待ってました! アンリ・マティス展

ヤッター!HENRI MATISSE(アンリ・マティス1869-1954):The Path to Color展を見に上野の東京都美術館へ行ってきました👣コロナ禍で延び延びになっていた企画がようようお目見え。しかも8月20日(日)までの長期開催なので、みなさんもマジに足を延ばした方がいいですよ。150点あまりの作品を揃え、巨匠の画業の変遷を目の当たりにできる必見の大回顧展です。ここでは特にマティス室内画にポイントを絞って感想をメモってみたいです。まっ、一言でいうと最強のインテリアコーディネーターなんですわ😊

【待ってました! ①】まずはキャリアのごく初期に描かれた<読書する女性>(1895)を見てね👇へっ?本当にマティス?…と、目を疑うくらいお地味に写実的に仕上げられているでしょ。でも、壁紙、壺、額装された絵、置物、椅子、テーブルクロスetc…よく見りゃ早くもモティーフ選びにマティス・テイストが全開ですよ~😊

       

【待ってました! ②】次に注目なのが<サン=ミッシェル橋>(1900頃)👇向かって左隅になぜか立方体が…。これ窓枠ですよ。そう、ちょっこっと窓枠を入れることで、室内から外の景色を眺めた構成になり、レイヤーが増した絵になってるのよね。そしてレイヤーが増えると想像力も連動し、イッキにドラマ性が高まるようにかんじない?しかも写実を拒否するような色使いや塗り残しが広がり、一筋縄ではいかない!

【待ってました! ③】この後、②を描いたパリのサン=ミッシェル河岸に再びアトリエを借り、<金魚鉢のある室内>(1914)<アトリエの画家>(1916-17)を制作👇同じ室内の同じコーナーを絵にしていて興味津々。 ②より室内側のレイヤーが複数増え、想像力がさらに掻き立てられるじゃないの~。クッションが並ぶ奥のソファ➡金魚鉢のコーナー➡左端の椅子の背➡手前のテーブル…そのうえ窓からは賑わう河岸の様子まで網羅されかつ、絵の隅々までピントが同じように合い、情報モリモリで面白い!

余談ですが、つい最近DVDで見直した映画ペーパー・ムーン(1973)の撮影が全編そんなかんじだったのよね。焦点距離が深いだけじゃなく、すぐ手前まで等価にピントを合わせる超絶シーンの連続で圧倒されたわ~(『ペーパー・ムーン』の感想は次回掲載しますよ)

【待ってました! ④】ところがちょうど③と同じ頃に、フランスの南端の避暑地で描いた<コリウールのフランス窓>(1914)を見てみると👇…おいおい、なーんもないじゃんかよー💦この真っ黒は夜の眺めなのか?それでも、室内と窓と外の3つのレイヤーは判別できて、つい視線が闇の向こうへ向こうへと伸びて行こうとするから不思議。もしかしたら第一次世界大戦勃発の時代の気配が関係するのかな?

【待ってました! ⑤】1920年マティスアンリエット・ダリカレールをモデルにオリエンタリズムの香りがプンプンするシリーズを描き始めます。シリーズ第1作目が次の<赤いキュロットのオダリスク(1921)👇。アトリエをなーんちゃってハーレム劇場に見立て、装飾的なモチーフをギューギューに詰め込み、映画の1シーンのように描いてるの。そっけない表情とあけっぴろげな胸の落差にドギマギ💦

このシリーズ制作中の写真がこちら👇。自身が収集した布や雑貨を散りばめたアトリエの様子がタマランです。窓はないけど、柄✕柄のコンポジションで室内の密室感が増幅!ある種のドールハウスごっこでしょうか…。フェティシズムを感じますねぇ。ご本人がスーツにネクタイ姿なのも妖しいです(笑)。

【待ってました! ⑥】同じ年には<若いスペイン女性>(1921)も描かれました👇。背景の装飾が<赤いキュロットのオダリスク>と同じですね。この絵の前で40代とおぼしき女性2人組が、「これ、カワイ~イ!こういう絵ばかり描けばよかったのにね~」とおしゃべりしててメチャウケました。庶民にとって居心地のイイ色使いや装飾性とは、このくらいの分量なのかな?…現場からは以上です(笑)。

【待ってました!⑦】ところが同じ頃の<ニースの室内、シエスタ(1922)は、一転して浅塗りで、ところどころ塗り残しもあるようなタッチに変わるんです。室内と窓と外の3つのモチーフは描かれているものの、レイヤーにまで至ってなくてぺらっぺら…元祖ヘタウマ漫画でしょうか(笑)。100年前の絵には見えない…斬新っすね。

【待ってました! ⑧】でもって2年後の<グールゴー男爵夫人の肖像>(1924)になると、複数レイヤーが復活して、とんでもなく複雑な室内画に豹変!鏡に映り込んだ描写にもグッときました。社交界の華からの依頼仕事なのか、マティスにしては珍しく瞳くっきり女性像。でも窓にのぞく帆船から、テーブルクロスの花まで、その奥行きたっぷりな構図が超カッケー!今回の展示で最も気に入った1枚となりました♥

【待ってました! ⑨】時代はイッキに晩年に飛び、第二次大戦前後の室内画がこちらです。若い女性と白い毛皮の外套>(1944)<立っているヌード>(1947)どちらも戦争の影などみじんも感じられない。平面的だけど色はハジけててむしろ豪奢。世の中の流れがどうだったのかを振り返れないほど、カンペキに我が道を進んでますね。1941年には大病をしたというのに…握力が強い絵だなあ~。

【待ってました! ⑩】もはや陰影や奥行が皆無の室内画を図案のようにガンガン発表。大胆だよね~、<黄色と青の室内>(1946)<赤の大きな室内>(1948)身体が不自由になってんのに、絵のパワーは衰え知らず。<黄色と~>の左角のテーブル、こんな風に学校の課題で描いたら怒られるよね?(爆)。<赤の~>の敷物も、ツイ笑っちゃうのはあたしだけ?だけどトータルで見ると…まるでELLE DECOの1ページ!

【待ってました! ⑪】そして最後のコーナーでは、1948~51年に手掛けた南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂の仕事が公開されてました。告解室の扉の下絵、壁画の一部、上祭服のマケット…礼拝堂の装飾を丸っと任された資料の数々に興奮!何から何までセンス抜群でした。様々な室内画を見てきて、すでに空間演出の見事さは承知してたけど、いやはや感服。究極のインスタレーションを浴びにヴァンスに行きたいよ~👣

【他にも見どころ山盛り】そうそう、じぶんの物欲から振り返ると、一番欲しかったのは木炭デッサンですね♬ 実は色なし、陰影たっぷりのフォーマットが、なんだかマティス人間性を一番表してるような気がして…(笑)

あとねー、彫刻をたくさん見られたのもうれしかった。マティスが、2次元の絵画制作と3次元の彫刻制作を往復した意図を解き明かすような展示になってて、好奇心をそそられました。館内のレイアウトもよくて、人だまりができず、じっくり鑑賞できたよ。

なにせあたしは、去年「1日1枚マティスの世界」と題し、マティス絵画を、365日毎日描いてたからさー、ナマで本家本元とご対面できて、マジでテンション上がったよ~(笑)。そちらの戦歴をご覧になりたい方はこちらからどぞー👇

chinpira415.hatenablog.com

必見の大回顧展は8月20日(日)まで東京都美術館で開催中。ぜひ

PS 次号は6/28に更新します