を脳裏に刻んだ後、翌年の秋に早々と、KENJI TAKI GALLERYで新作と遭遇。はい、ちんぴらはこのときの興奮を生涯忘れることができません(涙)。まずは、ギャラリー1Fに並んだ「字幕」シリーズ。例のベルベットを用いた「Decolor」技法で、モチーフは映画の一場面風に見える…マジに動揺した長年の映画愛好家だから余計に

f:id:chinpira415:20190522220855j:plain◆だって、まるで寸暇を惜しんで眺めてきたスクリーンが、映画小屋からこっそり抜け出し、暗闇をまとったままギャラリーに集結し、あたしを取り囲む状態になったんだもん。つまり、いつも見ていたスクリーンから、逆にあたしが見られているわけよ。でもって、脳内映画データベースを紐解いても作品名は特定できず、むしろどこかで見たような場面&意味深な字幕だから惑わされたのか…恐るべしベルベットの架空迷宮

人生初、絵の衝動買い!

◆2Fに上がると、今度は油彩による「鳥瞰」シリーズのお出まし♫ これまたどれも何がモチーフになっているのか、わかるようなわからないような…。筆使いがわかり~の、陰影もあり~の、物体は具象だけど、テカテカの合板に描かれていて抽象的に感じられ~の…。その中の1枚がこちら…タイトルは『億万長者の家』(04)。ギャラリーの人に尋ねたら、なんと人生ゲームの家の駒を鳥瞰で捉えた図だって。オーマイガー!

f:id:chinpira415:20190522232759j:plain◆なんでその絵がウチにあるかっていうと…このとき“人生初の絵の衝動買い”をしちゃったからなんです!お値段10万円也★自転車操業の年増のフリーターが『億万長者の家』を騒動買いって、ギャクみたいでしょ?(爆)周囲からは「はぁ?絵だとぉ~?いったい何様のつもりだあ!」とヒンシュクをかったりもしたけど、絵を買って得た体験価値はマジに計り知れないです貨幣価値に置き換え不能なアクションなんですよね。

f:id:chinpira415:20190524084745j:plain◆絵って、“窓”になるの。それも、世界につながる“窓”がウチの中にできるんだよ、それだけで活気づくってもんでしょう~。それと、価値が定まっていないものを、カンだけを頼りに探し出す行為は、じぶんのものさしとの格闘になるからね。絵と対峙してじぶんが発掘できるなんて、まさに未知との遭遇じゃない?

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◆そういえば絵を購入した翌年、三重県立美術館からソメヤくんの展示をするので、図録作成のために画像を借りたいとの依頼があったの(右図)。絵の所有=絵描きの歩みの伴走者になるってことなんだなあ…。これも他では味わえない体験になったわ。

2度あることは何度でも…?

◆ソメヤくん追っ駆けは、その後もお地味に継続し、これまた忘れもしない2007年のこと。眼科で検査した帰り道、まだ瞳孔が開いたままの牛乳瓶の底から見てるような状態で(汗)、新作展開催中のKENJI TAKIへ立ち寄ったの。いや~ん、ボケボケなのに、どの絵も素敵すぎてしんぼうタマランかったのよ~💦お断りしておくが、ボケてるから素敵に見えたわけではなく、作品が放つ空気感にノックダウン👍

f:id:chinpira415:20190525105757j:plain ◆空+地平線+大地の三位一体構成に、この流麗な筆遣いを見よ!はい、お察しの通り購入させていただきました『Landscape』(07)。初めて絵を買ったとき、マブダチHに「そこから始まるんだよ~。1点で終わるわけないっしょ~。」と、恐ろしき一言を通告されたが、キミは預言者でしたね✿この絵を見たとき、ラース・フォン・トリアー監督の奇跡の海(96)エミール・ノルデの水彩画を思い出したっけ…。

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◆でね、後日作品のお支払いをしにギャラリーへ寄ったとき、生ソメヤくんとバッタリ遭遇した写真がこちら♥なぜか長身のボーイッシュな女性をイメージしてたから、サイズ感があたしといっしょで笑っちゃった😊これ以降今に至るまで、友情てんこ盛りな関係に。パートナーの今村哲くんもタメ年の絵描きでさー、あたしたちが集結するとまるで部活(笑)。天下国家ネタからサブカルまで、同世代のおしゃべりは止まらない~。

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アトリエへ突撃訪問!

三重県いなべにあるふたりのアトリエ兼住居に泊りがけでお邪魔したこともあるの。日常的に学生を相手にしているからか、ふたりとも気取らない人柄で懐が広くて、最高に寛げた!夜遅くまで美術談義に花を咲かせたのに、翌日も朝っぱらから布団の上でティツィアーノの画集をめくりながら、大騒ぎしたっけ~(笑)。

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f:id:chinpira415:20190525142217j:plain◆創作の現場訪問は、ほんとテンションあがるよ~。あちらこちらにイメージソースの断片が転がってたりしてドッキドキ…。あたしにとってはまさに聖地巡礼でした!

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◆右の画像はアトリエの横にある庭への入口。このこんもり具合、めちゃミステリアスだと思わない?それとも、ただ手入れゼロなだけ?(笑)ソメヤくんの頭の中へ続く迷路の入口だと踏んでるが…。きっとここに創作の女神を囲っているに違いない!

ベルベット降臨

2008年、世界がリーマンショックに揺れる中、父が亡くなりました(涙)、享年82歳。翌年、父が残した預貯金を譲り受けたんだけど、大富豪ならともかく、ちょっとしたボーナス価格。ありがたいが、いまいま食うには困っていなかったので、この手のお金は残さず使い切ろうと決断♫ タイムリーなことにソメヤくんの新作展が…(爆)。これ、何に見える?…このときの展示のタイトルは「Monster」

f:id:chinpira415:20190525141108j:plain◆あたしは、鉄腕アトムの妹のウランちゃんがひっくり返ったところ…くらいにしか思いつかなくて(笑)、モチーフより不穏な気配みたいなものに魅かれたの。地色のコバルトブルーから抱くイメージとの落差もお気に入り。ちなみに本人に尋ねたら、バイオリンの糸巻部分だって!こうして念願の「Decolor」シリーズが我が家の玄関に鎮座♫ 父は建築系の職人だったけど、絵を描くのも好きな人で、幼い頃のあたしをモデルにしてよくスケッチしてたっけ…。絵で追悼できたのは、何よりの想い出となりました★


荒井由実 ベルベット・イースター

願わくば一軒家に住んで引きで眺めたいのだが…(爆)。絵を飾りたいために家が欲しくなったりして…業が深くてスイマセン。というわけで、今回はベルベットつながりで終了(笑)。ソメヤくん紹介編は、次号にも続きます。6/13にUP予定、お楽しみに!